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ソナーは自分が買わない株はすすめません

2018 DEC 1 15:15:37 pm by 東 賢太郎

「自分が買わない株はすすめません」というとたいがい嘘だろうという顔をされる。無理もない、そんな会社は僕の知る限りない。しかし、どんなに世の常識に反していようとそれは本当だ。ソナーは自分の資金でお客様と一緒に買って持っているし、そうでなくてはプロでないし、そういう株を探し出してくる自信があるし、実際できているから会社が8期目に入っている。宝を探す「ソナー探知機」になぞらえて「ソナー」を名のらせてもらっているのはそのためだ。

証券マンとしての僕の原点はこのブログにある。HPのブログ第1号だ。

ソナー・ファイル No1 (10倍になる株を探す楽しみ)

僕は金利が1%だ2%だ何ベーシスポイントだというボンド(債券)の世界には何の関心もない。そんな誤差みたいなものに感応するセンサーはついていない。株も1割2割上昇ではなく、10倍になるかなというのに出会うと初めてセンサーが作動し、全神経が集中する。これは理屈でない、本能的な反応である。自分はネコ科なのでハンティング感覚なのかなと思う。追っかけても疲れるだけだからだろう、ライオンはモグラやネズミは見向きもしない。そんなのを追っかけるのはハイエナでライオンではない。僕はハイエナは好きでない。

「10倍探し」は学校で習った技能ではない。生まれつき好きな嗜好のようなものであって野球やクラシック音楽と同じだ。しかしそこでは僕は素人だがこっちはちがう、というのは「好き」の度合いがちがうからで24時間寝ても覚めてもそれを考えてるわけだが苦痛と思ったことは一度もない。野球や音楽でそれは無理である。やり直せるなら大学は不要で高卒で野村に入りたい。東大やウォートンで習ったことは趣味だ、10倍探しには全く不要であった。野村と他は比べものにもならない、野村でないとだめだ。

ソナーのHPをご覧になって立派な経営理念ですねなどと言って下さる方があるが、あんまりそう思っていない。ハンターとして獲物を捕らえる自信あります、それに便乗(共同投資)しませんか?という経営だから理念というほど立派でもなく泥臭い。血の匂いすら意識すると書けば、まず99%の方は理解できないだろう。それが「ソナーは自分が買わない株はすすめません」の意味であり、経営のコミットメントなのだから嘘でない。並の会社のHPにある芳香剤の匂いのする美辞麗句とはちょっとわけが違う。

なぜ便乗者が必要か。まだ投資資金が少ないから獲物のサイズが限られてしまう。そうなるとハイエナになるしかないがモグラやネズミは10倍にならない。だから「仲間」が必要なのだ。ただし僕は買収する気はない。経営リスクを負う気はないからだ。「買収者に近い発想と分析」で対象を選別し、モノが言える程度には株を持って経営はあまり口出ししない。100%取得した社のCEOを呼んで「君の定年退職は100歳だ」と告げるウォーレン・バフェットに近いと思う。当然ながら彼同様に、日々売った買ったのトレーダーではまったくない。もしこれからうまくいけば、いずれソナーは共同投資者は不要になるだろう。

こういう考えに至った経緯は簡単だ。証券会社勤務で一番いやだったのはモグラやネズミを「大物」のように売ることだったからだ。そのくせライオンのようにふるまっている。なぜそれが嫌いかは、僕の書き貯めた1915本(12月1日現在)のブログをお読みになればどなたもわかっていただけると思う。性格は変えられないし、自分の本性に逆らったことを毎日するほど苦痛な人生はない。何でも好きにできる自分の会社でいやなことをする理由などなく、それを理解されてない方を共同投資者にお招きする気も必要もないし、顔の見えない不特定多数の人の資金を運用する投資信託をやる気もない。

お金をタダでくれる人はいない。だから株を買ってお金が増えるとすると、その知恵をタダで教えてくれる人などいるはずがない。それっぽい本を書いている人は、それができないから印税で食いたいのだ。その知恵というものは、自身のリスクをかけた、体を張った勝負の見返りである。投資信託を買っている方は、運用しているサラリーマンのファンドマネージャーに「自身のリスクをかけた、体を張った勝負」をたったの1~2%の手数料でお願いして「わかりました」とやってくれるかどうかよく考えてみればいい。

