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カテゴリー: ______国内経済

ビットコインについて一言

2018 JAN 30 1:01:41 am by 東 賢太郎

各所でビットコインについてきかれ、なにか書いてくれという声もありますが、もう4年近く前に書いてるので書き足すことはありません。このときに「未来」だったものが「いま」になっただけです。

ビットコインの未来は?

4年前にこの話をしても皆さん「へー面白いですね」で終わるか眉唾だねというお顔をされました。仮想通貨を応用したご提案をある企業に真剣にしましたが採用されませんでした。もしそれをやっていたら結構な収益になっていましたが、それを言う気はありません。まだ早すぎた、要は、僕がぶっ飛んでいて説明不足だったということでしょう。

ちなみに僕自身がビットコインで儲けたことはありません。1コインも買ってないし今後もそういう動機で買うことはありません。

なぜならこういうものを売買するのは投資ではないからです。投機です。これからビットコインの値段が上がるか下がるか、ビットコインをいつ買えば儲かるかは、ウチのノイ(猫)があした何回ニャオと鳴くかぐらいわかりません。これを投資だと思っている方は根本的に、確実に、投資というものがわかっておられないので、ビギナーズラックで大儲けすることはあってもその2倍損することも大いにあり得るということを肝に銘じられた方がよろしいでしょう。カジノと思ってスリルを求めてやるなら大変に正しいスタンスと思いますが、確率計算できる株式投資家はカジノには行きません。

ただ、4年前に書いたように、あまり実体経済的に付加価値のない銀行の貿易、為替の手数料を侵食することはほぼ間違いないでしょうし、決済手段、特にマイクロ・ペイメントの有用性は高いでしょう。それをNEXUSで決済に使うことは考えられるし、その用途ではコインを買うことはあるでしょう。だからマクロ的には有望だという当時のスタンスに変化はありません。

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そういえばピケティって誰だっけ

2015 DEC 12 11:11:47 am by 東 賢太郎

資産は持たずに借りた方がいいという時代だ。たとえば家など、固定資産税と建物の減価とローンの金利を考えれば借りた方が得かもしれずマイホームをもって一国一城の主だと喜ぶのは地価が永続的に上がるというあり得ない幻想に支えられた満足感にすぎないかもしれない。

不動産は占有すればいいのであって所有はいらないという考え方だ。買ったって固定資産税を取られるでしょ、それ、家賃と一緒じゃないの。要はキミは国から借りてるんだよ。登記簿に名前があったって所詮は小作人なの。一国一城の主なんて踊らされてるだけでバカだねえ。地価上昇がなければたしかにこういう理屈が勝ってしまうだろう。

上がらない土地は自分で使って満足するか、他人に貸しておカネを取るしかない。自分で使うと税金が丸々コストになるから、土地持ちでも自分は税金負担が少ない都心のマンションに住んで、土地は貸して収益を得ようという人が増える。合理的なことだ。そこで「収益物件」なるものがたくさん登場してくる。

それは土地を持てる者が持たざる者から家賃をピンハネしようというもの以外の何ものでもない。それを猫も杓子もやろうという時代になった。不動産所有権の証券化、流動化という背景が後押しして土地持ちが税金を払って値上がりを待つのでなく、税金は少なく払ってピンハネ所得に依存する国民的構造が形成されてきたのだ。

僕が毎日歩く駅前商店街がある。5~600メートルあるこの道でのお店の興亡ぶりは目まぐるしい。6年前に越してきたときの店や飲食店の7、8割はもうない。出ては潰れをくり返し同じ場所に3代目の店なんてのがざらだ。肉屋がケーキ屋になり洋品店が靴の修理屋になり弁当屋になったと思ったら不動産屋ができていたという塩梅だ。

これは持たざる者がピンハネに耐えられず、ひどいのは半年で撤退なんて気の毒な事態を引き起こしてるということだ。これを見て思い出すことがある。今年の初めに猫も杓子も読んだ(とされ)、全マスコミが天照大神みたいに崇め奉ったトマ・ピケティの新・資本論である。これを日本で真っ先にボロカスに貶したのは僕であり、1年後はみんな忘れてるだろうと予言したら、そっちはハズれて半年で忘れられてしまった。

ピケティの新・資本論について

ピケティは間違っている

このセンセイは世界の左寄り経済学者の常例として金融証券市場にほぼ無知でありブログに書いたことに尽きるのだが、ご説にはひとつだけ美点があって、r(資本収益率)を不動産収益率に置き換えるなら、他国は知らないが我が国においてはかなりr-g>0は正しいということが僕の目撃してきた「某駅商店街」の6年間の興亡によって証明されているかもしれないということだ。

江戸時代以降の日本人はもともと親方日の丸の権力たかり体質があり、アントレプレナー(起業)体質はきわめて貧困である。成功している新興企業に在日韓国系や中国系が多いのは彼らにはそれが旺盛にあるからであって、角界がモンゴル力士依存になってしまうのも、LPGA(日本女子ゴルフ)の賞金ランキング上位5人がぜんぶ韓国・台湾人になってしまうのも同じ現象なのである。

それは、日本はピンハネ所得に依存する国民的構造形成に非常に親和性のある国であることに原因がある。海賊が作った英国やゴールドラッシュで一攫千金を夢見る山師が作った米国とは根本的、決定的にちがう。ピケティがいみじくも指摘した階級の二層化が進み、固定化し、元から一攫千金的な上昇志向がない国民に上昇なんかしなくたって楽しい人生があるんだと洗脳が行なわれる。ピンハネされる側をふやすだけだ。

するとそこで不公平議論がでてきて所得再分配だと騒ぐ。あまりに知性も思考力もない。角界からモンゴルを追放しろ、韓国人は出ていけとやるのと変わりない。負けている日本人の方がだらしないのである。たかり体質がだめなのである。政治がそういう方向に持って行かないと、日本人はそのうち全部がピンハネされる側になるだろう。爆買いしてくれる中国人だけはスマイルで迎えましょう、それがおもてなしですなんて人のいいことやってると、土地ごと彼らに爆買いされてしまうに違いない。

不動産は占有すればいいのであって所有はいらない

なんとなく知的でカッコいいのだが、ちがう。ぜんぜんちがう。不動産は所有しなくてはならないのだ。企業は社長なんかにならなくてもいい、サラリーマン社長なんて賃借人にすぎない。議決権を持てば地主だ、つまり株を所有することだ。それとおんなじ。スマートで合理的な小作人?なんだそれは?

