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U-18野球は負けたけど評価(野球と確率について)

2015 SEP 8 0:00:18 am by 東 賢太郎

僕は野球は確率だと確信してます。自分のグラウンド経験からの体感でもあり、数学でもあります。1、2回はフロックなんてこともあって都立高校が甲子園常連に勝ったりもしますが、100回、1000回やったら個々人の打率、防御率etcの確率が結果をほとんど説明(予見)するはずであるのは東大の90何連敗を見ればわかります。東大の試験と野球能力の相関は確実にゼロですから東大がここ10年で弱くなったということは説明できません。他大学が何らかの理由でレベルアップしたんでしょう。

このブログはその観点で書きました(広島打線の能力は良くて4,5位)。では、それはほんとうでしょうか。野球というゲームは確率論に支配されているんでしょうか。そこで実際の記録を検証してみます。確率は統計サンプル数が多くないと意味を持ちませんから可能な限り長い戦後70年間の記録を見てみましょう。

まず平均的なチームのレギュラーメンバーの打率(=安打確率)を想定しましょう。

1番、2番が2割8分、3-5番が3割、6番が2割7分、7番が2割5分、8番が2割2分、9番が投手で1割

どうでしょう、だいたいのイメージですが、違和感はないのではないでしょうか?

この打線が完全試合(27連続アウト)になる確率を計算すると0.032%です。12球団の年間総試合数は(変動がありましたが)約840で、それが70年続きましたから、その確率どおりに完全試合が達成されると、その数は、

0.00032×840×70=18.7(試合)

になるはずです。

そこで日本プロ野球の完全試合達成投手数を調べると15人です。けっこう近いですね。打率の数字を多少上げ下げしても大きなずれはないでしょう。ことは確率論どおりに進んでいるとみていいのではないでしょうか。

70年に15人というのは、逆算すると、完全試合は3125試合に先発してたった1回しかできないということです。不動のエースを20年続けても、年間30試合先発するとして人生で600回しか機会はありません。同じ人が5回生まれかわらないとできませんね。

プロ野球の投手の歴代勝利数ランキングを眺めると200勝して名球会入りした人が24人いますが、そのうち完全試合をやった人は1位(400勝)の金田正一(1957年)と24位の藤本英雄(1950年)のふたりだけです。次が159勝で47位の槙原寛己で、槙原が1994年にやって以来現時点でまだ達成者はありません。

こう見ると実力はあっても27個同じもの(アウト)を並べるには運の要素もあって、そこに確率論が働くのかもしれません。アマチュアを見ても、甲子園大会では選抜(春)は2回だけ、夏はまだありません。大学はどうかというとプロとアマぐらいの実力差があって最もやられそうな東大が2回、京大が1回しか献上していません。

こういうことを知っていると、06年でしたか、中日の山井が日ハムとの日本シリーズで8回まで完全試合であったわけですが、9回に降ろして岩瀬に替えるという落合監督の愚策はあまりに気の毒だったと感じ入るばかりです。それでも、のちにしっかりと無安打無得点をやって見せた山井投手はそういう風に記憶されて欲しいものです。

確率はサンプル数を増やすと一定の期待値に収束します(大数の法則)。これは一例ですが、一試合だけ見れば偶然や選手の調子や監督の采配で左右されるように思える結果も、実は確率という神のルールの支配のもとにあるということです。

しかし、毎試合に一喜一憂している下界の我々にすればその方が人生楽しいよねということもあります。神様は先がわかっちゃって退屈だろうなと。

運の要素があると言っても実力がない所に完全試合は100%やってきませんから、まずは良い防御率という投手の技術の全てを包含したベーシックな確率があって、そこはほぼ神様のおっしゃるとおりなんですが、そのうえで27回ジャンケンして勝つみたいな運の要素が乗っかる。だから一試合一試合のハプニングが悲喜こもごもになって、選手は大変だけど見ている方は面白い。そういうことなんじゃないでしょうか。

今回のU-18野球W杯の勝ちっぷりなんか、選手個々人の能力からして打率や防御率という確率値に置き換えられるデータは他チームとかなりの差があったと感じます。そうでないとあれだけの試合数を大差で勝てないはずだからです。ところが、決勝で米国のいい投手が本気で向かってくるとパタっと打てなくなって1点に封じこまれてしまう。70年もやれば神様の言うがままですがここ一発の勝負だとそうはいかない、そこが面白いのです(大数の法則はサンプル数が少ないと働かないということ)。

この試合はオペラでほとんど見られなかったのですが、VTRを見ていて日本がピックオフプレーで米国の一塁走者を殺した(一塁手がバント処理で前進したすきに二塁手がすばやくベースに入って捕手が投げるというもの)、ああいうのを見ると、たぶん捕手のサインなんですが、急造チームですごいなあと感嘆するわけです。僕らのしていた野球なんかとはもう違うスポーツをしてる。大阪桐蔭の西谷浩一監督、お見事ですね、強いチームを作ったんですね。

最後の負けは負けで悔しいですが、一発勝負になってしまうと結果は仕方ない。審判のストライクゾーンやボークもあったがそれはお互い様なんで言ってはいけません。米国とは力(個々人の能力的に勝つ確率)は互角だったがむこうの方がガッツがあったかなということでしょう。シカゴからウィスコンシンに行ったとき、飛行機の窓から野球場を数えたらあるわあるわ、なんと100もあったんです。30分ぐらいで。米国人にとって野球はそういうものなんです。それと互角なんだから誇っていいいですよ。

清宮くん、打てなかったが、いい勉強です。どうあれ周囲が騒ぎすぎで変になった可能性もありますね。4番だろうがたかが1年坊主でしょ、試合以外では体育会ではせいぜい平民です(僕らの時代は奴隷だった)。そういう当たり前の扱いをすべきであって妙な空気は作らない方が本人のためでもあると思います。

16才でホームランを軽々と打てるのはまぎれもなく才能だしもっと伸びるのでしょうが、確率論という眼で冷静に野球を眺めると僕はやっぱり打者はまず、いの一番に打率(安打率)かなと思います。ヒットの延長がホームランなのかどうかは知りませんが、彼はプロで長くやるとして打率さえ良ければ試合で使われますから。打席数が多ければ彼の才能による高い本塁打率どおりに数は出ますから。大成を祈りたいです。

 
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Categories:______高校野球, 野球

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