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カテゴリー: ______クラシック以外

クラシック徒然草-「つぐない」はモーツァルトでもあった-

2014 JAN 17 15:15:50 pm by 東 賢太郎

ピアノ協奏曲20番のことを書こうと、第1楽章をおさらいした。

さていよいよピアノ様のご登場。

これだ。

20番

 

 

 

 

あれ! 手が止まった

まど~ににし~びが~

ではないか・・・しかもニ短調(Dm)だし・・・

こう書いちゃったが・・・

テレサ・テン「つぐない」はブラームス交響曲4番である

おそれいりました

もういちど「つぐない」をプレイバックしてみる

すると、な、なんということだ・・・・またあったぞ

カデンツァべーとーべん

 

昨日のブログに書いた箇所だ。

最後の方に2度繰り返される、バスが「悪魔の音程」増4度の降下をするE♭、A、Dmの和声連結などは・・・・

これはベートーベンさんのカデンツァだと思ってたら

あすはた~にんどうしに~

の和音じゃないの

コナン

 

(推理)・・・・

オーグメントを導くcis(C#)が犯人でした

「つぐない」 おそるべしです。

 

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クラシック徒然草-テレサ・テン「つぐない」はブラームス交響曲4番である-

2013 DEC 15 14:14:52 pm by 東 賢太郎

きょうTV でたまたま今年のカラオケで歌われたランキング上位曲でテレサ・テンの「つぐない」をやっていました。この曲は昔からちょっと気になっていました。

つぐない1984年の曲のようです。だから僕はロンドンにいてこれもテレサ・テンもたぶんあまり知らなかったし、そもそも興味がなかった。東京本社に転勤になった90-92年のどこかです。僕の課の忘年会か何かでカラオケに行き、部下の女性がこれを歌ったのは。「えっ、Fさんなに償うの?」ときいてしまうような明るい人で、不思議な笑顔でひょうひょうと彼女が歌った意味ありげな歌詞にみんな爆笑でよく覚えているのです。92年にドイツへ転勤になり、2000年に帰るまでこれを聴く機会はほぼなかったと思います。

海外生活16年の僕にとってカラオケで知ってあとから本人の歌をきくなんてことは日常茶飯事。これもそのひとつで、「つぐない」はテレサでなくFさんの曲だったのです。聴いていきなり気になったのは、とてもstickyでsoulfulな和音です。何ともいえず体にまとわりついてくる。「優しすぎたのあーなたー」のところのバス!これはすごい。弾いてみたい。と思いつつ、いつもカラオケで誰かのを聴いていつもそれっきりで忘れてしまっていたのでした。

ということで家でこれを聴けて思い出したのは僥倖であり、さっそくピアノに向かい、そして驚きました。

これが今も歌われている。なるほど。納得です。耳コピですが和音をコードネームでふってみました。

(Aaug)窓に(Dm9)西陽があたる部屋(Gm)は                      いつも(A7)あなの 匂る(Dm)わ                         (Aaug)とり(Dm9)暮らせば (D)お(Daug)もい(Gm9)出すから         壁の傷(Dm)も 残したま(A7)ま おく(Dm)わ

愛をつぐ(Gm7)なえ(Gm6)ば (A7)別れな(Dm9)けど
こんなおん(Gm9)でも (C7)忘れないで(F)ね
(F7)優し(D7)すぎの (Gm9)なた
(A7)子供みたいな(Dm9) なた
(B♭)あすは人(E7)志に(A7)なる(Aaug)けれ(Dm)ど

コードネームの所で和音を変えます。太字はaug(オーグメント、増三和音)というコードが現れる部分です。augが四か所ではっきりと鳴りますが、ご覧のように、メロディーの通り道でも各所で一瞬だけ鳴っています。augの哀調が全曲を染めあげているのです。それから、下線はメロディの頭が倚音といって三和音からはずれた非和声音の部分ですが、ご覧のように、7度、9度の倚音があちこちに散りばめられています。主音をめぐってさまよいながらフラフラと落ち着くことがない。あーなたー、あーなたー、と2回もあーに倚音でアクセントがつくのは男心にグッと響きます。うまい。もうニクイかぎりです。