 

(追記)

人の噂も七十五日とはよくいったもので、ウワサはまあ2,3か月で消える。ピケティの本が売れなくなったのは実は本の中身のせいばかりでもなくて、それを読んだとか本棚に飾ってあるというのが自慢にならなくなったからだ。こういうのを賞味期限切れという。だから噂の賞味期限は二か月半が相場という意味なのだ、冒頭の言葉は。

では噂の真っ盛りはなんというか?旬(しゅん)だ。旬という英単語はなく、in seasonとかthe best seasonであって面白くもおかしくもない。つまり旬の語感は極めて日本的なのである。食べ物の旬が二か月半というのは何となく合点がいくだろう。

株式相場を長年みていると旬で動く要素があることを知る。食べられるわけでない株に旬もくそもないはずだが、時としてある。利食いという用語があるように食える時期という感覚がある。金融緩和とは旬感覚を市場に広く蔓延させる麻薬であると言っても過言ではないだろう。

だからやりすぎると定義矛盾になる。旬のタケノコが2年も3年も旬の味のまま出回るなら、それは旬ではなく巧妙なビニール栽培なのだ。それを鋭く見抜いているイエレンは、だから金利を上げると主張したのである。ピケティ現象もそうだったが、そういうのにころっとだまされるようなら株はやめておいたほうがいいだろう。

 

 

 

 
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中国人の爆買いが教えること

2015 JUL 9 1:01:29 am by 東 賢太郎

西室兄がこのブログでいい指摘をしていて

そこにコメントとして書いたことが重要と思っている。「日本のプレゼンスが上がる気がする」、これは同感だが、待っていればそうなるわけではない。

先日、鳥取県の境港に4700人乗りの客船が突然やってきて停泊した。「クォンタム・オブ・ザ・シー」という名のクイーン・エリザベスⅡより大きい豪華客船で、乗ってたのはほとんど中国人観光客である。なぜかというと上海、博多、釜山というルートの予定だったクルーズがMERS騒動のため釜山寄港が取り止めとなり、代わりの港を探したところ境港が受け入れたということだ。乗客の目的は買い物だ。港に近いイオンモールが電化製品、クスリ、化粧品、お菓子などを積み上げ、その村の3400人の人口をゆうに上回る4700人の中国人が大型バス10台で押し寄せて爆買いとなった。ひとり10万程度としても5億円の売上になる。

春秋航空によると上海発関空行きのエアバス320(189人乗り)の平均乗客率は95%で、一人平均40万円の買い物をする。1機飛んでくると7200万円ばらまいてくれることになる。こうした行動の背景には商品のクオリティだけではなく、それを管理、製造、流通、保管、値づけなどする日本のシステムへのトータルな信用がある。輸入すればいいじゃないか?誰でも思うことだ。違う。間に中国人が介在しないことが大事なのだ。

待ってれば来るじゃないか!日本のプレゼンスは上がってるぞ!

そうだろうか?よく考えてほしい。その5億円や7200万円はどこから来たんだろう?中国人は火星から札束をかかえて飛んできたのか?

そんなはずはない。そのお金は誰かが中国人に支払ったものだ。中国からモノやサービスを買った人だ。それは誰?中国人ではない。なぜなら2000年まではこういうことは起きていない。外国人だ。どうして?中国が2001年からWTOに入ってグローバル・ルールで貿易(モノ・サービスと貨幣の交換)を大々的に始めたからだ。鎖国を解いたといえばわかりやすい。

僕の先祖は貿易商で、江戸幕府が日米修好通商条約に調印して横浜を開港すると即座に生糸を外人に大量に売って大儲けした。私財を寄付してそれで横浜市や熱海市が水道やガス灯を作ったほど儲けた。それと同じことがこの10年、中国の沿岸部の都市で起きた。鎖国を解くとそういうことが起きるのだ。ざっくりいうなら沿岸部の4-5億人が、つまり日本国4,5個分のひとが、日本人なみか一部はそれより格段に金持ちになったのである。そうしてより豊かな生活を求め、日本に来て爆買いをしているのである。

もう一度問おう、そのおかねはどこから来たの?

外国だ。おかねは無限ではない。輪転機を回す?おかねは増やせるが価値が落ちるから買えるものは一定だ。それを購買力という。中国人が巨大な購買力を持ったということは、すなわち、誰かが巨大にそれを失ったということだ。

それが誰かは特定できない。中国から何かを買っておかねを渡す国々すべてだ。直接買うかどうかはともかく、素材や部品を入れれば世界にメード・イン・チャイナ製品が入ってない国は皆無であるからアフリカに至るまで全員が買っている。なぜ?安いからだ。なぜ安い?賃金が安いからだ。つまりアフリカで最終製品が売れればアフリカがお金を中国に支払い、中国の工場で月給7千円ではたらく女工さんがアフリカで雇われたのと同じことになる。

つまり、中国人は世界中で「間接的に」雇用され、当地の労働者はその分の職を失ったという厳然たる事実がある。これは日本でも起きたことだが、実は、貨幣経済という目には見えないグローバルのチェーン(鎖)によってつながり、地球の裏側でも同時に起きている。仕事をした者におかねが手渡され、その者が働いた分に見合うモノを買えなければその鎖は切れる。だからそうならないように為替レートというものが変動して、中国の工員さんは10年にわたってお金をもらい、購買力を高めることができたのである(その為替レートを購買力平価という)。

もう明白だろう。中国人の爆買い購買力は先進国から移転してきたのである。

そのツケが回った先進国では、そのしわ寄せが最も弱い国に回る。これも自明だろう。弱い、何が?経済力だ。経済力ってなに?いいものを安く作って高く売る力だ。日本はその力が充分にあったが、購買力平価をかけ離れた円高によって安く作れなかったから負け組だった。こういう経済原理を知らない政党と浮世離れの左派経済学者と日銀総裁が経済力をめちゃくちゃにしかけたが、お鉢がまわった自民党によってからくも一命をとりとめた。日本は去年は世界で一番上がった株式市場になったがあたりまえだ。

安くも作れないし高くも売れないし、そもそもいいものを作る能力もなければ努力もない国は失業が増え、経済力が失墜し、税収が減って国家が破たんする。これもあたりまえだ。だからピンポイントに終点同士を点と線で結べば、ギリシャのような先進国の末端にいた国が大負けして、中国人に爆買い資金を供給しているのである。まさかそんなこととは知らないギリシャの人々は自国政府やEUをこきおろす。そのどっちが好きですか?が先日の国民投票なのであって、どっちが好きになっても実はなんの解決にもならないのだ。

