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カテゴリー: ______日々のこと

今年の漢字は「力」

2021 DEC 31 20:20:20 pm by 東 賢太郎

今年は何とも言えない割り切れない感じのまま終わってしまった。清水寺のお坊さまが書く漢字は何かと思ったら「金」だ。おおそうか、金か、そのとおりだ、そういえば今年はオリンピックがあったんだっけなあ、想定よりずいぶんたくさんだったもんなあ、予算が。

カネと読んでいた。なんだ、つまらんヨイショだったのか。五輪イヤーで過去に3回もキンはあったらしい。芸がねえな。それなら「忖」の方が良かった。忖度(そんたく)のソン。訓読みは「おしはかる」である。「他人の気持ちを推しはかる」という意味だ、大事じゃないか人間として。そこに「私利私欲のために」が加わったのが昨今の特徴だ。しかも「大きな力」をお持ちのパワフルな方々がおしはかっちゃうものだから国民的関心が盛り上がった。

でもこの字は誰も読めないな、ということでいうなら今年の漢字は「力」だ。同じことだから。しかも、大きな力だから、お坊さまには例年よりでっかい紙に特筆大書してもらいたい。

まず1月のバイデン大統領就任だ。民主党のなりふり構わぬトランプ言論封殺には心底驚いた。米国大統領を抹殺するのだから世界最大の力だ。「そこまでやるか」を超え、「それをやっちゃあお終いよ」もあっさり超えてしまった。米国がまだ民主国家というならそれは皮だけで、ばりばり裂けるとゾンビが出てくる。

去年発生したコロナは大きな力を持ったエイリアンだ。菅内閣は果敢に立ち向かったがやられた。死に際に放ったワクチンの矢は妖怪に刺さったやに見えるが、なぜ日本の矢だけが効いたのかは一向にわからず、依然正体不明だ。世界の叡智もAIも、まだまだ太刀打ちできない力があることを思い知らされた。

五輪を力で押し切った菅内閣はあっぱれだ。安心安全は問答無用を意味する呪文として見事にワークしたし、閣僚の忖度は演技力の粋を見せ、米国とは違った言論封殺の方法論が確立したと言えよう。内親王様とK室氏の大きな力も令和の新機軸だ。財務省事件の傍系といってわかる人はほとんどいないだろうが。

GHQ製だろうが何だろうが憲法は憲法。『総議員の三分の二以上、国民の過半数』の賛成で改正でき、天皇である根拠はその憲法の第1条にしかない。皇室、特に天皇陛下たるものの大切さは西室の言うとおりだが、法的にそれをお守りするのは国民の総意しかない。総意に添わない大きな力の行使ではない。

今年はほんの数えるぐらいしか外に出なかった。演奏会ゼロは50年ぶり。それだけ自宅で膨大な量の音楽を聴いた。時間をかけないとわからないことがわかった。神通力がある曲とない曲がはっきりと存在する。ない曲を千万回も大きな力が宣伝しても、いずれお里が知れる。宇宙はそう作られていることを理解した。

なんだか世の中みんな小ぶりになって力の差がなくなってきた。鼻の差勝負で小技と小ズルさが横行、嘘でも経歴詐称でもやったもん勝ち、バレたらひっそり消して「なかったことに」なるのを待つ。何事も大きな力がモノを言える世になってしまう。大谷翔平、藤井聡太、松山英樹。これぞほんとうの「力」だった。

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来年は何をしようか・・・

2021 DEC 22 18:18:18 pm by 東 賢太郎

これまでに僕は税金を13億円ぐらい払った。中学から公立で授業料が安かったぶん親孝行できたし、国庫にも返した。何の才能もなく何になりたくもなかったサラリーマンにしては十分で思い残すことなし。でも9割が運だったなあ。

そろそろ、そうやって気持ちを清算するトシになってきた。筋トレでぶりぶりやってまだ若いぜなんてタイプじゃない。走るとすこし若いかなと思うが、それも鍛えるというよりなるがままでいい。

ブログを書くのは結構モチベーションがいって、それで書くべきことが決まるけどそっちがどうかという気がしてきた。それで世の中変わるわけじゃなし。

今年は占いによると勝負の年なので人生最大の大勝負を張った。これをやるために今までの人生があった。吉か凶か来年5月までわからないが吉だったらもう仕事やる意味がない。ひっそりと好きなことをしたい。

いろんなことで、やっぱり日本は向いてないかなとも思う。日本的なものにすべからく興味ないし万事ちまちましてつまらない。住むなら家買って英国かなあ、ケンブリッジで若者にまじって勉強してオペラ三昧なんてのもいいなあ。

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幸せな日曜日はこうして過ぎる

2021 DEC 13 14:14:43 pm by 東 賢太郎

5,6年前から近場のマッサージに通っている。月2回ぐらい担当のHさんにおまかせだ。前回をしっかり覚えていて、比べて悪化している箇所を治してくれる人はなかなかいない。きのうは腕が凝っていたらしく「それはたぶんピアノだな」と言うと、「私は二胡を始めたんです」という話になった。

「そう、あれは何の皮かね」ときくとニシキヘビだ。「そうか、弦が羊、弓が馬で胴体が蛇か、作ったのは北方の遊牧民かな、それがルーツだろうね。動物を楽器にしちまうのも凄いけど、あんなに哀愁のある音を出すレベルまで行くってのもね」「ええ、音が耳に残るんですね」。まあこんな会話をしているうち寝てしまい、気がつくと2時間たってすっきりしている。