この曲はニ短調(Dm)なのに「まーどーにーにしーびがー」という出だしで主音の「レ」が出てくるのは「びがー」からです。そこまでにまずラーファード#-と来て(この部分がaugです)じらされる。さてやっと「レ」が出るかと思いきやまたまたミミ-(倚音)に飛んで、それからやっとレレーが出ます。このうじうじして主音になかなかたどり着かない様は主人公の迷い、切なさでしょうか。彼女が何をつぐなっているのかは明かにされませんが、詩と音楽が見事に融合して女心の葛藤を描いていると思いませんか。

そのぐらいはまだかわいい。この曲を大名曲にした決定打はご覧のようにaugに始まりaugに終わることでしょう。augで終わる曲は?ほとんどないですが、クラシック好きならまず一つ浮かびます。J.S.バッハの最高傑作である「マタイ受難曲」です。曲の最後の最後、ハ短調Cm主和音(ド・ミ♭・ソ)に無理やりシを食い込ませ、あえて強烈な不協和音として血のにじむような苦しみ、心に突き刺さるような痛切な音でマタイ受難曲は幕を閉じます(だから厳密に言えばCm+7であってGaugではないが、バスがcかgかの違いです)。「つぐない」の最後は僕にこの音を思い出させます。

しかし「つぐない」の救いようのない哀調、失っていくものへの後悔のような感情をもっとよく表している曲があります。ブラームス4番第1楽章です。曲頭のシソー、ミドー、ラファ#ー、レ#シーの最後のシーにレ#が残る形でaugがすぐ出てきます。「愛をーつぐ(Gm7)なーえ(Gm6)ばー」の部分も非常にブラームス4番的であります。「明日は他人同士にー」の「同志にー」の所のE7も、ブラームス(ホ短調なのでF#7)にまったく同じ和声的脈絡で出てきます。そして、コーダではまぎれもないBaugが3回痛烈にたたきつけられ、有無を言わさぬ悲痛な終結となる。これもaugで終わる曲なのです。

作曲家の三木たかしさんがそれを意識したのかどうか。亡くなったのでお聞きすることはできないのが残念でなりませんが、(F7)優し(D7)すぎたの(Gm)あーなたー、こんな素晴らしいメロディーを書かれる作曲家にそんな想像はかえって失礼な話かもしれません。三木さんには「津軽海峡冬景色」という名曲もあって、やはりマイナーキーの哀調を生かし切っています。今時のテレビで短調の曲が流れることはまれではないでしょうか。これがもう戻ってこない昭和なんでしょうか。しかし平成の世でも、「つぐない」が日本の女性に広く歌われ愛されているのはなにかほっとする気もいたします。ちなみに娘も好きだそうです。

最後に、 これを歌ったテレサ・テンさんは外省人であった軍人の娘で4種の中国語、日本語、英語、マレー語、フランス語を話せたそうです。台湾の国民的歌手、アジアの歌姫として国内外で一世を風靡したのに気取りのない人柄だったそうです。彼女をほとんど知らず、95年に亡くなったときもニュースとして淡々と聞いただけ。今初めてじっくりと聴きました。透明なのにあたたかくて癒される声です。何となくずーっと聴いてしまいました。何とも気の毒なことに旅立たれたのは42歳だった。

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アンタッチャブルのテーマ(1959)The Untouchables Theme 1959

2013 JUL 2 23:23:24 pm by 東 賢太郎

物心ついたかつかぬかの頃、この音楽に完全に憑りつかれていました。アメリカのTV映画「ザ・アンタッチャブル」のオープニングテーマです。放映時期を調べると僕は4-9歳だったのでベンチャーズより先です。たぶん初めて諳(そら)んじた西洋音楽だったと思います。I have been absolutely obsessed with this music  ever since I could remember. It is the opening theme of US  film ‘The Untouchables’ which has been televised in Japan while I was between 4 and 9 years old.  It is presumably the first western music which I memorized note by note.