日本は爆買いで漁夫の利をえたぐらいで安心してはいけない。ギリシャがコケるとこれまた貨幣経済というグローバルな鎖をつたって地球の裏側でも何か良くないことが起きる。日本の評価がいろんな方面であがっているのは円安で安いから行ってみよう、買ってみようという力のドライブがあり五輪の期待もある。その反面でエネルギーや食品や武器を日本人は高く買わされるという負の面がでてくる。本来通貨は強い方がトータルに得なのであって、弱いからお得なんていうものの理にかなってない利益が国家の長期繁栄を約束することはない。

日本に追い風は吹いてるから形成は有利だが、敵がレッドカードで10人になったにすぎない。攻め込めば勝てる確率は高まったが、オウンゴールを待っても勝利は永遠にやってこない。

 
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某ベンチャー企業プレゼンをきく

2015 MAR 7 22:22:17 pm by 東 賢太郎

本日は休日でしたが某社顧問として某ITベンチャー企業の経営陣とのインタビューに出席しました。この会社への投資の審査役としてです。

ベンチャーの社長は30才で取締役の方々より二回り以上の若さです。メディアが紙媒体から電子媒体に移行する中で、広告や有料コンテンツもポータルサイトに奪われつつある趨勢をうまくとらえたビジネスモデルを構築されています。

ご実家が茨城で3-11で被災されたそうです。ところが茨城は民放がなく情報発信不足で隠れ被災地になってしまい、家が半壊しているのに節電の協力地域に入ってしまって電気を切られたりしたそうです。

同じ学校のPTAで、お子さんを無くされた親御さんと無事だった親御さんの間で深い溝ができてしまうなど心の復興は簡単ではなく、ネガティブな報道に日々接していれば若者が希望を持って物を考えなくなってしまうという危機感を覚え、そこで、震災の傷跡の修復のために人生をかけて何かしなくてはと思い立って宇宙航空研究開発機構を辞めて独立されたそうです。

詳しくは書けませんが、インタラクティブなコミュニケーション環境を設定することで人々のマインドもポジティブな方向に変化させることができ、上記の広告媒体の趨勢にも乗るというビジネスモデルです。非常に卓越したアイデアでり、実現性も高く、事業計画書通り進めば上場は来年にも充分に可能であると判断しました。

社長が30才で志をたて、ゼロからそれを構築されたというのは敬服しますし、こういう若者が日本初のグローバル・ディファクトを創造して次のスティーブ・ジョブズになる可能性さえもあると思います。

ITが汎用性を持って約20年たちますが、どこでどう生産性に寄与するのかという議論が机上でなされてきました。しかし今日のプレゼンはもうそれが現実性の高いレベルで具体的に起きており、IT革命という死語に近づいた言葉に実はもう魂が入っているという事実を目の当たりにし大変勉強にもなりました。

モデルだけでなく起業の動機、経営者のコミットメントも素晴らしく、同社への投資は前向きな方向で調整するつもりで、そういう立場でご支援もしたいと思いました。

僕がブログでずっと書いてきているこういう「若者に教えたいこと」ですが、こうして見事に体現されている方もいらっしゃる。こういう人や企業がどんどん出てくるなら日本の未来は明るいですね。

 

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頑張った人が報われる社会

2015 FEB 19 20:20:33 pm by 東 賢太郎

安倍首相が「頑張った人が報われる社会にする」と国会で答弁した。これは非常に重要な言葉と思う。

それがなぜかを説明するには、少々長くなるが「デフレが金融現象だけで起きたのではない」ことをご説明する必要がある。

(1)世界を変えたユニクロ・モデル

ぜんぜん難しいことではない。デフレは中国が2001年にWTOに加盟したことで財市場を通じて低価格の労働が輸出され、世界の全ての国の労働市場の需給が緩和し、賃金がさがった。これが総需要を押し下げたからおきたのだ。

それが誰でもわかるとても簡単な例をお示ししたい。

中国にいち早く進出したユニクロ(社名はファーストリテイリングだが以下ユニクロと書く)は上海郊外の工場で激安の労働力を使って縫製した商品を日本で売って成功した、価格破壊の先駆者である。中国人の女工さんを物理的に日本に連れてきたわけではない。当初のころ月給がたったの7千円だった彼女らは「商品に乗って」やってきたわけだ。

すると、上海工場で雇った30人の女工さんの代わりに1人の月給21万円の日本人工員さんが職を失っている。そうしないと企業はそれをやる意味がないから、あからさまにやるかどうかは別として、いやむしろあからさまに見えないように企業努力をしながら、必ずどこかでそれは起きていることにご注意いただきたい。

同じ人件費で30倍の数のジーンズができるのだから他社もどんどんやる。企業にとってはそうしないと負けて倒産してしまう。他の業種も同じことを始める。こうして10年ほど前に「空前の中国進出ブーム」と新聞に書かれたのは記憶に新しいだろう。

(2)ちょっと待ってよ、中国の人件費が安いのは大昔からでしょ?

もちろんだ。これが国民経済的規模でできるようになったのは、中国が2001年にWTOに加盟・調印して西欧の貿易ルールを守りますと国が保証し、先駆者ユニクロのような賢明なリスクテーカーだけでなく普通のコンプライアンス意識の企業も安心して工場進出できるようになったからだ。

つまり、一人当たり人件費が1:30という、帝国主義時代の植民地か奴隷制のころでしかありえなかったような労働市場が国のギャランティーつきで忽然と地球上に出現した。琵琶湖ぐらいの水量があって、100mもの高低差のあるダムの水門を一気に開いたようなイメージを持ってほしい。これが2001年におきたことであり、今や中国は2兆ドルと世界最大の輸出国であり、この水流の影響を受けない国は世界中どこにもない。

ユニクロを退職した日本人は別な会社で職を探す。ところが業界中でそれは起きてくるからその職はどんどん減っていく。月給20万円でも仕方ないだろう。こうして国内の労賃は1万円下がる。新聞には「不景気による労働市場の需給の緩和」と載る。そうではない。ユニクロはジーンズの値段だけではなく、国内の労働市場でも価格破壊をしたということだ。

これがブームになって国民経済的規模で起きた。工場や職場で自分のデスクのとなりに中国人が現れたわけではない。最近は中国語がそこらじゅうで聞こえるようになったと言ってもデパートか観光地の話だ。しかし、目には見えないだけで、実は工場ごと中国人に入れ替えというような事態が10年前からそこらじゅうで始まったのである。非正規雇用の増加というものは、これが工場閉鎖や雇い止めにいたらず姿を少し変えた現象だということがご理解いただけるだろう。