「いや、彼はがんばってくれている」と思っている人もいる。それが本当だとしよう。すると可能性は二つある。一つ目、彼は1~2%の手数料で本気でがんばれる人なのだ。そういう人は根っからサラリーマンに向いていて、ハンティングには適性がないから職業を変えたほうがいい。二つ目、運用会社が羊頭狗肉(モグラやネズミを「大物」のように売ること)をポリシーとしている。日本の老舗の大手金融機関は例外なく後者の商法をやっている。

彼らにきっと悪気はないだろう、なぜなら、経営陣にハンター気質の人は一人もいないからジャングルでどうハンティングが行われているかなど誰も知らない。巨人軍のフロントが誰も野球を知らないのとまったく同じ図式だ。それでも十分利益は出るし、お客に売っているのは結果ではなくて「ブランド品を買っている」という安心感だけである。それでも買ってしまう国民がごまんといる。だからそれが自分たちの「守りの経営」だと信じ、「守りの運用」などと恥ずかしいキャッチコピーが堂々とTVで流されるわけだ。

とんでもない。運用は野球やアメフトではない。「守りながら攻めましょう」ということはリスクを取らずにリターンを得ましょうという意味で、そんなことは全宇宙空間において理論的にあり得ない。もしそんな神業ができるなら、そのファンドマネージャーは自分のお金を運用してあっという間に大富豪になれる。その道を捨てて1~2%の手数料でその能力を生かして銀行や保険会社に就職しようという人を探し出すことは、30億円くれる巨人に移籍するかどうか迷っていた広島カープの丸選手をクラブチームに来ませんかと勧誘するよりも難しいことだろう。

日本人はブランド好きで老舗や大手の羊頭狗肉に騙される傾向が強い国民だ。たしかに獲物はジャングルにいるし、そこは生き馬の目を抜く危険な場所なのだ。しかし、ハンターはいわれなくてもそもそもライオンに食われたりしない。そんな人はハンターになれないし、資質もないし、なろうとも思わないのだ。ところがそのことは生まれつきハンターではない性質の99%の人には理解できないし、この洞察は僕だって証券会社で育って途中で銀行系に移籍したからわかったことだ。

新人時代にタバコ屋のおばちゃんに日立の株をすすめたら「で、にいちゃんは何株買うの?」と返された。立派な質問であった。世界に出てみるとまともな運用者はみなおばちゃんと同じ質問を想定して、自分で自分のファンドに投資している。その質問がいかに的を得ているかを示している。日本ではその質問を僕にしたのは40年間であの大阪のおばちゃんだけであったというのは危惧すべきことだ。丸選手はお金でなく男気で広島カープに残ってくれるだろう、信じてるよ、マルちゃん!という気質のまま、そういうほっこりしたゆるキャラみたいな情緒でもって、水と油である運用の世界に足を踏み入れてしまう人が国民のほとんどだということを示しているからだ。

高邁な理論なんか使わなくても真理は誰でもわかるシンプルなものだし、それにシンプルな解答を用意できるのが真のプロだと信じる。そもそも僕は部下が「がんばります」というと「がんばらなくていいよ、結果だけだしてね」という人間だ。プロ野球選手は去年の実績やら毎日素振り千回してますとかはぜんぜんどうでもいい。「わかったから、結果だけだしてね」だ。あたりまえだ、僕らは学者や評論家やセラピストじゃない。プロの評価は、結果だけなのである。結果は数字だ。あたりまえだ、結果とは利益であり、利益は数字だ。自らに利益が出たのにお客さんが損しているという企業はいずれ必ず滅びる。お客さんと利益を一致させるのが「自分が買わない株はすすめません」という経営だ。

 

ソナー・メンバーズ・クラブのHPは http://sonarmc.com/wordpress/ をクリックして下さい。

Categories:ソナーの仕事について, 若者に教えたいこと

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