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広島カープの貧打は伝統である

2019 JUL 9 7:07:55 am by 東 賢太郎

広島カープがいくら負けても僕は免疫がある。なにせ昭和37年からのファンだ。欲しがりません勝つまではで精神力を鍛えており、4連覇などされるとかえって蕁麻疹でも出ようというものだ。赤ヘルになってからのファンはご存知ないだろうが、それ以前のカープは壮絶に弱かった。巨人戦は5回に1回勝てばよし、2回なら狂喜という塩梅だ。国鉄スワローズ(現ヤクルト)との熾烈な最下位争いは手に汗を握ったが、国鉄には金田正一という400勝投手がおり、彼が先発して初回に1点取られるともう勝てないのであった。序盤からだめだと思わせるあのアンニュイなムードはカープの伝統芸という気すらする。

それでも投手は長谷川、大石、白石、大羽などいい人がおり、敗因はひとえに赤貧とでもいえる貧打であったのだ。V9の巨人に高橋一三なる左腕がおり、その外角ボールになるシンカーにカープの右打者がくるくる三振したのを今も忌々しく思い出す。次は来るぞと子供でも分かるのに判で押したように空振り。こいつら馬鹿かいいかげんにせいと「こうやれば打てるんですけどね」とラジオできいた解説者の言葉を僕はハガキにしたため、根本監督宛て球団に出した。それで打ってくれとテレビ画面に向けて念じたが見事にますます打てなくなった。

いまのカープ。とてもなつかしい。田中広輔の外角に落ちる球の予定調和的な三振など、ああこれだこれだとあの日が蘇るから脳が活性化して貴重である。体格も見劣りした当時の選手に比べるといまの選手はまあまあだが、それでも重量級のエルドレッド、新井、丸がぬけるとホームランが出そうな気がしない。だから肉を2,3キロ食いそうなバティスタがいないと2012、3年あたりに感じた軽量感が満載で、相手投手は鈴木誠也だけマークでオッケーになって、去年まで高校生の小僧である日ハム・吉田や41才の中日・山井になめられる。

それにしても球団記録の連戦連勝を5月にしたチームが翌月に昔さながらの赤貧打線に陥るというのは50余年プロ野球を観てきたが記憶がない。なんだろうこれは、選手組合がストライキにでも突入したのだろうか。そりゃあリーグ史上2度目の偉業である3連覇達成でもたいして昇給しなかったんだから4連覇したって同じだろうし、シーズン前から丸、新井がいないすきま風がぴゅーぴゅー吹いてみんな無理と思ってる。まずいと思った球団が菊池涼介に「次のリーダーはお前!」と命じたらすかさずメジャー宣言されてどっちらけにされてしまう。職位職階では球団営業課長である監督のソンタクなんてするはずがない。

球団経営のギミックを選手は完全に見抜いてしまっている。そりゃ丸だろう、ベートーベンの交響曲9曲とも覚えてるってのはわからない人にはわからないだろうが100%間違いないインテリなのであって、丸ノートの勢いで受験勉強してれば彼は東大に入れただろう(広島・丸佳浩、高出塁率の秘密 – SPORTS COMMUNICATIONS)。一流アスリートでその合理性と分析能力。勉強しかしたことのない東大卒なんかの百倍も優秀である。「選手の分際でなんだ」と毒づいて選手会と溝を深めた東京のドンの昭和的ガバナンスをカープ球団は広島県流でやってるにすぎない。そうであるならやがてファンも見抜くし、結局は最も避けたかったカネで対抗という手段に出るしかなくなるだろう。僕は方法があると思っているが。

 

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