アンヌ・ケフェレックを聴く
2018 APR 26 23:23:27 pm by 東 賢太郎
指揮 上岡敏之
ピアノ アンヌ・ケフェレック
新日本フィルハーモニー交響楽団
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
ブルックナー:交響曲第6番 イ長調
先日のピリスに続き、こちらも実演は初めてのケフェレックを聴く。パリ生まれの70才。ヴァージンレコードのラヴェル・ピアノ曲集はリズムに個性がありフレーズごとに一音ごとに音価を変転させ粘る。クープランの墓はその結果ロマンティックに響きやや抵抗がある。テクニック的にも徹底したヴィルテュオーゾということもなく、対位法の立体感が甘くてやや平板。品の良さが売りのピアニストかという中途半端な印象があった。しかし「亡き王女のパヴァーヌ」の中間部や「悲しげな鳥たち」ではその粘りがピアニシモでふわりと一瞬宙に浮く、そのポエティックで微妙な溜めは存外に蠱惑的であって、この人のピアニズムの不思議を醸し出していたのも記憶にあった。
モーツァルトのピアノ協奏曲第24番は特別なエモーションを感じる、僕にとって格別な曲だ。甘ちゃんのピアニストに弾いてほしくない。結論としてケフェレックの固有の弱音美が活き、指揮もオケも好演という事もあり十分に楽しんだ。しかし彼女独自の「時間感覚」はコンチェルトでなく独奏で聴きたかったという欲求不満も残る。アンコールに弾いたヘンデルのメヌエット・ト短調(ケンプ版)はその留飲を下げる大変な名演で、まったりと流れに支配される数分間、ただただ聞き惚れるという至福のピアノ演奏。先に書いたパヴァーヌの間と溜めのポエジー、和音の天の配剤のように美しいバランス。この体験は深い。
ブルックナーは第2楽章に実に感じ入った。いままでで一番素晴らしい。フランクフルト時代に娘のピアノの先生に指揮を習ってみたいと言ったら、紹介しますよとなったのが上岡敏之さんだった。結局実現せずもっと暇な会社だったら良かったと思ったが、恥さらしをしなくてよかったとも思う。上岡さんはもっと聴いてみたいという意欲が出てきた。ケフェレックさんにサインをもらい、ちょっとお礼を述べてから横浜みなとみらいホールを退散。いつもながらミーハーだ。
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