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カテゴリー: 経済

頑張った人が報われる社会

2015 FEB 19 20:20:33 pm by 東 賢太郎

安倍首相が「頑張った人が報われる社会にする」と国会で答弁した。これは非常に重要な言葉と思う。

それがなぜかを説明するには、少々長くなるが「デフレが金融現象だけで起きたのではない」ことをご説明する必要がある。

(1)世界を変えたユニクロ・モデル

ぜんぜん難しいことではない。デフレは中国が2001年にWTOに加盟したことで財市場を通じて低価格の労働が輸出され、世界の全ての国の労働市場の需給が緩和し、賃金がさがった。これが総需要を押し下げたからおきたのだ。

それが誰でもわかるとても簡単な例をお示ししたい。

中国にいち早く進出したユニクロ(社名はファーストリテイリングだが以下ユニクロと書く)は上海郊外の工場で激安の労働力を使って縫製した商品を日本で売って成功した、価格破壊の先駆者である。中国人の女工さんを物理的に日本に連れてきたわけではない。当初のころ月給がたったの7千円だった彼女らは「商品に乗って」やってきたわけだ。

すると、上海工場で雇った30人の女工さんの代わりに1人の月給21万円の日本人工員さんが職を失っている。そうしないと企業はそれをやる意味がないから、あからさまにやるかどうかは別として、いやむしろあからさまに見えないように企業努力をしながら、必ずどこかでそれは起きていることにご注意いただきたい。

同じ人件費で30倍の数のジーンズができるのだから他社もどんどんやる。企業にとってはそうしないと負けて倒産してしまう。他の業種も同じことを始める。こうして10年ほど前に「空前の中国進出ブーム」と新聞に書かれたのは記憶に新しいだろう。

(2)ちょっと待ってよ、中国の人件費が安いのは大昔からでしょ?

もちろんだ。これが国民経済的規模でできるようになったのは、中国が2001年にWTOに加盟・調印して西欧の貿易ルールを守りますと国が保証し、先駆者ユニクロのような賢明なリスクテーカーだけでなく普通のコンプライアンス意識の企業も安心して工場進出できるようになったからだ。

つまり、一人当たり人件費が1:30という、帝国主義時代の植民地か奴隷制のころでしかありえなかったような労働市場が国のギャランティーつきで忽然と地球上に出現した。琵琶湖ぐらいの水量があって、100mもの高低差のあるダムの水門を一気に開いたようなイメージを持ってほしい。これが2001年におきたことであり、今や中国は2兆ドルと世界最大の輸出国であり、この水流の影響を受けない国は世界中どこにもない。

ユニクロを退職した日本人は別な会社で職を探す。ところが業界中でそれは起きてくるからその職はどんどん減っていく。月給20万円でも仕方ないだろう。こうして国内の労賃は1万円下がる。新聞には「不景気による労働市場の需給の緩和」と載る。そうではない。ユニクロはジーンズの値段だけではなく、国内の労働市場でも価格破壊をしたということだ。

これがブームになって国民経済的規模で起きた。工場や職場で自分のデスクのとなりに中国人が現れたわけではない。最近は中国語がそこらじゅうで聞こえるようになったと言ってもデパートか観光地の話だ。しかし、目には見えないだけで、実は工場ごと中国人に入れ替えというような事態が10年前からそこらじゅうで始まったのである。非正規雇用の増加というものは、これが工場閉鎖や雇い止めにいたらず姿を少し変えた現象だということがご理解いただけるだろう。

(3)これは製造業だけの話でも日本だけの話でもない

例えば、多くの米国のサービス業でコールセンターを、賢くて英語がうまくて賃金は安いインドに作る流れとなっている。電話をしているアラバマ州の米国人顧客は、自分の町の明日の天気まで教えてくれるオペレーターがまさかムンバイでネット予報を見ながら話しているなどと想像もしない。この陰で、ユニクロ現象と同様に非製造業においても米国のオペレーターは失業しているのだ。

失業したり手取りが減るかもしれない労働者は消費は控える。すると企業は売上予想を下方修正して設備投資を減らすが、生産設備はそのままである。わかりやすく極めてシンプルに言ってしまえば、これがめぐりめぐって国内総需要が供給力を下回り、デフレになったのである。循環的なものではなく、構造的なものである。

そこでGDPの6割は個人消費だから経済成長率は落ちてマスコミは「景気が悪くなった」と騒ぐが、景気のせいでデフレになったわけではないことにご注目いただきたい。だから政府の景気対策なんかいくらやってもデフレは退治できないのであって、アベノミクスが金融緩和という非常手段を持ち出したのは理論的に正解なのである。