(3)これは製造業だけの話でも日本だけの話でもない

例えば、多くの米国のサービス業でコールセンターを、賢くて英語がうまくて賃金は安いインドに作る流れとなっている。電話をしているアラバマ州の米国人顧客は、自分の町の明日の天気まで教えてくれるオペレーターがまさかムンバイでネット予報を見ながら話しているなどと想像もしない。この陰で、ユニクロ現象と同様に非製造業においても米国のオペレーターは失業しているのだ。

失業したり手取りが減るかもしれない労働者は消費は控える。すると企業は売上予想を下方修正して設備投資を減らすが、生産設備はそのままである。わかりやすく極めてシンプルに言ってしまえば、これがめぐりめぐって国内総需要が供給力を下回り、デフレになったのである。循環的なものではなく、構造的なものである。

そこでGDPの6割は個人消費だから経済成長率は落ちてマスコミは「景気が悪くなった」と騒ぐが、景気のせいでデフレになったわけではないことにご注目いただきたい。だから政府の景気対策なんかいくらやってもデフレは退治できないのであって、アベノミクスが金融緩和という非常手段を持ち出したのは理論的に正解なのである。

(4)ユニクロが悪いわけでもないし止められる者は誰もいない

資本が国境を超えて安い労働市場を求めるのは成長するために当然であり、国家がそれを止めることはできない。ここが一番大事なところで、見誤ってはいけない。「仕事がないぞ!国はなにをやってるんだ!」と永田町でデモをしても仕方がないのだ。なぜならそれは国の責任ではないし、国はどうすることもできないからだ

これをよく覚えておいていただきたい。「柳井社長、失業が増えるし景気も悪くなるんで製造は国内で日本人でやってください」なんてことは絶対に起こらない。もし馬鹿な政権がそんな法律を作ったら、優秀な経営者は全員が日本から逃げ出すだけだ。国内には税金をたくさん払ってくれる企業はひとつも残らず、格差社会は見事に解消されるだろうが一億総中流ではなく一億総下流と中国にいわれているだろう。国家財政は破たんして、弱者救済どころか国ごと弱者になるのである。

ちなみにファーストリテイリング社の株価はこの10年で5倍になった。今の円建ての金利は気が遠くなるほど低く、徳川家康が預けた100万円の定期預金の利息がやっと10万円に達した程度である。従業員からすると大変な会社だが株主にとっては優良企業であり、労働者がこういう株を買ってはいけない法律があるわけでもない。株を保有すれば誰でも資本家になれるのであって、その方法を無視しておいて「株は富裕層しか関係ない」と批判するのは格差を階級問題にすり替えたいだけだろう。

(5)これは日本だけでなく、世界の労働者の問題でもある

世界で必要な職の数は世界のGDPが停滞すれば増えない。限られたパイを中国人が奪いだせばギリシャのようにはじき出される国が出る。はじき出されたのはギリシャという国ではない、国際競争力のないギリシャの労働者自身である。景気のせいでも政治のせいでも国家財政が破綻したせいでもなく、国民ひとりひとりの自己責任の集大成にすぎないのである。

国民のプライドがもたないから何とかしろとEUに詰めよるなどお門違いもいいところだ。ギリシャの解決策はたったの2つしかない。①国民ひとりひとりがそのプライドを捨てて生活水準を落とすか、②がんばって中国人より生産性の高い労働者になるかである。だからドイツは暗にそういって要求をはねつけている。

こういう時にはえてして、怒れる国民の代理人を装った、ファイティングポーズで威勢のいい政党や首相が選ばれる。中村兄が第1次大戦の戦後処理失敗の帰結と指摘しているヒトラーの出現がいい例だ。そして彼は戦争という禁じ手の第3の解決策に走り、国民を殺し、財産を剥奪し、国を崩壊させた。

つまり、はっきり書くが、国にはできないのだから「我が党がやれば皆さんの生活が楽になります」というのは論理的にあり得ない、要は、嘘八百なのである。国民の怒りに乗じて得票し、政権だけは乗っ取ろう、何をやるかは後で考えようという連中が跋扈してますます国をダメにするというのが歴史の教える国民国家の失敗の方程式であり、まさに我が国も2009年にその一例を歴史に書き加えているのである。

(6)では国家ができることは戦争以外にはないのか?

実はそうではない、もうひとつある。国民に牙をむいて資産を剥奪することだ。ギリシャの銀行預金の流出が止まらないのは銀行が傾いたからだけではない。一昨年にキプロスが危機を起こしたとき銀行に預金していたロシア人は預金封鎖を恐れてビットコインに換えて母国に送金した。今回のギリシャでも国など信用していない富裕層がまず預金を海外に移し、それで銀行が危ないということになっているのである。

政権を取るだけが目的の政党は必ず公約で「政策によって貧富の差を無くします」という。なぜなら政治は数で決まり、「富」のほうが数が常に少ないからだ。だから統一地方選向けに左がかった学者などを呼んできて格差社会などと騒いでいる。しかし数が常に賢いわけではない。この公約はオウムが朝にオハヨウと声をかけてくれるぐらい意味のないことで、いわば歴史的常套手段である。

貧富の差はいつの時代もいかなる国でもなかったためしなどない。それを無くしますと公約する政党が与党になっても、ちゃんと格差はできるのである。なぜならその政党の幹部が金持ちになるから、公約を果たせば果たすほど前とは違ったメンバーによって格差社会ができる。共産主義国のトップはみんな豪邸に住んでいたし、今の中国の最大の富裕層は共産党幹部であって何兆円という天文学的蓄財をしていることがちゃんとそれを証明している。そうなりたい人が権力を握りたいためのセールストークなのである。

(7)日本に世界レベルの富裕層などいない

僕が働いた金融業では米国の社長と平社員の年収差は数百倍もあって日本は証券トップでもせいぜい20-30倍なのだが、やや特殊な世界であるだろう。では日本の代表産業である製造業はどうか。下の図を見れば一目瞭然だが、その製造業を代表するトヨタの社長ですら日産のゴーン社長と比べてこんなものだ。

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同じ自動車業界だから、ふたりの差は何かというと「日本人か外人か」だけだ。日産も日本人社長には10億円も払っていたわけではない。英米で10億の人は日本でもそうしないと来てくれないよねということであって、ここまでひどいともはや人種差別に見える差である。