ぶらぶら歩いてくると、九品仏の浄真寺にたどりついた。

黒柳徹子さんがたしかこのあたりで育って、大きな池があったと著書に書かれていたが今はない。初詣ぐらいしか来ないが、紅葉でけっこうな人が出ているので境内に入ってみた。

この土地は元は吉良氏の奥沢城で、土塁が残っている。都内とは信じられないほど広いのはそのためだろう。

皆さん盛大にシャッターを切るので撮ってみたが、実は赤に疎い僕の目に紅葉はたいしたイベントではない。ところがこれを見て足が止まってしまった。

これだ。大学に駒場祭というのがあって、銀杏並木を見上げるとこうだった。学外からたくさん人が来てにぎやかだ。そういえば仲間で喫茶店やったっけなんて昨日の晩ご飯すら忘れるのに40年も前のことは思い出す。あの日に帰りたいとはこのことだ。

九体の仏さまにお参りしてすっかり落ち着いてしまった。ずっといてもいい気分だったが寒いので駅へ向かうと、小さな八百屋さんがある。すると、何の縁だか店頭にこれがあるではないか。

ご主人が「茶封筒に8つぶ入れて、口を三つ折りして下さい。500ワットで40秒チンすればOKです」というので4袋買うと奥さんがどうぞと茶封筒を3つくれる。うまそうに見えた青森産の長芋を1本とアボガド1個もいただいて楽しみが増えた。

スーパーもコンビニも便利は便利だが会話がない。そのうち買い物ロボットが出てくるか、ネット発注すると10分でドローンが配達なんてことになるだろう。それも味気ない。ドイツの新首相オラフ・ショルツ氏は寡黙であだ名が「ロボット」、別名「閉じたカキ」らしい。お店が閉じたカキというのも寂しい。リモートの時代だし機能性より人間味が恋しい。商店街は大事にしなくちゃ。

そういえば酒が切れてる。すると、いいところに酒屋がある。試飲させてくれというと旦那が1本開けてくれ、申しわけないので気に入ったこれ2本と別なのを1升もらった。

家では新参のこいつが待っている。あれほどシャーシャーいってたのに昨今は僕になついていて、それも犬のようにヒエラルキーを見てという打算の風情ではなく、猫遊びのプロと見抜いて寄ってきていると思われる。

気は優しいが運動神経は抜群である。玩具を持つとこちらも緊張を強いられる。ちなみに100匹の猫で著名な愛媛の青島では僕は用意した玩具「トンボ」3本で半日なんとか戦ったが、最後の1本を名人級の白猫に破壊されて玉砕した。「チビとノイは3段、お前は我が家かつて最高位の5段だ」と段位を授与したが、若いので将来が嘱望されよう。

ぎんなんに長芋にアボガドにしぼりたて原酒。

「こりゃあ幸せだ。ドイツの白アスパラとフェーダーバイザーに匹敵するな」

「そうね、でも猫いなかったでしょ」

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田園調布駅を出るとこんなものが

2021 DEC 11 15:15:51 pm by 東 賢太郎

「医者の不養生」や「紺屋の白袴」はあっても金融屋が借金だらけでカネがありませんなんてのはシャレにもならない。そこの社員だって「人生おカネじゃないですよね」なんてポリコレ発言して慎ましく見せようなんて奴は勘違いか詐欺師か負け犬のどれかであって、そういう相手にフトコロ事情を明かしてお金の相談をしてみようなんて人はまずいない。「私はそこそこいただいてます」と堂々としている方がお客さんも頼りにしてくれるのだ。

昔から金融はそもそも世間体が良くて平均年収が高いということになっているから学生に人気の業界であって、つまり面接で綺麗ごとは並べるが概ね見栄とカネが就職の主たる動機である。ガリ勉、口だけ達者という技で薄っぺらいプライドを死守し、教養はほぼなくて計算高くてズルくてチャラい。見栄だけなら霞が関へ行った方がいいが国家、公益にこだわりもない。ということは必然として「最後はカネだよね」が本音になる人間が主たる業界なのである。

そういった輩は学校のクラスで最も疎遠な部類であるが、どういうわけか小中高大ともあまりいなかった。だから社会に出て金融村に入ってしまい、とんでもない所に来たと思った。そこで仕方なく「最後はカネだよね」で生きてきたが、思えばそれはゲームだったようだ。雀卓を囲んで「人生点棒だけじゃない」なんてのはない、それだけ。参加はしてきたが、今やつきあいはおろか住人と見られたくもない。極めて少数だが、そういう僕の本質を知ってるよと言って下さる方がおり、最高の賛辞だとありがたく思う。行く末は誰も知らない田舎か外国に移住して、何をしてたのかわからない人になってしまいたい。

そうこうしていたら1,2か月前ぐらいだったか、某社から会長をやってくれという話を頂いた。「知識がない業界なのでお役に立たないだろう」とはっきり申し上げてきたが、どうしてもということである。そこで考えた。その仕事も金融だが、真逆の「人生おカネじゃない」でいってみようか。子供の頃「嫌なほう」を選んで行けと親父に言われてここまで来たし、若者と仕事する機会はそうはない。学ぶことがあるだろうし僕から学んで成功してくれてもうれしい。そうした喜びをいただく代わりに会社を儲かるようにしてお金は彼らにぜんぶあげよう。そう決心した。