(4)ユニクロが悪いわけでもないし止められる者は誰もいない

資本が国境を超えて安い労働市場を求めるのは成長するために当然であり、国家がそれを止めることはできない。ここが一番大事なところで、見誤ってはいけない。「仕事がないぞ!国はなにをやってるんだ!」と永田町でデモをしても仕方がないのだ。なぜならそれは国の責任ではないし、国はどうすることもできないからだ

これをよく覚えておいていただきたい。「柳井社長、失業が増えるし景気も悪くなるんで製造は国内で日本人でやってください」なんてことは絶対に起こらない。もし馬鹿な政権がそんな法律を作ったら、優秀な経営者は全員が日本から逃げ出すだけだ。国内には税金をたくさん払ってくれる企業はひとつも残らず、格差社会は見事に解消されるだろうが一億総中流ではなく一億総下流と中国にいわれているだろう。国家財政は破たんして、弱者救済どころか国ごと弱者になるのである。

ちなみにファーストリテイリング社の株価はこの10年で5倍になった。今の円建ての金利は気が遠くなるほど低く、徳川家康が預けた100万円の定期預金の利息がやっと10万円に達した程度である。従業員からすると大変な会社だが株主にとっては優良企業であり、労働者がこういう株を買ってはいけない法律があるわけでもない。株を保有すれば誰でも資本家になれるのであって、その方法を無視しておいて「株は富裕層しか関係ない」と批判するのは格差を階級問題にすり替えたいだけだろう。

(5)これは日本だけでなく、世界の労働者の問題でもある

世界で必要な職の数は世界のGDPが停滞すれば増えない。限られたパイを中国人が奪いだせばギリシャのようにはじき出される国が出る。はじき出されたのはギリシャという国ではない、国際競争力のないギリシャの労働者自身である。景気のせいでも政治のせいでも国家財政が破綻したせいでもなく、国民ひとりひとりの自己責任の集大成にすぎないのである。

国民のプライドがもたないから何とかしろとEUに詰めよるなどお門違いもいいところだ。ギリシャの解決策はたったの2つしかない。①国民ひとりひとりがそのプライドを捨てて生活水準を落とすか、②がんばって中国人より生産性の高い労働者になるかである。だからドイツは暗にそういって要求をはねつけている。

こういう時にはえてして、怒れる国民の代理人を装った、ファイティングポーズで威勢のいい政党や首相が選ばれる。中村兄が第1次大戦の戦後処理失敗の帰結と指摘しているヒトラーの出現がいい例だ。そして彼は戦争という禁じ手の第3の解決策に走り、国民を殺し、財産を剥奪し、国を崩壊させた。

つまり、はっきり書くが、国にはできないのだから「我が党がやれば皆さんの生活が楽になります」というのは論理的にあり得ない、要は、嘘八百なのである。国民の怒りに乗じて得票し、政権だけは乗っ取ろう、何をやるかは後で考えようという連中が跋扈してますます国をダメにするというのが歴史の教える国民国家の失敗の方程式であり、まさに我が国も2009年にその一例を歴史に書き加えているのである。

(6)では国家ができることは戦争以外にはないのか?

実はそうではない、もうひとつある。国民に牙をむいて資産を剥奪することだ。ギリシャの銀行預金の流出が止まらないのは銀行が傾いたからだけではない。一昨年にキプロスが危機を起こしたとき銀行に預金していたロシア人は預金封鎖を恐れてビットコインに換えて母国に送金した。今回のギリシャでも国など信用していない富裕層がまず預金を海外に移し、それで銀行が危ないということになっているのである。

政権を取るだけが目的の政党は必ず公約で「政策によって貧富の差を無くします」という。なぜなら政治は数で決まり、「富」のほうが数が常に少ないからだ。だから統一地方選向けに左がかった学者などを呼んできて格差社会などと騒いでいる。しかし数が常に賢いわけではない。この公約はオウムが朝にオハヨウと声をかけてくれるぐらい意味のないことで、いわば歴史的常套手段である。

貧富の差はいつの時代もいかなる国でもなかったためしなどない。それを無くしますと公約する政党が与党になっても、ちゃんと格差はできるのである。なぜならその政党の幹部が金持ちになるから、公約を果たせば果たすほど前とは違ったメンバーによって格差社会ができる。共産主義国のトップはみんな豪邸に住んでいたし、今の中国の最大の富裕層は共産党幹部であって何兆円という天文学的蓄財をしていることがちゃんとそれを証明している。そうなりたい人が権力を握りたいためのセールストークなのである。