要は、トヨタ、日産クラスの社長は欧米なら10億円、日本なら2億円であり、金融業にいたってはそれは100億円と1億円の差になる。日本の高額所得者の年収などというのは世界的には「異常値」といえるほど低い。一方で、一般労働者の賃金は国際的に高いほうだ。だから海外に工場移転が起こるのである。「日本は格差社会だぞ」などと欧米でいえば、何か面白い日本ネタ・ジョークでも始まるのかと期待されてしまうのがおちというのが現実なのである。

だから、もし日本国が国民に牙をむいて資産を剥奪するようなことを目論めばギリシャの富裕層といっしょのことが間違いなく起きるだろう。日本は相続税で三代で資産はなくなるから富裕層になった人はおおむねそれなりに頑張った人である。では「頑張った人」の共通点は何かひとことで述べよといわれれば、「頑張った人も頑張らなかった人も同じだけ報われますよという国が何より嫌いな人」である。だから頑張ってトヨタの社長になっても「たったの2億円」というのは、もうその時点ですでに本当にできる人は海外に出ていってしまう数字だ。

以上、恐らくお読みの方には僕が非常に冷たい資本主義原理主義者で弱者切り捨て論者に見えているだろう。それを覚悟で書いたのは、まず起きていることの実態を論理的、科学的に解析すべきだからだ。「現実はこうだ、理由はこうだ」、でも「現実はよろしくない」、そこで初めて現実を少しでも良くするために為すべき方法論が選択されるのであって、「現実はよろしくない」からいきなりスタートする安直な思考では方法論を間違ってしまう。

(8)「起きていること」を復習しよう

資本は国境を超えて安い労働市場を自由に求めるが一般の労働者は国境を超えられない、すなわち、グローバルな資本市場とローカルな労働市場のねじれ現象が生じていて、それは昔からあるのだが中国のWTO加盟という巨大ダムの開門で加速して世界中の政府が看過できない所まで来ていて、賃金の安い方に資本は流れてしまうから旧体制に安住していた国ほど被害が大きいということだ。

ギリシャの例で、これを解決するには方法は2つしかないと書いた。①生活水準を下げる②生産性をあげる、である。残念なことに日本は②ではなく①の方に社会全体が向かいつつあり、若年労働者層ほどそれを強いられて国家全体が活力を無くす可能性すらある結果となっている。

(9)よく考えて欲しい。生産性をあげる、とは何か?

頑張ることに他ならない。中国人を低開発国のバロメーターと考えれば、中国人より生産性の高い労働者になることで雇用はされる。もちろん正規雇用である。中国人の賃金も当初より大幅に上がってしかも円安でもある。ユニクロで中国人の30倍のジーンズを縫製しないと負けてしまう時代は終わった。むしろ縫製の正確さ細やかさでは勝てるだろう。そう考えて頑張る人が報われる、それが会社だけではなく社会全体の仕組みとなれば日本人は必ず雇用を勝ち取ることができる。

大事なことは、それは民間がやることであって国家が法律や規則で強制することは不可能だというこだ。民間のトップにはかならず「頑張った人」「頑張って報われるための知恵のある人」がいる。彼らにもっと頑張ってもらい、企業には稼いでもらい、税金を払ってもらい、ノウハウやスピリットを次世代に伝え、社会にそういう若者が増えるように引っぱってもらうことが重要であり、そこから「弱者救済」という社会として絶対にやらなくてはならないことをやる知恵と財源が生まれてくる。

(10)「頑張らずに国にすがりつきたい者」と「弱者」とは峻別すべきである

弱者とは老人、病人など社会的保護なしには生活が危ぶまれる人である。健康で働けるが働く意欲が低く、国や役所や親が何かしてくれるのを待っている人ではない。働ける人は全員が自分の能力を高めて生産性を上げる努力をしなくてはならない。それが資源のない国が競争力を永続させるための必須条件であり、少なくとも昭和の日本人は言われなくてもそう考えたし、それができた。それだけでも世界でトップクラスの優等な民族であったことが証明されていると思う。

弱者救済、セーフティネットの整備を欧州か北欧なみに厚くするのはいいことだが、カネが余分にかかる。GDPの2倍も借金がある国がそれをやろうというなら国債発行に頼らない財源確保、つまり経済成長による税収の自然増というバックボーンなくしてそれをやるのは自殺行為である。借金の重みでいずれ国家財政のほうが破たんするだろう。「頑張らない人も報われる社会」を目指している政党がそれをどうやろうというのか知らないが、やるというなら頑張る人は逃げるだけで、結局誰も得をしないし救われもしないだろう。

(11)ではこれから我々はどうすればいいのか?

そこが一番重要だが、私見は今後書いていきたい。政治家でない僕たちは国家をどうすることもできないから、ひとりひとりがどう考えどうすればいいかということだ。しかし、書いてきたようにこれは我々一人一人の決意の問題である。まずは自分や家族や友人の幸福を考えるぐらいしかできないし、それだけでもできれば大変なことだと思うし、それができなければ困っている方々に本当の思いやりをさしあげることだって難しい。

僕が言うのもおこがましいとは思うが、世界の何千人という優れた方々とお金という本音の世界を通してお会いし、競争し、おつきあいしてきたという経験から、ささやかながら若者に教えたいことというカテゴリーに100本のブログを書かせていただいている。普通の父親はこういうことを自分の子供だけに教えるのだろうが、誰であれそれを託したいのは日本の若者だという信念から真剣勝負で書き持論として公開した。お時間があるときにお読みいただければ望外の幸せである。

 

頑張った人が報われない社会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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アベノミクス選挙雑感(追記あり)

2014 DEC 15 0:00:42 am by 東 賢太郎

議席数については特に感想はありません。11月21日の拙ブログ「アベノミクス選挙の大義(今月のテーマ)」の想定の範囲内の結果です。デフレ脱却と景気対策が喫緊の課題であり、それに代案も実行力もない政党はだめだということを国民が見抜いていたという意味でしょう。戦後最低の投票率でしたが、反対票を投じなければ現政権継続が明白な情勢ですから、それは今のままでいいという消極的投票を含んでいると思います。

だから今回大義があったとするとそこに書きました財務省とのアコードへの影響でしょう。借金を負う身としてインフレがいいにきまってます。それは経済成長を伴う物価上昇でないと困るわけで、安倍政権は第3の矢の成功になりふり構わず進み、それを金融政策も全力でバックアップする、それがアコードになるはずです。

