西表島(いりおもてじま)紀行
2016 DEC 17 19:19:21 pm by 東 賢太郎
西表島(いりおもてじま)へ行った。今年立ち上げたオンラインTV会社の取材、撮影、情報収集である。僕はこの事業に「歴史を学ぶ」という基軸を据えたいと考えている。芸術も娯楽もスポーツも芸能も、文化というものはまずは日本を知り、愛し、誇りを持つことが基本中の基本である。グローバリズムは大いに結構だがそれがなければただの根無し草だ。自国に根を張っていなければ、格好良くもなければ世界の誰もまともに相手になどしてくれないのである。僕は16年の留学と海外勤務経験の総決算として強くそう思うとともに、思うだけでなく、ネットメディアを作ることでそれを世界に発信しようと決めた。
この島がどこにあるか?まず東シナ海の白地図を見ていただこう。
右が日本、上が韓国、左が中国、下が台湾、この地図の横の辺の距離は1300km(福岡ー青森)ほどである。この地図に載っている部分のおおよその人口だが、中国(上海圏)約4千万人、台湾2千3百万人、釜山・済州島約400万人に対し、九州1千3百万人、沖縄県144万人である。
台湾と九州の間の島名をご覧いただこう(下)。西表島は東京から2000km、沖縄から400kmほどあるが、台湾には190km(東京-静岡)で、人口はというと隣の石垣島5万人に対して3千人しかいないのである。そして、ご覧の通り、問題の尖閣諸島はその北方わずか160kmほどにある。
4千万、2千3百万、144万、この数字の重みをすべての日本人に考えていただきたい。尖閣がいかなる事態になり得るか、それはこと尖閣諸島だけの帰属問題ではない。尖閣を領有されれば、ご覧の通り、西表島はおろか石垣島と宮古島の主権さえ、少なくとも地理的距離感でいえば危ない。相手は囲碁を仕掛けている。しかも、この地図だけを百年構想で世界に見せ続ければ、「一つの中国」で隣は我が国土だと主張し続ければ、やがてクリミア半島のように沖縄まで十分に射程圏内だと思われるのである。
ちなみに八重山諸島は1500年に石垣の豪族、遠弥計赤蜂による琉球王国への反乱があった(オヤケアカハチの乱)が今でも赤蜂は八重山の英雄と讃えられている。現在も石垣市の中山義隆市長は「中国の公船が沖縄の行政区域で領海侵犯を繰り返す中、中国トップに会えても何も発言しない。片方の国に言わず、アメリカでは基地問題を言う。那覇市長だったらいいが、沖縄県知事だ」と親中・反米・反政府の翁長 雄志氏を批判している。
おりしも北方領土をかけた日ロ首脳会談があったりオスプレイが墜落したりのさなかだ。人口3千の島に降り立って、そこが日本国であること、女子供が何も知らずに遊べるほのぼのした日本語世界であることを心から有難く思い、父の世代への感謝をいっそう深くした。
行程はというと、羽田午前11時10分のANAで石垣島まで直行で約3時間。空港から港までタクシーで30分、そこから船で50分で西表島の大原港に着き送迎バスで1時間でホテルニラカナイに6時に到着する。冬季はホテルに近い上原港はほぼ閉鎖なので1時間余計にかかる。待ち時間を入れて片道7時間は結構長いが、2年前の12月に行った屋久島は肌寒かったのに対し亜熱帯で台北より緯度は南の西表島は日中気温が26度もあって充分に泳げる体感であったから屋久島から見ても外国のようなものだ。移動時間は仕方なかろう。
夜の8時から娘たちとガイドさんで特別天然記念物のヤマネコを探すツアーに出かける。約100匹しかおらず会える確率は2割ぐらいと聞くが、比較的人を平気な母子がいるらしい。真っ暗になる新月で雨上がりがベストだそう。新月ではないので曇ることを期待していたが、晴れ男がたたって月が煌々と出てしまう。まさに月明かりだけで本が読める!息を殺して1時間ほど4人で歩いたが不首尾。今日のごはんはカエルじゃなくてお魚だったね。人っ子一人いない広々した田んぼは何種類もの声のカエルのフル・オーケストラ。忘れ難い残念賞だった。