(7)日本に世界レベルの富裕層などいない

僕が働いた金融業では米国の社長と平社員の年収差は数百倍もあって日本は証券トップでもせいぜい20-30倍なのだが、やや特殊な世界であるだろう。では日本の代表産業である製造業はどうか。下の図を見れば一目瞭然だが、その製造業を代表するトヨタの社長ですら日産のゴーン社長と比べてこんなものだ。

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同じ自動車業界だから、ふたりの差は何かというと「日本人か外人か」だけだ。日産も日本人社長には10億円も払っていたわけではない。英米で10億の人は日本でもそうしないと来てくれないよねということであって、ここまでひどいともはや人種差別に見える差である。

要は、トヨタ、日産クラスの社長は欧米なら10億円、日本なら2億円であり、金融業にいたってはそれは100億円と1億円の差になる。日本の高額所得者の年収などというのは世界的には「異常値」といえるほど低い。一方で、一般労働者の賃金は国際的に高いほうだ。だから海外に工場移転が起こるのである。「日本は格差社会だぞ」などと欧米でいえば、何か面白い日本ネタ・ジョークでも始まるのかと期待されてしまうのがおちというのが現実なのである。

だから、もし日本国が国民に牙をむいて資産を剥奪するようなことを目論めばギリシャの富裕層といっしょのことが間違いなく起きるだろう。日本は相続税で三代で資産はなくなるから富裕層になった人はおおむねそれなりに頑張った人である。では「頑張った人」の共通点は何かひとことで述べよといわれれば、「頑張った人も頑張らなかった人も同じだけ報われますよという国が何より嫌いな人」である。だから頑張ってトヨタの社長になっても「たったの2億円」というのは、もうその時点ですでに本当にできる人は海外に出ていってしまう数字だ。

以上、恐らくお読みの方には僕が非常に冷たい資本主義原理主義者で弱者切り捨て論者に見えているだろう。それを覚悟で書いたのは、まず起きていることの実態を論理的、科学的に解析すべきだからだ。「現実はこうだ、理由はこうだ」、でも「現実はよろしくない」、そこで初めて現実を少しでも良くするために為すべき方法論が選択されるのであって、「現実はよろしくない」からいきなりスタートする安直な思考では方法論を間違ってしまう。

(8)「起きていること」を復習しよう

資本は国境を超えて安い労働市場を自由に求めるが一般の労働者は国境を超えられない、すなわち、グローバルな資本市場とローカルな労働市場のねじれ現象が生じていて、それは昔からあるのだが中国のWTO加盟という巨大ダムの開門で加速して世界中の政府が看過できない所まで来ていて、賃金の安い方に資本は流れてしまうから旧体制に安住していた国ほど被害が大きいということだ。

ギリシャの例で、これを解決するには方法は2つしかないと書いた。①生活水準を下げる②生産性をあげる、である。残念なことに日本は②ではなく①の方に社会全体が向かいつつあり、若年労働者層ほどそれを強いられて国家全体が活力を無くす可能性すらある結果となっている。

(9)よく考えて欲しい。生産性をあげる、とは何か?

頑張ることに他ならない。中国人を低開発国のバロメーターと考えれば、中国人より生産性の高い労働者になることで雇用はされる。もちろん正規雇用である。中国人の賃金も当初より大幅に上がってしかも円安でもある。ユニクロで中国人の30倍のジーンズを縫製しないと負けてしまう時代は終わった。むしろ縫製の正確さ細やかさでは勝てるだろう。そう考えて頑張る人が報われる、それが会社だけではなく社会全体の仕組みとなれば日本人は必ず雇用を勝ち取ることができる。

大事なことは、それは民間がやることであって国家が法律や規則で強制することは不可能だというこだ。民間のトップにはかならず「頑張った人」「頑張って報われるための知恵のある人」がいる。彼らにもっと頑張ってもらい、企業には稼いでもらい、税金を払ってもらい、ノウハウやスピリットを次世代に伝え、社会にそういう若者が増えるように引っぱってもらうことが重要であり、そこから「弱者救済」という社会として絶対にやらなくてはならないことをやる知恵と財源が生まれてくる。

(10)「頑張らずに国にすがりつきたい者」と「弱者」とは峻別すべきである

弱者とは老人、病人など社会的保護なしには生活が危ぶまれる人である。健康で働けるが働く意欲が低く、国や役所や親が何かしてくれるのを待っている人ではない。働ける人は全員が自分の能力を高めて生産性を上げる努力をしなくてはならない。それが資源のない国が競争力を永続させるための必須条件であり、少なくとも昭和の日本人は言われなくてもそう考えたし、それができた。それだけでも世界でトップクラスの優等な民族であったことが証明されていると思う。

弱者救済、セーフティネットの整備を欧州か北欧なみに厚くするのはいいことだが、カネが余分にかかる。GDPの2倍も借金がある国がそれをやろうというなら国債発行に頼らない財源確保、つまり経済成長による税収の自然増というバックボーンなくしてそれをやるのは自殺行為である。借金の重みでいずれ国家財政のほうが破たんするだろう。「頑張らない人も報われる社会」を目指している政党がそれをどうやろうというのか知らないが、やるというなら頑張る人は逃げるだけで、結局誰も得をしないし救われもしないだろう。

(11)ではこれから我々はどうすればいいのか?

