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自民党女性局の外遊は税金で行きなさい

2023 AUG 2 7:07:44 am by 東 賢太郎

外国というのは行ってみないとわからない。いくら小説を読んだり映画を観たりしてもこればかりはどうしようもなく、「百聞は一見に如かず」のことだらけなのである。去年に娘をパリに留学させたが、コロナを恐れずチャレンジしてMBAになってきたのは褒めてやりたい。良い経験を積んだようだ。まず移民社会はいかに治安が悪いかを知った(今年でなくてよかったが)。大学の寮を出ようと下宿を探し、家賃を交渉し、シャンゼリゼ近くに比較的安くて大家が愛想のよい物件を見つけた。しばらくしたある日、部屋にネズミが出た。びっくりしてベッドの下を調べてみると、なんとネズミにエサが出ている。値上げに応じる借主が現れたので娘を怖がらせて追い出そうとしていたわけである。とんでもない大家だが、そんな浅知恵がバレないと思ってる程度の人間でまあ特段の悪党とも思わない。花のパリも一皮むけばこんなものなのだ。移民を入れれば少子化対策になりますね、フランスに学びましょう、パリに行って研修を受けましょうなんてお気楽な世界ではないのである。

自民党女性局の写真にはいろいろ思う所がある。松川るい以外は海外経験もなさそうだし、あそこに立てばああいう写真を撮りたくなる気持ちはわかる。経費をかけて行った以上は何を食べようが買い物をしようが「一見」のうちではあろう。外遊が一概に観光だということにはならないし、写真を撮ってなるべく多くの人に見てもらいたいのは女性にとって自然な気持ちだろう。女性局のレゾンデトルの一部かもしれず、女性議員を増やして活躍社会を築いていくエネルギーを女性に向けて発信もしたかったのだろう。何度もブログで書いたが、僕は娘が二人いるしそれには大賛成なのだ。考えてみよう。あのエッフェル塔ポーズを男がやったらお笑い3人組である。おもろいjokeとしてNFTにして売ろうぐらいのもんだ。つまり女性にしかできないアピールというものは存在するのであり、それが社会に意味を持つならポジティブに考えようというのが持論だ。

ただ、わからないことがひとつだけある。あの写真を不特定多数の眼に向けて開示して、なぜ昨今のご時世で起きそうなリアクションを予測できなかったのだろう?大批判を浴びてしまったポイントはそこだ。つまり女性だからでは済まなかったわけで、自然な気持ちの発露であろうがなかろうがそれを発信するか否かの判断は峻別すべき全くの別物ということなのである。それを誤ったということは女性のアピールの芽を摘んだばかりか民意を読み違えたということでもあり、それが職業である政治家としての基礎的能力が欠如していることを満天下に知らしめてしまったということになりかねない。ネットという仮想空間では世論が思わぬ速度とマグニチュードで積乱雲の如く形成され、その形状が如何なる変転を遂げようかは現代科学をもってしても予測できない。事と次第によってあらぬ誤解をされてしまうリスクがあることを本件から学ばれた方がいいだろう。

私事を牽く。ブログを始めてから11年間の一日の平均PVは2500あって、一言一句、世界の誰が読むか知らないリスクを念頭に書かなかったことはない。日本語世界だけだろうと高をくくっていたら、今年4月に米国プリンストン大学の教授から引用をしたいとリクエストがあってあながち杞憂でないことも悟った。SNSだからと軽い気持ちでアップしてしまうとたちまち大炎上しかねないし、甚大なリスクとして指摘すべきは、一度書かれるとサーバーから消えない限りそれは永遠に残る羽目になるのだ。つまりスキャンダルをおこして何かを書き込まれると、それが誤情報であろうがなかろうが、末代の恥として子孫に「伝承」され、お前の先祖はとんでもないなとなる危険性がある。どんなに立派な学歴、職歴を苦労して築こうが一発のチョンボでパーで、過失でなく人間性、性根の問題だから国民は二度と信用しない。永田町の「所詮SNSだ」と甘く見たスタンスはこれから悲劇を呼ぶだろう。それが有権者の目にも晒され続けるわけで、自分の職業上のリスク(=身の危険)にさえ気がつかず脇が甘いとなると、そんな程度の能力の人が国や国民を守れるのだろうかということにもなる。

この女性たちを批判はしないが、自民党本部が「費用は党費と各参加者の自腹で捻出し、党負担分は国民の税金である政党助成金からは支出しておりません」と詭弁で援護していることはそうはいかない。自民党の収入の約7割は原資が税金である政党助成金だ。この外遊、旅費の自腹を除いた金額の7割は我々の払った税金である。収入項目のネコだましで逃げようとしてもカネに色はない。国民がそう解釈しても反論できないし、したところで自民に投票はしないだろう。そういう屁理屈をこねて煙に巻けるほど全国民が馬鹿だと思っている魂胆が透けて見え、そうやってヤバいことは隠せばそのうち忘れるさとあなどる姿勢が実に不愉快だ。じゃあお前らはどれだけ賢いんだという気にさせるのである。

女性局の外遊は意味があるならやればいい。ただし、全額税金だ。民間では出張費の一部は自腹ですなんてことはあり得ない。ホテル代も営業上の飲み食いも個人の土産等以外は基本的に全額社費であり、会社に払わせる以上は増やしてお返しする、すなわちその出張によって経費を上回る収益をあげられるかどうかを問われるのである。他人のお金なのだから当然だろう。政治家に収支はないなら出張目的と計画を有権者に公表し、経費の使途をガラス張りにし、計画の達成度と成果をこれまた金を出している有権者にレポートで報告する。有権者団体がその議員の出張成果の成績表を作り、それを参考に選挙で投票するか否かを決める。民間では上司がかような管理と人事評価をするのは当たり前であり、だからトータルして会社は利益を出せる。「1割自腹切ってます」が免罪符になって「管理はほどほどに」なんて道はない。まして、本当は慰安旅行なんです、でも有権者の手前もあるし多少の後ろめたさもあるので1割自腹切っておきましょうなんてことは有権者は許してはならないのである。

お笑い3人組

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Categories:______世相に思う, 政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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