翌朝は7時からトレッキングツアーで森のなかを滝まで歩く。何やら奇怪な植物がある。4回行ったミクロネシアと比べてしまうがパンの実は見ずヤシも食べられないようで、食性は熱帯雨林の方が豊かなようだ。
昼食は右のようなもの。ウミヘビとはすごい。それも考えたが、島外では食べられないと聞いた猪汁(琉球猪)にした。娘が注文したガザミ汁(マングローブにいる大型のワタリガニ)は全く違和感なく美味である。食は土地の文化を象徴する。水質、土質、食材の特性や制約が人をつくり、それは精神活動にも及ぶからだ。
猪汁だ。島民はこれを刺身で食べるが禁じられた。味は悪くないが野趣あふれる食感と風味で、英国のgame(ウサギ、鹿、フクロウ、キジ等)に匹敵する。スープは特に美味である。肉はやや硬いが感謝の気持で内臓まで全部頂いた。
午後は沖縄一の落差54mあるピナイサーラの滝がそそぐ岩の頂上にトレッキング。高低差は100m強だが傾斜が垂直に近くロープがある難所が3つあり、往復3時間余りはそこそこきつかった。右が滝の注ぎ口だが垂直に54mの崖は、高所恐怖症の僕としてはこの地点までが近寄る限界であった。
ホテルはこんなもので部屋も清潔でいい。食事はバイキングだが地元の食材をあれこれ試せて不満なし。チェックアウトの時にお会計を見て、えっこれ合ってる?と聞いたら高いという意味にとったらしく丁寧に明細を教えてくれた。ちがうちがう。思ったより安かったのだ。この時期おすすめだ。
西表島を遠望しつつあとにする。海は青く、娘は地中海クルーズを思い出していた。西方にある島に日の入りになるので西を「入り」と読むときいて合点がいった。石垣島目線なのだ。
わずか2泊だったが、行きがけは鄙びてると感じた石垣島がずいぶん都会に見えた。26度でぽかぽかと暖かく、ここもいいなと思って「ゴルフ場は?」とタクシーで聞いたら「ひとつだけあったんですがねえ、飛行場になっちまいましたよ」とベテランの運転手さんが嘆いた。
(ご参考)
このブログは日ロ首脳会談前日に書いた。
領土は取られたら終わりだ。ポツダム宣言受諾後に強姦しておきながら第2次大戦の結果だなどとほざく極道に手も足も出ない。こいつらは返還する気などさらさらなくディールのネタに使うだけなのは眼を見ればわかるのであって、首相も冷徹に構えて論功に走るべきではない。ロシアへの投資など企業の是々非々のリスク判断でやればいいだけだ。政府はそれを足し算して経済協力だとほざいておけばいいのであって、やがて得られるかもしれないのが2島ならむしろカネなど出すべきでない。温泉と秋田犬は断られましたとか、でも講道館では喜んだとか、わけのわからんロシア学者がよくやったとか、マトリューシュカのお姉さんがいい解決を望んでますとか、この国民のお花畑ぶりはおめでたいもほどがあるのであって、安倍首相はもう一度オバマとつるんだほうがいい可能性がある。
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Categories:______国内出張記, 政治に思うこと
中島 龍之
12/19/2016 | 11:43 AM Permalink
地図でみると、西表島、石垣島は中国になりかねない距離です。「米軍基地出ていけ」が沖縄の正義になって、米軍容認派は、非国民のようになっているのでしょうか。オスプレイが墜落した件で、沖縄県副知事が抗議に行って、米軍のトップが「オスプレイのパイロットが、住宅地を避けて、海上を遠くまで飛んで、落ちたことを賞賛すべき」と言ったことを非難していましたが、オスプレイのパイロットが死んでいたら、どう言ったのでしょうか。オスプレイが落ちたことは、謝罪すべきでも、パイロットの対応は評価すべきではないでしょうか。話変わって、西表島、景色いいですね。石垣島に誘われたことありますが、行っていないので、石垣島にいくときは西表島も行きたいものです。ウミヘビはちょっと遠慮したいところです。猪汁は大丈夫と思います。
東 賢太郎
