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アベノミクス選挙の大義

2014 NOV 21 22:22:43 pm by 東 賢太郎

株価というのは世の中のコンセンサスの指標です。けっして意味もなく上げ下げするわけではありません。例えば、

オバマ民主党大敗を世界がどう評価しましたか?

こう質問された時、最も客観性のある解答は何でしょう。株価です。11月5日以来、NYダウ平均株価は3%近く上昇していますから、「共和党の勝利を好感しています」と答えれば正解なのです。誰も有効な反論はできません。

「株価はコンセンサスで決まる」というのがコンセンサスだからです。それに逆らって、「いや私は悲観している」と株を売った人は損をします。逆に、オバマ再選の時の「オバマショック」でNYダウは300ドルも下がりましたが、その時、「いや私は民主党支持者だから」と株を買った人は大損しました。お金をドブに捨ててまで支持を貫きたい奇特な人はいないという前提ですが。

つまり、株式市場はコンセンサスがどうなるかを占う場なのです。このことを経済学者ケインズは「美人投票」と称し「1位になる人を的中させると勝ち」のゲームにたとえました。あなたの趣味でAさんが良いと思っても、周囲はBさんを選ぶと思えばBさんに投票しないと負けです。だから多くの人がコンセンサス(みんなが美人だと思うだろうBさん)を選ぶようになるのです。

さて、今回のアベノミクス解散総選挙はどうでしょう?

僕の記憶では11月10日ごろから憶測が流れ、株価が織り込みはじめました。10日の日経平均引け値は16,780.53円です。発表は18日夜だから翌19日引け値を見ますと17,288.75円で、今日が17,357.51円ですから発表時には織り込み済みでした。

10日からは徐々に織り込みながら3%ほど上げていますから、現時点ではコンセンサスは解散を概ね好感している、ということです。

今回の選挙には大義がないと野党は言いますが、あります。18か月先送りした10%への消費増税です。そこからの先送りはない、必ずやるという信を問う選挙です。その時点で経済が不調で増税が国民生活の足かせになるなら安倍首相は責任をとるという条件付きで。

これは日銀に金融緩和継続を宣言させて官邸と協調姿勢をとった財務省と、そのアコード(協調)を継続する唯一無二の選択肢だったでしょう。

このアコードが崩れれば緩和は終結し(日銀は本音はやりたくない)、株価は暴落します。その場合、増税もコミットされていないわけですから、国際社会での日本国債の信用力が落ちます。するとS&P、ムーディーズの格下げという事態になります。すると国債は売られ、日本の金融機関のバランスシートは悪化します。円は売られます。

つまり、資産効果が削がれ経済失速、デフレに逆行、金融機能がますます停滞、円安で物価高という四重苦に突入し、日本の国力はズタズタになります。

株高は企業と富裕層だけのメリットで大半の国民に利益はないと野党は言いますが、株が上がって誰が損するのでしょう?デフレ環境であったのに誰にも不利益がないというのは、大きな利益なのです。

ここで株が下がれば国民全員の生活に、例外なく大打撃があります。これは誰かが株で損するからではありません。

民主党があのまま政権に在ったら今ごろデフレが治癒の見込みのない重病となっており、日経平均はおそらく7000円以下で、被災者の方、社会的な援助が必要なかたがたまで含めて我々の生活はどうなっていたか、考えてもゾッとします。

株価というものは、それで誰かが儲けるだけだろうという他人事ではなく、誰もが影響を免れられない経済環境全体をしめすバロメーターなのです。結果として株を下げてしまうような政権になれば国民全員が不幸になるということを言っております。

円安はよろしくない、良い円安などないというのはブログで強調したとおりです。円安でもこの2年で日本の輸出は伸びてません。企業の海外資産が円ベースで増えて株価に一応はプラスですが見かけ上の増加ですから持続性はなく一時的な要因です。

だから円安イコール株高というのは株がよくわかっていない人たちの呪文にすぎない。しかし、いくらなんでもそのうち彼らも真相に気がつきます。今の円安はデフレ治癒の金融政策という、「投薬によるによる副作用の発熱」にすぎません。

しかしこれだって、ここから経済・株式オンチの政権が医師として治療を続けたらその発熱で患者が死んでしまいかねないほど、今の病状は複雑です。

野党の野合はいかんというのがかつての選挙でしたが、今の野党は解党はあっても野合する力すらない。政権担当能力など言うに及ばずあるはずがないのであって、消費税増税を18か月後にコミットする力も当然ありません。ということはアコードもなくなるわけで、従って、我が国は四重苦に突入し、国民の生活どころか中韓露になめられて国土保全すら危うくなります。

つまり、自公の負けイコール株価、国債、円の暴落なのです。だから解散総選挙がささやかれだしてから日経平均株価が「暴落しなかった」ということは、それがコンセンサスではないだろうと世の中が思っている明白な証拠なのです。

自公を応援しているわけではありません。それしか選択肢がないので困っているのです。選択肢なんかないだろうという意味で野党が「大義がない」というなら、それは正しいことを言っています。

 

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