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石原慎太郎氏に思う

2022 FEB 7 10:10:35 am by 東 賢太郎

石原慎太郎氏のご冥福をお祈りし、心よりお悔やみを申し上げたい。同時に、とてもインパクトのある方だったから思うこともたくさんあった、それを書きたい。まず、氏は加山雄三と共に僕らの世代の「カッコよさ」を体現する湘南ボーイのはしりであり、弟と共にスターでありアイドルだった。僕は団地族の平民で中流のまた真ん中ぐらいの家の子なのでああいう金持ちのボン風情には猛烈な反感を覚え、芸能人の弟は興味なかったがインテリであるところの兄貴はというと、あの手には絶対負けねえぞというモチベーションの対象だった。つまり、ある意味でお世話になったのである。

右左はともかくあれだけの物言いで物議は醸しても某元総理と違って失言とされない人はなかった。さすが芥川賞作家だ。何も言えないつまらない世になってしまったからもはや最後の人なのだろう。94年ごろだったか「いま、我が国の政治家は私利私欲目あての輩ばかりになり下がった」というような趣旨のことを国会で言い放った。ドイツで新聞か何かで知ってこれは痛快と思い、おお、頭領になって二・二六事件でもおっぱじめるのかと期待したら議員を辞める口上だった。はあっ?リアリストである僕には意味不明。国際社会でもそうだ。おっさん、ナルシストで外人嫌いの純ドメ右翼なんだなあ、このノリで日本は国際連盟を脱退しちゃって大変なことになったんだけどなあと人間の勉強にはなった。

政治は政策以前に思想、信念の戦いの場でしょ、本来は。まあ階級と言ってもいい。イギリスが長いのでそう思うわけだ。昨今、なにやらヒトラー発言でもめていてそんな危険人物が現れたかと思ったら、イメージ悪いからヒトラーはやめろという下衆の争いだった。テレビ映え第一のおばはんとかわらない。思想、信念は何ですか?そもそも、あるの?というのばっかりだ。だから、やめとけばいいのに「国家観はありません」と堂々と公言しちゃって、それで米中に互角に相手してもらえると思ってるような、要は総理の椅子に座るだけが目的の人が出てくる。それを聞いても馬耳東風で取材源としか思ってない、頭が空のマスコミが支えるというチャラい構図ができている。石原発言から四半世紀たって、もう熟成の域である。医学は関心ないが成績が良いので医学部を受験しました、収入もいいですしなんて医者に誰が命を預けたいかと考えてみればいい。

こういう連中と比べては誠に失礼だが、石原氏の思想、信念は明確だった。日本は短期間に大国となった有色人種による奇跡の国だ、これを忘れたらいかん、米中のポチなどあり得んということだったと思料する。有色の所に本気度がちらついて良かった。まったく同感だ。しかし、言うだけでやらない奴より千倍もましだが、米国にNOを言ったり尖閣を買ったりすれば小説なら面白いが現実はそうなれるわけでもない。国家観もない総理がNOを言ってもハンバーガーしか出ないし、尖閣を攻撃する艦長の前に立ちはだかって登記簿を見せても撃ち殺されるだけだろう。勇ましい声を挙げられたのは企業が獅子奮迅の努力をして日本が世界一、二の経済成長を誇る大国だったからなのだ。しかし、もう「だった」なのである。

これを昭和の成功者ほど認めない。石原氏は国民の平和ボケと言ったが、それはエリートの言葉ではないと僕は思う。中国に抜かれたのは人口だけのせいではない、国家的戦略ミスと超凡庸でリスクを取らない企業経営者の責任であり、申しわけないがこれを言わなかったら彼もその一員だったと思われて仕方ない。早く爺さん達を引退させ、40代あたりのエリートが「軍も経済力もない国は恐るるに足らぬ」という “ファクト” から国家再建計画を練り直して民意を問わなくては益々国は後退する。そのために俺もやめるからお前らもやめろなら最後までアイドルでカッコよかった。いい人の評判が高い岸田総理には無理っぽいが、社会主義国の役人みたいなウルトラ凡庸な経済政策で国民の顔色など伺ってる場合ではない。経済がこのまま失速すれば何主義だろうが国民全員が不幸への道に嵌る。

石原氏はブルジョアだから少なくともそういう倹(つま)しいことは考えなかったのではという気がする。いま総理をやってもらえたらよかったかもしれない。

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Categories:政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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