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日韓ソフトボール決戦記

2012 OCT 2 16:16:13 pm by 東 賢太郎

アメリカのビジネススクールというのは修羅場です。MBAを取るためにウォートンでは2年で19単位が必要。一つでも足りないとアウトです。社費で来て落第などできません。  しかし外人ハンディキャップなどなく、厳しい教授は50人のクラスで5人はfail(不可)を平気でつけます。

ウォートンの授業料は年間$51,773(2009年)でアメリカで1番高いようです。当時も4万ドルぐらいで円ドルが250円ですからトータル2000万円ぐらいだったことになります。だからアメリカ人はそれを投資と考えていて、いい所に就職しようと死に物狂いで勉強します。そういう彼らと同じ土俵で競争しなくてはなりません。

僕の学年、日本人はほとんどが企業派遣の17人でした。帰国子女もいたりしてみなさん英語力は抜群。英語は不得意科目だった僕はというと選抜時点のTOEFLの点数からしてたぶんビリだったでしょう。最初の1か月は授業で宿題が出たのも気づかないという顔面蒼白レベルからのスタートでした。

1年に秋、春の2学期があります。それが2回。19単位をアメリカ人はだいたい5-5-5-4と履修します(自分で選べます)。5というのは毎日5科目の授業があるということです。授業は先生が一方的にしゃべるものもありますがクラスディスカッション方式が多く、何も発言しないとほぼ確実に落第します。

発言といっても、十分に予習しないとアメリカ人の輪に入れません。この予習というのが地獄で、1授業あたり平均で200ページの教科書とバルクパックという副教材をとにかく「読みまくる」ことに尽きます。ですから5科目履修というのは毎日1000ページの英文を読み、何か自分の意見をまとめてクラスでディーベートするということを意味しています。寝ても覚めてもこの繰り返しでした。

日本ならインプットさえすれば答案用紙相手にそれを正確にアウトプットするだけで合格できます。多少の応用問題はあっても。ところがMBAコースはアウトプットの場がディベートですから何が起きるかわからない。丸暗記では歯が立ちません。ああ言えばこう言うみたいな即応力が大変重視されます。

救いは発言内容の是非ではなく、全体の議論の流れに貢献したかどうかを重視してくれることでした。何でもいいから言え、みんなをかき回せ、という姿勢が評価される。だから僕は①早いうちに手を挙げる(議論が白熱すると英語がわからなくなる)②「それは日本では違う・・・」と自分の土俵に持ち込む、という2大作戦で切り抜けていました。

そういう殺伐とした日々のなかのことです。あるとき韓国人のチー君と飲みに行きました。たしか期末試験が終わってお互いにほっとしていた時です。日本人も韓国人も英語がへたくそ。同じ苦しみを味わっているので仲良くなっていました。すると彼が、お前野球やってたらしいな、こんど日本対韓国でソフトボールをやらないかと言い出しました。 それは面白い。よし、受けて立とうじゃないか。話はすぐまとまりました。

僕は同窓の皆さんに声をかけてまわり、日本代表チームを結成しました。試合当日の朝、親分肌のチー君は韓国代表チームを率いてグラウンドで我々を早や待ち構えています。もちろん友好ムード、ピクニック感覚なのですが両方とも妻帯者は全員が美人の奥方同伴です。ちょっとカッコ悪いことはできないなという感じもありました。試合は攻撃方が自分でピッチャーも出してその球を打つというコリア方式?に決定。国際舞台の交渉力がない日本を地で行ってしまいました。

テキはやろうと言い出すだけあってうまい奴が何人かおり、味方投手が各人の打ちやすい所にうまーく投げてボコボコ打ちます。あれよあれよという間に10点ぐらい取られて、結局大敗してしまいました。「いやーナイスゲーム!じゃあ昼飯にしよう!」上機嫌の韓国チーム。僕らはそれではおさまりません。「チー君、悪いけどもう1試合やんない?」「・・・・?!」

それを潔く受けて立つ韓国チーム。すぐ始まった想定外の第2試合。コリア方式に慣れたのか気合がまさったのか、ついに侍ジャパン打線が大爆発。みんなで打ちまくって快勝してしまいした。死闘が終わると両チームくたくた、足はふらふら。いや、全員がワイフの前で恥かかなくてよかったなあ!最後は両チーム一丸となってそういうムードになり、全員がハグ。日韓が輪になって祝杯。英語へただけど頑張ろーな!

がまんしたので腹がグーグーなっています。奥様方が丹精込めて用意してくれたお弁当は、誰からともなく、日韓で交換して食べようということになりました。いただいたブルゴギやキムチのおいしかったこと!!韓国人っていいやつらだなあ。当時弱冠28歳。それ以来僕はずっとそう思っています。

 

Categories:______体験録, 自分について, 若者に教えたいこと

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