そこが一番重要だが、私見は今後書いていきたい。政治家でない僕たちは国家をどうすることもできないから、ひとりひとりがどう考えどうすればいいかということだ。しかし、書いてきたようにこれは我々一人一人の決意の問題である。まずは自分や家族や友人の幸福を考えるぐらいしかできないし、それだけでもできれば大変なことだと思うし、それができなければ困っている方々に本当の思いやりをさしあげることだって難しい。

僕が言うのもおこがましいとは思うが、世界の何千人という優れた方々とお金という本音の世界を通してお会いし、競争し、おつきあいしてきたという経験から、ささやかながら若者に教えたいことというカテゴリーに100本のブログを書かせていただいている。普通の父親はこういうことを自分の子供だけに教えるのだろうが、誰であれそれを託したいのは日本の若者だという信念から真剣勝負で書き持論として公開した。お時間があるときにお読みいただければ望外の幸せである。

 

頑張った人が報われない社会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「女性はソクラテスより強いかもしれない」という一考察

2015 FEB 15 18:18:34 pm by 東 賢太郎

 

二人の女を和合させるより、 むしろ全ヨーロッパを和合させることのほうが容易であろう (ルイ14世)

72年という最長の在位期間を誇り、私の中には太陽が宿っているとまで豪語した飛ぶ鳥落すフランス国王にしてこの言葉である。大変に奥深い。もしこの前段と後段が逆であれば、ブルボン朝はもう少し続いたのかもしれないとは思うが。

ギリシャがドイツに22兆円の戦争賠償請求したが旧友が電話で笑った。

「お前、あれってまるでウチの夫婦喧嘩だぞ。全然関係ない30年前の話が突然出てきてな、『そもそもあの時あなたは!』ってな。台風だからな過ぎ去るのをじっと待つしかないよ、ドイツもね。」

「しかしギリシャのあの政党、愛国は結構だがそれなら独立してまじめに働いて軍備強化というのがフツーの国だろ。外国からたくさんお金を取りますってのが選挙公約か?メジャーリーガーの代理人か離婚訴訟の弁護士みたいだ」。

と返したのは僕だ。あの党いわく、緊縮財政に屈していては国民の誇りが取り戻せないらしいが、ギリシャ人の誇りってそんなものなのか、それとも日本人にはわからない深いプライドの井戸でもあるのか。

僕は歴史で学んだ程度しかギリシャ人を知らないが、その範囲では尊敬しているから複雑な気持ちがする。無知蒙昧であった高校時代には「ソクラテスの弁明」を読んでもわからなかった。命乞いすれば死刑は免れたのにそれをせず、それが傲慢とされ死刑になったのがである。何か変だ。3つある。①命乞いしなかったこと②それが傲慢とされたこと③それで死刑になること。

①裁判員の無知に迎合せず、身なりや演説のうまいへたよりも真実だけを見ろという態度はPhil(愛する)+sophia(知恵)でフィロソフィー(哲学と訳されるが、逐語訳は愛智だ)の規範である。②そして、それをした人は少数派だった。愚衆の怖さが示唆されている。③そして、法が死刑というなら仕方ない、「悪法もまた法なり」。これは罪刑法定主義の元祖だ。

後日それを知り、僕はソクラテスのファンに、そしてこの書の熱心な読者になった。

そういえば6年前のある日のこと、今のギリシャ人はどうなんだろうかと部下のギリシャ人に尋ねたことがある。彼はもちろんソクラテスはみんな知ってますよといいながらしばし考え、その質問には直接答えず、こう弁明した。

「ギリシャ人にとっては世界の全てのことばの語源はギリシャ語です。だって世界中で It’s Greek to me. って言いますからね」

これは僕が人生で出会った最も機知に富んだジョークのひとつである。「それは俺にはギリシャ語に見える」とまともにとっているというおちょくりだ(本当はそれが転じて「わかんねえな、まるでギリシャ語だぜ」という意味)。日本生まれでハートは日本人、頭の中はアメリカ人でインテリの彼はちょっと自嘲気味であったのだ。

