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カテゴリー: 若者に教えたいこと

パー券の買付はいたしません

2023 DEC 21 10:10:58 am by 東 賢太郎

起業したてのころ、国会議員のパー券を一度だけ買ったことがある。受付で現金2万円を支払うと大き目の印刷した領収書をくれる。いかにも「経費で落とせますよ」という風情だった。なるほどと合点したが確定申告で落とすのを忘れた。見たことも聞いたこともないその男を支援していた男に頼まれ、まあ覗いてみるかぐらいの好奇心だった。そいつのスピーチのあまりのくだらなさにあきれ、こういうものは金輪際近づかないと決めた。

ということで昨今も国会議員に紹介されて会うぐらいのことはあるが、初対面のあいさつで必ず「パー券の買付はいたしません」と告げる。僕のビジネスで政治力やロビーイングが効くことはない。それ狙いでへこへこ寄ってくるような奴等と一緒にされるのも不愉快であるし、逆に僕は「株は買いません」と言われたら二度と会わないからそう言い切ってしまった方がお互いわかりやすい。政治家のビジネス経験というと、だいたいがかけだしのサラリーマン程度である。だから僕の商売を説明してもほぼわからず、ほとんどがそれでおしまいだ。

それでも、見込みあるなと思う人は何人かお会いした。僕は人を管理するのもされるのも嫌いだから政治家になろうと思ったことはない。管理者がいないと社会はもたないから誰かにしてもらう必要はあるので有能な管理者を応援する気持ちはある。政治家とは何か。志がある人だ。志は何であってもいいが、それが国民の琴線にふれるなら票が集まり、現金をばらまかなくても当選するだろう。政治は就職でも金儲けでもなく志に奉仕できる資質の人、国民の願いをかなえるモチベーションのある人の天職なのだ。僕にはその資質がないからお願いするのであり、敬意も払うし、税金も払うのである。

しかるに、総理になってやりたいのは人事ですという人が、中学生に「なぜ総理大臣になりたかったのですか?」ときかれ「一番権限の大きい人だから」と答えるブレのなさは見事ではある。しかし「機長になったのは一番権限が大きいからです」というパイロットが操縦する飛行機に乗りたい人はあまりいないだろう。日本国は目下そういう状態だ。入社試験の志望動機に「社長になりたいから」と答えるような自爆もので、もし社長が言ったなら株価大暴落だ。現にそういう資質の人がホールディンカンパニー制導入で多くの大企業のトップに立ってしまい、世界で日本だけ株が下がり続ける「失われた30年」を演出したのである。

岸田政権は支持率0%になっても続くと以前の稿に書いた。理由も皆さんが書いちゃって大丈夫ですかと心配してくれたほどはっきりと書いた。そうなりつつあるのはそこに書いた理由が正しい証明だ。それでも続けられる岸田氏の鈍感力は畏敬に値し、かような打たれ強さは定常的パフォーマンスを求められる公務員の大事な資質だ。僕には無理。以前、ある立派なNPO法人のトップをどうかという身に余る光栄なお話を頂いたがその場で辞退させていただいた。「すみません、競争して儲ける仕事じゃないとモチベーションが出ないんです」と理由を正直にお伝えした。狩猟民族なんですねとご理解いただいたが、民族というより猫であり、モチベーションをコントロールする能力はゼロに近い。引き受けたら100%ご迷惑をかけることが見えているからである。

パー券を買ってからいろんなことがあった。

 

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次期総理大臣を物理学で推理する

2023 NOV 28 11:11:32 am by 東 賢太郎

我々の宇宙は「できすぎ君」である。素粒子(ヒッグズ)の構造をちょっと変えると、我々の宇宙で百何十種類もあって様々な元素を作っているすべての原子核が1種類になってしまう。だから生物はできない。

(このビデオの4分あたりからご覧ください)。

ということは、素粒子の構造を、

➀「特殊な値に設定した創造主が存在する」

または

➁「我々生物は特殊な値があるから存在しているのだから、すべての生物は観測したら必ず特殊な値を発見する」

のどちらかしかない。多くの物理学者は➀ではなく「宇宙は無数に存在するのだ」として➁を採る。しかし、科学として➀であることも可能である。ニック・ボストロム教授(オックスフォード)の「シミュレーション仮説」がそれで、イーロン・マスク氏はこの世界が仮想空間でない確率は数十億分の一と語り、ホーキング博士も同様の理論を展開している。

http://イーロン・マスク氏が「人類はコンピューター … – GIGAZINE

僕は創造主を認める➀派である。つまり、

宇宙は、何者かの意思によって、存在する

と考えている。「何者か」を「神」に置き換えれば一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)と原理的に同じだが、僕は「何者か」は知的生命体だと確信しており、バッハの音楽を愛しながらも父祖の国の日本を身びいきする。

物理の話から書いたのは、「社会に出てサイン・コサイン見たことあるか?」なんて人が総理になる国だからだ。僕も社会で見たことはないが、数学は思考回路を掘るために学ぶ。運河といっしょで掘らないと絶対にできない。ない人は運河に水が流れないから話すと1分でわかる。思考に限界がある人に話しても意味ない物が何かがわかる。総理は社会に出る前からサイン・コサインをやってないからそういう言葉が出る。

では運河に水を流すと何かいいことあるのか?ある。

冒頭の野村教授の思考法(回路)に政治を代入する(水を流す)と、岸田政権のドタバタから次の総理は誰かまで推理できる。それが以下だ。

日本国の政治はどうしてこんなに米国隷従になってしまったんだろう?その理由は何だろう?

➀「岸田総理が弱い」

または

➁「隷従しないと総理になれないから総理は誰でも弱く見える」

のどちらかしかない。世論は①ということになっている(=岸田政権の支持率急落)がそうではない。➁が真相である。隷従は構造的であり誰が総理になってもポチになり、ならなければ切られると考えた方が説明力がある。簡単にいえば、日本の総理大臣はアメリカが決めているのである。

これで理由は分かった。ではその理由に添って次の総理になりそうな人は誰だろう?ここからは推理だ。

米国(バイデン政権)は岸田氏を脅して日本を支配する作戦だったが氏の能力の限界を知った。そこで全メディアを動員して上川陽子氏を推す。理由は二つある。第一にキリスト教徒でハーバードで民主党幹部とツーカーである(一人で済むから岸田+木原よりベター)、第二に「初の女性総理」のセールストークで国民の目くらましができるからである。自民党議員は自分の選挙のために是非もなくそれに乗る(LGBT強行採決とおんなじ)。上川氏になると岸田政権以上に隷従(43兆円の防衛増税、ウクライナ復興への数十兆円の支援金拠出)が強力に推進、可決され、財務省にも好都合であり、その巨大な戦果をバイデン陣営は来年11月の大統領選挙キャンペーンに使う。米国が信用してない野党は消費減税反対と米国に媚を売るしかなく、それでますます国民人気が落ちてますます米国の信用がなくなる。つまり詰んでいる。新党が候補者を多く立てて自民の牙城に革命的侵略でもしない限り、総選挙で選択肢のない日本国民も詰んでいる。米国はいい将棋を打っている。

以上は東京裁判の失態(外務省)、サンフランシスコ条約の失態(吉田茂)、日航123便墜落(泥をかぶってもらう)に起因したと思われる岩盤に近い構造的原因から発した因果である。したがって、国内政局のすべったころんだなど何の関係もないが、政治家、メディアはそれで飯を食ってるのでうわべだけのあれこれの騒動が来年の予算成立まである。トランプさんに期待するしかないというのも別の意味で隷従。困ったもんだ。

 

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日本人に砒素のように効くLGBT法

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日本人に砒素のように効くLGBT法

2023 NOV 24 2:02:08 am by 東 賢太郎

(1)日本人が知らない日本の素晴らしさ

日本っていいな。23年前に帰国して、いの一番にそう思った。懐かしいとか日本語が通じるというようなことではない。16年も外国で暮らし40数カ国も行ったりすると、いわば “日本なし” で生きるプロフェッショナルになっている。そしてその感覚のまんま帰国する。するとまるでおとぎの国だ。楽で安全で清潔で、人は親切で優しいし、日本人が日本人のために日本人らしく生活できるように万事が緻密に設計され、施工され、心がゆき届いているのである。そんなことはない、日本はせちがらくてチマチマして住みにくい等の声もあろうが、そう思う方は欧米に1年でいいから住まれてたみたらいい。旅行や出張に何十回行こうとわからないことだと思う。

そう感じたのは帰国してすぐの、ほんの1,2か月のことで、やがて徐々に従来の感覚に戻った。すると、逆に何を驚いていたんだろうというこれまた経験のない感じがやって来た。当たり前だった大事なものがあることを失ってみて気づき、帰国してますますありがたみを悟ったのだが、こういうルートをたどってみるとそのありがたみは半端ではなかった。そんな国の国民でいられることは奇跡のように幸せだとさえ思っている自分がいて、そういう発言をするたびに「おまえ、前より右寄りになったな、珍しい奴だ」と周囲に言われた。米国の野球が大好きで、欧州のクラシックも好きだ、バリバリにガイジンになって帰って来ると思われていた。まあ仕方ないが僕にはそういうものより父祖の地の方が大事、そういう人間に生まれているようだ。

(2)赤信号みんなで渡れば怖くない

異様に感じた例の代表がこれだ。渋谷スクランブルの北隣りのT字路でのこと、欧米だとあの程度の道は自己責任でどんどん渡る。ところが明らかにクルマが来ないのに、歩道からあふれかえるほど堰き止められた両サイドの大群衆が誰一人身動きもせず1分も青信号を待つ。ルールを守らなそうな風体のお兄ちゃんも渡らない。凄い!これは道交法違反がどうのではない、日本は良くも悪くもそういう文化なのであって、交通安全には良いことだけど、悪い方をいうなら付和雷同、同調圧力、サービス残業、いじめ、根回しなどのルーツがみんなそこにあるんだなと思った。「赤信号みんなで渡れば怖くない」は、いみじくも、ビートたけしが鋭いセンスで日本文化の深層をえぐりだしたギャグだった。

