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ねこ型人間のねこ的生活空間

2013 FEB 2 14:14:48 pm by 東 賢太郎

                                『どうして猫が好きなの?』   と、いわれても、それは困る。私が猫を好きなのは、なにか理由があってその結果好きだというのではない。理由などあれこれ考えるより以前に、すでに好きだという事実が厳存しているのであって、いわば好きだから好きだ、とでもいうよりしようがなかろう(伊丹十三著『再び女たちよ!』より)

 

僕のねこ型は自他ともに認めるところです。ねこ好きでもあるので完成度は高いです。

まず、ねこと共に育ちました。写真は晩年のチビです。飼っていたのではなく、共同生活しました。心が通じ合っていました。むこうも仲間と思っていたでしょう。そのため、お互いにそばにいても気になることも干渉しあうこともなく、目が合ったら挨拶するぐらいの距離感を静かに保つ「ねこ的生活空間」こそが自然体になりました。

 

押入れにたたんだ布団にねこが寝ていた場合、こっちが気がつく前にねこのほうがニャーと軽くひと声鳴いておいて相手を驚かさないように気を使うなど、微妙なところでEQ(Emotional Intelligence Quotient、こころの知能指数)が非常に高いのが「ねこ的生活空間」の特徴です。IQではありません。ねこが芸をしないお手をしないからバカだなどと言うのはEQの低い批判です。そんなエネルギー効率の悪い安手の芸人みたいな真似はしなくたって、EQの高い人間を魅力で虜(とりこ)にするスキルを彼らはエジプト時代から3000年も培ってきているのです。

誰かにご主人様扱いして欲しい、かしずいて欲しい、自分の好みの服を着せて言うことをきかせたいなどという性格の人は犬好きになりやすいでしょう。犬の方は犬の方で群れのボスに服従して生きる習性ですから、絶対服従のお手やチンチンぐらいはお安い御用です。どうもあれを見ると、仕事は全然できないくせに、会社の忘年会やカラオケ大会なんかになると裸踊りまでして異様に張り切る知性もプライドもない奴らを思い出してしまうのです。

支配欲の強い人は逆に支配されることを本能的に恐れています。だから言うことをきいてくれないねこは不気味でいやなのです。ねこも服ぐらいは着せられますからそういう人の一部はねこ好き界にも進出していますが、本格派ではありません。ねこも迷惑なもんです。逆に服従などいらん、それがうっとおしいと思うのが本格ねこ派です。支配しようと努力なんかしなくても支配されない自信のある人は、かしずかれることにも興味がないのです。

よくねこ好きと誤解されているのが、子ねこがカワイイ!という人たちです。残念ながら本格派とはほど遠い存在です。野球場にイケメン選手の写真を撮りに来る人たちです。そういう人たちは大概、ねこでなくても子供は何でもカワイイ!と言います(女性に多い)。僕はまだEQの発達してない子ねこは苦手です(もちろん大人になってもバカなのはいますが)。ねこの方も、全く同じ理由から、人間の幼児は嫌いです。だから大人のヒトと大人のねこがバチッと気が合うのはけっこうナロー・パス(狭い道)なのでして、もしそんなことでもあれば一生の親友関係が築けようというものです。

ねこはソファでせっかく気持ちよく寝ているのに不覚にも名前など呼ばれてしまった場合、面倒なので一切動かずに①口を半分だけ開けて返事のふりをする②しっぽだけ動かす、という形で一応の礼節を尽くします。犬好き界においてそんな不届きな態度をとろうものなら懲戒免職ものなのですが、ねこ好き界本格派はそれだけで十分気持ちが通じ合ったと認め、起こして悪かったかなと自省するのです。

ねこは愛想がないと言われますが、愛想はそもそも不要です。ねこ好きはねこがわかり、ねこはねこ好きがわかるからです。これは理屈では説明ができません。テレパシーのようなものです。例えば大和ハウスのCMを見ると、「監督さん」が実はねこの扱いにあまり慣れていないのを「ダイワにゃん」がちゃんとわかってしまっています。

犬の愛情表現はきっと可愛いのでしょうが、犬派の方にお叱りを受けるのを承知で本音を書きますと、大仰でデリカシーに欠ける感じがします。犬の気持ちは知りませんが、僕にはアメリカ人の旦那が奥さんに毎日I love youを言っている風で、言われないと心配になる、言っとけば嫌われない、うーんご両人ともなんともEQに乏しいなという風に見えてしまうのです。

さて、ねこ型に話は戻ります。僕は子供のころ、学校からまっすぐ家に帰ったことがなく、放浪癖は今も治りません。もちろんねこ型ですから、一人です。なにか面白いこと、珍しいこと(獲物)をいつも探しまわり、それをしている限り飽きたり疲れたりということがありません。絵に描いた様なハンター型といえます。クラシックのLPやCDが1万枚もたまってしまったのはこのハントの結果です。

職業についていえば、ジャングルのような証券業界でなければとてもハッピーには生きていけなかったでしょう。仕事では意味のないことはしません。意味のない日は動きません。ということでライオンの雄を見ていると何となく共感を覚えます。ところがよく見てみると、彼は群れを守る代わりに狩りを女子供にまかせて、自分は食うだけの「ヒモ」状態ではないですか。自ら狩りをしている僕はまだまだ二流の雄だなあ。でも獲物は大きいものしかねらいません。うさぎ未満でも追うと同じだけ疲れるのでパスします。大きいのは取り逃がしも多いのですが、捕えるまであきらめません。

群れないのですが、群れが嫌いなのではありません。ねこだって夜の集会は開くのです。犬と違って一人で狩りができるから群れる必要がないだけです。ねこのペアは気まま同士なのでハントでは必ずしも効率的ではありません。だから僕の経験的には、犬型の人と組んだ方がうまくいくことが多かったように思います。

フロリダはキーウエストにある大作家アーネスト・ヘミングウエーの家に行くと、彼のねこの子孫がたしか47匹もいて、ここに住みたいなと思いました。

 

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猫にステンドグラス

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