彼は哲学について、賢人によるこういう論理的考察を紹介もしてくれた。

「ぜひ結婚しなさい。よい妻を持てば幸せになれる。悪い妻を持てば私のように哲学者になれる」(ソクラテス)

これはすべての哲学者は悪妻もをっているということは意味していないが、後世になっても女の大哲学者は出ていないこと、ハイドンの悪妻も有名で女の大作曲家もいないことから、女房のわからない職業がいけないかもしれないという推論にたどりついた。証券マンはどうなのかという話に道がそれていったが、どうも危ない気もするものの頭から水をかけられた経験はない彼も僕も、もちろん前者であるという点で合致した。

その推論はあながち的外れでないことが後でわかった。『ソクラテスの妻』を書いた作家の佐藤愛子が「ソクラテスのような男と結婚すれば女はみんな悪妻になってしまう」と自説を述べているからだ。この説は「ギリシャ人はなまけものだ」と主張するドイツ人に有効な反対弁論かもしれない。

どういうことか。

国家主権はあるが通貨主権はない。これを前提とする統一通貨ユーロは、そもそも変なのである。本来は、緊縮しないといけないぐらい財政がおかしいギリシャの通貨ドラクマは下がる。すると海外から見ると輸出品やパルテノン神殿への観光費用は安くなって売り上げが増え、税収が増すことで財政が立ち直るのである。ユーロという統一通貨になるとそのメカニズムが働かない。

ところがそのかわりに、ドラクマ建てだったら売れないボロ国債がユーロの信用で売れてしまうという利点がある。下宿人が大家の名刺で借金できるようなものである。借金というものは期日が来たら返さないといけない。それが返せず大家に援助しろと迫って渋られると「30年前の話が突然出てきて、そもそもあの時あなたはって始まるんだよな」となっている。

だって結婚しようって言ったのはあなたじゃない!

有罪・死刑投票をしたアテナイ人諸君は、ソクラテスを死刑に処したという汚名と罪科を負わされるだろう。

ここだけ読むと身勝手な逆切れおやじだが、全部読めば僕はソクラテスの味方なのだ。ギリシャの言い分にはこんな深い井戸があるんだろうか?

しかし人間の理性というものにも限度がある。男が全部理性的であるということはまったくないが、泣き叫ぶ赤ん坊のようにどうしていいかわからない相手に対して女性ほどの忍耐力は持ちあわせてもいない。大家でありアテナイ人諸君でもあるドイツが、だんだんこういう気持ちになるんじゃないか心配になってくる。

私には女が象と同じように思える。 眺めるのは好きだが、家に欲しいとは思わない。(米国の伝説的コメディアン、W・C・フィールズ)   

そんなことになると世界経済に暗雲がたちこめてしまう。考えたくないがひょっとして、一途で生一本なソクラテスよりも、人生酸いも甘いも知ったルイ14世のほうが正しかったんじゃないか?

このチキンゲーム、先は全く読めないが、とりあえずのところ世界はドイツ国民の賢明な判断に拍手を送っておかねばならないだろう。それは首相に女性を選んでおいてくれたことだ。

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ロシア株について追記

2015 FEB 13 16:16:29 pm by 東 賢太郎

1月23日に緊急事態につき1週間ブログを休んだが、勘の良い方はお気づきだったが本業のほうでロシアの情報収集をしていた。現地に行ったわけではないが相手は主に英国、スイスなど旧知の友人、取引先などである。大変に有益な調査をさせていただいた。証券会社の話は意味がないのできかない。自分でロシアに巨額の投資をしている人こそ、我がこととしての本当の情報を持っているのである。informationは判断の邪魔になるだけで無益、いるのはintelligenceだけなのである。ロシア株インデックス(ETF)は今日一日でさらに4.2%急騰している。

しかしプーチン、ポロシェンコ、メルケル、オランドの16時間ぶっつづけ会談は想定外だった。本当に休憩なしだったらしい。3対1のプーチンは会談中ボールペンをぽきぽき折って威嚇しポロシェンコはびびりまくったらしい。ウクライナの通貨フリブナは昨日一日で3.1%下がり、この1年で67%も暴落している。

ギリシャの逆ギレでユーロ結束に火がついている独仏は対ロ輸出制裁で米国のロシアいじめに加担している場合ではなくなってきている。このままでは困るのである。プーチンはそれを見越して、停戦はしてやるがウクライナを連邦制にしろと脅した。ワンステップ置いて親ロシア州をクリミア式に自立させて乗っ取ろうという戦略見え見えである。