(3)法律は文化の産物である

そうした経験をたくさん味わって、日本文化のどういう所が欧米人に異質なのかということを学んだ。それを皆さんにどう説明するかだが、英米法は「違法でなければやっていいが原則」ということをご理解いただくのが速いだろう。例えば、いま話題のトランプ元大統領だ。彼は数々の罪状で起訴されていて、すべてに有罪判決が出ると最大で懲役700年ごえになる。ところが、それでも来年の大統領選に立候補でき、当選すれば獄中から執務できる。我々の感覚ではそんな馬鹿なだが、禁じる法律がないからできる。これが英米法。日本には公職選挙法の公民権停止規定があるから立候補もできない。しかし、ここが大事だが、その法律があるからできないのではない。国民的に「そりゃないよね」と考える文化が法律になっている。それが先にあり、だからできないのだ。

つまり日本には「法律万能ではない」「違法でなければいいわけではない」という強固な文化がある。例えば違法薬物の成分を変えれば合法になるが、それでも悪い奴らだとなるのが日本文化だ。「不敬罪」は敗戦後になくなったが、だから皇室を侮辱してよいとはならないのは皇室をありがたいと思うのが文化だからだ。それは島国の地の利で2千年かけて純粋培養され、日本を日本たらしめてきた世界に誇る立派なもので、それこそが僕が「こんな国の国民でいられることは奇跡のように幸せだ」と感じたすべての物事を産んだ母胎である。こういうものは、堂々と主張しさえすれば、好き好きなど関係なく問答無用でユニバーサルに評価される。逆にそうしなければ、容易に外国に蹂躙され、消される。日本人が文化を忘れ、あるいは堂々と主張せず、英米法基準のアタマになって憲法を改正すれば天皇制だってなくしてしまうことができる。日本をステルス的に植民地にしたい外国はそれを狙うのである。

法律は大多数の日本国民にとってはおかみから降ってくる江戸時代のお触書のようなものかもしれない。しかし、おかみにそうした横暴を許さぬ仕組みこそが民主主義国家であり、だから法律はおかみではなく国民が送りこんだ代表が国会で作る。文化を形成するのはおかみではなく国民だ、よって、法律は文化の産物なのである。ということは、日本古来からの文化が否定されて廃れてしまえば、僕が「こんな国の国民でいられることは奇跡のように幸せだ」と感じたすべての物事は法律によって次々と消されていくだろう。消えるのではない、”何者か” によって消されるのだ。文化の否定は国の否定であり、したがって、それに組するような者を国会に送りこむなど言語道断である。不吉な予感だが、そうならないことを心から願って本稿を書いている。

(4)宗教はすべての対立の源

なぜ消されるのか? 世界覇権を握る米国、欧州を支配しているのが一神教徒だからだ。旧約聖書を源とするユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つがそれで、世界人口80億人のうち約52億人がその信者だ。一神=オンリーワンゆえ、数学と同様に答えは一つで他のすべては確定的に不正解だ。疑問、妥協の入る余地は皆無である。多神教は一神教の存在を認めるが、その逆はない。欧米列強の植民地支配、インカ帝国・米豪先住民の抹殺、未遂に終わったアヘン戦争、黒船襲来、ぜんぶその結末だ。

神の唯一性をめぐってさらにその3つが互いに争った。世界史とは西洋人が書いたその領地の分捕りあいと殺し合いの地球史のことであり、パレスチナ問題は言うに及ばず、十字軍も、ナチスの大量虐殺も、スターリンのそれも、米ソ冷戦もそれだ。もしウクライナやイスラエルで核戦争がおき、第3次世界大戦となって人類が滅亡したならばどうなるか。火星には太古に栄えた文明があったが核戦争で滅びたとする学説があるが、地球も結局はそれに学ばず同じ運命を辿ったんだねと別な惑星の住人が何万年後かに遺跡を発見するだろう。

皆さん黒船来襲を習った時、開国を迫る米国に余計なお世話だと感じなかったろうか。なぜなんだ、身勝手じゃないかという声に、しかし答えはない。一神教徒はそういうものだからだ。理由が水の補給とか鯨油めあてとか習った記憶があるが、そんな甘ちょろい性善説なわけねえだろ馬鹿じゃねえのという、そんなことを学校は教えてたのだ。日本の絵本では熊さんは優しく笑っていてパンダさんの親戚でもある。熊が人を殺して食っても、撃ち殺したら可哀想だとなる。当時アジアに来た外国船はみな飢えた熊みたいなものだ。英国にアヘン戦争を仕掛けられて莫大な賠償金を取られ香港を割譲させられた清国。スペイン、アメリカに蹂躙、虐殺の末に征服されたフィリピン。日本人がそうした運命にならなかったのは武士が強くて賢く、それがペリーへの抑止力になったからだ。260年の鎖国で異国との戦争経験がなかったにもかかわらず、申しわけないが、我が国の武士は近隣の如何なる国の軍隊より強くインテリジェンスがあった証明だ。

僕はローマとシチリアとチュニスの地に立ってみて、いつもポエニ戦争のことを想った。2千年ちょっと前、地中海に栄えたカルタゴは軍事、経済で強国だったが、ローマとの2度の戦争に敗れて劣勢になり、自衛戦争しかできない条約を強制される。やがて攻めてきた隣国に自衛として応戦すると、条約違反だと言い掛かりをつけたローマに滅ぼされ、国民は全員が殺されるか奴隷にされた。いまの日本vs米国の立ち位置はカルタゴvsローマとそっくりだ。まして日本は多神教国だ。一神教国とどう対峙し共存できるのか、同じ問題を共有する中国とどう向き合ったらよいのか。歴史観も国家観も知性もない人間をのんびりと総理大臣に据えていると、2千年後の教科書に日本が記載されているかどうかも危ないという喫緊の事態に我々は直面している。

(5)香港のゴルフ場で目撃した驚くべきもの

チュニスで感じた以上の危機感を生々しくしく懐いたのは、香港のゴルフ場で “あるもの” を目にした時だ。着任してすぐ、1889年開業とアジア最古の名門ゴルフクラブであるファンリン(香港高爾夫球会)の会員になって初めてプレーした。前半の谷越えのロングホールである。高台のティーグラウンド脇に養鶏小屋があり、鳥インフルが流行っていたので気になってそっちを見た。すると、自分が立っている高台のふもとの土くれから横倒しになった石板がのぞいている。墓石だった。アヘン戦争の末に英国人が中国人の墓地を潰して遊技場にしていたのである。

当時、英国の手先だったのがもと東インド会社であるジャーディン・マセソン商会だ。その長崎支店長がグラバー邸のトーマス・グラバーであり横浜支店長だったウィリアム・ケズィックは調べると1834年生まれである。我が先祖の田中平八はタメ年齢のこの男と生糸貿易をしたに相違ない。そしてこの男が「長州ファイブ」と呼ばれる伊藤博文、井上馨ら長州藩の若者5人をロンドンに派遣し、1866年に薩摩と同盟を結ぶとグラバーから買った新兵器で倒幕に成功する。

長州ファイブは渡欧途中にアヘン戦争でぼろぼろにされた清国の惨状を目の当たりにしている。何を見たかは知らないが、僕がゴルフ場の墓石を目撃したようなノックアウト級の衝撃を食らったことは想像に難くない。幸いなのは彼らは武士として筋金入りの教育を受けていたことだ。英国に取り入って幕府にテロを仕掛けながら植民地化を絶対許さない鉄の意志で諸外国をうまくあしらい、迅速に国体を造り上げるべく手を打った。みな30才そこそこの若者だ。米国のポチになるどころか、いいトシこいてポチのポストを争って日本を売り飛ばす当代の政治家どもは国の汚辱にしか見えない。

伊藤が新政府の初代首相、井上が外務大臣となったのは周知のことだが明治の元勲はほとんどがその後に命を落としている。国を守る政治家とはそういうもので組閣ごっこをするメンタルの者は論外以前に国害でしかない。墨田区の木母寺には伊藤が平八の追悼に建ててくれた「天下之糸平」の巨大な石碑がある。感謝している。それとはまったく関係ないが祖父はジャーディンの本拠があった上海の三井物産支店長であり、その妻となった旧姓真崎の祖母はグラバー邸隣りの旅館の娘だ。そして孫は野村香港の社長になった。偶然かもしれないが、人生を自分で決めているのではないと信じるようになったのはこの頃からだ。

(6)日本人であることの条件

僕がキリスト教ぎらいではないのは長年ブログにおつき合い下さっている方々はご存じだ。英国のヨーク大聖堂の巨大な空間の中を息子と歩いていて、ふと、改宗してここに一生いてもいいなあと思いもよらぬ気持に襲われたほどだ。それでいながら、信仰心とは無縁のところで僕は根っからの日本人である。何ゆえか?仏教でも神道でも如何なる宗教による信心でもなく、日本という2千年の時が紡いできた類まれな国柄、文化、習俗の肌触りが抜き差しがたく自己に同化していてその存在に感謝するという性質のものだからだ。

それは愛国心ともちがう。日本がどういう国かは一概に表現できず、愛するのは自分が知っているほんのいちパートに過ぎない。だから愛しているのは国というより父祖がいた土地なのかもしれない。その土地が日本と呼ばれているからの愛国心だ。だから日本人であるか否かはパスポートによって決まるのではなく、日本人である個々人がどう切り取っても一様に共有するであろう国柄、文化、習俗というものが分厚く織りなす生地のようなもの、日本的ではない物事やふるまいに接すると「そりゃないよね~」と思う気持、それを普段着として身に纏っているかどうかということのみが証明するものである。

(7)韓国人の30倍も支配されにくい日本人

ドイツ人はキリスト教徒である。ナチは人類史に稀なる狂気ではあったが、道がどこでどう曲がったかは米国人はわかったはずだ。だが根底から異質な日本人の行動はわからなかった。その結末が核使用による民間人の大虐殺である。それも人類史に稀なる狂気であることを世界に向けて僕らは発信し続ける必要があるが、宗教の違いは憎悪に火がつくと大爆発する危険物であることも強く認識を心掛けるべきだ。ガザ地区で今起きているのもそれである。キリスト教徒はそれを熟知しており、戦後、米国は韓国人を共産主義への防波堤とするため人口の30%をキリスト教化することに成功した。しかし日本人は未だにたったの1%だ。同じ顔に見えるが韓国人の30倍も支配しにくいと思っているだろう。**教会はその一助として韓国から布教すべくCIAが作ったと理解している。

