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読響定期-ジョン・アダムズのハルモニーレーレ(和声学)を聴く

2015 OCT 14 1:01:02 am by 東 賢太郎

昔から計画性というものがなく、スケジュールは秘書様におまかせの悪癖がついていて訓練ができてません。それでこういうことになるのですが、先週はシベリウスのリハーサル、ウィーンフィル、京都でおどりを2回、中島さんライブ、シベリウス1,6番、と連チャンで入れてしまって、楽しかったのですがちょっと疲れました。

ところが今朝、今週のを見てみると、読響、魔笛、N響、フィガロとこれまた連チャンで入っているではないですか。音楽はしばし絶食状態にあったのに、こりゃあリバウンドです。来週も歌舞伎があるし・・・。いままでは仕事の気晴らしになってましたが、このペースだとなんだが仕事の方が気分転換になりそうだ!

今日はサントリーホールで読響定期でした。そういうことであまり気乗りでなく眠くもあり。こういうプロでございました。

指揮=下野 竜也
ヴィオラ=鈴木 康浩(読響ソロ・ヴィオラ)

ベートーヴェン:序曲「コリオラン」 作品62
ヒンデミット:「白鳥を焼く男」(ヴィオラと管弦楽)
ジョン・アダムズ:ハルモニーレーレ(和声学)

下野は好きな指揮者です。お子様ランチメニューもこなすがこういう通好みもやってくれる。勉強してないとできません。毎度毎度、お子様ランチで食ってる指揮者が多い中、応援したい人です。

音楽は不思議でして、ヒンデミットではヴィオラ一丁で満場を唸らせると思えばアダムスでは巨大なパイプオルガンみたいな音塊で魂を揺さぶる。どっちも同じぐらい良いのです。

ハルモニーレーレは初めて聴きました。ミニマルの音楽もライブで聴いたのはひょっとしてこれが初めてかな?はっきりしたメロディーがなく、リズムも単純な音型が速くなったり遅くなったりで、耳が何を聴くか迷ってしまいだんだん意識の焦点がぼけます。それが心地よい陶酔状態になるのですが、この曲の場合は和声の移ろいがなかなか快感であって約40分のあいだかなり真面目に集中して聴くことになりました。

いまこれを聴きかえしてみて、とても面白い。大音量の部分の音圧はライブならではですが細かい部分も凝った作品でスピーカーを通しても楽しめます。

ミニマルの同音型反復というのは、僕のイメージですが、ストラヴィンスキーのペトルーシュカの冒頭や乳母の踊りの伴奏で、木管やホルンがずっと2つの音を行き来するのを全管弦楽でやったようなものでしょうか。あれは大好きなので、これも好きですね。

それに和声の感情が乗っている。和声というのは人間のある一定の感情を喚起する化学物質です。ドビッシーが映像を書いて「和声における化学反応」という言葉を使ったのもそういうイメージがあったのだと思います。

下野がどこかで「作曲家はそれぞれトレードマークの和声連結(コードプログレッション)を持っている、それはモーツァルトにもある」語っていましたが、まさにそう。ちなみにモーツァルトのはハ長調ならC-Am-F-Gです、これぞ彼の紋章みたいなもので作品の至る所に現れます。

ハルモニーレーレは和声の固有の感情喚起をミニマルの陶酔効果に有機的に結合させた音楽であり、1985年にこれが出現したことは三和音での作曲にまだ道があるという光明への一里塚ではないのでしょうか。

日本初演が86年で、これが2回目だそうですが、もっと聴かれていい曲ですね。とりあげてくれた下野に拍手です。

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Categories:______演奏会の感想, クラシック音楽

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