Sonar Members Club No.1

since September 2012

小学3年生から英語?

2013 DEC 14 2:02:52 am by 東 賢太郎

「7年後に若者たちが日本を案内、説明できるよう小学校の英語教育を強化していく。海外留学生の増加計画も充実させたい。日本の良さである『おもてなしの心』を外国人に語れるようになってもらいたい」(「おもてなし」へ小学校で英語教育強化 義家文科政務官インタビュー」より)

去年こういうブログを書いた。 東大3割が辞退

「入学時期を秋にしてそれがグローバル化だと信じてるところがそもそもグローバルでないし。」 本件でもそのまま当てはまる。

①日本を案内、説明できるよう小学校の英語教育を強化していく

ツアーコンダクターの増員計画だろうか?

②海外留学生の増加計画も充実させたい

学びたいことがない者がどうして留学するのだろうか?

③日本の良さである『おもてなしの心』を外国人に語れるようになってもらいたい

『おもてなしの心』を語って説明できるものだろうか?

 

政務官のあげ足を取る気は毛頭ない。しかし根本的に考え方がおかしい。日本人は英語ができないわけではない。読める、書けるのに話せないだけだ。それは「自己主張が当たりまえ」の英語人に対し、「自己主張は控え目」の日本人は話す気概とコンテンツが乏しいからだ。

学ぶことがない者に留学させても意味ないように、伝えるコンテンツがない者に英語を教えても永遠に話せない。小学3年生から英語の歌を教えるのが有効な英語教育だと言うのは、英語でカラオケが歌えれば英語ペラペラで留学できるだろうということに等しい。

早期教育の有効性を否定するつもりはない。しかしやはり早期が重要なピアノ教育だって、指だけ訓練しても弾きたい曲がなければピアノは弾けないのである。

同じ非英語国のフランスやドイツが小学何年生からスタートしているから早めましたなどという小理屈はガラパゴス丸出しのグローバル音痴であって、彼らは強く自己主張する文化において英語人と何ら変わらないのである。

「自己主張が当たりまえ」の英語人は日本人と文化も思考回路も違うのだということをまず子供に教えないといけない。意見のない者、人前で意見を述べられない者は大人として相手にされないよと教えないといけない。だから相手と同じぐらい自己主張しなさいと教えないといけない。日本社会はそういう空気でないから若者は空気なんか読むなと教えないといけない。

それらはぜんぶ「日本語」で教えることができる。学校の先生に頼ってはいけない。英語の先生がそれを理解しているとは限らない。だからお父さんお母さんがしなくてはいけない。そして、もし子供が「よしやろう」となれば、相手は英語人なのだから、その瞬間に「英語を苦労してでも話している自分」に気づくのだ。はっきりした自己主張コンテンツがあってこそ、それを英語化してみて、通じない、理解されない、おかしい、くやしいという経験が生じ、身につく学習をすることになる。観光案内や歌ではだめだ。

それは必ず報われる。発音が悪くても少々文法がおかしくても、苦労してでも何かを伝えよう、主張しようとする者を英語人は軽視しないし、主張次第では興味を持ってくれる場合もあるし、少なくとも対等なパートナーと認めて初めて会話が成立する。それを繰り返しているうちに、通じる思考回路ができてきてさらにうまく英語が話せるようになるというのが大方のプロセスである。

コンテンツ(主張)のない者は英語人が本気で相手にしないから本質的な会話にならず、それが「英語が話せない」という自信喪失現象として記憶されて国民的に語られることになる。それを「ことば」の教育の問題として対処しようというのは、文科省の役人にとっては仕事だということはわかるにしても、あまりに皮相的な観察であり、それそのものがまったくグローバルでないという前回ブログでの主張を繰り返すしかない。

そもそも日本語ですら主張がないような場合は論外であって、中高年はともかくこれからの時代を担う子供や若者はそれではいけないだろう。日本語力を鍛えることは、言語でできている主張というものを頭の中に組み立てる最善の方法であり、そのためには「読むこと(読書)」と「書くこと(作文)」の千本ノックを毎日するのが近道である。そもそもどこの国であれ母国語がしっかりと正確に読み書きできない者が他国語でちゃんとした主張ができるとは信じ難い。つまり、

英語教育はちゃんとした日本語教育あってこそ

である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Categories:徒然に, 政治に思うこと, 若者に教えたいこと

▲TOPへ戻る

厳選動画のご紹介

SMCはこれからの人達を応援します。
様々な才能を動画にアップするNEXTYLEと提携して紹介しています。

ライフLife Documentary_banner
加地卓
金巻芳俊