バイデンは「日本国憲法は日本に核を持たせないために作ったんだ、それも知らんのか」とトランプを笑った。そうして日本を「中露北に対抗する武装は永遠に米国まかせ」の身分に置けば核で復讐される脅威は消え、FMS協定で中ヌキまでできる。バイデンを操るネオコン(またはDS、軍産複合体)が太った豚を手放すはずがなく、強調したいからくりかえすが、これはローマがカルタゴを食った手とまったく同じだ。円滑な支配のためには頭にキリスト教徒を置きたいが皇室は難関だった。しかし総理大臣は吉田茂、片山哲、鳩山一郎、大平正芳、細川護熙、麻生太郎、鳩山由紀夫と13%もキリスト教徒にできた。国民(1%)の13倍とは驚くべき高率で、これが偶然とは誰も言えまい。民主党びいきの上川陽子の名前がCIA新聞の読売から唐突に出てきたのはとてもわかりやすい。すでにボロボロの岸田政権を見限った。しかし上川になれば米国隷従の悪夢に拍車がかかるだけだ。

(8)同性愛は文化の一部になる

ネオコンがキリスト教化を進めにくい国を統治するには法律による支配が近道だ。ダイバーシティ(多様化)を押しつけて社会をずたずたに分断すれば日本文化の統一性、均質性は崩壊して米国社会のようになり、英米法的な法律をどんどん作るしか統治のしようがなくなる。それにより思想、思考回路も英米的にすることはキリスト教化と同等の効果が得られるだろう。「神は人間を創造された際,結婚した男女だけが性関係を持つように取り決めた」(創世記 1:27,28。レビ記 18:22。箴言 5:18,19)と聖書にあることから同性愛はユダヤ教でもキリスト教でもイスラム教でも禁止であり、それと人権との関係はそれらを信仰する国においては歴史的社会問題であり続けてきた。一方でL(レズ)、G(ゲイ)、B(バイ)の人々は日本においても昔から存在しており、国民の99%が聖書を信仰しない我々は我々なりの文化と常識をもって対応し、共存してきた。ここに宗教に起因するズレがある。これを埋める強姦に等しい強行策こそLGBT理解推進法の制定であった。

聖書の3つの宗教は近年になって同性愛を認める方向に融和してきたように見えるが、古くは弾圧し、罪人として処刑もしてきた(http://ソドムとゴモラ – Wikipedia)。戒律が禁止するからで、そんなものは存在しない日本と決定的に土台が異なるのである。だから、欧米は市民革命後の人権擁護という思想を戒律の上位に来させるには新たな法律で上書きする必要があった。それがLGBである。仏教では同性愛への言及はなく、日本は古来よりLGBには比較的おおらかな国柄であり、新法で保護する必要があるほど弾圧された歴史も文化もない。

(9)なぜ女湯に「 T 」を禁じる法律がないか

ちなみに我が曽祖父は能登から上京した風呂屋である。神田猿楽町に日本で初めて富士山の絵を描いた銭湯「キカイ湯」を創業し、それが全国に広まったようだ(http://こちら神保町「銭湯特集・その2 キカイ湯 第2回」)。父・東由之助の名は曽祖父・東由松から来ているが、半農半漁の田舎である能登から東京ど真ん中に出てくる冒険精神と楽天性を僕は曽祖父から継いでいる気がする。

そうした脈絡から昨今のLGBTの女風呂問題にはどうしても関心が行ってしまう。江戸時代の銭湯は混浴が当たり前だった。幕府がしばしば風紀が乱れるという理由で禁止令を出したが女性から反対が出たほど日本の性文化はおおらかなものだったようだ。たしかに、この絵の中の男女がLGBTのどれであろうといったい何の問題があろう。

大事な論点だが、混浴文化においてはLGBT理解増進法に問題はなかったろう。ところが明治の初期に西洋文化が移入されて男風呂、女風呂に分かれる。それでもLGBの人は外見の性別どおりに入浴するから問題ない。問題は T (トランスジェンダー)がくっついたことだ。日本文化では外見が男であるT の女性が女湯に入るなどということは想定しておらず、したがってそれを禁じる法律はない。あるのは外見の性別によって事業者や施設の管理権者が入場を断ることはできるという厚労省の衛生等管理要領だけだ。これは通達で法律ではないから違反者を逮捕はできない。

そこで先日の長島温泉の事件では、管理者の通報を受けた警察は「建造物侵入罪」(刑法第130条)という法律で逮捕に踏み切った。しかし、この罪は「不法侵入」が成立の必要条件であるから、侵入が痴漢や盗撮等の「不法な目的」によらない場合は罪に問えない可能性がある。現に侵入者は「心は女性なのに理解できない」と言った。「これを理解増進しろ」という法律は通達より強い。しかも「女が女に痴漢しますか?盗撮しますか?」「LGBT法が成立したので合法と思ったのだから不法でない」と抗弁された場合、「ならば手術して体を女にしてこい」とは言えなくなってしまったのが10月25日の最高裁判決なのだ。これで検察が起訴できるのか?見ものだが、素人なのでコメントは差し控える。

(10)LGBT理解増進法の真の目的

建造物侵入では不起訴になってしまい、「外形が男なら女湯に入れない」という新法が制定されたとしよう。女風呂の安全はそれで守られ、いかにも一件落着に見える。しかし、LGBT法を制定させた者たちにとってそんなことは痛くもかゆくもないのである。変質者を女風呂に入れてあげるのが目的ではないからだ。目的は「違法でなければ何やってもいいってもんじゃない」という、いわば法の上位概念である「日本の常識」の破壊である。連中はそれを「理解増進」(=洗脳)と正直に白状している。つまり、

LGBT理解増進法は、古来より日本文化にある「そりゃないよね~」を欧米流の「違法でないならOK」にじんわりと転換させるための法律である。

だから同法を制定させた責任者である福井県選出の稲田朋美議員は長島温泉の件について「LGBT法とは関係ないようだ」としている。この発言は「他人事のようだ」と批判されているがそうではなく弁護士なりの用意周到なコメントである。直接の関係はない(侵入を助長する意図はない)から嘘ではない。しかし、かような事件が多発することによって「理解増進」(=洗脳)が進行することを「関係ない」と言って放置する “未必の故意” はある。それを指摘された場合の逃げのために「ようだ」を加えていると思われる。

LGBT法の真の目的は、マイノリティの権利を拡張させ、一丸になると強い日本社会を分断によって弱めることだ。要するに、以心伝心で通じ合う日本人に異分子をぶちこんで世の中を面倒くさくし、古来よりの日本文化を壊し、米国に追従し、ひれ伏すようにしたいのである。GHQが終戦後に給食を米からパンにかえて小麦文化を移植し、戦争への贖罪意識を植え付ける教育をしたのもそれ。移民をどんどん入れろという政策もそれだ。さらにLを投入して「言ったもん勝ち」という面倒くさい社会にすれば、それを取り締まるには新しい法律が必要というイタチごっこ状態になる。よって国会議員と弁護士が統治者となり稲田議員は一挙両得であり、ネオコンはそれを工作員に使うのが楽だから彼女は総理の道が開けるのである。

(11)共産主義者の典型的な手法

「英米法的な国」に日本人の思考回路を変えることは一気にはできない。だから徐々に人を殺す砒素のようにじんわりと変える。英米法では認容できてしまうこと、例えば、総理が刑務所から執務することなど想像だにできない日本人の脳に「日本の常識」と「英米の常識」の間の立法精神の断層を作りつけ、それを都合良く使い分けて国会で次のLGBT法のような妙ちくりんな法律を易々と制定させる。国民は気がつかないうちに「合法的」に支配されるステルス兵器だ。これは共産主義者の典型的な手法で、性善説の日本国民が気づくことは難しい。

自民党の数名しか反対しなかったLGBT法の国会決議。皆さんあれを見てどう思われただろう?草案段階で反対の議員は多くいたと、自分は反対もせずしゃあしゃあと弁解する議員がいた。それなら赤信号をみんなで渡ればいいじゃないか。それができないほどだったのだから、何か物凄く怖いものがあったに違いない。それは何だろう?極めて不気味としか書きようもない。ここまで米国民主党に好き放題やられているのだから、そういう日本文化破壊派の総理大臣など言うに及ばず、議員もしくは政党ごと早めに駆逐しないと本当に危険だ。ちなみに稲田議員は「私こそ保守だ」と主張することで、LGBTの “T” の運用例までご親切に示してくれている。即ち、どんなアホが奇天烈なことを言おうが「言ったもん勝ち」ということだ。同法は使い方によってはかように一時のお笑いで世の中を明るくもできるが、廃止するに越したことはない。

しかし我々日本人は世界に稀なる優秀な民族である。精神の侵略に対抗する方法はある。それは実に簡単だ、冒頭に書いたように「日本っていいな」と感じること、それが何でも構わない、「日本に生まれて良かったなあ」と思うものを心から大切にすることだ。同時に、それを大切にして下さる外国人ならば受け入れる寛容な気持ちを持ち、和の心には妙だ、おかしい、嫌だ、不快だと感じるもの、肌合いからして受け入れられないものは決然とNO!とすることだ。千年も前からそれをやってる我が国に高々250年の国が自国の勝手ルールを押しつけるなど無礼千万である。それがダイバーシティ(多様化)の時代に逆行するとされるなら言わば言えだ。逆に問うてあげよう。世界のマイノリティーである日本を認めないのがどうしてダイバーシティなのかねと。

