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「ドクターX~外科医・大門未知子」を見る

2020 JAN 14 21:21:12 pm by 東 賢太郎

正月にかけて「ドクターX~外科医・大門未知子」をシリーズ1~6全部見てしまった。このドラマ、世代によって楽しみ方は色々だろうけれど、僕の場合、サラリーマンの「あるある」劇として抜群に面白かった。

あくまで自分の育った東京の周囲の話だが、僕ら昭和30年代生まれから見るとお兄ちゃん世代の20年代生まれはちょっと雰囲気が違っていた。団塊世代をピークに人口が多いものだから恋愛も受験も出世も競争が熾烈である。戦後の息吹が残っていて良くも悪くも過激で闘争的で喧嘩早く、政治に怒り社会に怒り学生運動に命までかける。あるいは反対に無責任のスーダラ節で、他人のふんどしで楽すりゃいい派もわんさかいる。

かたや我々は非闘争的でアメリカンに憧れ、ずっと享楽的で目がぎらついていない。泥臭い兄貴世代みたいになりたくないが、ノンポリで信念もないから上の世代を見ながらうまく生きていきゃいいやであった。しかしサラリーマンになるとそう甘くはなかった。ばりばりの20年代組であり数が多い昭和49年入社あたりを中心に多士済々の個性派ぞろいである。誰に愛い奴と思われるか、誰の派閥につくかで出世が決まる壮絶な御意!御意!レースがそこかしこで展開されており、不肖ワタクシもそのゲームの役者を演じていたわけだ。

その景色はきっといまも変わらない。しかし、戦争というファクターが間近にあった昭和20年、30年の断層ともいえるギャップはちょっと特別だった。お気楽な僕ら30年組は、まじめ至極で何やら異様にツッパってギラついてるお兄ちゃん方のすべったころんだのサラリーマン喜劇を、なかば火星人を見るような目で眺めるところがあった。ドクターXの主役は大門未知子だが、彼女は東帝大学病院医局を舞台に盛大に展開されるそのサラリーマン喜劇によって殺されかねない患者を危機一髪で救うスーパーマン、月光仮面の役なのだ。それが非正規雇用の女性だというのが今様バージョンだが、パターンは古典的な勧善懲悪ものだ。無論、医療の本旨から外れた喜劇が「悪」であり真実なら由々しきことだが、それを正面から重く暗く扱った「白い巨塔」が昭和20年代型のドラマなら、ドクターXはそれをパロディ化した30年代型の進化したドラマだ。

何といってもいちばん好きなのは蛭間院長(西田敏行)である。あの昭和20年代組サラリーマンの御意!派を象徴する権威・権力大好き人間のにおいがプンプンするではないか。仕事はできず日和見のいい加減派なのに出世欲は満点で、権力者への心にもない絶妙の口だけヨイショと、人とも思わぬ部下へのおどしすかしの間が妙に良くて出世してしまうが上からも下からも軽くて滑稽な存在である。セリフを読む感じは一切なく全部アドリブかと思うほどその味が自然体で出ていて、あるある、いたいた、で腹を抱えて爆笑してしまう。あの演技は人生経験からにじみ出たものだろうが他の役者が薄っぺらく見える。実に凄いと思う。

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