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我が賭博論(賭けはいけないことか)

2021 SEP 1 1:01:53 am by 東 賢太郎

昨年のことだったか、黒川検事長が賭け麻雀で退任に追い込まれたのは考えさせられるものがあった。僕の世代からすると後に官僚や法曹になって活躍した連中が本郷の正門あたりの「葵」「珊瑚」「あずま」なんて雀荘に入りびたっている光景などいたって普通だったからだ。学生身分だとレートはテンピン(千点百円)がちょっと高いかなという感じであり、黒川氏はテンピンだから高額賭博をしたのだとマスコミに盛られてしまったが、人を裁く検察官ともあろうものがけしからんという道義的反発が大きかっただろう。賭博罪に官も民もないが公務員はそういうものが人生のコストになってしまうし、まして政治の生贄にされたのだから気の毒だ。

はっきり書かせていただくが麻雀で賭けないなんてのは塩気のない味噌汁みたいなものだ。 外国でOKなら日本もという気はないが、英国では賭けは貴族社会の嗜みだ。ロイヤルアスコット競馬はロイヤルの名称の通り王室が主催する社交場で、もちろん大衆も思いっきり博打を打てる。我が国なら皇室が中央競馬会のオーナーということであり「賭け事」に対する国民性がまるっきり違う。オッズを出す帳場がブックメーカーの元祖であり、還元率が95%とフェアだから英国政府は公式の帳場として認めている。 日本の競馬の還元率は70~80%と低く、宝くじに至っては還元率45%以下と詐欺に値するほど抜きまくっているのに、「公営」(地方自治体が総務大臣の許可で発売)という安全安心っぽさをまとって宣伝しているのは奇異である。民営でもパチンコだけ三店方式で不問というのも変だ。僕は罪刑法定主義を厳格に守るべしという立場の者だが、賭博罪については「ワラントはそれに当たる」と大蔵省に言われ閉口した経験もあり、公営ギャンブル以外は禁じる法律、考え方は江戸時代のまんまといえる。

入社してからは海外なので賭けは合法、やり放題でカジノ、ゴルフを専門にやった。 実のところゴルフはそのためにやっていたようなもので、スポーツとしてそれほど関心があったわけではないから真剣なゴルファーには申し訳なく、趣味の欄にゴルフとは書かないようにしている。 さて、賭けにおいては好スコアを出したほうが有利なのはもちろんだが、毎ホール賭けの状況(倍率)が変わるからそれだけでもなく、種目を多くすると倍率のボラティリティー(変化率)が高くなるのでスコアは負けても賭けは勝つなんてことも結構ある。 つまりゴルフの技術はあるに越したことはないが「このホールは高いぞ」という場面で勝てる勝負強さこそが雌雄を決するからメンタルの強さのゲームということでもある。社会でうまく生きるにはこの能力は不可欠だと僕は思っており、現にビジネスでそれが活きた場面は何度もある。

ゴルフは自然とそのメンタルを鍛えてくれる。最後のパットをはずして大敗なんてなれば敗戦の悔しさの上にカネまで巻き上げられる。朝早くから家族をほったらかして俺は何をやってたんだと自責の念に駆られる。だから、布団に入ってさあ眠ろうと目をつぶると、くっきりとティーに乗っけたボールが、それもポチポチまでリアルに瞼に浮かんでくるぐらいの猛練習をした。 別に賭けに勝てる訓練があるわけでもないが、基本的に下手だと勝つはずないからまずはそれしかない。 そしてそれは競技としてのゴルファーとしても当たり前の努力なのである。だから適度の賭けはモチベーションを正しく高め、努力する意欲をかきたてるわけだ。後に、このことは起業してみてまったくおんなじだと感じ入った。

会社をゼロから起こすのはリスクを取っておカネ(資本)をつぎ込む立派な賭けだからである。ソナーの場合は8千万円を賭けたわけだ。 一般に賭けは怖いと尻ごみする人の方が多いから、会社法は「株主は有限責任だ」としている。104条は国が「オッズが有利な賭け」にして起業を振興してくれていると読まなくてはいけないのだ。株式を買った資金以上には損しませんよという免罪符は失敗のリスクを限定するから、その事業をやれば無限に儲かると信じている起業家にとってみれば “リスク < リターン” の状況が国によってそこに用意されているのであり神のように有難い。かように、英国でできた仕組みというものは賭けを誘発して資本主義経済のエンジンとする思想が盛り込まれているのである。

資本主義は役目を終えたと主張する経済学者が昨今は世界的に増えているが、民主主義社会で共産主義、社会主義が役目を果たして国民を満足させ国を栄えさせることに成功した事例などない。資本主義をやめてそんなものに国運を賭けましょうなんて、そっちのほうがよほどバクチを打っているのであり、資本主義的競争で勝ったことのない人がそう言ってるのだから危険ですらある。日本が民主主義をやめないなら資本主義の永続は不可欠であり、国が税金をばらまいて産業を振興し需要を創出して国民を富ませようなどということは成功するはずがない。ただでさえ若者が元気になれない社会になってしまっているのだからそれは彼らの「賭けの精神」を殺してしまうだけで、その結末は全員が公務員志望となって国は滅びるだけだ。中国との勢いの差は人口だけのせいではない、何億匹いても羊は羊だ、狼がたくさんいるから日本は押されっぱなしなのである。

狼になりたい若者にはゴルフを奨励したい。こんな面白くて人生の教訓に満ちた遊びはない。もちろんジェントルマンとして賭けてほしいが、属地主義で刑法が適用される日本においては順法精神に則り金銭ではなくランチかビール一杯か車の送迎ぐらいが望ましいだろう。おおいに負けて悔しがり、おおいに勝って凱歌をあげ、挑戦するモチベーションを高め、そうすることによってうまくなるんだという実地の経験を積んであらゆることに活かして欲しい。僕はゴルフで自省と忍耐も覚えたが、それが大事だと気づいたのも賭けに勝つためだ。行け行けドンドンではだめなのである。精神修養にもなるからグリーンフィーは安いもの、そういうものはコストではなく「自分への投資」という。

以下の賭けはきっとゲームの「スパイス」「お楽しみ」になるだろう(ググれば中身はわかる)。

ドラコン、ニアピン、タテ、ヨコ、ナッソー、ラスベガス、オトモダチ、ピンポンパン、オリンピック、ヘビ、カニ、キコリ、ターザン、サオイチ、スナイチ、星の王子様、オネストがスタンダード。公平のため平均スコアに応じてハンディを付与しプレー前に4人の協議で決める。 どれをやるかはオプションだが基本であるタテ(ストローク・プレー)、ヨコ(マッチ・プレー)は必ずやるべし。 わざとショートしてグリーンに乗せないペナルティーに淡谷のり子(あわや乗りこ)、三浦とどかず(友和)を加える。

腕前で大差になるのはラスベガスである。 毎ホールの打順で1,4番と2,3番が組んで、スコアが順に4,6,9,5とすると組の小さい方を十の位にして45対69となり24点動く。 ロングだと4はバーディなので相手がひっくり返って45対96となり51点動くという凄いことになる。 そこで日本から見てラスベガスまでは行かないサンタモニカといって4+5と6+9で6点動くというマイルドバージョンもある。

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Categories:ゴルフ, 若者に教えたいこと

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