プーチン、メドベージェフと会ったある方いわく、プーチンは性根の座ったワルだ。メド君は女みたいなお小姓であるそうだ。つまりワンマンオーナーだから歯止めなどない。停戦協定といって武器を置いた瞬間に打ち殺す可能性があるからこれで安心というのは早計である。米国はそう思っているからウクライナに前線基地を作るだろう。

ウクライナといえば、あの冬季オリンピック開催地ソチはすぐ近くだ。そこから北海道と九州ぐらいの距離を南下すればあのイスラム国である。そんな所で去年はのんきにフィギュアスケートなんかをやって世界はわいていたのである。

こういうことはNHKのニュースなんか見ていても何もわからない。自分で相場をはっている人間だけが感知するものだろう。

 

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ピケティは間違っている

2015 FEB 3 13:13:25 pm by 東 賢太郎

ピケティの講義を聴いて唖然としたのはもうひとつある。

「中国に投資すれば高い利回りが得られるだろうが、あなたが銀行に10万ユーロ預金しても銀行はそれを中国に投資して得た高い利回りをあなたには少ししか分配しない。そういう社会の仕組みになっている」

と堂々と講義していることだ。中国で大儲けしているのは資本家だけだ、資本のない者はそれに縁がないから格差が生じるのだと学生に教えている。

前世紀の共産国の学者かと耳を疑うばかりだ。

中国株を買えばいいことぐらい英米人なら小学生でも知っている。詳しい知識がなくたって、1万円しか手元資金がなくたって、そのために英国で投資信託という仕組みが作られたのだ。驚くべきことにこの人の頭には株式、エクイティという概念が完全に欠落している。あるいはあえて学生に教えないようにしている。

彼は「資本」と「資金」をこう区別している。

「資本」は彼お得意の「金持ち絶対保証利回り」=「r」=「ハーバード年金の12%」で回るが、「資金」だとせいぜい3%しかもらえない。これが太古の昔からの法則なんだ。だから格差社会ができるんだ、と。

彼によると同じ1ユーロも、上位10%の金持ちが持つと「資本」になり、それ未満の人が持つと「資金」になるようだ。その r という数値を生み出す資本主義社会での現実の理解の浅さは驚嘆に値するものの、これはDas Kapitalに書いてあることそのものだ。階級闘争の思想的背景になったものだ。

彼が例にとっている10万ユーロは1350万円だ。彼の論旨には不似合で笑ってしまうほど立派な大金、Das Kapitalである。それを「資本」にできずに銀行に持っていくことしか知らないならそれはキミが無能なだけなんじゃないか?もっといい方法があるよと学生に教えてあげるのが経済学校の先生の仕事であり、最低限の価値なんじゃないか?

銀行に行くことが大学で教えるに足る唯一の合理的な判断であると主張するなら、株主から資本を調達して高い収益を得てそれを保有株数に応じて「平等に」(equity)配分する仕組み、つまり資本主義の根幹を担う株式会社制度を否定(あるいは無視)しているとしか言いようがない。

だから合理的な僕の判断は、「前世紀の共産国の学者かと耳を疑うばかりだ」になる。今世紀ではない、前世紀である。

僕は共産主義を否定する気もないし、それができるほどちゃんとマルクスの資本論を読んでない。しかしピケティだって資本主義の現実をぜんぜん学んでない。だからあなたが現行の資本主義を否定するのは学者として極めて非科学的な態度であるということをいいたい。いや否定はしてませんよというならもっとたちが悪い「なりすまし」でしかない。マルクスを読んで、「新・共産主義」を名のるのがお似合いだとアドバイスしたい。

それを学生に教育して銀行預金しか知らない大人を増やすのはあなたが否定している格差社会を成長させる非常に効率的な政策である。親の年収格差が教育格差を生み、それが相続されていくことは全く宜しいと思わないが、「10万ユーロ預金したら」をふんふんと聞いているパリ経済学校生は金持ちの子女なんだろう。それならばあなたの講義は理にかなっていると高く評価したい。

 

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ピケティの新・資本論について

2015 FEB 1 6:06:13 am by 東 賢太郎

トマ・ピケティの新・資本論がはやっているらしいので「パリ白熱教室」(パリ経済学校講義4時間分)を聴いてみた。お断りするが僕は資本論はなんとなく雑駁に読んだが「21世紀の資本」を読んだわけではなく、それのつもりで内容を見ずに「新・資本論」(日経BP社)の方を買ってしまって仕方なく読んだが、天声人語といい勝負の軽いコラム集みたいなもので、カサは厚いがたいして意味のない書物であった。ああ損した。

