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いままで書いたブログで二番目に好きなのは?

2019 SEP 22 13:13:06 pm by 東 賢太郎

エクイティ・ストーリーとは起業家が「自分の事業はこんなに成長するから投資して株主になって欲しい」と訴える夢物語のことだ。成長すればもちろん株価は上がって儲かるわけだ。

しかし事業というのはやってナンボである。やる前から成果などわかるはずもない。そう言っては金(資本)が集まらないから米系集金代行業者(証券会社)が作った、インテリ受けしそうなもっともらしい美辞麗句がエクイティ・ストーリーである。証券業務を知らない銀行員が好んで使う用語だが、我々はストレートにセールストークという。

僕はそれを作って40年飯を食ったプロである。ソナーの起業では既に出資者がいたから不要だったし、そうして始めたソナーの仕事はというと売る方でなく他人の株を安く買う方だからやはりトークはいらない。ひと言でいえば、売り込みに来る他人のセールストークの「ウソ」を見抜いて値段をたたくのが仕事である。株は安く買うことが鉄則なのだ。

政治家と起業家はセールストークで食っているという点で近似した業種である。起業家、事業家の金集め(美辞麗句は「ファイナンス」)を代行する証券業者もおんなじだ。ベンチャー企業とはよく言ったもので、Ventureとは危険な冒険の意味だ。しかし、国家という事業も私企業も、経営は「虎穴に入らずんば虎子を得ず」(No venture, no gain.)であり、セールストークで票や資本を集めて初めて事業は成功し、トークに乗った有権者や投資家も一緒に栄えるのである。

デフレでびびってNo ventureが良い経営だとなった日本企業が時価総額で世界の負け組になったのが平成時代だった。そんな会社にコストカットで自分の在任期間の収益だけあげて役員報酬を収益連動型にして食い逃げしようという似非経営者が跋扈した時代としても平成は後世に記憶されよう。それは泥棒が家主になって金庫番をするに等しい。まして泥棒が国家の家主になったら国民は悲惨な末路になるだろう。

僕は第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプに会ったことはないが、彼とオーバルルームで会った外国の事業家と親しく会っている。そこで、選挙に勝った直後の2016年11月12日に直観で書いたこれ(トランプは何をするか)がそう外れてはいないことを知った。トランプは2度も倒産危機に遭いながら1兆円も儲けた正真正銘の、筋金入りのビジネスマンである。したがって、エクイティ・ストーリー作りのプロ中のプロである。したがって、その読解は自称インテリの方々には、まったく困難だろう。

僕は朝鮮労働党委員長・金正恩に会ったこともないが、そしてやはり直感ではあるが、彼は有能なビジネスマンになる資質を感じる(まだなってはいないが)。僕は徹底して是々非々の人間であり、その観察は彼や北朝鮮という国への感情や僕の政治信条とは何のかかわりもない。そしてその前提に立つと、こういうことになる。

トランプはキムとの今後何回かの会談で核設備の段階的廃棄に合意するか、またはその結論は曖昧のまま国連による経済制裁緩和と朝鮮戦争終戦協定まで譲歩してしまうはずです。完全核放棄?そんなものがあるはずがないでしょう?米国はあり得ずのシナリオである。トランプは、では自分にとって最適化となる落とし所はどこかを探る会談になります。どうやって負けに見えないようにやるかということです。おためごかしの理屈は『朝鮮半島の平和』しかない。平和は魔法の合言葉、反対する人も国もない。ということはこうなる。「終戦協定しろ、それを全面的に俺の手柄にしてくれ。米軍は半島から引き揚げる、段階的にな。平和はトランプ様のお陰だと全世界と国連に伝えろ。いいか、見返りはでかいぞ。お前の命と権力は公認してやる。経済制裁解除どころか援助してやるぜ、ベトナムを見ろよ、お前らもこうなるんだ。」