そこで「条件」をひとつだけ飲んでもらって会長職の契約書にサインした。それは「無給で」ということだ。

感覚は勤労奉仕だ。しかし、事業会社だから責任はある。NPOの理事長のお話をいただいた時のことも思い出した。立派な公益法人であり勤められている方々には頭が下がるしかなかったが、それはお断りした。理由は「向いてないから」だ。そんなことはない、公益法人だってお金がいる、だから民間企業の経営者にと買っていただけたのは光栄だが、自分の性格は自分が知っている。どんないい給料が出たとしても事業とはゲームの種類が違うのでモチベーションがもたないだろうとわかっている。そうなるとご迷惑をかける。そこは本当に「おカネではない」。事業をされたことのない側の人にはわかりにくいことと思う。

つまり、「公益を掲げる仕事」と「事業」は違うのだ。たとえば雇用調整助成金を石原伸晃氏の事務所がもらっていたと話題になっているが、このお金はコロナで困窮した事業者のためものだ。もらっても合法的だというなら「政治も事業である」という初耳の事態という意味になる。それでも公益のために良い政治をしてくれれば僕は結構だ。政治家の評価は選挙しかないが、彼は比例代表ですら引っかからない程度の評価だ。それが事業でもあるというなら、我々事業家はそういう目で冷徹に評価するよということになるだろう。

するとどうか。事業をナメてもらっちゃあ困る。たかが60万円でこの騒ぎになるリスクを取るなど世界に類を見ないへっぽこ経営者であり、パンツを税金で買って失職するぐらいみっともない。もし金融なら間違いなく、すでに即死していた人と断言せざるを得ない。したがって、そんな腕前で生き残ろうとするなら「大きな力」に頼るしかない。「政治も事業」なんて言い出すのが彼だけならこれで終わりだが、もし今後の趨勢なんてことになるなら同じ二世三世の超無能な小物がますます裏口入学みたいなことに精を出してファミリーで生き残ろうともがき、やがて日本は世界基準で猛烈に馬鹿な五世、十世の支配する国になろう。

きのう初めての会長面談ということで、社員全員、二日かけてひとりひとりとお話をして東横線で帰ってきた。田園調布駅を出ると、こんなものが。

長嶋さん、おめでとうございます。ご自分の腕一本で勝ち取られた勲章、本当に素晴らしいです。あちらこちらでクソみたいな奴が跋扈して腐臭ただよう話題を撒き散らす今日このごろ、とてもすがすがしく思います。

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久しぶりの渋谷散策

2021 DEC 4 0:00:08 am by 東 賢太郎

今日は森嶌医師の診療所WELLSで2回目の点滴。ビタミンC30mgと若返り薬のNMN100mgを打ってもらった。帰りは運動をと渋谷まで歩く。心なしか体は快調だ。神宮前の坂をおりながら、なるほど表参道からも道玄坂からも下り道だ、やっぱり渋谷は「谷」なんだと得心する。

コロナは不思議と気になってない。同盟軍がアメリカにいて例のトランプの錠剤を送ってくれた男だ。wikipediaに出てる大物だが名前は明かせない。「ワクチンは打つことが目的になってる」そうだ。薬屋は飲み薬を売る前に儲けたい、WHOと政府は「やってる感」が必須。三者がウインウインだ。くりかえすがm-RNAの中長期副反応データはない。いま世界で打ちまくってるのが治験だ。日本では接種で約1200人が亡くなったときく。オミクロンが世界に広がるならばワクチンは効かないということだ。2回打ってないと飛行機は乗れないから。

ニトリに入ってみた。初めてである。寝具売り場で良さげな枕を見つけたが、持って帰るのが面倒でやめた。お値打ち感ある値段の家具類が並んでいてなかなかだ、若いカップルたちの楽しげな笑顔でこっちも明るくなる。カーテンがけっこうたくさんあってちょっと期待した。ラッキーカラーのゴールドが欲しい。ただの金じゃない、延べ棒みたいにピカピカ、まっきんきんのだ。残念、あるわけないか。

タワーレコードに進む。かつて入りびたっていた場所だ。帰国した2000年から9年は半蔵門線で渋谷で降りてバス通勤していたからだ。何千枚ここでCDを買ったかなあ。7階がぜんぶクラシック売り場だったが、数年前からジャズに浸食され半分づつになった。それが今はポップスも闖入していてさらに狭くなっているではないか。フルトヴェングラーの第九が流れているが、いい所で大音量のバンドにかき消されて聞こえなくなる。こりゃいかん。ここで楽しませてもらったご恩があるのだ。手当たり次第に買った。数えたら41枚あった。

さて7時を過ぎて腹がへった。これもお決まりだった道玄坂の町中華「兆楽」へ進む。調理場を囲むスタンドに座ると20年前からセンターに立つ大将がお元気で鉄鍋をふってる。頭が下がるなあ。五目焼きそばとギョーザ。涙が出るほどうまい。大将、俺はあなたを人間国宝に推挙したい。これで990円。ニューヨークはたいしてうまくないラーメン一杯2千円だ、世の中まちがってねえか。いや、これが日本だ。世界がうらやむジャパン・プレミアムなんだ。

そして仕上げの啓文堂書店に自然と足が向く。旭屋とここ以外、渋谷のでっかいのはみんな潰れちまった。本屋は息抜き処であり時流のセンサーであり立ち読み学習の宝庫でもあった。どれだけ勉強させてもらったかわからない。なくなると困るのだ。あれこれ渉猟して楽しんで2時間以上もいたろうか、自分の4冊、息子に1冊買ってこっちが「ありがとう」とお礼をいって出た。タワーレコードでも兆楽でもそうした。丁寧にお会計をやってくれたからではない。「やっててくれてありがとう」だ。