講義は所得と富の分配についての考察である。それが不平等であり機会均等とはいえない水準に達して世襲されているのは問題だということだ。正直のところ別に目新しい話とも思えないが歴史として聴くと面白かった。しかし何かインプリケーションがあるかというと、ヒストリカルデータを小まめに取ったという学術的価値はあるのだろうが、僕にとっては直感をやっぱりねと追認されただけ。「上位1%が国の総所得の25%を占めている」という指摘が何を今さらなのか大うけにうけて米国でベストセラーになって、「アメリカ人が騒いでいる」といって騒げば物がよく売れる特殊な国である日本国でブレークした麻疹(はしか)現象という印象である。来年の今ごろは名前も忘れられているだろうと予測する。こういうのが突然流行ったりするのもデフレの産物だなと思料。そのデフレを助長して株をお見事に7000円まで暴落させた政党の党首がこれを担いで安倍政権批判をしているのを見るとマッチポンプという言葉が浮かんでくる。ちなみに翻訳のせいかもしれないが、ピケティのいう「資産」と「資本」という用語の定義が厳密にいうとよくわからないことを書いておく。

彼の主張の根幹をなす式がこれだ。

r-g>0

それは結構だが、r(資本収益率)の過去のデータ収集のご努力には敬意を払うとしても、現在の r はどう測定しているのかさっぱりわからない。これが絶えず変動するのは金融の世界の常識であり、過去がどうあれそれが予測できないからフィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズは「ブラック・ショールズ・モデル」でノーベル経済学賞をもらったのであり、そのショールズ先生が経営関与していたヘッジ・ファンドが98年のロシア金融危機で大損して倒産に追い込まれたのであり、資本家は常に配当、利子、賃貸料、キャピタルゲインで潤っているようにお気軽に説明しているがそんな簡単なものと思っているなら彼の理論は机上の空論でしかない。それらはすべて金利の関数であり、それが世界の中央銀行総裁が困るほどゼロに近い現状では r もかなり低い状況にあるはずであり、そうでなくては疑似資本と考えられる超長期金利(10年以上の長期国債利回り)が世界中で歴史的に異常な低率になっているという、観測データのある限り人類史上初の現象は説明できないであろう。できるなら反論していただきたい。さらに疑問なのは、彼はここで資本収益率の背景にあるリスクとの相関性に言及していない点である。資本を持っていればノーリスクでどんどん増えるなどとまさか彼は思っていないだろう。それを言わないなら、彼がどんな読者や聴衆をターゲットにこの論をぶとうとしているかうっすら意図が見えてくる気がする。はっきり言ってしまえば我が国の民主党と変わらないレベルという所だ。

 

講義でピケティが「rが常に高い」と説明している論拠はこうだ。

①「君たちが銀行に10万ユーロ預金してもハーバード大学年金基金の得ている年間10.2%という収益率は得られずインフレで目減りしてせいぜい3%だろう」        ②「彼らの投資対象はデリバティブやサブプライムローンのように複雑な金融商品だ」                                                   ③「資金の運用には規模の効果もつきものだ」                         ④「ハ-バード基金は1億ドルだがその管理に0.3%も払っている」            ⑤「だから資産運用に長けたマネージャーも雇える」                    ⑥「金融市場の規制緩和は金融収益の格差を拡大し今日の資産格差を生み出した 理由の一つだ」

反論

①インフレで目減り?いま欧州はデフレでしょ                                                ②サブプライムが投資対象?だったなら彼らは大損こいてr<0でしょ             ③だから少額でも買えて規模の利益もみんなで得られる投資信託があるんでしょ                                  ④マネジメントフィー0.3%?ならば「も」じゃなくて「しか」ですよ(笑) ⑤資産運用に長けたマネージャーが損してるケース(r<0)もいっぱいあります                                                                  ⑥規制緩和が生んだ金融商品で最も損したのは銀行と大手投資家(資本家)でしょ

 