消費税増税の延期に国民は是の審判を下した、安倍政権はこれを霞が関対応への強力な援護と考え官業の規制緩和に切り込む余地が出るでしょう。しかし2%上げることにも是の判定をした。それを批判した野党には非としたわけです。そのぐらいアベノミクスの経済政策への期待があるということでしょう。民主党は代表も元総理も落とされました。経済政策への信任がないからと思います。なりふり構わずの条件は整いました。

為替と株の方向性はかなり明白ではないでしょうか。

(追記)

自民の獲得票数は2009年から毎回減っていて投票率が減った効果が野党票に顕著に出ただけ。圧勝といっても議席数も09年の民主党のそれ以下。消費税2%上げはコミットしてしまったのでもし景気が腰折れしたら自民は一気に浮動層の支持を失って09年の二の舞もありうる。

つまり景気持続の象徴である株高を伴って第3の矢の政策展開をしていくことが安倍政権には必至なのです。期待先行であろうと金融政策動員の腕づくであろうと、株高持続がマストです。しかし株価はバリュエーション上(特に大型株は)それを織り込んでいると思われます。中型、小型にはまだ魅力的なものがたくさんあります。

政府が株を上げると宣言しているようなものなのだから株安の局面があれば買うことは正解と思います。10万円でも買えるのだから「金持ちが恩恵を受けるだけ」というのは野党の詭弁です。リスクを取るかどうかだけです。リスクを取らなければ金持ちでも見返りはありません。しかし何でもいいというわけではなく、バリュエーションには注意すべきです。簡単にいえばPER、PBRが市場に比べてあまり高いものは避けた方がいいでしょう。

 

 

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アベノミクス選挙の大義

2014 NOV 21 22:22:43 pm by 東 賢太郎

株価というのは世の中のコンセンサスの指標です。けっして意味もなく上げ下げするわけではありません。例えば、

オバマ民主党大敗を世界がどう評価しましたか?

こう質問された時、最も客観性のある解答は何でしょう。株価です。11月5日以来、NYダウ平均株価は3%近く上昇していますから、「共和党の勝利を好感しています」と答えれば正解なのです。誰も有効な反論はできません。

「株価はコンセンサスで決まる」というのがコンセンサスだからです。それに逆らって、「いや私は悲観している」と株を売った人は損をします。逆に、オバマ再選の時の「オバマショック」でNYダウは300ドルも下がりましたが、その時、「いや私は民主党支持者だから」と株を買った人は大損しました。お金をドブに捨ててまで支持を貫きたい奇特な人はいないという前提ですが。

つまり、株式市場はコンセンサスがどうなるかを占う場なのです。このことを経済学者ケインズは「美人投票」と称し「1位になる人を的中させると勝ち」のゲームにたとえました。あなたの趣味でAさんが良いと思っても、周囲はBさんを選ぶと思えばBさんに投票しないと負けです。だから多くの人がコンセンサス(みんなが美人だと思うだろうBさん)を選ぶようになるのです。

さて、今回のアベノミクス解散総選挙はどうでしょう?

僕の記憶では11月10日ごろから憶測が流れ、株価が織り込みはじめました。10日の日経平均引け値は16,780.53円です。発表は18日夜だから翌19日引け値を見ますと17,288.75円で、今日が17,357.51円ですから発表時には織り込み済みでした。

10日からは徐々に織り込みながら3%ほど上げていますから、現時点ではコンセンサスは解散を概ね好感している、ということです。

今回の選挙には大義がないと野党は言いますが、あります。18か月先送りした10%への消費増税です。そこからの先送りはない、必ずやるという信を問う選挙です。その時点で経済が不調で増税が国民生活の足かせになるなら安倍首相は責任をとるという条件付きで。

これは日銀に金融緩和継続を宣言させて官邸と協調姿勢をとった財務省と、そのアコード(協調)を継続する唯一無二の選択肢だったでしょう。

このアコードが崩れれば緩和は終結し(日銀は本音はやりたくない)、株価は暴落します。その場合、増税もコミットされていないわけですから、国際社会での日本国債の信用力が落ちます。するとS&P、ムーディーズの格下げという事態になります。すると国債は売られ、日本の金融機関のバランスシートは悪化します。円は売られます。

つまり、資産効果が削がれ経済失速、デフレに逆行、金融機能がますます停滞、円安で物価高という四重苦に突入し、日本の国力はズタズタになります。

株高は企業と富裕層だけのメリットで大半の国民に利益はないと野党は言いますが、株が上がって誰が損するのでしょう?デフレ環境であったのに誰にも不利益がないというのは、大きな利益なのです。

ここで株が下がれば国民全員の生活に、例外なく大打撃があります。これは誰かが株で損するからではありません。

民主党があのまま政権に在ったら今ごろデフレが治癒の見込みのない重病となっており、日経平均はおそらく7000円以下で、被災者の方、社会的な援助が必要なかたがたまで含めて我々の生活はどうなっていたか、考えてもゾッとします。

株価というものは、それで誰かが儲けるだけだろうという他人事ではなく、誰もが影響を免れられない経済環境全体をしめすバロメーターなのです。結果として株を下げてしまうような政権になれば国民全員が不幸になるということを言っております。

円安はよろしくない、良い円安などないというのはブログで強調したとおりです。円安でもこの2年で日本の輸出は伸びてません。企業の海外資産が円ベースで増えて株価に一応はプラスですが見かけ上の増加ですから持続性はなく一時的な要因です。

だから円安イコール株高というのは株がよくわかっていない人たちの呪文にすぎない。しかし、いくらなんでもそのうち彼らも真相に気がつきます。今の円安はデフレ治癒の金融政策という、「投薬によるによる副作用の発熱」にすぎません。

しかしこれだって、ここから経済・株式オンチの政権が医師として治療を続けたらその発熱で患者が死んでしまいかねないほど、今の病状は複雑です。

野党の野合はいかんというのがかつての選挙でしたが、今の野党は解党はあっても野合する力すらない。政権担当能力など言うに及ばずあるはずがないのであって、消費税増税を18か月後にコミットする力も当然ありません。ということはアコードもなくなるわけで、従って、我が国は四重苦に突入し、国民の生活どころか中韓露になめられて国土保全すら危うくなります。

つまり、自公の負けイコール株価、国債、円の暴落なのです。だから解散総選挙がささやかれだしてから日経平均株価が「暴落しなかった」ということは、それがコンセンサスではないだろうと世の中が思っている明白な証拠なのです。

自公を応援しているわけではありません。それしか選択肢がないので困っているのです。選択肢なんかないだろうという意味で野党が「大義がない」というなら、それは正しいことを言っています。