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オニオングラタンスープと冷凍チャーハン

2021 NOV 29 23:23:40 pm by 東 賢太郎

いつもジョギングして行きついた先の商店街で、ああしまったと思う。喉が渇いたり腹がへったりするのに財布がない。歩数をはかるためスマホを装着する帯みたいなものは買ってもらったが、毎度それで満足して財布に頭が回ってない。

そこで今日は「買い物するぞ」と決めて出走した。ポケットに8千円いれて。

滅多に行かないが、食品売り場が好きである。二子玉川まで食事に行くと高島屋やライズの地下で肉やワインやチーズやケーキをどどっと買ってしまうので家族は警戒している。だが今日は最寄りの鄙びた駅前である。スーパーとマイバスケットしかなく、そうはいかない。そこでオニオングラタンスープと冷凍チャーハンの2点だけ買おうと決めていた。

僕は何事も調査第一だ。50メートルほど離れた両店舗をまずのぞいてみることにした。スーパーは売り場面積はマイバの1.5倍ぐらいだろうか、品目、品数がずっと多い。午後5時過ぎで、女性客が8割だが、ひとりで来ている若い男性も1割、そしてひとり者なのか60過ぎとおぼしき男性も1割はいる。みんな取り分けが速い。毎日のことなんだろうか、バスケットにポンポン入れていく。

気がつくと僕だけバスケットを持ってない。邪魔ねえこの人とぶつかられるし、なにやってんのという感じの目線もある。そうだね、奥様方にとってここは職場なんだ、興味本位で荒らしてはいけないと思いバスケットを持つことにする。すると困ったことがでてきた。スーパーにはオニオングラタンスープと冷凍チャーハンの両品ともあったが、マイバにはスープがない。ところがチャーハンは同じ製品なのに、マイバの方が20円安いことが発覚したのである。

つまり、①両店でレジの列に並んで1品づつ買うか②マイバでチャーハンだけ買うか③スーパーで20円損して両方買うか、という3択になったわけである。皆さんならどうされるだろうか?

まず2回も列に並ぶのは時間のコストが高いから①はない。すると、スープをあきらめるコストと損する20円と比べてどっちが高いかということになる。スープはどうしても今日飲みたいというほど欲求が切羽詰まってない。さらに、同一の工業製品にみすみす何の意味も生産性も投資リターンもないプレミアムを払うのは有価証券を取引する僕の職業においては idiot(ばか、まぬけ)未満なのだ。

ということで選択は②になるはずだったのだが、あにはからんや、僕は③を選択したのだ。つまり、20円捨てて、スーパーで両方買って帰ったのである。

実は、その2品だと5~600円だが、悪い癖が出てあれもこれもになってしまい、どうでもいいものを10品ぐらい余計にバスケットに入れてしまった。スーパーの品ぞろえの誘惑に負けたのだ。刹那的に欲しくなっただけだが、ともあれ望んだ物をたくさん買えたのだからうれしい。その満足感が20円で買えるなら安いと判断したわけである。

そして「5000円ぐらいかな」と重たくなったバスケットをレジにドンと置いて、値段が出ると2964円だ。なんて素晴らしい店だ。この時点で合理的思考は停止し、20円の損など吹っ飛んでいる。レジのおばさんの「袋どうします?」の意味が解らなかったが、ジョギング中なんだ、いるにきまってる。そうか5円とるのか。勉強になった。

ビニールの袋はまるまると太って重い。3、4キロはある。おばさんは持ち手が僕の指にかかるように慎重に丁寧に渡してくれる。なんて日本のサービスは細やかなんだ。細い持ち手が途中で切れないか不安だったが意外に大丈夫だった。

事前の綿密な調査と合理的判断は何の意味もなかった。かくして今日の運動は3.9キロ、歩数は6604歩になった。

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一日で人生初が3つという不思議

2021 SEP 20 22:22:09 pm by 東 賢太郎

きのう9月19日はおかしな日だった。それをふりかえって書いている。人生初が3つあったからだ。今日は敬老の日らしいがそんなもの俺と無縁という日々を過ごしていたら、なんと気がついたら祝ってもらうトシになっていた。まして、この年になって「初**」なんてのが残っていようとは・・・。

ひとつめは新しいアイフォンの万歩計で歩数をはかりながら散歩したことだ。実に恥ずかしいが初めてだ。足腰は自信あるのでそんなの不要と思っていたのだ。二子玉川公園まで行って8978歩。ハートマークのアプリで過去のデータが検索できることを娘に教わった。すると、2016~19年の年ごとの1日平均歩数が4524,4266,4955,4672だったのに、去年は1172、今年は何と645で愕然とした。家の中でスマホを持ち歩かないのは割り引くとしてもコロナでてきめんに歩かなくなっており、体重が2キロ増えてなぜかなと思っていたが当然の報いだったのだ。ステイホームはコロナで死ぬのは避けられても、知らないうちにメタボになって寿命が2,3年縮んだらおんなじだ。皆さんも気をつけてください。

二つ目は、散歩のゴールにした二子玉川公園の高台で素晴らしい夕日を眺めていたら、くっきりと見える富士山の右に小さな星が見えたことだ。金星かと思ってアプリ「星座表」をかざしてみるとちがう。

富士山の隣りの山の右上に水星(ほとんど映ってないが・・)

