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野球のヤジは奥が深い

2015 OCT 27 2:02:45 am by 東 賢太郎

野球で味方がエラーすると「ドンマイ!(気にすんな)」と声をかけたりする。どこかのおコメかゼンマイの一種かと思ってたらDon’t mind!だった。メリケン粉(American)やYシャツ(white shirt)とおんなじだ。たぶん明治時代あたりの日本人がアメリカ人と試合してそう聞こえたんだろう。

硬式野球部に入ると声を出せから始まる。1年生は声出しと球ひろいが仕事だ。どこにいようと練習中はとにかく息を吐くたび大声を出さないと怒鳴られる。「いこうぜいこうぜー」「はぁはぁー」「おーらおーら」「そりゃそりゃー」「よっしゃよっしゃー」「ゴーゴー」などなんでもよい。ワンパターンでは飽きるのでいろいろ組み合わせるが、個人個人でやっぱり好みがあって、今でもあいつは「ほーほー」だったと思いだす。

これが試合だとバリエーションが増える。守備は捕手が前に出て「しまってこうぜー!」と両手を上げて幕を開ける。「ナイシーナイシー」はnice seeで「きわどいボール球に手を出さずによく見逃したぞ」という意味だ。「ナイピー」は味方投手がいい球を放ったとき、「ナイスカー」は打者が巧みに投球をカットしたときでナイス系は多い。「ヘイ、バッチバッチー」は敵の打者にヤジを飛ばす枕詞で、あとに「また三振かー」などあらゆる悪口が続く。

「ヘイ、ピッチピッチー」はその投手編だ。「ハエがとまってるぞー」はお前の球は遅い(蠅がとまりそうだ)の意味。「タマ来てねえぞー」「おじぎしてるぞー」もおなじ。「ほりゃほりゃ、どうした、はいんねえなー」はスリーボールになったときに、「浮いてるぞー、見てけ見てけー」は高めに来てるのでナイシーすりゃ四球だぞというプレッシャーをかけている。こういう局面で投手がビビると打たれるので、捕手がマウンドに来て「置きにいくなよ!」(ストライクを取りにいって棒球になるな)なんて尻をたたいたりする。

たいしたことないヤジだが、初回などはけっこう効いたりする。投げてみるまで自分でもわからないし、それを教えてくれるのは味方ではなくて敵の打者だ。初回にいきなり打たれたり四球が続いたりすると「乙女の心」になったりする。ホームランを打たれてわけがわかんなくなったことがある(以後の記憶なし)。球が走らない、カーブが曲がらない、マウンドが嫌だ、風向きが気になる、審判と合わないなどいろいろある。プロでも「立ち上がりが悪い」という人はけっこう多い。

それを見越して、マウンドに登ると捕手は「今日いいぞ、走ってるからな」という。必ず。そうでなかったのは人生一度だけ、広商のエースだった人。「お前カーブあかん」でいきなりチョン。「これでいけ。」で投げたことないフォークの握りを教えられ「サインはチョキ」でおしまい。しかし草野球とはいえ構えたとこに投げたら人生唯一の1安打完封だった。ニューヨークでは巨人のドラフトを蹴った人とあたって「いよー、巨人のホシー!!」と全員でヤジりまくったら「なんだ、知ってんのかよ」とコントロールが乱れてKOした。

かように相手ベンチの声はよくきこえる。勝ってると投手は何人がかりかでヤジられる。いちど円陣の監督の声がきこえて「いいか、あいつコントロールいいからな・・・」あとは聞こえなかったが。11対2の大差で最終回になって「おーい、意地を見せようぜー」というのが来たことがある、1度だけだが耳に焼きついている。ありがたいことで人生のいい思い出になった。こっちが左腕の快速球投手にきりきり舞いで3安打完封されたのは、4番が高めで三振を食らってもう一回り目でこりゃあかん、誰も口に出さないがという練習試合。もう悲惨でヤジも出なくなってしまった。意地を見せようぜーはそういう時に出る、ヤジというよりかけ声である(それすら出なかったが)。

思い出したくないが、昨日のバンデンハーク、サファテに対するヤクルトはそういう感じだった。球が速い投手に力で抑えつけられると、なんかフォール負けした屈辱がある。プロ野球ニュースで高木さんが「神宮なんだからマウンド削って平らにしちぇばいい、ホームはなんでもありなんだから。そのぐらいしないとズルズルいきそう」と言っていた。そして笘篠とふたりで口をそろえて「意地を見せて欲しい!」が出ていた。これで僕は思い出してしまい、これを書く羽目になった。ヤクルト、ドンマイだ、意地はいいから普段の力を見せてくれ!!

 
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