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司法はバイトテロをどう裁くのか

2015 FEB 8 0:00:33 am by 東 賢太郎

知らなかったが「バイトテロ」という言葉があるらしい。アルバイト店員がお店で悪ふざけした動画をyoutube等に投稿し、それが仲間のサイトやSNSで世間に拡散してしまう。それも食器洗浄機で体を洗うなど衛生イメージを大きく損なうものであって、飲食店が廃業に追い込まれるなど甚大な経済被害が雇用者側に出ているという。

この背景にはたぶんyoutubeなどの動画サイトが「劇場」化してきて、投稿すれば誰でも世界中の人が見てくれる劇の主役になれることがあろう。コンビニで悪戯する愉快犯から殺人を放映するテロリストまでを生んでしまっている。これを司法という国家権力がどう扱うかは今後の社会正義の形成に関わる非常に重要な問題である。

マクドナルドの歯の問題がそれだったかどうかは知らないが、場合によっては大問題になる故にテロという表現は当たっているだろう。イメージというのは連鎖を呼んでしまう。顧客としてはアレが出たなら当然にアレも入ってるだろうという恐怖感を覚え、その店舗で売り上げが落ちるにとどまらず被害額は算定できないものとなる可能性だってある。

経営への不満ということもあるかもしれない。どんな理由があろうとテロは許されないが、「許されない」という常識が社会に欠如し始めているなら由々しきことだ。「コピペがいけないと知りませんでした」という人が問題になったが、そういう人が博士論文を書き、土足で洗浄機に入る人が調理をしているかもしれないという認識は共有すべきだ。

そういうことはしなかったが、子供のいたずらは僕自身が身に覚えのあることで偉そうなことは言えない。目立ちたいのは結構だし悪戯心ぐらいは全然ないのもどうかと思う。麻疹みたいにそれを経ずに大人になって「発病」するのがよほど怖い。反対の方も多いと思うが僕は子供の、特に男の子のいたずら性善説である。

だが悪戯にはやってもいい限度があるのであって、何があっても他人様に迷惑はかけてはいけないというのは社会の掟(おきて)だ。どんな社会だって掟があるのは万国共通。その掟は教室では教えないから親が教えるしかない。親が教えないと子供はどこかで矩(のり)を超えて警察に捕まってしまう。可哀そうなことになるのは子供なのだ。

見せしめの刑というのは法治国家ではない。しかしネット社会の急展開で、放ったのが爆竹だと思っていたらダイナマイトだったという不測の事態がある世の中になった。そういうことをすると自分こそ危険だという事実は学ばせないといけない。お店は潰れ、バイトの子は場合によっては威力業務妨害罪で前科一般になってしまう。誰も得しない。

法治国家として当たり前の、法の公平かつ厳格な適用ということに国家権力が留意しないといけない。成人で責任能力があるならば、法に触れれば法の裁きが下るという当然のプロセスを執行すべきであり、「いたずら性善説」は道を譲らなくてはいけない。「そんなに悪いこととは知りませんでした」は法治国家の国民として許されない。

法による支配というのは人治国家とは相いれない。やったことが問題なのであって、やった人が誰かは関係がない。韓国の「ナッツ姫事件」は財閥の娘だからけしからん、重罪なのだということはあり得ない。彼女の行為を「法律・判例に照らしてどうか」ということだけ、それが法治国家、罪刑法定主義のイロハのイである。

僕はSTAP事件の刑事告発がどう扱われるかも同様の視点で興味深く見ている。バイトテロが悪戯で片付かないのは故意が明確な場合で、もし犯罪性が疑われるなら構成要件としてその有無がまず重要なのであり、それが有りという蓋然性が少しでもあるなら国家権力が捜査をしない選択肢はないだろう。告発者の動機はそれには関係ない。

世の中が変わったからといって裁判における法の適用の尺度が変わるということもないし、あってもいけない。当然のお裁きの結果が適切に報道され、それが法治国家で税金を払い選挙権を持つ国民の「掟」なのだということを知らしめるのは、やはり家庭であり親の義務だろう。最後はどうしてもそこに帰ってきてしまう。

 

カラスは、自分の子が一番美しいと思っている (イギリスのことわざ)

 

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Categories:______世相に思う, 徒然に

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