水星はなぜか人生初だ。なかなか会えなかった深層の令嬢にお目見えした気分だ。調べると9月14日に東方最大離角で、水星は太陽に近いので西か東に大きく離れた時しか見えない。まったく気づいてもいなかったがたまたまタイミングが絶妙だったようだ。おとめ座のスピカがすぐ上にあるはずだがそれは見えない。金星は富士山のかなり左上にあって暗さと共にぐんぐん輝きを増し、後ろを振り返ると満月に近いでっかい月が木星のそばにあった。

夜は恒例になったサスペンスだ。片っ端から録画したのを適当に選んで毎日みている。まず信濃のコロンボ「アリスの騎士」、これは大したことなかった。そこでやっぱりコロンボなら本チャンだなと「殺人処方箋」があったので何となく選んだ。これが三つ目だ。あれ、ほとんど見てるのにこれは知らないぞ。ピーター・フォークがやけに若い、風貌が違う、犯人追い込みの押しと切れ味が直球勝負でものすごく鋭い。調べたら、シリーズ化が決まる前の刑事コロンボ 第1話だった。日本語版放送日は1972年8月27日。第2話の「死者の身代金」は見てる。まだ気づいてなかったかな、高三だし勉強で忙しかったかな。

というわけで一日で人生初が3つ。しかし偶然にしては出来すぎてるなあ。

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我が「自助」的コロナ対策

2021 AUG 19 15:15:04 pm by 東 賢太郎

コロナは風邪だとかさざ波だとか打ち勝って見せるとか、ウィルスをナメた者はみな討ち死にした。トランプ政権も安倍政権も。かくして世界の為政者はウイルス以前に「落選」の恐怖と戦う。製薬メーカーは稼ぎどころだ。そこで頼みの綱はワクチンと満場一致で決まる。「2回打て、さらば救われん」。当初の効果は高くバイデン、ジョンソンは生き残った。ところがワクチンは半年程度で効きが落ちることがわかってきた。変異株への効果は新種が出てみないと誰もわからず、変異のバリエーションはゲノムの数からしてほぼ無限にある。だから当然の途中経過としてこういう記事が出るのである。4回目も5回目も出る。

「デルタ株」など変異したウイルスが拡大する中「今後ワクチンの有効性は低下していくだろう」、2回の接種を終えた人にも、ことしの秋以降、3回目の接種が必要になる(2021年8月5日、モデルナ社)

イスラエルでは、16歳以上の8割以上が2回のワクチン接種を終えています(筆者注:ファイザー社製)。しかし、接種を終えていても重症化するケースが目立つとして、60歳以上の人に対し、3回目の接種を行うことを決め、対象者への接種が始まりました(2021年8月8日、NHK)

そうこうするうち、あっけらかんと恐ろしい記事が2つ朝日新聞に出た。僕の頭のセンサーの中で、何やらパチンという音がきこえた。”非常な意外感” を覚えるのだ。

自宅療養中の死者数、厚労省『把握していない』(8月10日)

厚労省は「ラムダ株」の感染が国内で初確認された東京五輪関係者と飛行機内で濃厚接触した可能性のある人のリストを、関係自治体や大会組織委員会と共有しないミスがあったと発表した(8月18日)

丸投げされている現場は開き直っているというか、もうバンザ~イなのだろう。パワハラ上司に詰められた部下が「わたしバカなんで」とキレてしまった感じすらする。しかし、それは五輪の現場でもたくさん起きていた。ちがう。意外感の源はそれではないのだ。

今までなら役所はこのような重大な不始末は「隠蔽」してきたはずなのだ。こんな国防上の大失態をゲロされたら政治家はたまらない。厚労大臣は即刻クビに値するし首相は任命責任を問われる。だから、こういう時こそ、隠蔽どころか法律違反すら犯し、身を挺しての公文書改竄までして「お守り申しあげる」のが安倍ー菅政権での官僚の特急コースの出世切符だったはずなのだ。何かが中でおきている。これ以上深い傷を負わないようにということかもしれない。

ダイヤモンド・プリンセス号のお手上げ状態を思い出すが、あれはバンザ~イではなかった。コロナに何の情報も経験値もない1年半前の作業だ、物理的に無理なものは無理であり、そういうご無体な命令を野球に例えて「ホームランのサイン」という。「ウィルスを上陸させない」という最低限の意思は感じたから批判しては気の毒なのだ。問題はその後になって空路の水際対策において、あたかも当然の様相を装いつつ、国会やマスコミへの説明もなく堂々と出現した。かくして、空港検疫で「上陸させない」の意思が完全崩壊してしまったことが、足下の忌まわしき大厄災の序曲だったのである。

何が崩壊だったのか?オリパラ選手村では国際基準で毎日PCR検査をするのに空港ではなぜか和式の抗原検査なのだ。PCRの陽性者発見率は7割だが抗原検査は5割しかない。つまり陽性者2人に1人は素通りであり、厳しい追跡調査もしていない。誰も説明しない。マスコミも書かない。そこで「総理、もしかしてこれはお・も・て・な・し戦略の一環ですか?」と記者さんが気の利いた質問でもすれば何が返ってくるだろう?国民は知っている。「え~、そこにつきましては、今後の感染状況を慎重に確認をしてまいりたい、え~、そして、分科会の専門家の皆さんの意見を聞いたうえで、しっかりとした検討を重ねて参りたい、そう思っておるところです」って聞き飽きた古テープが流れるのだ。かくして我が国の防疫対策は世界不思議ワールドであり続けた。それが菅政権ー厚労省の不可侵条約だったと僕は理解している。それが終わったわけだ。