いや、今聴いても血が騒ぎます。作曲はネルソン・リドル。舞台は1930年代のシカゴで、アル・カポネ率いるギャング団とエリオット・ネスらの血みどろの抗争のドラマです。たぶんこれと戦争映画コンバットで物心ついた影響でしょう、ゴッド・ファーザーも好きだし日本のヤクザ映画も大好きです。音楽ですが上と下でだいぶオーケストレーションが違います。上の方が音がいいのでのせましたが、僕が覚えたのは 下の方でした。この悪党顔の面々をご覧ください。面構えにいかにこの音楽がマッチしているか!This music, written by  Nelson Riddle, still gets me excited even now. This story of battle between Al Capone’s mafia and Eliot Ness’s  special agent team,  as well as a war movie Combat, might have built my taste for gang movies such as The Godfather or Yakuzas. Interestingly the same music is differently scored from above to below. I chose above only for its better sound quality but what I remembered then is below. Look at these villainous faces and listen how this music matches them!

主部のバックで半音ずつ不気味に上下する不協和音、ホルンの合いの手、 中間部(サビ)のコード進行(特に3度目に半音下がるところ)がたまらなく大好きで小学校の登下校時はいつも歩きながらこれを歌っていました。すぐ終わってしまうので何十回も。          I had a special affection for dissonances caused by haunted accompanyment sliding on chromatic scale, catchy horn bridges and the striking chord progression at the middle section.  Everyday I walked to my elementary school and back with loudly singing this tune hundred times as each is too short.

こういう変な子供もあまりいなかったろうと思いきや、you tubeでこんなものを見つけ狂喜いたしました。I have thought for ages that I was a quite unusual kid but the video below I found in you-tube gave me a great joy.

オルガンでこれを弾いてしまっているこのおじさん、彼も若い頃この曲を歌って歩いていたに違いない!これのピアノ譜、是非入手しておじさんと連弾したいものです。それにしてもオルガンの音色まで必死にいじったりして涙ぐましい没入ぶり。気持ちわかります。ネットというものはこういう超マニアックな人と人のつながりを生み出す可能性があることが学べました。This old man, playing it with the organ, might have sung this tune while walking in his youth like me!  I wish to play its four handed piano score with him. His affection to this score is unmistakable if one sees not only his motive to record and show his playing publicly but also his devotion to control  subtle tone colors. I recognized a great potential of internet which may connect people worldwide even with such a maniac linkage.

アー世の中俺だけじゃなかった・・・ちょっと安心です。 I was not alone. It was a console for me.

 

クラシック徒然草-僕は和声フェチである-

Thundercat 「Drunk」の衝撃!

 

ベンチャーズとクラシック

2012 SEP 16 4:04:18 am by 東 賢太郎

クラシックというと堅い、退屈、長い、近寄りがたいという人が多く、ポジティブなイメージは癒し、知的、高尚だそうです。日本では音楽市場の10%ぐらいあるそうですが交響曲、オペラのような長い曲を家で真剣に聴くような愛好家は総人口の1パーセントという説もあります。いずれにしても、相当マイナーな存在であることは間違いありません。もったいないことです。

僕は小学校時代にザ・ベンチャーズの強烈な洗礼を受けました。いわゆるテケテケテケです。寝ても覚めてもベンチャーズ。歩きながらもベンチャーズ。ノーキー・エドワーズのマネをしてギターを弾き、本を並べてバチでたたいてメル・テーラーの気持ちになっていました。キャラバンという曲があります。メルのドラムスとドン・ウイルソンのサイドギターの刻みが絶妙にシンクロ。それに乗ってドライブするめちゃくちゃカッコいいノーキーのリードギター。難しいリズムのドラムソロ。レコードがだめになるまで聴きました。

