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トゥールダルジャンにて思う

2018 SEP 18 0:00:36 am by 東 賢太郎

仮にTさんとしておきますが、女性のかたから「男女の脳はぜったいに違う、だから気をつけなさい」と意見をいただき目からうろこでした。「(東さんは)ぜんぶ自分中心だから周りが大変ですね、特に女性は」と鋭い観察眼で、お説教ではなくロジカルに説いていただいたわけですが、こういう流儀の説明を女性からいただいたことはありません。

既述の通り僕は女性と話しがかみ合うことがなく、脳が違う説は支持者でありました。いわく女性は同時に別のことを考えられる、何事も没入しない、面白い本を山場でやめて眠れる、100mの穴は掘らず1mのを100個掘る。なるほどそれじゃ無理だ。たしかに母といえども僕が電車のブレーキが溶けた鉄片を線路で拾ってくるのが理解できず、毎回すぐ捨てられました。

鉄片の収集とCD収集は僕の中では全く同じことで、電車の車輪・ブレーキへの関心と音楽へのそれも全く同じです。ということはその調子で書いてる僕の音楽ブログは実は女性にはぜんぜん理解されてないかもしれない。youtubeに貼っている音源もその趣味のチョイスですがアナリティクスによると来ているのは男ばかりで、そういうことかもしれません。

同時に別のことを考えながら交響曲を書いたり相対性理論を発見したりはできないだろう。好きな事を寝食忘れて何時間でも没入できるのは男だけなんでしょう。Tさんいわく、「女にそういう人はまずいません。でも男も大半はそうではない人ですよ」で、僕はというと「いちばん遠いところにいる」そうなので合うはずがないのです。たしかに男の大半も、実は合わないのです。

そう、Tさんを東京ドームにお連れしたとき、8回あたりで「終ると混むでしょ、そろそろ出ますか」とおっしゃる。「ちょっと待って、こっからいいところでしょ?」という会話がひとしきりあってつきあってもらいましたが「あれのことですね?」「そうそう、でもほとんどの女性はそんなもんですよ」

たしかにこれは家内、娘も一緒であって、どうしてそういうことになっちゃうわけ?のオンパレードの歴史であったのです。モーツァルトの親父が息子との旅行先で似たことがあって手紙で妻と娘にお前たちはほんとうに馬鹿だねと切れてる。馬鹿はいかんです、differentですね。ナンネルちゃんだって弟と変わらぬ神童だったわけだから。

さすがに家では長年の経験から近年はストレスをかけないようにしてくれているので有難いことです。そうでないと僕は仕事にならない。普通の人は寂しくなって誰かにかまってもらいたいのでしょうが僕はなるべく放っておいて欲しい。「孤独はいいですよ。没入できますんで。そういう時に寄ってこられたり声かけられるのも嫌なんで、猫以外はね」。

ドイツにいたときのことですが、森を歩くと老カップルが散歩しています。ヴァンデルン(wandern)といって何をするわけでなく歩くだけ。それもそのままオペラハウスかフレンチレストランに行ける正装でね。あれこそ大人の時間なんです、最近あれを思い出してましてね、いいなあ贅沢だなあと思う。

フレンチといえば、僕が好きなんで、Tさんには仕事で格別のお世話になったお礼でこの日はトゥールダルジャンにお招きしたのです。ご婦人同伴でないと行けないところですが、僕はあのパリの宮殿のような空間でぽつんと一人で給仕されていたいなあとも思う。食事もワインもよろしいが、それゆえの贅沢というのはまだ若い、贅沢なのはあの空間と時間を占有することなんですね。

それにしても食事はいいですね、胃袋に男女はなさそうなんで。

 

男の脳と女の脳

 

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