 

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吉田さんの10周年記念パーティに思う

2014 OCT 23 22:22:39 pm by 東 賢太郎

昨日はSMCメンバーの吉田さんがパートナーをつとめるブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッドの東京オフィス開設10周年記念パーティに行ってきました。同社は運用預かり資産1兆6千億円を超える、英国を代表する運用会社です。

帝国ホテル孔雀の間は日本の運用業界の重鎮や前某国全権大使閣下をはじめ盛況でした。ブルーベイ社については、僕も小さいながら同業者としていろいろご一緒したい案件があり、ご社業については仔細に勉強させていただいております。

敬意を表したいのは、日本オフィス開設当初は400億円しかなかった運用預かり資産が10年で15倍の6000億円にまで拡大したことです。もちろん運用成績が良いことの当然の結果ですが、知名度がないところからそれを年金基金などに地道にお知らせしていった吉田さんたちの努力は大変なことです。運用成績が良ければ僕たちの将来の年金が支払われる原資ができるわけです。

ところがよく考えて下さい。年金基金運用は資金を日本国債に投資する比率が非常に高いのが現状です。国債は国の借金です。つまり、年金が国債に投資するということは、国が年金基金から当面の財政資金をお借りし、その元本は利息をつけて年金にお返ししましょうということです。しかし、どうしてその元本、利息が払えると保障されているのでしょう?

それは返せなければ税金を取りたてて返しますという保証、つまり国家の徴税権という担保があるからです。最悪の場合は、税金をとって利息を払い、その利息が年金運用収益として計上され、それが年金として税金をとりたてられた国民に帰ってくるという極めてあほらしいどうどうめぐりなのです。それも取りたてられるのは僕らの世代ではなく、子供や孫の世代でしょう。若者こそこれに怒るべきなのです。

じゃあどうすべきなのか?年金の国債買いというタコ足配当もどきはやめることです。運用者がプロじゃないから失敗を恐れて最も安全確実な国債を買い、財務省からすると必ず国債を買ってくれる上得意になる、こういうお手盛りをやめさせることなのです。つまりプロの運用者が運用する資金の比率を上げるべきである。それに尽きます。

英国のブルーベイは日本国債でなく欧米の債券に投資をして高利回りを安定的に達成しているプロ中のプロです。ここが10年で15倍の資産運用を任されたというのは、だから国民の利益という見地から実に健全なことです。一方で多くの年金基金がAIJのような詐欺まがいの運用者に騙されたという事実もあります。

自家運用していない年金はその任務を誰に委託するか、それは理事の責任であり、任せた相手が悪かったですむ問題ではありません。選別能力を鍛える必要があります。

 

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良い円安はない

2014 OCT 20 19:19:37 pm by 東 賢太郎

「もし増税で経済が成長軌道を外れたり、減速してしまったりすれば税収が増えず、全てが無意味になってしまう」

安倍首相が英経済紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューでこう述べたことを聞き、少し安心している。もちろん消費税を10%にするか否かの話である。

これは非常にデリケートな話になりつつある。社会保障財源を確保することが目的かどうかは論点ではない。国家財政の見通しと円安傾向のリンクの有無が問題なのだ。英国の投資家にきくと日本国債のクレジットに欧米で注目が集まっているそうだ。

それと直接の関係はないが米国株のS&P500を対象としたオプションの価格の振れの大きさ(ボラティリティと呼ぶ)を示す「VIX指数」というものがあり、シカゴ・オプション取引所に上場している。

VIXは別名「恐怖指数」とも呼ばれ、投資家が先行き不透明と考えるとそれが上がる傾向がある。通常10~20だが先週30まで急騰しひやっとさせた。米国株が不安定になるということは経済と金利の先行きがそうだということになり、海外市場にも影響が出てくる。

こういう環境の中で急激に円安になると日本国債のボラティリティも気になる。値が下がるという意味ではなく値が変動しやすくなるということだが、ドル建てでは値下がりになるから海外の売り方にとっては利が出る。それが変動幅を生み出すのだ。

そこで消費税10%が見送りになり財政見通しが不安となるとさらに売りをまねく危険がある。国債価格が円ベースで大きく下がると本邦金融機関のバランスシートは大ダメージを受ける。我が国は金融機能不全に陥るリスクすらある。最悪の事態までいけば皆さんの銀行預金はなかったことになるかもしれない。

良い円安か悪い円安かという議論があるが、自国通貨が下がっていいことがあるはずがない。古今東西、万国共通、適度に強いことが望ましいにきまっているのである。それが100円か110円かはともかく、150円に向かうという目算が立てば国債は思いっきり売られるだろう。

円安だと株が上がると思っている人が多いが、そうではない。円安になれば株を買っている外人は損をする。日本企業にとっては80円という理不尽な円高が修正されたからよかっただけだ。ゴルフコンペのハンディを考えればいい。20の人が10で出ていたのが80円のころの日本だ。だから30で出ていた韓国に優勝をさらわれ続けた。サムスンの躍進の理由のひとつはそれだ。

そのサムスンが失速した。ウォン高になってハンディが10になった途端。日本は僕のイメージだが100-110円あたりで実力なりだ。20の人が20で出ている。だが実力なりなのだから勝てる保証などどこにもない。じゃあ150になればいい?その時は国ががたがたになる。出ていくしかない。しかし出て行ったら円安メリットなど存在しないのだ。

現実には80円時点で大企業の輸出依存度は大きく減っている。そのレートで生きていけるよう努力したからだ。だから今でもそんなにメリットは享受していない。今度は輸入企業がダメージを受ける番だ。輸出(外人に売る)には血を流すが、輸入(国内で売る)となると国民に泣いてくれになりがちだ。まして政府がインフレにしたいと宣言しているのだから堂々とそうなる。

そういうインフレになることとデフレが終息することは、ことの本質が全然ちがう。近眼の人が老眼で遠視になってちょうどよくなりましたねというようなものだ。どっちもよくないのである。

つまり、良い円安などない。

ここで安倍さんが勘違いして増税してしまうのは僕はリスクが高いと思っている。女性大臣がすべったころんだなどはっきり言って国政にはどうでもいいことである。国を動かしているのは役所なのだ。役所は増税したい。どうしても。だから安倍政権がそれに都合がいいかどうかが大事なことだ。10%になってしまえばお役御免かもしれない。

急激な円安がないことを祈るしかないが、そうであれば増税見送り、財政再建先送りは国債価格をおびやかくすことはなく、結果的には内閣延命になる。そこで4-5兆円の補正予算を組んで100-110円でコンペ優勝が狙えるようにすればいい。第3の矢とはそういうことになるだろう。

それはそれで、かなりフェアウェーが狭いドライバーショットになることは間違いない。僕は安倍首相の政策に全面賛成ではないが、ほかにこのティーショットが打てるゴルファーがどこにいるだろう?