国民がまだ知らないこともある。なぜオリパラをこんなに無理してやったんだろう?何が目的だったんだろう?わからない。厚労省、医療、保健所の現場もそうだろう。ものを押し付けられると人間は認知的不協和というストレスを感じる。ストレスは解消したい。安全安心の呪文しか出てこないから多くの人が「総理は国民が死ぬのは仕方ないと考えてるのだ」という、呪文よりは納得しやすい理解でストレスを解消し「ただでさえ足りないコロナ医療を五輪に回してたくさん国民を死なせた」というイメージがいとも自然にできてしまった。不幸にも現実があたかもそれを裏書きしつつあるからそれは確信に変わってしまった。五輪はなくても季節性要因で第5波は来たから直接の因果関係は不明だ。しかし、国民が「総合的に判断」した結果、世論の6割は「五輪のせいだ」となってしまった。もう消せないだろう。厚労省のバンザイと同様、これは総合的ではあっても合理的な思考の結論ではないからだ。

僕は企業経営者だ。合理的には左に寄って一銭の得もない。しかし、何をしたいのか理解できない政府は右だろうが左だろうが手に負えない。携帯料金値下げもデジタル庁設立も大変結構だが、僕にとってはまったくどうでもいい。さらに個人的に、申しわけないがそれ以前の話として、わけのわからない人を5秒以上見るのは辛い。ということで、我が家は菅総理のモットーだけ遵守することとし、「自助」的コロナ対策で「イベルメクチン」と「ヒドロキシクロロキン」購入を決定した(ネットで買える)。ヤバいと思ったらすぐ飲んで(7日以内なら重症化は抑えるらしい)入院まではなんとか死なないように頑張る。だが運よく入院できても確実に治る治療法も保証もないのだから、かからないのがベストという方針で「3密」を回避。基本的に外出はせず、自分の免疫力も自助で高めておく。医師に聞くとそれには十分な睡眠と栄養、ストレス解消、適度の運動だよという。なんだそれは、メタボ対策とおんなじじゃないか、もっと気の利いたこと教えてくれ、ということで色々学習した結果、冬虫夏草と生ニンニク、生ショウガにおちついた。

さらに書くと「ストレスは免疫力さげるよ、仕事を考えるな」だ。それは無理だよ。ならばスカッとすることやれ。そこで毎晩ビデオで好きなミステリーを見ることにした。古い火曜サスペンス劇場やらネトフリ、アマゾンプライムを総動員すれば2,30年前の、海外にいたので見てないのがわんさかある。街の風景や役者さんが懐かしいし当時のはおちゃらけ調でなくシリアスなのがいい。松本清張、夏木静子なんて最高。いまは検事・霞夕子シリーズを全部見ており、20編ある鷲尾いさ子がきれいで真面目そうで気に入っている(彼女は難病か、回復を祈りたい)。米倉涼子のドクターXは今年もやるらしい、楽しみだ。古畑任三郎は全部見てしまったが「笑うカンガルー」の舞台がポート・ダグラスのシェラトン・ミラージュなのは発見だった、このホテルは我が家が大好きで一昨年も1週間滞在した。時差ないしそんなに高くないし家族にとてもお薦めだがオーストラリアの入国は昔からとっても厳しいのだ。ケアンズで入れてくれないだろうなあワクチン打たないんで。

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アラジンの魔法のランプはなぜ二つない?

2021 JUL 17 9:09:36 am by 東 賢太郎

ディズニー映画にもなってる「アラジンと魔法のランプ」。擦ると魔人が出てきて「お望みのものは何でも出してあげます」というあれだ。「じゃあ宮殿でお姫様と結婚したい」といってそれが叶うが、魔人にランプを奪われて宮殿ごと略奪されてしまう。これを絵本で読んだ時に「『ランプをもうひとつ出せ』といえばよかったのに」と思ったからマセたというか、どうも夢のないガキだった。

そんなランプがもしあれば、世界の富は独占できてしまう。した者はいないから、したがって、そんなものはこの世にないのである。

ところが、あると思ってる人がいる。「仮想通貨をAIで運用すると4か月で2.5倍になります」ともちかけた詐欺集団が投資家を騙して60億円集めたというニュースでそれを知った。よく考えていただきたい。そんなAIがあるならアラジンの魔法のランプと同じだということは、どんなにお金や運用に疎い方でもお分かりいただけるだろう。だからまず「そのAIを持てば無限に儲かるね?」と詐欺師に質問してみればいい。次に「ならば自分のカネでやるよね、どうして見ず知らずの僕に儲けさせてくれるの?」ときけばいい。尻尾をまいて退散するだろう。

TVで政治家がこの事件を解説して「リターンがあるならリスクもあることを知るべき」「教育がいかん」と話していた。それはそのとおりだが、そんなことを言っていたら永遠にリターンは得られない。投資は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」なのである。しかし虎穴に入って母トラに襲われるリスクは不明というのがこの故事のシチュエーション設定なのだ。遠くにいるとわかれば虎の子は安全に得られるだろう。とすれば親をあらかじめ追跡しておけばいいではないか。ドローンやGPSでそれをやると想像してほしい。それを「リスク分析」という。

すなわち、「リタ―ンの裏にはリスクがあるよ」ともっともらしいことをいくら覚えても、詐欺には引っかからなくなるかもしれないがそんなものはインテリジェンスにならない。「リスク分析」を行い、そのリスクに見合うリターンがあるか否かを比較すべきなのだ。例えば親が穴から10mの所にいるなら誰がどう見ても危険だ。でも100mならどうだ?しかも虎の子が2匹いたら?3匹なら?こう考えるのだ。リスクの許容量は人それぞれで正解はない。10匹で500mでもやらない人もいれば1匹で100mでも挑む人はいるだろう。こうした人それぞれの判断を「相場観」という。それが多様だから、同じ値段で売る人と買う人が出てきて、取引所で相場が立つのである。

