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ピッチャーの謎

2012 SEP 29 17:17:11 pm by 東 賢太郎

野球のボールは硬式、準硬式、軟式と3種類ある。後者2つは日本だけのものである。このうち硬式球(写真)を用いる野球を硬式野球と呼ぶ。プロ野球、ノンプロ、高校野球はすべて硬式野球に分類される。

硬式球は141.7-148.8gの重さと決まっている。石のように固い。投手(またはピッチャー)と呼ばれる者はこの物体を投げ、18.44メートル離れたところに横たわる幅43.18センチのホームプレートというゴム製白板の真上を通さないといけない。

なおかつ、投げた硬式球を打とうと待ち構える打者(またはバッター)と呼ばれる厄介者の「ヒザから胸のユニフォームのマークまでの高さ」という約1メートルの上下幅に収めることも同時に求められる。

このゾーンに時速100-160キロの初速で投じた球を90%以上の確率で通せる者というのが硬式野球のピッチャーのおおよその定義であろう。ここに変化球、コーナーワークというバリエーション、応用ワザが加わるが、この定義を満たしていない者はまずいない。というかピッチャーに選ばれない。

ちなみに米球界に進出したナックル姫こと吉田えりちゃんは遠投力は堂々の70メートルを誇り、ストレートは最速101キロ。この定義を満たしていると推察される。逆にイチローは150キロ、ヤクルト古田も147キロを計測したがプロではピッチャーではない。

バッティングセンターというものがある。マシンが投げる球は「生きた球」とは言わない。変化球も来ない。それでも100キロは結構速い。これが打てれば草野球ではレギュラーになれる。120キロをちゃんと打てたら経験者レベル。130キロをポンポン打ったら打席に見物の人だかりができる。

しかし人間が投げると球は生き物に変貌する。これは打席で見たことのある者しかわからないかもしれない。まずなによりも球筋が予測できない。だから怖い。頭を直撃すると死ぬかもしれない。そこで硬式野球部員は打撃練習をしない時も球見(タマミ)という練習をする。投球練習所へ行って、投げているピッチャーの球を打席で(時にはバットを持たずに)ひたすら「目撃」して目を慣らすのである。

高1の夏、東京都大会4回戦。神宮第2球場で当たった日大一高のエース保坂さんの球は忘れられない。ベンチから見て球が浮いている!同じ年、春季大会の桐朋戦では21奪三振、この後に優勝して順当に出場した甲子園では都城に対し毎回、全員の17奪三振!ドラフト2位でプロへ行った。そういう球だ。死球を食らって痛がる先輩のお尻を冷やそうとしたら青アザにボールの縫い目の跡がついていた。背筋がゾッとした。

同じ硬式球を同じ人間が投げて、どうしてあんなに変わるんだろう?選手はみんなそう思ってるから「生きた球」と言う。僕はピッチャーの数だけ人相ならぬ「球相」があると思っている。これが面白い。だから野球場には球相を見に行っている。カープファンとは別の野球ファンという自分がいる。多摩川の少年野球でも、球相のいい子が投げてると何時間でも観戦してしまう。

プロ野球には、投げるならいつでもカネを払って見たいというピッチャーが数人いる。例えば巨人の杉内、ロッテの唐川(故障が心配)、全盛期の工藤。あの球相は、130キロ台のど真ん中のストレートでプロで空振りが取れるという信じ難い結果を生む。メジャーに行った和田(故障が心配)、ロッテの成瀬も比較的近いがやや違う相である。

大嫌いなのは巨人の澤村みたいな筋トレなんかをやるパワーピッチャーだ。砲丸投げでもやったらどうだ。目いっぱいに投げて150キロ以上出しても打たれている。実にだらしなく、美しくない。135キロの杉内はちょっといいともう誰も打てない。省エネだから疲れない。早や3回ぐらいから完全試合をされそうないやーな感じがする。高校野球では、こういう奴と当たってしまったら運を嘆くしかない。

本当に不思議です。同じもの投げてるのに。

 

 

 

 

 

ピッチャーは自信過剰か

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