異次元の飲み物「サカウ」
2013 JUN 23 21:21:36 pm by 東 賢太郎
ポンペイの夜、マーク・ヒースが案内してくれたバーで地元の人に妙な飲み物をすすめられた。バーといってもホテルから5分ぐらい車で離れた海辺にある木造の丸い平屋で、まん中にディスコがあって入口の隣にビリヤードが一台置いてあるだけ。ロックががんがん響いていて5~6人の若い男女が何をするともなくたむろしている。若い頃なら好奇心もわいたが、このトシこいてちょっと場違いな感じの場所だ。
コップにそそがれたその飲み物はすこしねっとりとしているように見える。マークがあんまりたくさんは飲むなと言うので軽くひとくち含むと、とてつもなくまずくて吐き出してしまった。泥水をバリウムで溶いたような苦味といえば近いだろうか。みんな僕のしかめっつらを見て笑う。それでもその飲料はなにか大切なものらしいという雰囲気であったので、ありがとうと日本語で一礼してすぐコップを持ち主に返した。
これは何だとたずねると、「サカウ」ときこえる。音楽がうるさくて良く聞こえなかったが、ポンペイで昔からお祝いやら冠婚葬祭やら、大事な日に飲む特別の飲み物らしい。飲むとしばらくして気持ちがおだやかになってケンカがおさまるとも。あとで分かったことだが、植物の根をつぶしてとったエキスで神経を鎮静させる薬理作用がある。多用すると害もある。しかしこの島では公式の場で飲む神聖な飲料なのだ。翌日に訪問したコショウ農家に、まさにこのサカウの根っこをたたいて砕く大きな石臼のようなものがあった。叩くのはこぶしより少し大きめの石で、博物館で見る石器時代の農具を思い出した。
これで思い出したが、創業時のコカコーラには麻薬コカインを含む「コカの葉」(多くの国で麻薬とされる)の成分が少量含まれていたらしい(Wiki)。成分を発表しないので今はわからない。しかし南米ボリビアではコカの葉をお茶として日常一般的に飲まれているのだから、麻薬と見るか薬理作用のある植物と見るか線引きが難しいのかもしれない。ポンペイの「サカウ」もそれに似たものなのだろう。
何という物か名前を忘れたが、同じ人から大き目のピーナッツのような形の木の実に石灰の粉をまぶしたものもすすめられた。絶対に噛むなよ、しゃぶるだけだよと言われて口に入れると今度はこれがピリリと辛い。予想外のお味にやはりすぐ吐き出すことに。ここでは政治家までがこれをチューインガムのように日常的にくちゃくちゃやっているようだ。僕は40か国でいろんなものを食べたから少々のものでは驚かない。食文化というのは実に奥が深いが、しかし、ここまでくるともう異次元体験だ。こういうのは、このトシこいた身ではなく20代の若者のころに味わいたかった。サカコーラの創業者ぐらいになれたかもしれないなあ。
Categories:______ミクロネシア, ______海外出張記, ソナーの仕事について, 徒然に
中島 龍之
6/24/2013 | 11:08 AM Permalink
やはり、ご当地では当たり前の珍しい飲みものがありましたね。テレビのバラエティ番組で、海外ロケで現地の珍しい食べ物を食べて顔をしかめるパターンがありますが、そのとおりなのですね。
東 賢太郎
6/24/2013 | 4:36 PM Permalink
ふつう「うまい」か「まいう」ですが見事に「まずい!」でした。初めてアメリカへ行って飲んだルートビールもまずかったですがこれはそういうレベルではありません。現地の茂田さんも全部はとても飲めないと言ってました。