清少納言へのラブレター

自民党の補選3敗に思う

自民党に漂う「オワコン感」の真因を解く

「今だけ金だけ自分だけ」の議員は落とせ

ポジショントークやる奴は例外なくクズ

縁故主義とオンデマンド社会

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大統領選挙のための日本ポチ化計画

2023 NOV 12 20:20:56 pm by 東 賢太郎

ハーバードでまずパレスチナ支援のデモが始まり、アイビーリーグに飛び火している。母校のペン大でもキャンパスで大学側が鎮圧に乗り出して衝突している。ニューヨークではイスラエルのガザ攻撃の反対集会をグランドセントラル駅で挙行して逮捕者が出ている。驚くのはプロテストしているのはユダヤ系市民ということだ。若者はネットで残虐殺人の情報を得ているとされるが、パリではダビデの星の落書き事件もあり不穏な動きがあることも背景のようだ。

かたや老舗のルーズヴェルトホテルが移民収容のため閉鎖されているというのも驚く。トランプが作った壁を壊したのでメキシコから毎日2、3万人流入し、手に負えないテキサス知事はトラックで移送してしまう。地方は白人が多く拒否されるので大都市に10万人も来る。マンハッタンは人口170万だから世田谷区と練馬区に中南米人10万人ということ。想像を絶する。移民はすぐ選挙権を持つ。入国に感謝して民主党に投票する。要は大統領選の対策だ。

米最大手保険会社の知人によるとニューヨークで人が亡くなっている。2020年まで彼の600人の顧客に一人も死亡がなかったが昨年から増え、最近は月ひとりペースで業界では異常値という。コロナではなく癌や心臓疾患だが会社の医師に聞くと「わくわくだ、オフコース」が回答だったそうだ。そういえば2020年に僕に打つなと薦めた人は2年後を見ろと言った。日本の厚労省は「超過死亡は増えてない」としている。一見もっともらしいがすぐばれる賢くないごまかし方である。日本人の死亡数は2022年から激増だ。

いまや「藤江グラフ」は有名だ。

ファイザー社、モデルナ社は何兆円と儲かったはずだが株価はこうだ。

ファイザー株価

モデルナ株価

どう考えてもおかしい。どっかに飛ばして選挙資金になっておかしくない。もう今回はドミニオンの機械のバイデンジャンプじゃ無理。買収しかなかろう。

奥方がバイデンに呼びつけられてから岸田氏のポチぶりに拍車がかかったという説がある。役所も含めて株のドド素人が経済経済経済。物凄く危ない。相手はこんな馬鹿ども騙し放題だと思ってる。ただの業者に過ぎないブラックロックをわけもわかってない外務省が迎賓館おもてなし入れちゃったりする。野党は何やっんだ、お前らも馬鹿の一味か、ちょっとは騒げよ。

自民党に漂う「オワコン感」の真因を解く

キッシー息子くんの楽しい忘年会

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目下の日本は非常に危機的

2023 NOV 10 18:18:11 pm by 東 賢太郎

1980年代、米国は経済覇権を脅かした日本企業の底力に本気で焦った。といっても30代以下の人には信じられないだろうが僕は1982~84年にウォートンスクールにいて教室でそれを体感している。大谷翔平の二刀流は野球の神様ベーブ・ルースを凌駕してしまったが米国人が怒った話はあまり聞かない。しかし、国ごと抜かれそうな勢いとなると笑顔で済ませられる話ではないのであって、その後、米国は円ドルレート切り上げ(1985年、プラザ合意)で対日貿易赤字解消への強烈な反撃を仕掛け、円は対ドルで約6割も高くなってしまった。輸出は大打撃を被ったが、それは逆に日本企業の土地担保借入によるドル建て購買力を6割増幅したということでもあり、米国の象徴であったコロンビア・ピクチャーズ、ロックフェラーセンタービル(左)等を買収するに至り、ついに、1989年に、国家経済力の象徴である株式時価総額で日本国が米国を上回った時、ウォールストリートでは真珠湾に喩える怒りの声さえあった。冗談じゃない、こっちは実力勝負で勝っただけだ。人為的な為替操作の方がよほど汚い、そのしっぺ返しじゃないか、三菱地所、ソニー、よくやったという快哉を叫ぶ気分は尖兵の我々にはあった。しかし、もしも他国が札びらで富士山を買ったらどうか、やり過ぎではないかという一抹の不安もよぎったことはよく覚えている。

米国は本気で焦り、そして怒った。そこで貿易摩擦訴訟に加えてBIS規制による日本の会計の弱点を突いた金融機能締め上げという手が打たれ(父ブッシュ政権)、1997年にサッチャー革命を模した金融ビッグバンなる号砲のもと金融システム改革法制定が強行された。これはFree、Fair、Globalの改革3原則が掲げられたことからも根底から異質だった日本市場を腕づくでこじ開け、米国ルールに従わせ、日系証券(つまり野村)をスキャンダルで崩壊させて米系証券を民営化に関与させる目論見の米国民主党クリントン政権の主導だったことは明らかである。世界最強の野村證券の最前線の指令官のひとりであった僕は当時香港の社長であり、人生で日系他証券を敵と思ったことなど一度もないが、まして米系ゴールドマン、メリル、モルスタなぞ来るなら来い、なんぼのもんだねと歯牙にもかけてなかった。

1990年代の国内は資産バブルがはじけ、野放図な担保金融が逆スパイラルとなって信用破綻連鎖となり上場企業が軒並み倒産しかねないという未曽有の事態だった。長銀、山一が破綻し、橋本内閣は膨大な不良債権処理で実質債務超過の銀行を統合すべく独禁法改正で戦前の純粋持株会社(ホールディングカンパニー)を復活させ、グラス・スティーガル法に基づく銀行・証券の垣根は事実上消えた。この大蔵省(当時)の動きを僕はドイツ、スイス時代に3度来欧された田淵義久前社長から直に聞いて知っていた。1992~2000年という業界受難の時期に海外にいなければ事態の巨視的な視点もなく、7年後に銀行側に移る決断をすることはなかったかもしれないと複雑な気分でもある。野村を裏切る気はなかったが必要とされておらず、必要としてくれたところに行っただけだが。

独禁法改正は金融界のみならず経済界全般に大きな影響をもたらすことになる。ホールディングカンパニーという新たな上位レイヤーにより不良債権処理はもちろん異業種のグループ化、経営責任や信用リスクの分離、財務・人事の分離、M&Aによる合従連衡、営業譲渡、ノンコア切り出し(カーブアウト)など特定部門の利害にとらわれない戦略的決定ができるメリットがあった。ただ、その米国流の制度は資本と経営の分離を組織化したメリットと引き換えに、現場と経営が近い日本的経営の強みを削ぐデメリットもあったことは指摘されるべきだ。ここで日本に仕込まれたのが「株主資本主義」だ。投資家は資本効率を求め、毎期の配当を求める。企業は長期に育てた戦略子会社であれ、目先が不採算であればホールディングカンパニーにより切り捨てられ、口をあけて待っている米系に飲み込まれる素地ができてしまった。

さらに、資本家ではないのだから支配者ではないホールディングカンパニーが、日本的人事風土の中に置かれることにより、配属される役職員の上下関係の色に容易に染まってしまった。現場と離れてニュートラルな判断を可能にする本来のメリットが、現場を知らない者が全社的経営判断を司る場という神棚に祭り上がり、そこのトップが全グループのCEOで、そこへの配属される者がエリートと見做され、必然的に人事・社内政治の達人と学校秀才の巣窟となって現場とは完全に乖離してしまう。これは明治憲法下で陸海軍の最高統帥機関となったあの「大本営」とそっくりで、統帥権のある天皇を資本家(株主総会)に置きかえたに等しい。

このホールディングカンパニーに米国ネオコンが資本を入れ、あるいは経営コンサルをし、それを通して指示、ルールに従わせるためのstrong manとして機能させた。そうすれば日本を代表する大企業グループを簡単に買収したり、民営化させたり、内部からコントロールすることが可能になる。strong manは英国の植民地支配の図式における現地の統治を委ねる現地人の怪力男の意味で、終戦後のCIAによる岸信介(自民党)、正力松太郎(読売新聞)がそれ。ゼレンスキー(ウクライナ)、ネタニエフ(イスラエル)もそれだ。strongの形容は稚拙に見えるが米国とディールして貢献するとThank you for strong support ! なんてくる。お前は俺の怪力男だ、頼むぜと誉めており、評価してカネもくれる。標的の大企業グループにそれを配し、宿主の脳を操る寄生生物のようにコントロールするわけである。構造改革でホールディングカンパニーを「脳」に仕立てれば一ヶ所に寄生すればいいから支配ツールとして最適だった。

かくして、支配される側から見れば、ホールディングカンパニーという箱は仕事は全くできないが社内政治だけうまい人事屋にとって米国ルール(株主資本主義など)を振りかざせば時流に合ったもっともらしい支配権と権威を得られる格好の装置となる。仕事の業績、人望、リーダーシップなど微塵もなく、バブル処理の空気に乗って過去を否定する者、つまり旧来基準における仕事のできない者がわざわざ選ばれるのは、元々出世しそうもない奴の方がコントロールが容易だからだ。人事権を振り回すだけがそういう悲しい者の唯一の権力のよりどころだから、今度はそれに取り入る特技のあるヨイショ野郎が大量にはびこるようになる。寄生虫の寄生虫みたいなものだ。そいつもまた悲しいほど無能なのだが次期社長になって同じことが連綿と続く。現場のまともで仕事ができる者たちはあほらしくてやる気が失せ、リーダーも士気を失って排除され、日本企業を確実に内側から弱体化する巧妙な時限装置がそうして仕掛けられ、作動を始めたのである。各社に激増したそういう無能な社長がどれだけ平成時代の大企業を没落させて米国資本の餌食になってきたか、サラリーマンだった方はお心当たりがあるのではないだろうか。

政治はどうか。経済だけは一流であった日本はバブルの後始末で無為の10年を浪費したとはいえ企業の底力が衰えたわけではなく、政治次第で復活の余地はまだ十分あった。ところが、もとより三流で社会党連立政権まで出現させた政治は頼りになるどころか経済にも増してダッチロールの末に米国の支配下に入り、政治家でないから想像にはなるが、首相官邸がまさしく企業におけるホールディングカンパニーと化したと仮定すると説明力のある展開を見せた。米国が都合の良い総理をコントロールして支配する策略がほぼ定着した、つまり、現在もまったくその延長線上である “ジャパン・ハンドリング” の原型は平成の初頭から橋本政権あたりにかけて、恐らく民主党のクリントン政権(1993~2001年)時代に成立したと思われる。日本国は頭のてっぺんからヨイショ野郎の巣窟と化してめめしく弱っちくなり、じっくり30年かけて茹でガエルにされることで普通の国になり下がったのである。これが政財界を蝕んだ「失われた30年」の正体だ。

