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これから日本で起きかねない最も怖いこと

2020 JUL 26 16:16:43 pm by 東 賢太郎

米国がヒューストンの中国総領事館の閉鎖。これは決定打だ。トランプ政権はすでに留学生締め出し、中国企業のナスダック上場規制などスーパーマンを演じる標的をコロナではなく中国に定めた。コロナはエイリアンである。スーパーマンをも食い殺す。この事実に反逆しても無駄だ。立ち向かってウソの強がりをばらまいても勝てないから、その怪物をはびこらせた責めを中国に負わせて叩くしかないと舵を切った。この作戦なら国民受けのいいスーパーマンを演じ続けられるし、中国融和策をとってきた民主党が同じ主張をしても勝てる。もう大統領選まで時間はないのだ。

いくら中国を叩いても怪物は消えない。そこで共和党は1兆ドルの追加対策をまとめた。超金融緩和はゼロ金利にとどまらず、やがてコロナで潰れる運命にある会社の債券まで大判振る舞いで買ってあげる。だから投資家は安心して株価は下がらず、それを見た有権者は経済は大丈夫だとだまされ、トランプはぎりぎりセーフでまだスーパーマンに見えている。それで選挙がどうなるかはわからないが、どっちが勝っても、歳入は減り、追加救済の財政支出たれ流しは続き、FRBにはクズ債券の巨大な山が残る。

それでなぜドルは暴落しないのか?簡単だ。世界中の政府も中央銀行も同じことをしているからである。みんな下がれば、お互いの交換レートは変わらない。だから通貨でないゴールド(金)は上がっている。いや上がっているのではない、全通貨が下がっているのである。トランプは反知性主義者だ。演説会場が3分の1しか埋まらなかったと選挙対策委員長を切ったノリでウィルスの世界的権威ファウチ教授を切り、経済驀進のアクセルをふかしたらエイリアンの大逆襲を食って支持率が暴落してしまった。そればかりでなくドルの本当の価値も下げているのだ。

それでもなぜドルはもつのか?簡単だ。基軸通貨だからである。多くの巨額の物品やサービスがドル払いでないと買えませんよとなればまずドルを買うしかない。浮力がつくのだ。基軸通貨論については思い出がある。野村インターナショナル香港の社長の時、98年ごろだが、前大蔵省財務官で「ミスター円」こと榊原英資氏が来社され議論をした。氏は円が世界の基軸通貨にはなり得ないがアジア域内なら可能ではないか、中国のオフショアの位置づけで香港で円、人民元を含む複数のアジア通貨をバスケットにして資本市場ができないかと尋ねられた。

僕は香港はドルリンクのHKドル市場でオフショア発行市場としては機能していない、国外の円での資本取引は全てユーロ円でアジアでもできる、「ドルぬき」の国際金融は本邦企業のスイスフラン起債市場ぐらいで極めて限定的であると申し上げた。氏は中国浮上を予見しておられ(ご明察だった)、財務長官サマーズに潰された円の国際化を東京ではなく香港で元とパッケージで行う策を講じていたと思料する。あれから20余年たってGDP世界2位となった中国が元を国際化(多国間決済通貨化)する試みを米国は悉く根絶やしにしている事実を見れば、強行しても100%失敗した。断念されてよかった。

習近平は自由取引市場としての香港を自ら潰してしまったが、金融取引の観点からはロスが多大だ。機能は深圳、マカオ、海南島に分散すると言ってるが金融に関してはまったく無理である。米ドル本位制で市中銀行が発券するHKドルの信認すら危うい。米国に香港を潰す利点はないが対中制裁で必要ならばでき、中国の国際取引は打撃を受けるだろう。究極の自由経済主義と低税率で海外から誘引した資本と人材は逃げるが、香港の頭脳も逃げる。コロナの人・人感染を12月に政府が知って隠蔽したという証言をして身の危険を感じ、4月に米国に亡命した女性科学者がyoutubeでそれを堂々と語っている。秘密も漏れるのだ。

中国は元を基軸通貨にできなければ米国に勝てないだろう。通貨は貿易決済、資本取引で国家の命運を握る。トランプが再選しなくても米国はその主権だけは絶対に手放さない。何故なら、コロナが2,3年も続けばどの国も国家財政が破綻する。米国も未曽有のドル大増刷を続けいずれ破綻するだろうが、基軸通貨国であればそれは最後になる。先に破綻して通貨が暴落した他国の富を搾取すれば米国民だけはノアの箱舟に乗れるのだ。

日本はどうだろう?経済を回すのは結構だ。日本株は米国の余勢をかって同じまやかしの手口で高止まりしている。明らかにフェイクの株価だが裏の原理を知っている政治家はいないから御用学者を養成して国民を欺いてバラまき目的のゴーゴー・キャンペーンをやろうとしている。トランプはそれでよかった。なぜなら、マスクはせず、自らが先頭に立って体を張って怪物に立ち向かうスーパーマンだからだ。安倍首相は列の一番後ろで小さめのアベノマスクをしっかりして「体は最後に張ります」というイメージしかない。感染したらご愁傷さまでしたぐらいは言ってくれる(笑)。トラベルであれイートであれ、その人にゴーゴーを言われてもねということにしかならない。

唯一の救いの道は外交、国防だ。これは中共寄りの野党が何を言っても国民は信じない。しかし、では、安倍首相がトランプのポチとして中国叩きに加勢できるか?無理だろう。東京オリンピックを自身の花道と選挙の目玉として死守したいという制約で王手飛車取りとなっている。習近平とこじれて不参加を表明されれば開催が危うい。親中派の二階氏とこじれれば四選も岸田後任も危うい。とすると、習サマにソンタク姿勢となって外交、国防カードは消える。対症療法のバラまきでは消費は戻らず、倒産・失業が看過できぬ水準になり、さらなるバラマキで原資が尽きる。御用学者は逃げ、感染阻止失敗の責任を問われる。

つまり、将棋は詰みである。首相が誰でもべつに構わないから、国民にとってどうでもいい政治家の就職活動で国家の運命を過たないようにしてほしい。望むのはそれだけだ。怖いのは、日銀のバランスシートは世界一のぶよぶよの「メタボ」状態であることだ。それでも円が大丈夫なのは長年の日本国への信用の賜物だが、信用は築くのは大変だが失うのは一瞬だ。ここで官邸が暴走老人みたいに無謀に経済アクセルをふかしてしまうと臨界点を超えてしまい、やがて円が暴落し、米中資本の格好の餌食になって取り返しのつかないことになる。だから僕は資産の半分は米ドルにしている。

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Categories:政治に思うこと, 新型コロナ・ウィルス, 若者に教えたいこと

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