 

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山水電気の破産という警鐘

2014 JUL 18 1:01:59 am by 東 賢太郎

山水電気が7月9日に東京地方裁判所により破産手続きを開始決定したというニュースには寂しさを感じます。サンスイ(SANSUI)のアンプというと高校生のころ僕のあこがれで、雑誌の広告を見ていつかはあれで聞いてみたいという存在だったからです。

オーディオというのは大きく分類すれば①信号を読み取る部分②伝送・制御する部分③増幅する部分④空気振動に換える部分とありますが、聴感への影響度でいうと④(いわゆるスピーカー)の選択が大事だという人が日本には多いように思います。同感ではありますが、読み取り(ピックアップ、プレーヤー)、伝送・制御(ケーブル、プリアンプ)、増幅(パワーアンプ)もそれぞれの在り方で影響するので、どれか一つが特に重要というわけではありません。

オーディオ装置を選んで自分なりのシステムを作るというのは、算数的にいうと①~④の4つの変数がある関数の最大値を求める問題です。ところが困ったことに各変数は独立ではなく、a,b,cまでは良くてもdを入れると関数値が大幅に下がるなどします。変数間の相関性は未知数だからとにかく4つのどれかを固定して順次試行するしか手はなく、まずどれを固定するかがその実験の要諦になります。例えばスピーカー重視派は④を固定してから①②③を試して相性を確かめていくわけです。

そこからは今度は「何を聞くか」によって①②③が変わってきて、ジャズ、ロック、クラシックetcでおのずと選択は変わるはずです。これがオーディオマニアの楽しみといわれ、もちろん正解はなく完全に趣味と主観の世界です。僕はトータルでたまたま気に入ればそれでよしというわけであんまり個々のパーツ入れ替えでぎりぎり「追い込む」ことに時間はかけたくありませんが、それでもドイツにいたころあれこれ「実験」はしてみて、それを趣味とされる方々のこだわりの気持ちは少しは理解できるようにはなりました。

そういう実験の失敗から学んだことなのですが、クラシックを想定した場合、昔のサンスイのような透明感のあるあまりスペック偏差のない優良アンプ固定でスタートするのがいいと思います。同じクラシックでもメインソースが歌か室内楽かオーケストラかで違ってきますが、室内楽中心に聞く人を除けば、アンプが大事と思います。いや、貧弱なアンプに何を組み合わせてもお話しにならないと言ってしまってよろしいのでそう結論します。これは西洋の石の家に長年住んで聴いているとわかります。逆に木造住宅の小さめの部屋ですと、それがスピーカーということになるのです。

サンスイのアンプは結局使うことがなかったですが、親父に買ってくれとせがむには高かったというのもありますが、当時の部屋が狭くて高級なセパレートシステムがいらなかったというのが正解だったでしょう。

いま聞いているシステムはスピーカーに先に惚れたというか、特定の色をつけないからむしろここ起点でいいというB&Wだったのでアンプ選択が後になりました。5,6回とっかえひっかえ自宅に運び込んでもらって試聴し、やっと行きついたのが米国ホヴランド社のストラトスでした。有名ではなかったですがウィーンフィルやコンセルトヘボウを僕のイメージ通りに鳴らしてくれる銘器であり、不合格にした方はどれも当時一世を風靡していた著名ブランド物ばかりでした。

ところが、このホヴランド社も数年前に倒産しているのです!

こういう目にあうとどうも世の中がわからなくなります。いいものを作っている、これは自信を持ってそういえるのですが、そういうメーカーである山水もホヴランドも時代についていけずに倒産。いったい何が起きてるのでしょう?

結局、需要が減ったということです。オンラインでヘッドホンで聞く。僕も時々使いますが、そこそこ音はいいと思います。日本の住宅事情の制約条件に合わせて低出力のアンプを鳴らすくらいならそっちのほうがコストはもちろんでも満足度だって上でしょう。デジタル時代のすう勢はソースの情報量を飛躍的に増大させ、直接PCで信号化して伝送・制御、増幅はミニマル化し、空気振動変換も最小限で関数値をそこそこ高くする方向に一気に進化しました。消費はいかなる場合でも、安くてかつ良いものの方に向かいます。オーディオにも「クラウド革命」が起きたわけです。

この流れに山水電気やホヴランドが追従する手がなかったということです。ついていかなければどんな名品を作ろうが老舗だろうが企業は簡単に倒産するということです。

そうしたら昨日、このニュースが入ってきました。

米電機大手ゼネラル・エレクトリック(GE)が創業事業である冷蔵庫や洗濯機などの家電事業を最大25億ドル(約2500億円)程度で売却することを検討していると報じた。発明王エジソンが研究した白熱電球に由来する照明部門も含まれるという(米、ブルームバーグ)。

創業事業を売ってしまうというのは大きな決断ですが、企業というのは生き残るためには何でもありです。しかし大事なことは、GEは事業を積極的に多角化してきたからこの手が残っていたということではないでしょうか。山水、ホヴランドはそれがなかったから本業と共に沈没するしかなかったのです。

ウォートン・スクールでは米国企業の栄枯盛衰の様々なケーススタディを学び、証券業という側面から多くの日本企業のそれも間近で見てきましたが、いま強く感じることはデジタル革命、ネット化がいよいよ本格的に進行した結果そのサイクルがここ数年で比較にならないほど短くなっていることです。携帯の覇者であったノキアがスマホの出現であっという間にモバイルとは無縁だったアップルにとって代わられたのがその例です。

この時代をチャンスと取るかピンチと取るかは業界によって様々でしょう。日本企業の典型的スタンスとして「様子見」があります。いきなり行動するとリスクがあるのでじっくり趨勢を見極めてからやる。しかしこういう時代は、何もしないで見ている方が知らず知らずにリスクを取っている可能性があります。それは趨勢が見えた時にはゲームオーバーというリスクです。

山水電気の社名は「山のごとき不動の理念と水の如き潜在の力」という創業理念から来ています。そして同社はその理念を寸分曲げることなく、不動の理念で優れた製品を生み出してきた立派な会社と思います。しかし、何かが足りなかったのです。

 

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