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ハイドン 交響曲第100番ト長調「軍隊」Hob. Ⅰ:100

2016 JUL 2 8:08:37 am by 東 賢太郎

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僕がへこんだ時に頼る作曲家の最右翼はヨゼフ・ハイドンです。なんたって明るいじゃないですか。音楽が満面の笑みをたたえてます。こっちもついついのせられて笑顔になる。みなさんの周囲にもこういう人がいるのでは?

聴く人をよろこばせびっくりさせ幸せにするサービス満載なのですね。たとえばこの100番は軍隊交響曲とあだ名がありますが、第2楽章のおしまいの方にトランペットがパパパパーンと軍楽ラッパを吹き(楽譜、ハ音記号)、トライアングル、シンバル、バスドラムのはいったトルコ軍楽もどきが始まります。

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この交響曲は1793-4年にロンドンで作られ初演されたのですが、ロンドン市民にとってトルコ軍の脅威など遠国の話で、これは異国情緒のサービスだったでしょう。そういえば先般のEU問題選挙で、離脱派が「EUに加盟したらトルコ移民が押し寄せるぞ!」と脅かして、これがけっこうきいたそうな。

(余談1)

このトランペット、何かを思い出しませんか?結婚行進曲の開始のトランペットですね。メンデルスゾーンは結婚行進曲の冒頭をまったくおなじ調、同じ楽器(ハ調のトランペット)同じリズムで書いてますが偶然とは思えません。

 

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さらにはベートーベンの運命動機、マ-ラーの5番。全部ハイドンがご先祖様である可能性はあると思います。

(余談2)

100番の第2楽章は自作のこの曲の第2楽章をほぼそのまま管弦楽に編曲したものです。「2つのリラのための協奏曲ト長調」Hob. VIIh-3です。しかし原曲には軍楽隊部分がありません。比べてください。

閑話休題。

この交響曲の白眉は第3楽章メヌエットだと思います。流れるような心地よいメロディーに信じがたいほど素晴らしい内声が絡むのが何度聴いてもすばらしい。いつも笑って明るくしてくれるが、けっして下品にならない人という感じでしょうか。そして終楽章。この明るさはハイドンでも飛び切りの上機嫌だ。タカタタカタ・・・の8分の6拍子、これは上記のパパパパーンに由来しているのではないでしょうか。

 

オイゲン・ヨッフム / ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

UCCG-3985_FAo_large.jpgフィラデルフィア、アムステルダム、ロンドンでヨッフムをじっくり聴ききました。弦(特に第1ヴァイオリン)のアーティキュレーションへのこだわりが徹底しており、ベートーベン7番mov4の主題で各プルトをスラー組とスタッカート組に分けて弾かせたのはびっくりしました。それが音響としてまた効果的なのです。同曲を2回別なオケで聞いてどちらもその処理だったのでCDの録音でもそうしているのではないか。それはこの100番のmov4にも感じるのです。そうして歯切れよく浮き立たせたメロディーラインに晴れやかなフルートを重ねる。これでアレグロやプレストをやるとリズムの立った敏捷性の中にも古雅な音がして大好きなのですが、それは彼がよく振ったドレスデン・シュターツカペレ、アムステルダム・コンセルㇳへボウ管、バンベルグ響の伝統の得意技なんですね。これはロンドンのオケですが、彼のマジックで見事にそうしたドイツ圏の音になってる。有無を言わさぬ名店の親方ですな。終楽章はホンモノの名演です。マーラーをアクションたっぷりにド派手に鳴らすのもいいが、こういうことがきちっとできるのが名指揮者なんです。第4楽章です。

 

モーゲンス・ウェルディケ / ウィーン国立劇場管弦楽団

47537金欠の大学時代にありがたかった千円盤。これで曲を知りました。指揮者ウェルディケ(1897-1988)はニールセンの弟子で古典、バロックに定評がありましたが、とはいえなぜデンマーク人を起用したのか?想像ですがウィーン・フィル音源を欲した米国の新興レーベルVangardが契約上やむなくということだったかもしれませんね。それがどうあれ、そうしてできた99-104番の録音はいずれも僕の大好きな演奏であり、なによりこれをおすすめする大きな要因でもあるのですが、音質も最高なのです。今きいてもオケ(実質はウィーン・フィル)の美質が満開で弦も管も実にチャーミング。世が古楽器演奏に染まる以前の遅めのテンポで、ティンパニを効かせた腰の重いグランドマナーのシンフォニーが聴けます。現代流の精緻なアンサンブルでは出ないおっとりした味は今となっては希少で僕は駄菓子屋の味を思い出す。しかし誤解のないように書くと第1楽章のコーダの堂々たる風格は見事でVPOがライブのようにのっており、第3楽章のストレスフリーで自然な気品が練り合わさった弦楽合奏からたちのぼるさまは最高。ウェルディケが只者でなかったことをうかがわせます。

至芸をお聴きください。

 

クラシック徒然草-ハイドンの交響曲の魅力-

 

 

 

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Categories:______ハイドン

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