12/19/2016 | 1:11 PM Permalink
中国になりかねません。我々戦後派は実感のわかない北方領土の地図を見て歯舞、色丹が「えっ、こんな近いの?どうして日本じゃないの?」とあらためて憤慨するわけですが、それを言うなら、八重山諸島はどうして中国じゃないの?と堂々と言われかねない位置にあるということです。無人島の尖閣ごときどうでもいい国際社会は地図を見てやがてそう思うようになるでしょう。
領土の主張は言っても意味ないので中国は必ず尖閣を実効支配に出てきます。必ず。それを軍人がなりすました漁民の大群でやられたら自衛隊は法的に出せません。日本はやられます。憲法改正が必要なのは明白であって、それに反対する政党は「尖閣は中国にさしあげましょう」と言っているに等しいのです。選挙で踏み絵になります。日本人かどうかの踏み絵ですね。
実はそう言う僕も冒頭に掲げた白地図はついこのまえに見てぎょっとして、だから行ってみようと思ったのです。学校でそういうコンテクストで教わった記憶がありませんし、日本人の尖閣問題への意識は地理認識すらその程度だから希薄であって仕方ないものがあります。日本の教育はほんとうにまずいですね。
東 賢太郎
12/19/2016 | 1:49 PM Permalink
オスプレイですが、僕はまずパイロットが亡くなったのかどうか知りたかったが日本のテレビは安否にふれませんでした。人命が大事だというなら米国人の人命も大事でしょう?しかも同盟軍ですよ。ところが「やっぱり墜ちました。危ないですね。飛ばすのやめてほしいですね」というトーンの報道ばかりです。この客観性の欠如は米国、欧州の国を代表するプレスでは考えられない。愚民報道ですね。しかもこれが同盟軍のプレスのすべきことかどうか?プレスですからね、戦争被害や基地への沖縄県民の意識とは別次元の話であって、日本が敵に攻められたら本気で守ってやろうかという安保条約の有効性の根幹に触れることです。教育と同じほどマスコミのレベルの低さもまずいですね。やがてこういうことが踏み絵になってふるいにかかっていくでしょう。国民の眼は節穴じゃないです。
Tom Ichihara
12/19/2016 | 6:22 PM Permalink
外国に住んでいると,全く日本国民のおめでたさには御同慶の至りですな。
国境を経験していない国民のせいでしょうか?
小生が小学校の4年生頃、ロシアが福島から以北、もしくは北海道を寄越せと騒いだ事を思い出します。
実現していたら日本人ももう少し切迫感を持ち続けたかもしれません。
プーチン会談で4島、もしくは2島返還なんて「阿部のお坊ちゃま」では丸め込まれてお終いと読んでいました。
これから経済的に力を入れ、島が豊かになれば日本を追い出すに決まっています。
あんな軍事的に有利な場所を返すはずが無いでしょうな。
3年前、約50年振りに石垣島を訪問しました。
当時、ダイビングに狂っていた頃で沖縄返還の翌年だったかな。
一緒に潜って居た「石垣四郎」がまだ健在で現役のシャコ貝取りの漁師です。
4歳で八重山から石垣の潜りの漁師に買われたそうで、戦後名字を「石垣姓」を名乗ったそうです。
当時の石垣島はのんきな物で,沖縄本島より台湾の方が近く、その頃でも嫁入りや親戚付き合いで台湾と行き来していて、海上保安庁も見て見ぬふりしていたそうです。
オスプレイもそうですが、ヘリコプターの出始めだって事故の続出で当時は開発中止の声も出ていたのです。
日本国を守るために来ている米軍にはむしろ感謝すべきのはずで、それを出て行けなんて、では誰が国を守るのですか?
どうしてこれを声を出して主張しないのでしょうか。
東 賢太郎
12/19/2016 | 9:53 PM Permalink
市原さん、うれしいです。オスプレイは危険だやめろ、米軍でていけ?じゃあ自国は自分で守るわけね?じゃあなんで自衛隊反対なの?なんで憲法改正がいけないの?この論理破綻に論理で反論してもらいたいですね。狂ってます。