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ビートルズを歌っていたころ

2023 DEC 19 8:08:13 am by 東 賢太郎

開店当時の玉川高島屋

父は僕が音楽をするのにあまり賛成でなく、小学校のころ最初に買ってもらった楽器はウクレレだった。それでも嬉しかったのはベンチャーズをまねるためだが低音が出ないからぜんぜん飽きたらない。せがんでやっとギターを買ってもらったが、欲しかったエレキはだめでクラシックだ。ピックでがんがん弾くと弦がむけてしまい、安物で調弦もすぐ狂う。まともなのを手に入れたのは1969年にオープンしたばかりの玉川高島屋の楽器店で、当時の家があった鶴川から母が運転する車で橋を渡ってきたのをはっきりと覚えている。5万円ぐらいのを父がぽんと買ってくれたのはおそらく1970年、高校の入学祝いだったのだろう、嬉しかった。こんなにいい音がするものかと天にも昇るようで、このギターを僕は今も手元に置いている。

あのころ片っ端から弾いたのはビートルズだ。ベンチャーズにはない新奇なコード進行に血眼になった。アメリカではよくパーティーをしていろんな国の学友が家に来た。人気があったのは僕でなく家内の方で、みんなチョンガーだから手料理も目当てである。インド人に本格レシピを教わったカレーなど大人気で、みんな満腹で酔っぱらって盛り上がると、リクエストで当時習っていたチェロを弾かされた。へたくそ!となりこれはだめだ、ええい、こっちでいくぞとそのギターを取り出してハード・デイズ・ナイト、イエスタディ、ヘルプを一気にかますとこいつは大うけだ。

先日、第九を聴いていて終わりに近づいてくると涙が出てきた。あれ、なんだろう?と思ったが、佐渡裕氏は第九を「200回振っても飽きない、いい曲だから」と語っていた。そういうことか。何度きいても本当にいい曲でいろんなものが脳裏によみがえってくる。ビートルズもそうなのだ。このビデオ、All My Lovingを老ポール・マッカートニーが歌うと男性が泣いている。わかる。

さっき大好きなPenny Laneを弾いてみて、こいつもまた桁外れにいい曲だ。ロ長調だからギターで弾きにくいが、なんとイ長調に奇想天外な転調をするのがたまらない。これがまた自然で、いまさらながら驚くしかない。

The Long and Winding Road。たった3分ちょっとでこんなに心を揺さぶる音楽があろうか?

ポールのピアノはあんまりかわらない気もするが、でもこうは逆立ちしても弾けない。弾き語りしたいが、彼の歌を真似るのは到底無理だ。楽譜が読み書きできないと自分で語っているが、どうしてどうしてピアノのコードはいい音を拾ってる。サビの入りのバスをドミナントのシ♭にするなどセンスの塊で、真に天才的な作曲家だ。

思えば彼がこれを作曲していたのが1970年あたり、ギターを高島屋で買ってもらったころだ。ビートルズとともに生きていた世代であることをちょっと誇らしく思ってしまう。

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