9月2日の稿に、こう書いた。

(バイデン政権の支持がバックボーンである)岸田総理は米国のためにいい仕事をすればするほど日本国民のためにはならず、したがって、事の必然として政権支持率が下がる(注・時間と共に、予定調和的に、そうなっていることにどなたもお気づきだろう)。(中略)国民に何を言われようとバイデンからの評価は上がるのだから岸田政権は安泰だ。極論すれば支持率0%になっても選挙まではもつから、総理が再選を諦めれば怖いものはない。あと1年であらん限りの利権を固めれば人生の帳尻は十分すぎるほど合うだろう。

この稿は想像で書いたが、ほぼ事実であるように思える。なぜなら、その後2か月間に反証が何一つ出てこないからだ。

さらに想像をたくましくしよう。こんなものかもしれない。

世界の覇権国アメリカを維持するコストは膨大だ。「温暖化、SDGs? おい、お前馬鹿か?そんなもんじゃ目先のキャッシュ回らねえぞ。いくら赤字だと思ってんだボケ。もっと劇薬打てよ」。「了解しました。しょうがねえな、また戦争やれや。犬猿の仲の国や革命軍そそのかして仕掛けさせろ、そいつらにカネ貸して恩きせて武器を売れ、薬もワクチンもだ」。

まあこんなもんだろう。

予算上限にきてる米国はもう金は出ない。ウクライナもイスラエルも座礁し、ネオコンの覇権保持がかかる大統領選挙まであと1年。なりふり構わず不正選挙でも何でもやるっきゃない。日本には国民感情などお構いなしでLGBT法案みたいな噴飯物を押しつけてくる。「ちょっと待て、こんなの強引に国会通したら支持率暴落だぞ、へたしたら保守新党ができて自民は左翼扱いされちまうぞ」。「総理、お忘れですか、大丈夫なんです、ほら、伝家の宝刀を通したじゃないですか、ワタシの力で。LGBTの “T” ですよ!「ワタシ女性よ」でおっさんが女風呂オッケーなんです。世の中は言ったもん勝ちになったんです。だから『ワタシこそ保守よ』っていいまくります!」。

「おお、そうか、素晴らしく高度な理論だ!さすが弁護士の稲田くんだな、バイデンさんのお手伝いをすることが我が政権の生命維持装置だからな、もちろん君は将来の総理候補だって言っとくよ」。やれやれ、たまんないよ、長くやりたいんだけどね、長引けば長引くほど支持率ばんばん下がるだけじゃないか。木原くんの秘策で減税やってやるのに「減税クソメガネ」になってるじゃないか。いったいどうなってんだこの国は。

総裁選は来年9月だ、このまんま座して死を待つのも阿保らしい、自爆覚悟で解散するか。でも、どっちであれ、来年9月までに俺の政権が終わると劣勢のバイデンはまずいよな、次の総理が増税もウクライナ支援もいたしません!なんて言ったら絶対怒るよな。みんな40議席も減る選挙なんてまっぴらだ。俺の再選を握ってくれたら増税メガネはひきうけるぞ。こっちも続投でバイデンも勝って長期政権は確定だ、俺の十八番の人事戦略をくり出せば支持率なんかまた上がるよ。

その人事戦略で任命したんだろあいつ、名前も忘れたよ、税金滞納して4回も差し押さえ食ってるあれ、よりによって財務副大臣?こいつが俺から税金取ってるわけ?税金でメシ食ってんだろ、こいつ?なんか泥棒に追い銭してる気分になってくるわな、俺がいくら払ってると思ってんだよ、ふざけんな。こんなの任命しちゃう総理もね、もうちょっと頭のいい人にしてくんないかね。世界最強だった日本企業をぼろぼろにしたホールディングカンパニーとおんなじじゃないかこの政権は。

ここまで政治家が腐ると、国会という場は、「やってます」の迫真の演技が売りの役者衆による歌舞伎座みたいなものになる。「実は前からそうだったのがバレましたね、まあ我が国はずっと米国の準州みたいなもんだったんですが、このたびは改めてそれを自認したまでなんです」。「閣僚が賃上げ分を自主返納って、どうせ口だけだろ?」「口だけも何も台本ですからね、読んでるだけだろってご批判されましてもですね」「買春やるわ、収賄やるわ、秘書殴るわ、税金払わんわ」「ええ、たしかに、おっしゃるとおりでございます。ただ、かたき役って申しましてね、悪人が登場しないと舞台が盛りあがりませんもんでね、えっ、世襲議員はいかん?いやいや世襲は当然でございましょう、歌舞伎なんですから」。

 

日本人に砒素のように効くLGBT法

自民党に漂う「オワコン感」の真因を解く

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公務員を就職先に選んだ東大経済学部生は9人

2023 NOV 3 17:17:21 pm by 東 賢太郎

「今年夏、東大が3月に卒業した学生の進路を公表すると、省庁の幹部に驚きが走った」「公務員を就職先に選んだ東大経済学部生が9人しかいなかった」「東大生のキャリア官僚離れは深刻だ」(朝日新聞デジタル、2023年10月7日)

コロナ前だが映画製作で東大生の子にきいたところ、官僚は最初の10年の下働きが無駄で、頑張って30才になるとスキルなしだから辞められなくなって、その割にリターンは読めない(政治家に嫌われてパーはリスク高すぎ)と言っていた。人気は理系は起業、文系はコンサルとファンドだそうだ。

この考え方は私学の人とそう変わらなくなっているのではないか。国立大だから国にというステレオタイプは消えつつあるんじゃないかという気がしてきた。国の方が民間より上だという空気が昔は大いにあったが個人的には何やら気張ってて田舎くさいなと思ってたし、父は国家派だったが母は商人派で、僕はその点は母方だった。

ジャック・アタリは近著で「11世紀から現在に至るまでの時代は商人が地政学、政治、価値観を支配する『商秩序』の時代であった」と書いている。我が国でも中世の国司は荘園を侵略し簒奪する側だったが、貨幣経済の浸透とともに商人が台頭を始めると楽市楽座で彼らを保護して領地に経済力を貯え、南蛮貿易で鉄砲をそろえて戦さを勝ち抜いた信長のような商人共生型近代国家スキームの武将が現れる。天性の商人だった秀吉は信長の中央集権的重商主義を進めたが、それを貧富の差が出ない地方分権的農本主義に180度転換した家康のスローガンが士農工商である。「士」(武士)が官僚であり、いまも日本人に根強い「官>民」という思想はそれをルーツとしている。

アタリという学者はディープステート(DS)のスポークスマンであり、DSは国家ではなく国家をまたぐから国際金融資本と呼ばれる商人(資本家)である。農本主義の士農工商とは天地真逆であり、両者が融和するはずがない。現在、岸田政権は米国の背後にいるDS(民主党左派)寄りであり中国共産党もDSに親和的であることから自民党保守は分裂的であり、そのどちらにも反駁する真の保守を標榜する新党に出現の余地を与えた。同党は日本で反DS的主張を展開する宿命ゆえ農本主義的に思える。現代の黒船DSを士農工商政策で制圧できるはずがなく、鎖国をめざすわけでもなかろうから本音は不明だ。当世の東大生はそうした空気を察知しているのではないかというのが私見である。

東大卒が減ってもプラクティショナー資質の優れた人はいるので採用を工夫すれば官僚の質が下がるとも思わない。東大法学部のようにドメスティックな学問専攻の人を中心に据えるのは士農工商由来の方針であり、DS服従に甘んじるならそれでいいが、DSに正面対峙して最善の選択が求められるGDP3~4位の国家としては危険だろう。心は日本人だがDSエリートを英語で論破できる資質の人こそ増やすべきだ(東大生はそういう訓練はされていない)。政治家も同様で、そういう官僚を使えるかという選別基準になれば親の七光りだけの議員は自然に国会から消えていくだろう。

しかし政治家のF先生の話を聞くと銀行は国会議員には金を貸してくれませんよというからそれも大変な職業なのだ。奥さんは心配だろう。僕は1億5千万借りたがサラリーマンだったからで今はもう無理である。人の仕事の価値は金で決まるわけでないが好きなことをやるには金が要る。DS業界ど真ん中でやってきた僕は仕事も趣味も満足できたからこのジョブを生んでくれたDSに感謝しなくてはいけないが、ではLGBT法案賛成かといえば大反対で怒っている。つまり政治信条と人生が一致せず、どっちか取れといわれれば人生なのだ。僕は政治家には向いてない。

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総理は一刻も早く解散総選挙をするだろう

2023 OCT 8 10:10:53 am by 東 賢太郎

このところ日々の訪問者数はNHKホールが満員程度の2~3,000人というところで安定している。ブログというメディアは前からあるが、僕のような一市民が既存メディアの力を借りずに特定の層とこれだけピンポイントで接点を持てる場は10年前まではなかったからすぐれて現代的現象と考えてよいだろう。知りうる限りの読者はインテリ諸氏である(男性6割)。柔らかくはない内容で平均4~5,000字の長文だから高学歴集団しか興味を持たないのは自明で、数としてはマイナーだが読者の理解度は高くサステナブルだ。この層には各界のインフルエンサーもおられ「数×質」の手ごたえはあるかなと感じる。

SMCの場で政治勧誘はしないが立場の表明はする。先日、親類にとってアンチの視点から描かれた松本清張の「昭和史発掘」を読んだ。この事件の錯綜した事の顛末のすえに壊滅的な敗戦がやってくる。親類は東京裁判で戦争犯罪人として逮捕され、巣鴨刑務所にA級戦犯として収監されたが、米国のロビンソン検事が無罪として釈放した。彼は戦争拡大反対勢力の首魁だったが陸軍内の権力闘争で東條英機ら統制派に敗れた。そこで対米交戦に向かう政権を批判する形で反対を唱え、その経緯を精査したロビンソンが擁護したというわけだ。軍内政治に負けた結末がそれというのも皮肉であり、もし勝って首相になっていれば確実に死刑だった。政治的立場というものはかくも重い。我々私人とて社会に出れば組織の権力闘争と無縁ではなく、僕も覚えがあるし敗退しているし、それに勝ったことで墓穴を掘った例も現実に目にした。

