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冒険ダン吉になった男

2013 JUN 21 11:11:02 am by 東 賢太郎

今回のミクロネシア出張は偶然に同じ行程となった某社T社長ご一行があると書きました。社名は伏せますが、日本人なら誰もが知っている著名企業です。82歳になられる社長が取締役であるご子息をともなってここに来られた意味にはとても心を動かされました。

T社長は「冒険ダン吉」になった男・森小弁という本を読み、「自分もそういうことをや4819111388りたいと思いました」といわれるのです。小弁は11人の子をもうけ、孫の数94人、トラック島にいる直系だけで1000人を超す子孫が政治、経済、教育のあらゆる分野に進出しモリ・ファミリーとして国をけん引しています。その頂点が第7代大統領となったエマニュエル・モリだそうです。冒険ダン吉というのは昭和初期のマンガで僕も父から聞いただけで読んだことはありません。釣り船で眠るうちに流されて南洋の島に漂着したダン吉少年が長じて酋長の娘と結婚し、知恵を絞って敵を倒し立派な酋長となった話だそうです。面白いですね。男のロマンといいますか、僕にもどこか共感するものがあって、T社長とはすっかり楽しい時間を過ごさせていただきました。

チューク島(トラック島)には日本軍の沈没船が多数そのままになっています。97年にヒットした映画タイタニックのロケに使われたのがここに沈む輸送船富士川丸だということをご存知でしょうか。いまはダイビングスポットとなっていて特に欧米人に人気だそうですがどこか複雑な気持ちがいたします。ポンペイ島における我々のホテルセブンスターの前は日本軍の農業試験場でした。食料にできる植物の耕作試験をしていたそうで前線の兵士の死因の多くが餓死だったことを思いだします。「ここをきっと山本五十六が歩いたでしょうな」というT社長のつぶやきが耳に残ります。

島民がみやげものにする木彫り細工があります。その工作場へ行ってみますとたくさんの魚、亀、カニなどの彫り物が並んでいて、裁判官の使うハンマーとおぼしきものまでありました。ふと見ると、古びて壊れかけた黒く重々しい双眼鏡がテーブルの上に置いてあります。これは何だと聞くと日本軍の遺品だがそれは売らないよとのこと。ところが、ひとしきり見終わって「なにか買ってやらんといけませんな」とおっしゃった社長がこれをと指差したのはその双眼鏡でした。売り子が棟梁と思しき無愛想な老人に相談すると、今度はしばらくして「10ドルだ」という返事が返ってきました。

「右側が吹っ飛んでいます。直撃でしたでしょう。将校クラスのものですな。」

左側のレンズは今でも立派に景色が見えました。しばらくそれで遠くにある丘の上の空を眺めました。鳥が見えました。ずっしりと手ごたえのある双眼鏡の中央部に

Nikon

とありました。

 

 

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