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「くろぎ」は人気店ではなく名店

2013 OCT 23 11:11:54 am by 東 賢太郎

先日いま東京でいちばん予約が取れないひとつ(半年待ち)らしい日本料理店「くろぎ」を訪問。金のない大学時代に飲んで闊歩したなつかしい庭、要は人気店らしからぬごみごみした湯島裏通りの一角です。7席しかないカウンター隣席の客人が来年8月の予約を入れていたのであながち噂だけではないのだろう。若手料理人・黒木純氏はフジテレビの「アイアンシェフ」に和の鉄人として出演、テレビ東京の「ソロモン流」で紹介されたりミシュランで星をとったりの著名人とのこと。そういうことにはいっこうに関心のない僕はさっきネットで知ったのですが。

商売柄いろいろ食べてますが、書くにあたうべき仕事でありました。たかが土瓶蒸しというなかれ絶妙にとろみがかった鱧(はも)と三ツ葉の塩梅はかつてなし、これ一品で客を黙らせるといって過言でもなし。おおぶりの松茸のあぶりは妙な話、松茸とも思えない熱々の白身魚の食感。続いて胡麻豆腐、魴( ホウボウ)塩焼き、紅葉鯛、棒寿司、ばち子など季のもの、など。感心したのは一見どうもない芋茎の吉野煮。温度、出汁、歯触りまさしく逸品。〆の栗ごはんに至るまでぬかりは一切なく、美味也。素材吟味、調理、出し頃とも最高水準ゆえ席はカウンターでなくてはいけませんね。

閉店後、当の黒木シェフらと二次会。35歳にして一流の気配りができる男。ああでないとあそこまで食材に気も配れないでしょう。今回はくろぎお得意様でもある弊社お客様から光栄なるご招待の場であることを説明。そうしたらどう誤解されたのか以後敬称が「先生」になってしまい閉口。一方でこちらが長年不思議であった「夜はいつ食べてるの?」という愚問に「味見だけです。舌が鈍るので」。身を削る仕事に大志を抱くのは当然です。ミシュランなんてのに頼らん方がいいよに「勉強になります」のひとこと。銀座の夜もふけ、職人魂に感じ入り、来年仕事始めいち番乗り3席いただきました。

 

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