東京裁判で7人が死刑(絞首刑)、16人が終身刑、2人が有期禁固刑となった。日米関係の力学は憲法改正問題以前にいまだこの裁判の延長から完全にフリーになったとは思えず、安倍晋三が戦っていたのはそれだったのではないか。BRICs、グローバルサウスに日本外交が過度に寄ることを警戒する米国はジャパン・ハンドラーズのグリップを強める方向に急激に舵を切り(軌を一にして英国でもトランプ寄りのボリス・ジョンソンの首を切り)、我が国の空気をどんよりと重苦しくしている。東條は裁判で「この戦争は欧米の経済的圧迫による自衛戦争である」という主張をしてはねつけられたが、ウクライナ戦争でロシアも同様の趣旨の主張をしている(ナチ呼ばわりで過激だが)。米国、NATOが認めるはずはなく、ロシアは軍事的に屈服すれば日本同様の運命になるから戦術核をちらつかせているという危険な情勢だ。米国は過度の挑発を避けつつ大統領選前に幕引きを図るだろうが、債務上限問題に強硬な議会の反対もあって戦後処理の金を出す気も余裕もない。従って何十兆円にも及ぶといわれるそれを日韓に押し付けるためバイデンは両国をワシントンに呼び、和解させ、増税によって賄わせる算段だ。これはマストであり既定路線である。

僕は政治通でもないし情報源もないし、そもそも政局など興味もない。以下は誰でも知ってる情報を僕なりに組み合わせた仮説にすぎないからまちがってるかもしれない。前回もそういうものを書いた(「今だけ金だけ自分だけ」の議員は落とせ)がここまで矛盾する出来事は何もないから修正はしない。

東京裁判の被告なみに米国にビビりまくっている岸田総理はバイデンに逆らう意図など毛頭ない。ということは増税メガネ呼ばわりされようが何だろうがLGBT法案と同様なりふり構わず増税する以外に道はない。だから財務省と気脈が通じ国民向けキャッチコピーに長けた木原は配置転換でお茶は濁すがはずせない。警察も検察も裁判所も三権分立以前に公務員であり権力と喧嘩したくない。それとマスコミは喧嘩したくない。権力者は本来総理なのだが、総理が盲従するならスルーして米国が支配者ということになる。なぜ全部がチンイツで動くのかという不可解な現象は国内ばかり子細に見てもわからない。すべては米国の指示でシンクロして動いているのである。これが独立国か、民主主義はどうなった、三権分立はどこへ行ったと騒いでも仕方ない。親会社は来年の選挙で忙しくカネもないから、子会社の定款など無視してお前らがカネを出せ、逆らえば社長は首だと脅してるわけだ。内閣改造は他派閥においしいエサをばらまいて来年の自民党総裁選で再選の邪魔をされない手を打つのが目的で、国民の目にはどうあれうまくやった。そして、バイデンの言うことを聞けば万事が日本国民のためにはならないのだから岸田政権も自民党も支持率は時間がたてばたつほど確実に下がる。従って、総理が合理的な人であるならば、一刻も早く解散総選挙をおこなう、今月の国会初日でもいい、そうなるはずだ。

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日本は女性差別社会ではない(通説の嘘)

2023 SEP 24 0:00:39 am by 東 賢太郎

「夏休みの宿題は先にやっちゃうタイプなんで」。どういう話の流れだったか、渋谷で食事の時にAさんがこういった。たしかに僕もそうしろと叱られて育ったが、やったためしはない。怒った父から「学習計画表」を作れ、それを部屋の壁に貼れと厳命がくだったので仕方なく作成した。美的センスのある母が協力してくれ割と見栄えのいいのができた。とても満足し、貼ったことは数日で忘れた。こうして僕の一夜漬けは小学校時代に始まる。

単に怠け者なだけだったが、だんだん言い訳を考えだした。夏休みは前半は楽しいが、後半は終わりが見えてきて憂鬱になる。学校が好きな人は早く行きたいだろうが勉強嫌いの僕はそうでない。そして宿題というものはいつやるかを問わず憂鬱だ。ということは、それを最後の日にまとめてやればどうせ憂鬱な日なんだから損はない。

先憂後楽という言葉がある。しかしせっかく幸福な前半に学習計画表に見張られて暮らすと幸せの山が低くなり「絶頂」はこない。宿題をいつやるかに関係なく後半は憂鬱なんだからそこで頑張ろう、前半は絶頂まで登って満喫しよう。そう決めたわけでもないが自然と先楽後憂が習慣になってしまい、すると、最後の数日で宿題を全部やっつける腕力もついた。

ところがそんなことを奨励する日本人はまずいない。父は僕を更生させようとイソップの「ウサギとカメ」「アリとキリギリス」を何度も話してきかせた。計画表が失敗したので洗脳作戦に出たわけだ。なんと親はありがたいものかと感じ入るが、洗脳されにくい性格に生んでくれたからそれも失敗に終わった。父の名誉のために書いておくが、僕がこうなったのは親のせいではない。聞けば聞くほどウサギ、キリギリスになってそのままゴールすればいいじゃないと考えるようになってしまったのだ。「どうしてカメやアリなんてノロまにならなくちゃいけないの?」成城幼稚園でそんな感じの質問をした。いまになって思うがいい質問だった。園の飼い犬を棒で殴ってご迷惑をかけたジュンコ先生、何といわれたかは覚えがないが僕は長じてウサギ、キリギリスを目指す “いけない子” になった。

それから20年たってアメリカに行った。全米1位のビジネス・スクールであるウォートン・スクールに入れてもらったが、そこにはウサギとリス以外の生き物は一匹もいなかった。政治もビジネスもアメリカはその連中が動かしてるし、欧州も中国も同じようなものだろう。ところが日本はどうもそうでない。当時、エズラ・ボーゲル著の「Japan as Number One」が話題で、教室で日本がそうなった理由を質問されたが一度も満足な解答ができなかった。当然だ。いまだって僕はその答えがわからないのである。なんたって、日本で一番それを言っちゃあいけない農林水産大臣が「汚染水」と口がすべっちゃう。あのお爺ちゃんは誰なんか政治にうとい僕は知らない。でも日本は潰れない。強い。なぜなんだろう。外国のエリートはそういう失礼なことは口に出さないがみなそう思ってる。教室では苦し紛れに「官僚が優秀だから政治家はその程度でいい」と言った気がするが、ルイ16世だってそこまで馬鹿じゃなかったぞ、そんな支配構造がなぜ明治から100年も続いていて国民も、その優秀な官僚までもが唯々諾々と従っているのかが米国人には理解できないのだ。

ところがだ。渋谷でAさんの言葉を聞いて電撃的にひらめいたのだ。宿題は先にやれ。ひょっとしてこれか?銀行家でありその代表のようであった父が何度もこうなれよと説いた堅実で真面目なカメとアリ(『カメアリ派』と呼ぼう)。いい調子で楽しくやって天罰が下るウサギとキリギリス(『ウサリス派』と呼ぼう)。そこに答えがあるんじゃないか。「いいわね、あなたたち、みんな仲良くしていいカメアリになるのよ」と幼稚園から教わって、それを信じてゆっくりのっぺり生きて、それが幸せなんだと一様に疑わず、しっかり先憂して貯めた預金通帳残高を見るのを老後の楽しみとし、平均3500万円を残してああたしかに楽だったとあの世に行き、一匹だと弱いが集団になるとその人生観で集結して一枚岩になって排他的になって強かったりする、それが日本人ではないか。原因は国民にあるんじゃないかと。イソップ、でかいなあ、でもその前から尊王攘夷やってたっけな。そんな国民は地の果てまで行っても日本以外にいないし、なりたいと思う国民もなかろうが思ってなれる国民もないだろうと気がついたのだ。

イソップではウサリスは怠け者だが、現実には勤勉で多大な努力を厭わないのがいる。これは大変に手ごわい。人海戦術的であるカメアリの集団防御戦ではいずれ人垣が崩されてしまうし、すでに危ない水域に来ている。だから日本もウサリス派を若くして選別・分離し、米国MBA並の地獄の特訓で虎の穴にぶちこんで勉強だけでなく命まで取られるかぐらいの仮想の窮地体験を積ませて鍛えまくらないといけない。江戸時代までは藩校がその役目を果たしていた。だから明治の日本はその余禄で文武両道の男だらけでどの国と比べても圧倒的に強く、欧米列強の植民地にならずに済んだのである。しかしもはや「武」の方は叩き潰され、その精神も消し去られ、かろうじて残った「文」で高度成長を果たしたがそっちの息切れも時間の問題だ。円安もあり経済安全保障は危機的な案件が耳に入ってきている。それはとても書けないが、海外トップスクールへの留学生数、PhD取得数、ベンチャー企業のユニコーンの数だけでもご覧になれば趨勢は一目瞭然だ。その現象の根底には消し去られたものの巨大さが透けて見える。

ちなみにAさんは1年半の勉強で公認会計士試験に一発合格した才媛である。当然に専門能力が高いが、そういう人に往々にして欠けているカメアリともうまくやっていける当意即妙力も高く、僕といえば話をするのさえ苦手なのは「どうせわからないと思ってしゃべってるでしょ」と見抜かれている。こういう人にお会いするとエリート選別に男女などなくジェンダーを言うこと自体がそもそもお門違いなことを悟るのである。岸田内閣の改造人事を見るにつけ、自民党にそのセンスはなくいまだにマレーシアのブミプトラ政策だなあと5人の女性閣僚を眺めるしかない。女性が輝く社会でパリで好きなことやらせて輝いてもしょうがない。この感覚は昭和はおろか明治時代とあんまりかわらないし、そういう持ち上げ方は有能な女性に対して失礼千万なのである。