日本は彼の本音において特に重要ではないでしょう。彼の支持層はミサイルが飛んで来なければOKのレベルの白人が多く、朝鮮半島よりメキシコの壁の方が大事です。ノーベル平和賞は、おためごかし解決を正当化するダメ押しホームランとなるのです。キムにとってその解決は勝利である。核の段階的放棄と言われても大変なんだ、困る、どのくらいのペースを米国議会は求めてるのかと聞き出そうとするだろう。トランプが吐いてしまえばディールはダンだ。了解だ、それでいこう、マスコミに撮らせていい、ところでトランプさん、こっちもでっかいお土産がある、平壌にディズニーランドを作ろうぐらいキムにそそのかされてるだろう。中国、ロシアもそれで手打ち済だ。その前提で土地や企業に投資させてくれるなら北朝鮮は世界一魅力的なマーケットであり、米中露はキャピタルゲインでボロ儲けし、北朝鮮には多額の外貨が入るのです。悪知恵はいくらでも出る。合法性?平和のために合法になる法律を作るんです。

本件はそういう目線で見なくてはいけない。トランプもキムも習もプーチンも「悪賢いヤンキー」であって、必要とあらば肉親だろうと秘密諜報部員だろうと消しちまうワルであり、それをお互いに糾弾もしない無法地帯のワルどもであるのです。そこに銅像狙いのムンが加わって米軍は終戦セレモニーとともに大方撤退し、孤立した日本はそれを理由に防衛予算を何倍にもさせられて高額の兵器を言い値で米国から買い続ける優良なお客さんになる。永遠にゆすってしゃぶれるからそのまま蚊帳の外が有難い。これも商人トランプには響く。シンゾーがノーベル平和賞に推薦とバラしたのは、このシナリオを承認済だよとお金をふんだくる日本国民へのせめてものお知らせということです。こんなヤンキー学園に囲まれて、ウチは喧嘩は弱いが東大合格率はなんて学校はやがて路地裏でカツアゲされて終わるでしょう。

(以上、拙稿「我が国はサンフランシスコ講和条約に戻れ」から引用)。

このブログは本年2月28日に決裂に終わった米朝首脳会談直前にアップした、いままで書いたブログで二番目に好きなものだ。

内容にひとつだけハズレがある。これだ、

トランプが吐いてしまえばディールはダンだ。

そうはならなかった。吐けなかった。米国側に国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンがいたからだ。そしてついに先日、そのボルトンをトランプは切った。当然邪魔なのは消すのである。ああ来たなと思った。つまり、来年の大統領選前にディールはホワイトハウス保守勢力を抑え込んで「ダン」に向かうのである。一言でくくるなら、来年の選挙が危ないかもしれないトランプは国民へのトークとして金正恩のエクイティ・ストーリーに乗ってしまう。首尾よく2期目があればそれでいいし、落選したところで北朝鮮への特権的投資はトランプ帝国のおいしいビジネスになるのである。日米安保などどうでもいいとは口では言わないが、そうなれば日本は最新兵器を大量に、場合によっては核までも、米国製を買わざるを得ないというのがトランプのエクイティー・ストーリーだ。

ちなみに、こちらも会ったことはないが、韓国国民には申し訳ないが、大韓民国第19代大統領・文在寅は弁護士、革命家としては頭も良くて資質があるかもしれないがビジネスマンの資質はまったく感じない。法務部長官・曺國(チョ・グク)も大秀才だがビジネスマンはどう見ても無理だろう。良い悪いではない、簡単に言えば人間の質的相違である。トランプ、金正恩は1対1で酒を飲んだらけっこういい奴だろうと感じるし僕は株を買わせる自信があるが、文、曺はものすごくつまらない気がするし、絶対買わないだろう。

とすると、トランプー金正恩が予想通りになった暁には朝鮮半島の家主が金正恩になる蓋然性は非常に高い。文在寅の反日韓流ドラマはそういう脚本であり最近我が国のマスコミもそう報じだしたが、これは理屈ではないから自称インテリの皆さんには分からないだろうが、僕が書いているのはそんなちんけなことではない。文のドラマが受けようが受けまいが、要するに、そうなるのである。

理性ある韓国国民は大韓民国の死活問題と知っているはずと一定の期待はするし、それがどうあろうと、我が国は拉致問題を含めてトランプ、金正恩と、ビジネスマンとしてディールをうまくやることがどうしても必要である。

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Categories:政治に思うこと, 若者に教えたいこと

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