それを知れば「リスク分析」こそが投資成功の鍵であることがお分かりだろう。では「リスク」とは何か?ほとんどの皆さん「損する事」と思ってる。その答えは零点だ。零点の方法でリスク分析して勝つはずがない。もし勝ったらビギナーズラックだから、長くやればその利益は吐き出してしまうだろう。合理的予測がどのぐらい外れるか、その外れ方の大きさ(標準偏差値)がリスクなのである。説明は省くが、ここでの本題はその合理的予測についてだ。それがあるか否かが株式投資とそれ以外のすべての投資の分水嶺なのである。株式というのは会社業績等(ファンダメンタルズという)という、ある程度までは「合理的」と多くの人が納得する「価値の数値的説明(ヴァリュエ―ション)」が可能である。その前提となる変数は複数あり、相互に相関もあるから多次元多変数関数の解析であるが、どんなに複雑であろうと関数関係という合理性はある。それでも完璧な株価の予見に誰も成功していないのは関数自体が時間と共に変化するからだというのが僕の解釈だ。

それが株だ。そして、それ以外のすべては、ファンダメンタルズの存在しない投機(バクチ)である。投資とバクチの区別がつかない人は多いが、実はそれはほぼ正しい理解であって、株式投資だけがそうでないと覚えておけばよい。だからプロ投資家であることが成り立つ唯一の投資対象であり、僕はその一人としてリスクを合理的に解析してリターンより少なく取る専門家であり、それでも想定する関数が完全でないから失敗することはある。しかし、外科医と違って我々は失敗してもその確率が想定内であれば構わないのだ。プロ野球選手が10回打って7回失敗するのはOKで年俸1億円もらえるのと同様のことある。そして、僕に原油や仮想通貨の予測を行うすべはない。株式ほど多次元多変数でないのは結構だが関数関係が導けない。つまり「リスク分析」が不可能である。可能なように語っている者は多いが、数学的に無意味であり、従ってリスクがわからない。合理的にわからないものに投資はしないのは僕の根本哲学だ。以上を絶対真理とまで言うつもりはないが、それを実践した結果として資産は作ったから少なくとも個人的真理ではある。

この方法論(インテリジェンス)をテキストとして書いてどこかで90分×10回講義で教えれば少しは世の中の役に立つだろう。詐欺師に騙されることなど絶対になくなるから社会正義にも資することになろう。僕は中高大と税金で勉強させてもらったのでリタイアしたら社会にお返ししたい気持ちは大いにある。そのためにはセミナー会場やyoutubeで料理番組みたいに具体例を使って投資シミュレーションをお見せし、机上の空論でないことをお見せするのが一番なのだが、それができないのだ。その株に投資したいと言われても金商法にひっかかり、それを合法にするにはコストと人数の上限が発生して視聴者に不公平が出てしまう。となると理論だけを教えることになるが、それを理解して実践できる人は少数だろうから「社会にお返し」にはならないと思う。投資信託を作って「おまかせで儲けたい」人を儲けさせるのは本旨ではない。自分の頭で考える投資を教えたいのであってお助けマンになる気はないし、それで手数料を稼ぐ必要ももはやない。

「そのAIを持てば無限に儲かるね?」「ならば自分のカネでやるよね、どうして見ず知らずの僕に儲けさせてくれるの?」という詐欺師撃退の質問を思い起こしていただきたい。この2つを問われたなら、①AIだろうがインテリジェンスだろうが「儲かる」ノウハウがあり、②儲かる証拠にそれは自分だけのために使いますというのがパーフェクトな回答なのである。運用者が社会福祉や公共政策を考えることはないしその必要もない。善人ぶっていても競争に勝てなければ存在する意味もない。まだ完成度は高くはないが質問1はほぼ達成しており、質問2は未達だ(資本が少ないと案件を取逃がすし、投資してもリターンが少ない)。だから15人のお客様にリターンをシェアしてさし上げる代わりに助けていただいている。それが150人、1500人となると手数料は増えるが技術やサービスが落ちるのでやらない。行列のできるラーメン屋がチェーン店にすると潰れるのはその本末転倒のせいだ。

悩ましいのは、そのポリシーで経営して事業に成功する自信はあるが、社会へのお返しという「人生のバランスシートの均衡」という動機とはどうしても矛盾が生じてしまうことだ。ノウハウは誰のため使うかというと「社会」ではなく少数の人たちだ。どうしてかというとアラジンの魔法のランプも幸福にしてくれるのは拾った人だけである。それが何万個もあって何億人もがお姫様やお城を手に入れるならランプの価値は無に帰すだろう。そして運用ノウハウを維持して合法的に使うためには相応の経費が掛かる。それを少人数で負担してもらうには、どうしてもお客様は富裕層になってしまうのだ。運用という行為に特許はないが、広く公開して皆が同じことをすれば利益は出なくなるという宿命を逃れられない。すなわち、その職業を選んでしまった以上、万人から愛されたり御礼をいわれることは諦めるしかないという結論に至る。しかし、いずれそれを後進に委ねる時は来る。そこで自分という人間の原点に立ち返ったなら何ができるんだろう?何をやりたくなるんだろう?来月は大いに「社会」を相手にする某社の顧問に就任する予定だが、ちょっと楽しみである。

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チック・コリア逝く

2021 FEB 15 19:19:20 pm by 東 賢太郎

さあLINNのプレーヤーKlimax LP12が家にやってきたぞ、何をきこうかなとレコード棚をしばし物色し、千枚以上ある中からチック・コリアの “シークレット・エージェント(Secret Agent)” をとりだした理由はさっぱり記憶がありません。確かなのは、それが2月9日の夜だったことです。

チック・コリアの訃報を知ったのは12日、ブログを書き終えたあとのことでした。ええっ、なんてこった!いつだ???

