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上海元旦記

2014 FEB 3 2:02:01 am by 東 賢太郎

unnamed (38)1月31日元旦は朝9時に集合でしたが、まずルネッサンスホテルのロビーで獅子舞?が始まりました。太鼓の音がとどろきます。昨夜は午前零時の花火と爆竹にはじまり、明けがたの連発の破裂音がすさまじくて目が覚めてしまい、結局かなり寝不足の朝となっておりました。たぶん我が国の獅子舞もここから来たんだろうと思いつつ外に出ました。

 

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ところがさすがに元旦だけあってショッピングモールは9:30になってもほぼ全休。写真のような有様で上海とは思えぬ閑散ぶりです。こういう光景はなかなか見られません。それでもちゃんとスタバだけは開いていて、コーヒーとクロワッサンにありつくことができました。

 

unnamed (39)まずは水郷の街、七宝古鎮に行きました。上海の観光地というとここと豫園でしょう。神山先生いわく、みんな行くところがないからここへ来る。物凄い人でした。車は路地に滅茶苦茶に駐車していて、渋滞で止まっていたら対向車線に無理に並んできた車がサイドunnamed (40)ミラーをぶつけました。どうせ対向車とお見合いになって下がるだけなのに。しかし当てた方も当てられた我が方運転手リュウさんも我関せず。おおらかなものです。日本人とは根本的にメンタリティーが違いますね。右が七宝老街の入口のあたりです。やがてリュウさんが合流しましたがいったいどこに駐車してきたんだろう?まったく謎です。昨日とは一転してスモッグはあまりない晴天でジャケットを着ているとやや暑いぐらいの気温でした。親子連れが多く日本でいうと初詣の景色でしょうか。unnamed (36)水郷は川の両側に広がっていて橋のたもとに食事処がたくさんあります。お昼前でお腹もすいています。そこに入る前に神山先生が左の店でお正月用のお餅をおみやげに買いました。とことんローカルにやろうということです。ただ彼も日本へ行ってから中国のお正月は20年以上ご無沙汰だったそうで懐かしかったのでしょう。屋台のおばちゃんからは不思議なものも買ってくれましたが、ひと目見て奇怪な虫と思いました。そうではなくて、名前は忘れましたが何か川辺unnamed (34)の植物の根っこのようで、固い殻を割って中身を出すと栗のようなほっこりした味がします。意外においしい。この時期しかないそうで貴重なので家に持って帰れと言われましたが迷いました。日本人だけでこれを食べることはまずないだろうと持って帰ると、これも意外に家ではけっこう好評でした。食に対する中国人の執念はいつも感嘆しますが、なんでもおいしくしてしまう技術は世界に冠たるものですね。さて食事処に入るとまずさっき買unnamed (35)ったお餅を蒸してもらったのが出てきました(下)。4-5種類あって少しづつ味が違います。お店に並んでたのは左のようなものです。食感は日本のお餅ほどねばりがなく、桃の節句の菱餅に近い感じです。アンコ入りのが特に好きでした。それから出てきた卵と鳥だしのスープ、チャーハン(下)は絶品。何の奇もてらっていないのにシンプル、簡素で驚くほどおいしい。中華の美食というとゲテモノ食いのイメージもあるunnamed (33)のですが、こういう美味の王道を行く味があるので本当に深いものです。毎度野球ですいませんが好投手は軽くキャッチボールしてもタマが伸びてミットをパーンとはじく音が鳴る。このチャーハンはそういう感じですね。日本で一度も食べたことがない水準です。そういう投手が全力で投げたら、もう凄い球が行くわけですね。参りました。これは薄皮のギョーザみたいなものですunnamed (32)がいい食感です(右の左側)。右側のはイタリアンの「ニョッキ」みたいな歯触りのお餅であり、これを長く引き伸ばすと麺になって、それが中東から西側に伝わってパスタになっていったというのは納得のいくお味です。同じ東洋人として我々も中国文明には誇りを持っていい、世界規模で考えればそれに違和感を持つ必要は毛頭ないと思うのです。