そこに立ち現われたのがビートルズです。ジョンとポールのハモリとノリ。何を言ってるかわからないがなにやらカッコいい英語。女の子の失神。ベンチャーズにない刺激的なコード進行。ポールのものすごいベース。いやーこれはすごい。完全にハマりかけました。そのまま行けば僕はたぶんロックバンド路線に進んでいたと思います。音楽の時間にあの曲を聞かなければ・・・・。

千代田区立一ツ橋中学校。われわれ悪ガキがポール・モーリヤとあだ名していた音楽教師、まじめな森谷(もりや)先生が「今日は鑑賞です」と言ってレコードをかけました。それはモソモソとはじまる退屈きわまりない曲でした。クラシックは聴いてる奴らの感じが大嫌いで、無縁と思っていた僕でした。まあ昼寝にいいか。実は小学校時代に同じシチュエーションで教室の窓から脱走し、母が担任に呼び出しを食らった前科のある僕は、ふとそれを思いだしました。

すると、ちょっとキレイでグッとくるメロディーが出てくるではありませんか。へー、割といいな。仕方ねえ、ちょっとだけ聴いてやるか。まさにその時です。そのメロディーが突然違うコードにぶっ飛んだのは。脳天に衝撃が走りました。ベンチャーズにもビートルズにもない新体験。これは何なんだ?

その曲はボロディンの「中央アジアの草原にて」です。その個所は105小節目、ハ長調のメロディー(注)が3度あがって変ホ長調に転調するところです(こういうのを転調と言います。これからこのように何長調とか何短調とか書くことがありますが、わからなければ無視してください。耳で楽しむためにはどうでもいいです。ただ興味のある方は知りたいと思うので書くことにします)。

(注)このメロディーに似たのがストビンスキーの火の鳥の終曲にも出てきます。ロシア民謡です。なんとも懐かしく平和な感じがします。どっちもホルンが吹きますね。牧歌的なホルンが似合うのです。ベートーベンの田園交響曲。嵐が去って終楽章に入るとまずクラリネット、そしてやっぱりホルンが牧歌的な雰囲気を醸しだします。ボロディンのそこもクラリネット、ホルンの順番です。

この経験が僕をクラシックに引きずりこみました。この曲が入ったレコードとして父が名曲集のLPを買ってくれ、そこに一緒に入っていたワーグナー、チャイコフスキー、ヨハン・シュトラウスも気に入ってしまったからです。

ただ、今でも僕はビートルズ信者です。カーペンターズ、ユーミン、山下達郎などもコード進行が大好きで、ときどき聴いています。往年の歌謡曲やJ-ポップにも名曲と思うものがいくつもあります(コード進行がいいものというのが僕の基準ですが、これは単に僕の好みです)。

さて、ベンチャーズです。京都の雨なんていうしょうもないものをやりだした頃から一気に堕落しました。芸者ワルツなんてやりだすんじゃないか、冷や冷やしたほどの様変わり。ライブのCDもどっかの素人コピーバンドじゃないかという微笑ましい出来。まあそこにいたファンは楽しいんでしょうが・・・。

それでも初期のあのダイヤモンドヘッド、パイプライン、十番街の殺人(テケテケテケの音色が全部違う!)、ウォーク・ドント・ラン、ブルドッグ、アパッチ、テルスター、夢のマリナー号、クルエル・シー、パーフィディアなどなど永遠に色あせることはありません。カッコいい。美しい。

しかし、それにもまして、あのキャラバンなんです、僕には。冒頭のシンバルの一撃で金縛りです。腹にズンと響く中音と低音のタム。土俗的なリズム。究極のアレグロ・コン・ブリオ。完璧に4つの楽器がバランスされた録音。もう芸術としか呼びようがありません。このクオリティの高さはいったい何だったんでしょうか?

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