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安倍首相の靖国参拝について

2014 JAN 13 16:16:20 pm by 東 賢太郎

TBSニュースによると1月の安倍内閣の支持率が前月比7.9ポイント上昇して62.5%になったようだ(JNN世論調査)。14.4%と日経ダウなみの急上昇といえる。発足以来、アベノミクス強行、憲法改正論議、消費税増税の履行と当座は国論を二分する政策を仕掛け、1年強を経て過半数の支持を得ているうえに上昇というのは注目される。

僕が重要と思うのは、特定秘密保護法案の衆院強行採決と国家安全保障会議設置法の成立だった。後者は首相と3閣僚(官房長官、外相、防衛大臣)の4名が日本の安全保障問題をめぐる決定を専管できるということだ。前者に対する野党の反抗が一蹴された如く、後者の決定に対する国会の監督もそうならないとの保証はない。

この緊急事態に内閣支持率は低下するとの予測が当時はあったが、現時点でそうはなっていないというのが今日のTBSニュースの重要な意味である。しかも、その事態には続編があった。首相の私人としての靖国参拝である。

一国の元首が自国の戦没者を慰霊するのはあまりに当然というのが僕の立場である。サンフランシスコ講和条約禁止事項ではなく戦勝国、敗戦国は関係ない。従って、政教分離さえ担保されておれば私人か公人かは関係なく、靖国がだめなら米国大統領のアーリントン墓地参拝もやめていただくしかない。他国の祭礼行為を公共のメディアで公然と非難しているのは国連加盟国193か国の約1%に当たる2か国のみである。

同調査によると日本国民の48%は靖国参拝に反対し、42%が賛成であった。反対者の70%、つまり全国民の33.6%が「外交的な配慮に欠けるから」と答えている。しかし彼らに聞いてみたい。「外交的な配慮」とはいったい何であるか?国家の外交とはフレンドシップの確立や維持ではない。国益を得る冷徹な打算以外の何ものでもないのである。その配慮が何の国益を生むのかという当然の問いである。

大方の穏健派は「経済関係」と答えるだろう。しかしそれとても冷徹な打算の関数でしかない。温情やフレンドシップで日本製品を買ってもらっているわけではないのである。個々の企業のミクロ的事情はあるが、国家レベルで見れば2か国の売上げが仮に低下しても日本経済が沈下するだろうとは誰も思っていないことは、世界の全ての意見の総和である株式市場がそれ以後も微動だにしていないことで証明される。

安倍首相は参拝を、二度と戦争を起こさないためと説明している。一部暴徒と化した日本軍の非人間的行為はあったのだろうし、戦時だったから、どこの国の軍もしたことだからと正当化できるものでもないことはその子孫である日本国民は認めねばならない。その犠牲になられた外国人の魂も尊ばねばならないし、そのための適切かつ客観的な近代、現代史教育は必須のものである。

それを棚上げして靖国だけという精神は21世紀において日本が世界のリーダーになる機会を阻害するだろう。なぜ地政学的にはアジアの辺境国にすぎない日本がそうなるかもしれない時勢にあり、1400年も一国を存続させた日本モデルが恒久的世界平和に資する可能性があるかという主張を自ら否定してしまうからだ。それは靖国参拝を拒む以上に非国民的行為だと言わざるを得ない。

安倍さんは「美しい国」ではなく「世界平和を望む国」をモットーとした方がいい。世界平和を望まない国が仮に出てきたとすれば、世界を敵に回すことになる。彼はそれを推進する政府である。その政府を規制する憲法を守り、それを監視する国会がその方針を国策として施行出来るよう導くのは我々国民以外の何ものでもない。2国がその国民が信用できないのだと主張するなら、残念ながら今の僕はそれに全面的に反論するすべがない。SMCにおける僕の主張は、全てがこの点に集約される。

日本国民が好戦的だという主張は科学的根拠がない。あるなら示してほしい。戦争warという単語はあっても防衛戦はdefensive warと形容詞をつけなくてはいけないのは西洋に防衛戦という概念がない証しである。つまり彼らにとって好戦的なのは自明であるのだ。その自国より強くて勇猛であった、したがって日本はもっと好戦的であるという三段論法は武士道をはじめとする日本文化や精神への侮辱であり、あからさまな無知に基づいていると僕は思う。

これからの日本人はそういう無知の不利益を自らグローバルに発信しなくてはいけない。政治家、官僚、民間人を問う話ではない。自らの立ち位置を歴史観に基づいて冷静に観察し、1400年というカネでも武力でも獲得することのできない文化の特殊性、有用性を世界にアピールしなくてはいけない。

そのためにも特定秘密保護法案と国家安全保障会議設置法の成立は、僕はことさらに反対するものではないことを明確にしておくが、当面は下火である憲法改正論議とともに運用をウォッチすべきであり、国民のコモンセンスこそが問われるべき重要なポイントである。国際常識ある国民の祭礼行事が他国に批判されることも、国際常識に照らしてあるはずのないことなのである。

 

 

 

 

Categories:SMCについて, 徒然に, 政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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