unnamed (31)店は天香楼でした。上海料理というと僕は香港時代に江蘇省浙江省の同郷会というのに入れてもらっていて、メンバーオンリーの両省出身財界人専門の料理店で食べることを許されていました。上海ガニは特級品だし両省の料理はほぼ食べつくして(これを一般に上海料理という)詳しいほうです。しかしここの庶民料理もとても口に合います。我が国でいう中華はだいたいが広東料理ですが日本人unnamed (30)の舌に合うのはむしろ上海料理ではないかと思います。店を出て右へ向かうと橋がかかっており、そこから川を望みます。せり出しているのは全部料理店ですね。こうやって眼下に水を眺めながら食事をする風情はどこか京都を思い出します。それはいいんですが料理にも出てきた「臭豆腐」というものがあります。豆腐を発酵させたもので各地にあり、くさやも鮒ずしもOKの僕としては何でもないunnamed (41)のですがどうもここ七宝のだけはちょっと難物です。一応出たものはいただきましたがこれを焼くニオイが橋を渡っていると臭ってきて、美しい景色を忘れてしまうという感じはございました。納豆みたいなものという人がいましたが強烈さでその比ではありませんね。これと韓国料理のエイの燻製(きついアンモニア臭あり)だけは敬遠です。ただ地元の人は大好きで先生も全部平らげてしまいました。unnamed (29)ここからしばらく細い路地を入っていきます(左)。すごい人であり人並みごとゆっくりゆっくり進んでいくしかありません。50mほど続きますが両側は全部食べ物屋さんで臭豆腐をはじめ、鶏や鴨のバーベキュー(頭だけ足だけなど)、うずらの丸焼き、鶏・うずら・アヒルの卵、数々の野菜の漬物、餅、麺、果物、菓子、いちご飴などなど、この街が宋の時代にできた1000年前からこのままだったのではと思わせるような品々が並んでいます。古代の浅草仲見世通りという感じでしょうか。これは実に楽しかった。次回はここで「買い食い」したいなと思いました。中国人は貧しかったのですが、これを見ると食に関する限り世界でも有数のクオリティ・オブ・ライフを謳歌していたのだと実unnamed (28)感します。肥沃な長江流域は特にそうでしょう。これだけの人口を養うほど食料はあるわけで、しかも素食ながら実にうまく料理して楽しんでいる。13億人を統治するシステムの根底にあるのはこの「食の満足」が大きいのではと真面目に考えてしまいます。右は紋身(刺青)屋ですね。本当に彫るみたいです。日本と同じような筋の人が客なのかよく知りませんが2件ありました。それなりに需要があるんでしょうね。食と刺青。七宝はなんとも不思議な街ですが中国の精神文化の深い部分に触れたような感じがいたします。やはり、自らが足で歩き、見て、聞いて、触れ、食べ、嗅いで五感で味わった物だけが本当の理解となると僕は信じます。書物や映画では一面的になりまunnamed (42)す。さて現地から書きましたが夕食は昨晩の爆竹で自社ビルを火事にしてしまった料理屋(左)で7人で食べました。先生の客人に江さんという上海市文部省で小中学校を管轄する高官がおられ、楽しく過ごしました。しかしこれだけ失火で焼いても営業できるというのがそもそも考えられません。爆竹は邪気を払うものらしく昔は家の中でもやったそうで、その煙を吸い込むと縁起がいいというのだから役所も大目に見るんでしょうか。料理はこれまたすばらしく、前日に頂いた政治家御用達レベルであろう高級料理とはまた違った良さがありました。こういう美食を丸テーブルを囲んでつつきあえば、皆が幸福感に満ちてきて、仮にどんな憎しみがあっても当座はそれが消えて手を握る気になってくるという大きな効果があると思います。丸いのが上下を感じなくていいです。中国人の知恵ですね。それで思い出しますが、ユーロが成立した欧州で、フランクフルトに欧州中央銀行ができた時です。テーブルは議長が中央になるのでなく、丸テーブルにしたそうです。

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最後に、この日を終えてホテルに戻る途中でどうしても爆竹を試したくなりました。香港時代も音だけ聞いていて長年の好奇心と遊び心が満たされていなかったのです。道端のテントでこういう風に売っています。

 

 

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花火はこういう感じですね。けっこう重くて大きい。爆竹1000発で800円ぐらいなのでそれをすぐ目の前で「実射」しようということになりました。

 

 

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道路にこうやってヘビみたいに横たえます。東京で昔2Bという爆竹がありました。小学校の帰りにいつも吠えついてうるさい近所のスピッツの犬小屋に5本ぐらい投げ込んでやったりしました。あれぐらいの太さで長さ5cmぐらいのが並列でこの長さに1000個並んでいるわけですから迫力満点。血が騒ぎました。

 

 

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実射の図です。音は機関銃の連射のようで相当威力がありました。これは下手すれば火事になるでしょう。花火も日本の市販のような子供だましではなさそうです。やることは豪快ですね。しかしこれだけでもスモッグはかなり出るだろうなあと他人事ながら心配になった元旦でありました。

 

Categories:______海外出張記, 徒然に

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