ご覧の通り欧米のトップスクールの学生は女性がほぼ半分である。

日本同様に女性の地位が低いイメージがあるアジアだが、シンガポール、中国、韓国の最難関大学であるシンガポール国立大(8位)、北京大(17位)、ソウル大(41位)はどれも女子学生が5割いる(カッコ内は2024年世界大学ランキング順位)。人口比(5割)に等しいということは女性が何のバイアスもなく最高峰の大学に志願して難関入試に合格しているわけだ。知性に性差がないのはユニバーサルな研究結果だから学生数の女性比は受験者の女性比にほぼ等しいはずだ。したがって、「東大に女性が2割しかいない」のは日本女性の知能がアジア女性より劣るのではなく、日本女性の2割しか東大に入りたいと思っておらず、最高峰の大学に志願する女性はシンガポール、中国、韓国の女性の半分もいないという、いささかの驚きを禁じ得ない事態になっているのである。

この事実は、日本女性には「東大にあえて入りたくないか、入らなくても構わない」と考える固有の理由があることを強く推察させる。人口比5割の集団が2割の集団を作る偏差値は80で、それが長期に続くこの現象は統計として有意に “特異” である。同じ傾向は京大、早慶にも、遍く各大学の理系学部においても見られるため、日本女性の選択の特異性は東大に限らず偏差値上位の大学受験全般に存在するものと推察される。

東大の「女性2割現象」は「ジェンダーギャップ」の大きさにおいて日本が後進国であり、突出した男性優位社会(=女性差別社会)であることを示す一例として欧米人に認識されている。世界経済フォーラム(WEF)が各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数で日本の順位は146か国中116位で最低、アジア諸国の中でも韓国や中国、ASEAN諸国より低い。これは、日本における女性の社会進出が先進国としてはひどく遅れているためだとされる。その認識は学問の領域にも及んでいるという解釈で「女子2割問題」と連結される。その一例が、2019年にニューヨーク・タイムス紙が東大を批判したこの記事だ。

日本の最高峰の大学 女子学生は5人に1人だけ – The New York Times (nytimes.com)

この記事内容に大きな異論はない。昔からそうだったしいまだにそうなんだねという程度でもあり、世界市民のコンセプトで語るなら日本はジェンダー後進国であり日本の女性は不当に抑圧され男女不平等の犠牲になっていると言われても反論することは容易ではない。しかし、本当にそうだろうか。そんな劣悪な環境で生きなくてはならない日本女性が不幸なのか?「男女平等であること」と「女性が幸せであること」は正比例の関係にあるのだろうか?女性は東大など行かなくても幸せだからこの結果なのではないか?学歴を求めないので社会進出も欧米ほどは求めない、それでも幸せなのではないか?この論点は「鶏と卵のパラドックス」の可能性があり両面から考察すべきだが欧米メディアも国内メディアも「ジェンダー後進国だ」と一面しか取り上げないアンフェアな状態が続いている。だからこその本稿の問題提起であり、それを示す興味深いデータがあるので紹介する。世界価値観調査(World Values Survey)による「幸福度の女性優位度」だ。「女が男より幸せな度合い」を国際比較したデータで、日本は7回の世界ランキングで1位が3回、2位が2回、3位が1回、11位が1回だ。つまり、日本女性は日本男性よりいつも幸福であり、その差の大きさにおいてもいつも世界トップレベルであることが示されているのである。

統計の取り方の詳細は不明だが、WVSは社会科学者の世界的なネットワークでありまずは信用に足ると思われる。考慮すべきは、男より女の幸福度が上であってもそれは相対評価だという点だ。「男(夫)よりは幸せだけど私(女性)だって不幸なのよ」ということもあり得る。日本の男は女性に優位で犠牲を強いてはいるが、被害者の女性よりもいつも不幸だと思っている可能性もある。つまり、不平等は何らかの客観的な尺度で測れるが、幸福か否かは主観だからそうはいかず、両者が矛盾して見える結論を出すこともあり得るという点だ。

これについて図表3を引用された統計学者の本川裕氏は適確かつ興味深い数値を用意している。「不平等度」と「幸福度格差」とのR二乗値だ。ほぼゼロなのだ。これは「日本女性は男女平等でなくても幸せ」、したがって、「男女平等でないから日本女性は不幸せと主張する根拠はない」ことが統計学によって証明されたことを意味している。この命題に反論する唯一にして非常に簡単な方法は「日本は男女平等だから女性は幸せなのだ」と主張することである。それにロジカルに反論するすべを僕は持たないし、ひょっとしてそうかもしれないとさえ思うし、かかあ天下という言葉で古くから男性諸氏は表立って奥さんの前で口にできないそれを笑い話で揶揄してきたかもしれない。しかしリベラルは男女不平等が言いたいのだからそれを言うはずがない。それを潰すのが本稿だから僕も言わない。

R二乗値=0は日本が女性差別社会であろうがなかろうが、それを解消してあげることと女性が幸せに暮らせるようになることとは関係ないという証明である。したがって、この式は日本がジェンダー後進国であろうがなかろうが、突出した男性優位社会(=女性差別社会)であろうがなかろうが、日本の女性が不当に抑圧され男女不平等の犠牲になっていようがいまいが、社会(慣習、通念)や両親に男尊女卑思想が残っていようがいまいが、それらとは何の矛盾もなく日本人女性は男性より幸せだと言っているのであり、日本はジェンダー後進国だから日本人女性は不幸だという欧米の一方的な主張は根拠がないことを論理的に示している。つまり、その主張を熱くすればするほど、その人は日本国民に「ジェンダー」を売りこんで洗脳したい邪心を疑われるか、数学を勉強してないことを天下にさらけ出すだけなのだ。

ではWVS調査結果が示す日本女性の幸せの正体は何だろう。まず第一に、日本の古来からの社会慣習、通念から自分に適当な相手を早く見つけて専業主婦に収まって家庭を守るのが自然だと多くの日本女性が考えている結果ではないだろうか。ただしこれは日本女性が怠惰であったり男性に従属的であるという理由からではない。日本にはアジアのどの国とも同次元で語れない決定的な特殊性があるからである。それは太平洋戦争で310万もの兵士(男)が死んでいったことだ。最愛の夫や息子や恋人の銃後を守った精神が母から子へと脈々と継がれ、ハウスワイフごときではないものが主婦という立場にはあると考える女性が学業よりそれを選択しても僕は称賛したいし、それに足る夫がいるのだから幸せなのだと安心もする。男がしっかりしない国ではそういうことは起きないのであり、日本が世界3位のGDPを生み出したのは幸せな女性がいて支えてくれたからであり、これは日本的な夫婦の美徳、愛情という精神的に高次の範疇に属するものであって、どんな木偶(でく)の坊であろうと個を尊重する西洋人のジェンダーという概念などの到底及ぶところではないのである。

もうひとつある。日本人の大半は男も女も『カメアリ派』なのだから、幼稚園から習っている先憂後楽が自然でなじみ深いのは無理もないのだ。東大に入れる学力があっても、入るということは男のキャリア戦争に正面切って参戦し、男も競争相手と認識して真剣勝負してくるということであって、相手を見つけて家庭に入るというもう一つの選択肢からするならば年齢がそれなりに行ってから敗北すると先憂後憂になりかねない。それで人生のリスクリターンが合うのか?賢い彼女らだからこそ当然に熟慮するだろう。とすれば彼女たちがすき好んでガリ勉などせず専業主婦を先憂後楽だと選択しても納得である。つまり東大2割問題はひとえにやる気があるなしの問題なのであって、差別されているわけでもジェンダー問題でもない。やる気があるならAさんのように勉強すればよく、才能を発揮して第一線で大活躍されている女性を僕は何人も知っているわけで、そこに社会の支障があるとは思えない。逆にいえば、勉強もしないのに出世できないのは女だからだというのは、男も同じだからおかしいのだ。さらに加えるなら、昨今の少子化はひ弱な草食獣の男が増えて「男がしっかりしない国」になりつつあるから女性にとって結婚が「精神的に高次の範疇に属す」とは思えなくなってきていることと無縁ではない。結婚ありきの社会通念があったから競争社会で生きる前提を置いて生きていない。だからシングルマザーになるほどの収入は得られず子供を持てないのは無理もないであって、少額の教育費補助や育児のアウトソーシングだけで片づく性質の問題ではそもそもないと僕は考えている。

一流校に学ぶ女性が5割である世界の国々は男女の才能を束にしてかかってきているのに日本は女性抜きの片肺飛行であり、東大(28位)、京大(46位)の順位が低いのは有能な日本人女性を取り逃がしていることが大きいだろうし、まったく同じことが日本国の国力についてもいえる。初の女性総理誕生が待たれる等と言うこと自体がナンセンスで、女性だとやたら「美人何々」と報じたがる知能の低いマスコミのノリで政治家を待望などしてはいけないのである。東大2割問題と同じで優秀な人だけ選べば女性議員は自然に5割(人口比)になるはずである。そうなっておらず衆議院1割、参議院2割であるのは「何をもって優秀とするか」が著しくおかしいからである。国民はそれを吟味すべきなのだ。「女性だから」はあり得ない。「お父さんが政治家です」など論外である。

東大2割問題と女性差別社会(ジェンダー問題)は一見すると前者が後者を生むのかその逆かという「鶏と卵」の相関関係があるように見えるが、多くの日本女性が日本的な根拠のある事情で幸福だと考えているならそのどちらも彼女たちにとっては「どうでもいい」「大きなお世話」である。私見ではそれが現状だ。それでは困るリベラルが「鶏と卵」の一面解釈に過ぎない「ジェンダー問題」にすり替えて論じるが所詮は意欲の問題だから火がつかず、いちおう保守ということになっている自民党は自民党でそれを無視して「女性活躍社会」だの「女性が輝く社会」だのと選挙キャンペーンにしたってもう少しましなのがあるだろうと笑ってしまうぐらい空疎でインテリジェンスの香りすら漂わない、およそエリートが考えたとは信じ難いセンスの言葉を並べてお茶を濁す体たらくだ。どっちもどっちで大きく的外れで、学問、知性の領域という日本が強かったはずの根幹を劣化させる国家的損失の放置を意味するのみである。張本人でもある女性で東大法学部卒の松川るい議員こそが本質を主張して行動をおこせば説得力もあるし保守の男も賛同して総理候補路線だってあり得たろうが、パリ研修を詐称とされてしまう異次元の知恵のなさではそんなことは到底無理だ。後輩を貶める気は毛頭ないが猛省を促す。優秀な女性たちのモチベーションを “正しく” 喚起しなければ「日本女性は充分幸せなんだね」で国民は終わりであり、日本も終わっていくだろう。

