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なりたかったのはシャーロック・ホームズ

2014 JAN 18 7:07:55 am by 東 賢太郎

 

子供のころ、将来何になりたいですか?と聞かれてなんて答えていたかは忘れました。適当に親や先生や大人が喜びそうなのをみつくろっていたと思います。本音ではプロ野球選手か天文学者でしたが、思えばもう一つあって、シャーロック・ホームズでした。

僕のミステリー歴は小学校で借りたシャーロック・ホームズ・シリーズと怪盗ルパン・シリーズに始まります。あまりに面白いので殺人が起きない小説は物足りなくなってしましたぐらいです。特にホームズの観察力や物腰は格好いいと思っていて、ああいう大人になりたいと思っていました。

今読んでみると、背景描写には英国のにおいがぷんぷんしていますね。なつかしいです。英国でまずブレークしたのは、19世紀末~20世紀初頭のインテリの英国人男性たちもホームズのような姿を理想とするというか、少なくとも格好いいと思っていたからだと思います。長年の英国人との付き合いから感じるのですが、今でも彼らがもっとも避けたいと思っているのはembarrassed(人前で恥ずかしい)な事態であって、たとえば簡単にいえば、社会の窓があいていたなんてのがそれに当たります。

一方で、事件の真相を見抜くホームズはワトソンをはじめ他のすべての捜査官をだしぬくのですが、推理力のような知の力でそうすることを英語でアウトスマート(outsmart)するといいます。これはembarrassとは対極であって、もっとも望ましい。もちろんどこの国でもそうでしょうが、英国紳士界においてはその高低差がどこの国の男よりも格段に大きいと僕は感じています。きれいにさえoutsmartすれば相手が外国人でも尊敬されます。アガサ・クリスティーの探偵エルキュール・ポアロは風采の上がらない小男のベルギー人ですが、それでも格好いいわけです。

僕はロンドンのシティで6年間、その英国人のプロたちに日本株を売ってきましたが、ファンド・マネージャーという職業の彼らはオックスフォードやケンブリッジを出たエリートです。僕のお客にはアイザック・ニュートン以来のケンブリッジ大学のダブル・トップ(2学部で同時首席)という歴史的な秀才もいました。そういう人たちが一生の仕事とするわけですから、株式投資というのは日本人の99%が(証券会社の90%の人間ですら)誤解しているようなバクチ的なものとは程遠いのです。相場を理性で予想するという行為、つまり合理的な仮説を立てることにほかなりません。

僕の仮説のほうが彼のより合理性があると判断されれば、オーダーを、しかも大きめのをくれます。半年ぐらいたって株価が上がって僕の仮説のほうが正しかったと証明されれば僕は彼をoutsmartしたことになります。彼らは自分で仮説を立てるプロでありますが、自分をoutsmartしてくれる人を探すプロでもあります。結果が全ての世界ですから。だからそうなればシャーロック・ホームズと同じで尊敬の対象になり、お客様の信頼は増すということです。そうすると徐々にですが能力があるという評価になってきて、もっとオーダーをいただける。それは証券会社では成績に直結します。だからいい仮説を立てられるように必死で勉強しました。

しかしそれは要するにホームズをイメージしてめざせばいいのですから僕の子どもの頃の理想でもありました。しかもそれをホームズのいた(はずの)ロンドンでやったわけですから、幸せな職業についたと思います。だからでしょうか結果はついてきて、ある政府系の機関からは1銘柄でワンショット180億円の買い付けという手が震えるぐらいの、たぶん野村でも空前絶後の巨大なオーダーもいただきました。当然手数料も半端な金額ではなく、自分の仮説にそんなに多額のお金を世界で1,2の著名な機関投資家が払って下さったというのは自信になりました。

200px-Sign_at_Sherlock_Holmes_Museum_in_Baker_St_221b数年前、息子を連れてロンドンへ行った折にやはりホームズ好きである彼がベーカー街のホームズ博物館に行きたいというので行きました。住所は221B Baker Streetであり、実在の有名人の住居跡にあるブルーのプレート(右)もかかっています。地下鉄の駅も下の写真のようであり、この愛され方は大阪の食い倒れ人形に近いといえましょう。国を挙げて遊んでしまう大人の余裕です。神田明神にも銭形平次の石碑がありますからわが国も文化的成熟度は誇っていいですね。

7c3cc300669bda38_S2ただ平次と我々では服装も髪型も違います。もしも日本人がまだ江戸時代と同じ格好をしていたならもっとリアル感のある銭形平次博物館でもできていたでしょうか。では明治以降で誰かいるかというとどうでしょう。僕は浮かばないのですが。そういう和風国民的キャラクターを後世が作れるほど平安な時代ではなく、その空気のまま戦争に突入してしまったのかもしれません。

日英は元は同盟国であり軍艦も機関車も英国からきました。英国の不倶戴天の敵国、ドイツと組んだことで戦争してしまった歴史はありますが、思えば自分は英国人ホームズに憧れる少年だったので基本的に英国が好きなわけです。そこで6年も暮らして、娘を2人も授かり、最も大きなビジネスを経験し、またソナーを作るにあたって助けてくれたのも英国人Sさんであり、ロンドン時代の仲間が3人も出資してくれています。英国とはホームズに始まって以来、なにか運命のつながりがあったと考えるしかありません。

 

僕にとってロンドン?戦場ですね

Categories:______ミステリー, ______自分とは, 自分について, 読書録

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