2月9日でした

こういうことは皆さんもあるでしょうが、 “Secret Agent” ってロンドンにいたころ、35年も前に買ったレコードですよ、ひょっとしてあれ以来きいてないんじゃないかな?そんなぐらいで、曲については何も覚えてません。なんでまたこれを。。。??

チック・コリアが凄いと思ったのはアルバム “Now He Sings, Now He Sobs” (1968年)で、これジャズに詳しい人はみんなほめてるわけですが、僕はどうだったかというとどんなクラシックより上かもしれないという驚き方をしたのです。そのショックでコリアをあれこれ渉猟し、La Fiestaは悪くはないな、ゲイリー・バートンのCrystal Silenceにぶちあたってこれだこれだと舞い上がったり、やがてElektric Bandなんてのに出くわしてあれれ?となり、かたやSpainなんて軟弱なので完全にわけがわからなくなるのです。Secret Agentはあれれの部類だったのでお蔵入りしたんでしょう。

まあ僕のジャズはこんなもんでフュージョンに入りそこねたのですね。おもえば我が高校時代、音楽好きで女にもてるというとロックかフォークが相場で、同じ西洋かぶれなのにジャズは暗いしクラシックは論外でした。楽器もできないクラシック・オタクは不遇で、ちくしょうとジャズに憧れたのもあります(笑)。でもジャズに行ってもおかしくなかった。というのは、どなたも音楽趣味の棲み家みたいなものをお持ちでしょうが、僕は “Now He Sings, Now He Sobs” やらいくつかの衝撃でそれをいっとき見失なって、本当はこういうのが本命じゃないかと迷った時期があったからです。

コリアのアルバムはほぼ自作ですし即興と変奏の名手であることは折り紙つきです。現代にモーツァルトがいればこうなったに違いないと確信してしまったこともあります。例えば、Steps-What Wasのピアノのモードなど和声を超越してドラムス、ベース三つ巴の対位法!の域に突入している。和声はあるが無機的な4度系であって意識から消え、唖然とするプレストに目がくらみ思考停止します。何が乗り移ったかという即興感みなぎる発狂レベルなんですが形もちゃんと整っているという、これってアイガー北壁のてっぺんの稜線を歩いたらこんなかというぎりぎりの均衡ですね、何度聴いても手に汗握るしかないです。

それでいてその後70年代からは硬派のフリージャズの道でも突き進むかといえばそうでもなく、『クリスタル・サイレンス』 等でぐっと和声音楽的でクールな抒情を漂わせる方向に行くのだからもったいないといえばもったいない。この多才さは功罪あったのかもしれませんが。

そのゲイリー・バートンのヴィヴラフォンとのデュオは管弦楽法の魔法のようなもので、1979年のCrystal Silenceのチューリヒ・ライブはホール・アコースティックとのブレンドが絶品で完全にクラシック的鑑賞を許す域に入ってます。会場はLimmathausとあり市内を流れるリマト川のLimmatでしょうが2年半住みましたが知らないですね、でも素晴らしい。

これが2008年にはこう進化してオーケストレーションが施され、原形をとどめぬほどクラシック化しています。ストラヴィンスキー並のカメレオン的変化ですね、それともピエール・ブーレーズのWork-in-progressのコンセプトと同じ思想があったのでしょうか。

電子楽器のサウンドは彼の音色感覚でオーケストラの色彩領域を拡大するものとして使われます。僕は素人だから間違っているかもしれませんが、それがジャズ・フュージョン・バンドのElektric Bandに進化したように思います。The Chick Corea Elektric Bandではこれが凄い、先祖返りした曲ですね。

彼がクラシックも弾くといって、ジュリアードに行ったんだから当然と思ってましたが調べたら半年で中退ですね。disappointingだったようです。まあ音大卒の人の何百倍もの偉業を成し遂げてますからね、ビートルズもそうですが技術は教育できても音楽はできないということでしょう。

それでも彼はモーツァルトもショパンもバルトークも弾いてます。Secret AgentにはバルトークのバガテルOp. 6 no. 4がそのまま入っていて、それが理由でCD化が遅れたともききます。モーツァルトはk.332Mov2を録音するほど愛奏してます。キース・ジャレットとのPC10はブログにしましたね。これです。

閑話休題 -ジャズとモーツァルト-

工房でPC24番を練習するビデオがyourubeにありますが、3曲とも僕の愛好曲ですし、k.332Mov2は自分でも弾いてますから他人とは思えんですね。

彼に音楽の垣根はありませんでした。深く共感します。僕もまったくないからです。こういうのを是々非々といい、ちょっと多めにクラシックを聞いてるぐらいの感じで、その中でもハイドンも良ければブーレーズもいい。チック・コリアとバッハを分け隔てる理由もありません。あるのは驚嘆すべき才能への畏敬かもしれません。

まだまだ僕は彼の音楽に追いつけてないので、追悼はしても付き合いはこれからです。人は逝っても魂は残ります。2月9日はそういうことだったんだと思うことにします。

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