日本人に砒素のように効くLGBT法

日本という国に本気で自信がなくなってきた

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慶応高校の甲子園優勝おめでとう

2023 AUG 24 0:00:23 am by 東 賢太郎

驚いた。試合終了後、興奮冷めやらぬ中のインタビューで主将から「この優勝で高校野球の楽しさを広く知ってもらえたら嬉しいです」という言葉が出てくる。大舞台のキメの一言だ、高校生がこれって大変なことじゃないか。日本中がエンジョイ・ベースボールは口先だけでないことを知って、野球に限らず新しいスピリットが世の中を変えていくんじゃないか。古き良きものは守っても、古いだけにしがみつくものは淘汰されていくんじゃないか、そんな気がしてならない。提唱した監督も立派だし、それを甲子園で身をもって行い、結果を出した選手たち、ほんとうにカッコいい。

仙台育英は強かった。今日先発の10番の彼、好投手だ、準決勝を見ていてこりゃ打てないなと思った。打線の圧も群を抜いていた。慶応は先制したが3回あたりから押されてる感じがあった。ヒットで出た走者を走らせて刺されたあたりでちょっと焦りがあるかなと見た。ひとつ歯車が狂えば逆の展開もあったが、そこで圧に負けなかった慶応は胆力が鍛えられていた。エンジョイ・ベースボールで猛練習の成果が自然に出せたのかどうか、グラウンドで歯を見せるなと言われて育った世代には屈託ない笑顔がまぶしかった。

エンジョイ(楽しめ)というのは命令されてできるものではない。できる状態になって初めてできる。その状態をどう作るか。それは心の持ちようだから練習しながら自分で考えろということではないか。孔子様も説く。何人もこれを楽しむ者に如かず。だからそうなれば最強なのだが、楽しんでますと独りよがりで思うだけなら誰でもできるから、その上に「有言実行」がなくては意味ないだろう。これは僕のスナイパー主義と通じるものがある。この大会、なにくれとなく慶応を応援してきたのはそういう気もしていたからだ。

有言実行。これは人の道だ。動物は話さないからそれはない。人は話すからある。だからそれは両者を仕分けするシンボルである。昨今の政治を見よ、有言不実行、無言実行、無言不実行の嵐である。嘘八百、強行採決、都合悪いと報道せず。みなさん、この連中はどっちに仕分けすべきなんだろうか?大変申しわけないが、連中はガチでスポーツやったことがあるんだろうか?疑わしいように思えてならない。

慶応高校のみなさん、清々しいものを見せていただきました。人にしかできないスポーツという素晴らしい文化を通じて、日本国が末永く人の道を堂々と歩んでいけることを願ってやみません。

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兵庫と岐阜と名古屋の長い旅

2023 AUG 14 13:13:40 pm by 東 賢太郎

軽井沢でゴルフの翌日、八重洲のビジネスホテルを朝7時半に出て新幹線に乗った。東京に家があるのにと思われようがそれで2時間余計に眠れる。兵庫、岐阜、名古屋でお客様の会社訪問、面談などがあるためもう二泊し、契約調印、会食、野球観戦などの予定も入っていた。前日があまり眠れないだろうということでこうなったがうまくいった。その日はまず兵庫まで行って既得意のお客様の経営するレストランで仕事を済ませ、その足で岐阜までとんぼ返りするともう夕刻である。めったに来ないので観光したかったがまったく時間がない。

この日は岐阜・長良川温泉の老舗旅館「十八楼」に宿をとった。どうやら翌日に花火大会があるようでどこも満室である。この宿は二度目で、風呂がいい。食事も川向うにラーモニー・ドゥ・ラ・ルミエールというフレンチがある。マンションの5階の一室で景色が良く、味、もてなしともこれでおまかせ1万5千円はお値打ちだろう。風呂に入るんでとワインはパスさせてもらって水にしたが、長良川伏流水は氷を入れれば飲み物としても旨いのである。ピュアな軟水で高山の北アルプスの水ともちょっと違う。

十八楼は斎藤道三、織田信長のいた岐阜城がてっぺんにある金華山のふもとに位置し、鵜飼いで有名な地である。漁としての鵜飼いは5世紀ごろから行われていたようで、中国の史書『隋書』に日本を訪れた隋使が見た変わった漁法として記載があり、日本書紀に記載、古事記に歌がある。天皇家にゆかりがあり鵜匠は国家公務員である宮内庁式部職であり、平安時代に始まったショーとして見物する鵜飼いは頼朝、信長、家康、芭蕉も観ている。僕は大学時代に岐阜出身の友人と彼のお父さんに船上から見物させていただき、今でもよく覚えている。

十八楼には松尾芭蕉の、

このあたりめにみゆるものは皆涼し

と詠んだ句碑があり観覧船乗り場にも近いが、僕の目当ては温泉だ。鉄分のせいか赤褐色でありインパクトがある。薬草の湯というのもある。信長が伊吹山のふもとに薬草園をもっていたのにちなんだと説明書きがあり、仄かにそんな香りもあるが効くのかどうか。シルクの湯というのは微粒の気泡で乳白色をしており、毛穴まで入って油分を落とすというから有難い気はする。

兵庫のお客様はこれで弊社案件に4度目の投資のお得意様だ。名古屋のお客様は弱冠35才でM&Aで数十億の財を成した事業家で今回初めてだが、お見受けするところ事業の方でつきあう楽しみもありそうだ。PE(未公開株)投資は手慣れておられ、一件は適格機関投資家(法律上のプロ投資家)だ。我々の投資哲学はプロほど理解して下さり、すると投資して欲しい良質の起業家も寄ってくるという循環である。

二日目は名古屋からだ。特急で岐阜から19分。暑い。金時計の下にウンカの大群かと見まごう団子状の雑踏を見てなんだあれはと恐怖を覚え「キムタクでもいるんか」と言った気がするが何故かは覚えてない。お盆だからでしょ、なるほどねとなったが東京人である僕に盆休みの渋滞や混雑の実感がないことがこうしてわかる。頭も尋常でなかった。さもありなん、この日の名古屋は気温39度。香港、シンガポールだって高くてせいぜい35度だ、米国のデスバレーに次いで人生二番目が日本ってのは驚くしかない。昼前に集合場所のコメダコーヒーで今回のパートナーであるY君が合流し、お客様と調印を終えた。外へ出るとムッとする熱気と日照りに気絶しそうだったが、こういう時に限ってタクシーがなく、バスで名古屋駅へ向かう。

再度岐阜へ向かう予定だが、せっかくだから駅ビルで「ひつまぶし」でも食うぞとなった。旨い。たれの塩梅、焦げ具合が見事で、鰻重を茶漬けにする独創性も素晴らしい。名古屋の料理は一見塩辛そうだが実は程良く、八丁味噌が好きなので口に合う。滋賀、岐阜は奈良時代からの発酵文化が奥深く、京都より野趣があって面白い。鮒ずし、溜り醤油は僕にとって欠かせないほど好物だが尾張、三河にもそれは通じているのだろうか、秀吉が朝鮮出兵の根城にした名護屋城に鮒ずしを持って行ったし、家康の戦の供は八丁味噌であり、長良川の鮎ずしを発明して江戸城に届けさせたのもわかる。我が祖父は南信州で、叔母は名古屋で水野さんになり義理の伯父は岐阜人、戦争中の母の疎開先は高山である。もう地縁はないが子孫の舌に味覚が留められているのかもしれない。

コメダで合流したY君は今回案件の共同責任者だ。いままでは経産省キャリア官僚だった親父さんと案件組成をやっていたが、二世で四十過ぎの公認会計士である彼が独り立ちでやるのは初めてだ。優秀だが慣れてないところもある。資料作りなぞ細かいことであれやこれやとダメ出しして説教し、しち面倒くさい注文をたくさんつけた。電話の向こうで馬鹿野郎いい加減にしろと辟易していたのはわかっていたが、そういうことは僕は指揮官だから自分でしたことがなく当時の優秀な部下たちがしたわけである。でもそれがないとディールが決まらないことは誰より知ってるのだから容赦など一切なし。彼はガチ体験をした。どんなに怒っても終わればすぐ忘れるタチだが、ビジネスホテルのチェックインを済ませて喫茶室で休んでいると彼がそれを回想しながら勉強でしたと言ってくれ、世辞でない証拠に僕が吐いたとおぼしき言葉をみな覚えてるのである。サラリーマン時代にたくさんの部下がいたがそういう子はみな伸びて出世している。

岐阜のO社長はY君の紹介で初対面だが温かく迎えて下さった。投資の御礼を述べ少々説明を加えようとすると「それはもう結構です、出資したおかげでこの場があるだけで」と丁重に遮られ、自社の来歴、現状と将来の希望を熱く語られた。京セラ稲盛会長の盛和塾生であり、現在はご自身が指導する立場におられ、ご配下から上場企業が4つも出ている。自社もできるが志が高いゆえしていないとお見受けする。兵庫のお客様にも申し上げたことだが、僕は手垢のついた投資案件をオークションで買い上げて投資するような下世話な金融屋のコンペなんかに参加する気はない。会社様の繁栄発展の指標であるバリューアップだけが目的であり、経営者と一心同体でそれをして投資もすればこちらも利益になる。会社さんがたくさん取って当方は少ないからこれは利他的だ。お会いしたことはないが利他の心は稲盛さんの哲学の根本だった。51:49なら49でいいと言われるO社長と楽しいディナーをご一緒させていただき再度名古屋に向かった。翌日土曜日は初めてバンテリンドームで野球を観て帰る。花火の人たちだろうか電車はそこそこ混んでおり、夜の名古屋はまだ暑かった。

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