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デュトワとN響のプーランクを聴く

2013 DEC 7 22:22:04 pm by 東 賢太郎

今日は1階中央10列目でほぼ理想的な音がきけました。プーランクの「グロリア」、ベルリオーズの「テ・デウム」という宗教音楽2曲は通好みでした。指揮者シャルル・デュトワはニューヨークで幻想交響曲(モントリオールSO)、東京ではN響とのサンサーンス3番など、ライブではやはりフランス物が印象に残っています。

ダフニスロンドンにいたころ、85年ごろというとちょうどLPからCDへの移行期でした。デンオンのCDプレーヤーを買って何枚かCDを購入、これも買ったばかりのタンノイのスターリングというスピーカーでワクワクして聴いたのを懐かしく思い出します。その1枚がデュトワ/モントリオールSOのラヴェル(ダフニスとクロエ・右)でした。それまでのLPレコードのような内周部の歪みの心配がなく、音も艶があってきらめいていたのに感動し毎日のように聴きました。仕事に追いまくられていた当時、人生を明るくしてくれた思い出の演奏です。

デュトワのプーランクを聴くのは初めてでしたが、今日の「グロリア」は僕の好きな曲であり実にすばらしかった。この曲と同じくプーランク作曲の「スターバト・マーテル」は近代フランス宗教音楽の傑作です。とはいえグロリアはどこかオペラティックでもある不思議な曲なのですが、デュトワは非常にデリケートな音を紡ぎだし、フランス風の色彩感にあふれた透明度の高い音楽にしておりました。またソプラノのエリン・ウォールの声も大変美しく純度の高さがデュトワのスタイルにマッチしているのも楽しめました。どうせなら後半もプーランクで行って欲しかったぐらいです。

後半はベルリオーズの「テ・デウム」でした。この曲はパリ万博の祝賀行事の一貫として1855年に初演されましたが、その場所はパリ1区北部にあるサン・トゥシュタッシュ教会(写真上)だったのです。この教会は僕には特別な場所で、1778年にモーツァルトの母がパリで客死し、その葬儀を行ったのがこの教会なのです。モーツァルトが落胆し涙を流したに違いないその教会を僕は2010年7月に感無量の思いで訪れました。

その「テ・デウム」ですが、合唱も含め熱演でした。テノールのジョゼフ・カイザーも好演。しかし僕はどうもベルリオーズの一部の作品は好きでなく、この曲もその一曲です。旋律の出来からしても、対位法的にも和声法的にも一流の作品に聴こえない。教会の音響の中で聴けばオルガンとオーケストラの掛け合いなど残響を伴って一定の効果はあるのでしょうが・・・。

ベルリオーズは型破りの天才で27歳にして幻想交響曲を書きました。幻想交響曲を愛することで僕は人後に落ちませんが、その後の作品はどうもそれほど愛情はない。これはやはり28歳からバレエ3部作を書いたストラヴィンスキーへの愛情が3部作とその後で差があるのと似ております。天才との付きあい方は難しいのかもしれません。

(こちらへどうぞ)

プーランク オルガン、弦楽とティンパニのための協奏曲 ト短調

ベルリオーズ 「幻想交響曲」 作品14

 

 

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