エリザベス女王の酒壺
2021 MAR 15 0:00:47 am by 東 賢太郎
上海の豫園が好きで行くと必ずお茶に寄るのが「湖心亭」だ。何度訪問したか、からっきし覚えてないが10回は下らないだろう。どうということない定番の観光スポットだし、お茶もそういう所なりにちょっと高くて、特におすすめの場所でもない。
中はこんな感じだ。上海で一番古い茶館で創業は1855年とある。当初は豪商の集会所として使われたらしい。
あれが何時だったか、そのときなぜ上海にいたか、さっきから考えてるがわからない。同行した面々の顔は思い出すのに、どうしてあの人たちと?というのが不明だ。上海雑技団で盛りあがったのしか覚えがないのだから気合の入ってない仕事だったのか早く帰りたかったのか。
たぶんランチの後で酒も入ってぼ~っとしてたんだろう、店の人がいろいろ由来を説明してたがうわの空だった。「はい、そのときお酒をお注ぎしたのがあれです」と骨董品らしいのが並んだガラスのショーケースを指さしていた。別に興味もなくそこから記憶は飛んでいるが、「エリザベス女王」と聞こえた気がした。
帰り際にそのケースを眺めていて、ちょっと気をそそる形のものが目に入った。紅茶を注ぐポットを小ぶりにした感じで、いいな、欲しいなと思った。「すいません。これなんですか?」「ああ、さっきお話しした女王陛下の・・・」
そう、それで、家にこれがある。それはまちがいない。酒壺らしい。
どうも、即決で買っちまったらしい。いくら払ったんだろう?覚えてない。だまされたか?絵柄はあんまり高級にも見えない。売ったらいくらだろう、なんでも鑑定団かな。
ここから推測になる(自分のことだ、情けない)。
まず確実にいえるのは、僕は女王様にはあんまり興味ない。するとなんだろう?唯一考えられるのは、明治生まれの爺様が三井物産の上海支店長だったことだ。豪商の集会所・・・これでお酌されたんじゃないか?空想もいいとこだが、いまこいつを自宅の仕事机に置いているが、なんかほんわかと豊かな気持ちにしてくれてうれしい。
まあ僕が2才で逝っちまったから写真でしか知らないし、お通夜の枕もとで赤堂鈴之助を歌って踊った(らしい)のは喜んでくれたんじゃないか。たぶん、買っとけよとささやいてくれたんだろう。ともあれ子孫にはお願いしておく。食うに困ってもこいつはメルカリに出さないでくれよな。
なぜかわからない、僕にとって上海は不思議な気分になるところだ。
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