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なぜ日本の電機メーカーは凋落したのか?

2013 JAN 6 0:00:57 am by 東 賢太郎

TVで慶応の夏野剛先生が面白い話をしていました。彼は学者というよりNTTドコモでi-モードを開発した実業界の人です。彼によると日本のシャープ、パナソニック、ソニーといった電機メーカー凋落の最大の原因は「この10年の経営者の読み違い」にあるそうです。モノ作り重視の同質的な文化で育った人が内部昇格して経営者になるのが日本企業です。彼らはITを軽視しており、ITにつながらないと物が売れない時代の流れに完全に乗り遅れてしまった。それが読み違いだというのです。

 

日本の経営者の年齢は60±5歳で、共通の話題は健康とゴルフ。パソコンを使える人はほとんどいないというのが現状だそうです。使ったことがないから利点がわからない。長いデフレのトンネルにいるうちにすっかり守りの姿勢が染みついたため、役員に推薦するのは「自分の地位を脅かさない人」「空気を読める人」ばかりで「異質な人ことを言う人」「とんがった人」は排除されます。先生ご自身、最年少執行役になられたにもかかわらずその壁に当たったそうです。だから「ITの利点がわからない人」ばかりの役員会になり、会社ごと道を外れてしまったというのです。

 

特に面白いのは、これまで経営者は部下から上がる「二次情報」で経営判断していたのが孫さんみたいに自分でツイートして「一次情報」を取れるようになったためトップの影響力が増しているという分析です。トップが即断し、異質な人を入れた取締役会がウォッチするという「新自由主義じゃない新しい経営体制」がITの力でできるかもしれない。そうすれば日本企業は生き返るということです。しかし東証1部の大企業が自律的にそれをやるとは期待できない。IMF下で実質国家破綻した時に韓国政府がやったような強権を伴った政府主導の再編が必要だというご意見でした。

 

従業員と会社の関係も変わります。今まで、良質の情報は大企業に入らないとアクセスできませんでした。しかし今はネットで誰でも簡単にできてしまうし、新しい分野の知識だって何カ月かネットで検索しまくっていれば誰でも「専門家はだし」になれてしまう。だからこれからは従業員、特に若者は「好きな道」を徹底的に深く掘り下げるべきで、それができる人が出世もするし独立もできるとのご意見でした。

 

ITが会社ばかりか個人も社会も変えるとも。司会の田原総一郎氏のツイートはフォロワーが40万人いるので「雑誌より読者が多い」そうです。メディアより個人が影響力を持てる時代になっているのですね。「アラブの春」と呼ばれるチュニジア、エジプト、リビア、イエメンの長期独裁政権崩壊を引きおこしたのもネットの力でした。ネットは検索して情報を得るという使い方と、その逆に情報を発信して何かをアピールするという使い方がありますが、その後者の方が大きなパワーを持ち出しているのだそうです。

まったく同感です。

IT音痴だった僕ですが、SMCというバーチャル空間に3か月住んでみたことでITの威力はささやかながら体感できてきました。先生の言われることは恐らく電機メーカーや若者だけの話ではありません。そもそもITリテラシーの極度に低かったシニア世代にこそ、もっともっと劇的な「生活空間の変化」をもたらす気がしている今日この頃です。

 

(こちらへどうぞ)

脳内アルゴリズムを盗め

「ネット人格」性悪説は必ず増える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Categories:______国内経済, 経済

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