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イタリアの惨状に心が痛む

2020 MAR 24 1:01:58 am by 東 賢太郎

イタリアはドイツ人にとって永遠の憧れの地である。かのゲーテもアルプスを越えるとわくわくした。僕の部下たちもお客さんも、ドイツでは渋面を作っているがあっち側へ行くと人が変わったように明るくなった。

何度イタリアへ行っただろう。まずは仕事で、チューリヒから車を飛ばせばゴッタルド・トンネルを抜けてイタリア語圏のルガノへ1時間ちょっとで着いた。そこからコモ湖を経てミラノは1時間だからぜんぜん外国という気がしない。観光、買い物、オペラ、スキー、ゴルフ、サッカーなどの「不要不急」も入れれば2~30回ぐらいだろうか。

クルーズ船もヴェネチア、ジェノヴァから乗った。最初は35年前。東洋人は我々夫婦だけで、余生でもう一度だけ外国旅行するなら地中海クルーズがいいと思う程楽しくイタリアには特別の思いがある。子供たちが結婚記念日にクルーズのチケットをプレゼントするよと言ってくれたその矢先にコロナ禍が襲ってきてしまったが、残念より何より凄まじい勢いの感染による惨状には心が痛むばかりである。

あの国は財政が苦しいから中国の一帯一路に飛びついたのはわかるし、それがこんな厄災につながろうとは誰も想像しなかった。北部に住みついた中国人労働者が春節でウィルスを持ち帰ったのを遮断しなかった初動の問題はあるが、日本も武漢の閉鎖前の対中国の水際対策のユルさは似たもの同志だ。そのうえにこっちはD・プリンセス号の数字もあるのだから日伊の被害の差は驚くしかない。こんなに失敗してるのになぜ数字が少なくて済んでるんだろう?

統計では示せないが、日本が今のところイタリアのようになっていないのは何よりも、清潔好きという国民性の寄与が非常に大きいと思う。ドイツ人もそうなのだが、それは主婦がテーブルや食器やドアのノブをぴかぴかに磨きカーテンの裾を微塵も汚さないことにプライドをかけて執着するという感じであってちょっとちがう。公衆トイレにまでウォッシュレットがあり、バスタブで頻繁に入浴し、普段からうがい・手洗いが当たり前という身体的な潔癖さという面では日本人に勝る民族はないように思うがどうだろう。

それがイタリア、フランス、スペインのラテン系の人たちとなるとさらに我々とは遠い。例えばハグだ。日本ならカラオケで盛り上がれば社員とのコミュニケーションはOKだが彼らはそれだけではいけない。見ているとやっぱりポイントは締めのハグであり、女性なら両のほっぺにチュチュぐらいは当然というか、場面によってはしないと失礼の雰囲気すらある。酒の勢いではなく立派な文化なのであって、例えばコンチェルトが終わって女性ピアニストに指揮者がしているあれだ。濃厚接触などというも野暮であるが、そうはいっても物理的には濃厚接触以外の何物でもない。

幸か不幸か柄でない僕はハグもキスもまったく不得手でつまんない堅物と思われてたろうが、そのかわりというのもなんだが潔癖症であり、例えばプールサイドの濡れた箇所を歩くのが猫なみに生理的に嫌いである。不潔に感じて気持ちが悪く、おかげで泳ぎは今もさっぱりだ。盃や茶器の回し飲みもウィルスの交換に思えて御免である。電車の吊革はコロナ以前から触らないし、仕方なければ小指と薬指でつかむ。やたらと初対面で握手する西洋の風習に慣れるにも時間がかかった。でも、ここまでではなくともこういう日本人は結構いるのではと思う。空気感染もあるコロナがそれで大丈夫とは思わないが、真逆の性格の人よりは餌食になりにくいだろうとは思う。

いまのところ感染者も死亡者も多くないのは日本人の潔癖さと生真面目な用心深さによるところが大きいというのが私見だ。日本だけ薬があるわけでも、特別な医療があるわけでも、日本人だけ抗体があるわけでも何でもない。まして政府が他国より群を抜いて良い手を打ったわけでも資質において優秀なわけでもまったくない。

いまだウィルスに「丸腰」状態なのはイタリアと変わらず、都市封鎖までして約3248人(3月20日現在)が死亡して「地獄」と化した武漢みたいになる可能性は全然消えていない。何度も書くが、桜が咲いて気が緩み、学校閉鎖が解けてなにか事は済んだようなユルい空気が広がると危険で、不顕性キャリアが増えて一気に感染者が増えるオーバーシュートになると医療限界を超えてイタリアの二の舞になる可能性は十分にある。

人の噂も七十五日とはよくいったもので、株式市場を見てると確かに日本人は2か月半で物事を忘れる傾向がある。1月半ばから始まったコロナ騒動は、3月末でそれを迎える。

 

 

Categories:新型コロナ・ウィルス

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