ということで、この講義が2011年のものだったならこの先生は資本主義の未来は予測できるが2、3年後の未来に欧州がデフレになることは予測できなかったということであり、②に至っては失笑するのみだが、さらにちょっとだけ真面目に申し上げれば、彼がHarvard Endowments (ハーバード大学基金)のことを言っているなら運用額は少なく見ても2兆円を下回ることは絶対にない。そんなことぐらいはフランス人を含む世界の金融マンの常識であって、1億ドル(約100億円)などという天文学的に見当違いな数字を純真な学生相手に持ち出しているところなど、この人がいかに数字に鈍感で金融に無知か、いやもっと言ってしまうと、100億円が天文学的に巨大な金額だと無意識に信じこんでいる世界の住人としてその世界に向けてしゃべっているということを図らずも露呈していると思われる。規制緩和で生まれたわけのわからない金融商品で儲けているのはけしからんといいながら、30万ユーロ(0.3%の管理費用)を出せば優秀な運用者を雇ってそれで儲けられるのになどと支離滅裂なことまで言っている。ちなみに、2兆円を運用するのに30万ユーロぽっちで雇えるマネージャーが詐欺師でもNPOのボランティアでもなく資産運用に長けたマネージャーであると言って同意する資産運用のマネージャーは100万人に1人もいないだろうが、彼はハーバード大学の運用資金量を200分の1とカン違いしているのだという前提に立って好意的に見ればそれは事実と整合的な運用コストという結論に達するだろう。本質は完全に左だがそう見えないよう右寄りに塗固しようと慣れない努力を試みるから馬脚が出るのであって、老婆心ながら資本論をちゃんと読んで堂々と左宣言すればよろしい学者だと思料する。誰が呼んできたんだろう?

僕が「21世紀の資本」を読んだわけではないことを再度お断りする。そこに上記の点について論理的、実証的に満足な説明がなされているなら忘れていただきたいが、仮に r-g>0が有史以来の歴史的事実だったとしても、今は歴史的事実が事実でなくなったかもしれないという歴史的事実が発生している世の中なのであって(だから彼は人気者に祭り上がったのだろうが)、旧来の歴史的事実が何千年何万年続いていようがそれに基づいて処方箋を書きましょうというのはナンセンスである。90才で癌で入院した患者に健康だった89才までの人間ドックのデータで薬を出しましょう、今まで死んでいないのだからあなたは永遠に死にませんよというようなもので、学者がこんなことを言ってるからECBの量的金融緩和が大変な後手に回って欧州は癌が進行してしまったのは気の毒でならない。20年の入院、闘病で癌を克服しかけている先輩国・日本に出稼ぎに来て心配までしてくれなくていいから、早くクニに帰ってドラギ総裁にその制癌剤は間違ってますよと言わないとキミの国のほうがよっぽど大変なことになるよというのが彼の議論の筋だろう。

少なくとも講義を聴く限りの結論はこうだ。

・「米国の上位10%の資産保有シェア90%はフランス革命時点のフランス並みだ」というご発言のとおり、左のフランス人らしいなあということ

・官僚国家フランスの学者、インテリの投資の知識が、米国は言うに及ばず恐らく中国以下であるという点において日本のそれに匹敵するということ

・こんな程度でアベノミクスがどうのといわれてもかなわんなあ、あんまり日本人をおナメくださるなよということ

・パリ経済学校がなんだか知らないが東大生に聴かせるべきレベルではないということ

私見

彼の講義で一つだけ共感したのは教育の機会平等である。大学進学率と所得の相関について述べているが、これも彼の高い本など買わなくても昔から言われていることにすぎないのだが、大きな問題と思う。

「米国人のおよそ4人に1人は地球が太陽の周りを公転していることを知らなかった」(ソース/AFP )

「日本の大学生・短大生の4人に1人が日没の方向を東と答え、地球の周りを回る天体として33%が火星、18%が太陽をあげ、42%が月の満ち欠けする理由は地球の影の影響とした」(ソース/Jキャストニュース)

という事実のほうがr-g>0なんかよりよほど驚嘆に値するのであって、彼らが別に天文学者を目ざすわけではないにしても、これが象徴する事態が収入格差の説明要因として甚大と思うのは僕だけだろうか。こういう状態で大人になってしまったり大学なるものに入学できてしまったりした上で、実は太陽は地球を回ってないんですよ、あなたはそれで損してるんですよと諭されてそうかそんなに不平等な世の中なのかと初めて思い始める教育しか国民の多くが受けられない世の中であるならば由々しきことであり、それこそが政府が心血を注いで是正すべき不平等の種である。この不平等が左翼政権になったり資産累進課税をしたりすると見事に解消されたという事例は僕は寡聞にしてただの一つも知らないが、その原因がピケティの主張するように親の年収格差にあるなら、国立大学は5科目受験を前提に授業料ゼロとして教育機会均等を図るべきである。

以上

(ソナー・アドバイザーズのブログ)

これから起きること

 

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FRBとドラギが握った?

2015 JAN 22 0:00:08 am by 東 賢太郎

スイス中央銀行(SNB)は僕が3年スイスの社長をしていた間に何度も行き、当時のツヴァ-レン総裁ご夫妻には懇意にしていただきました。007のロジャー・ムーアやソフィア・ローレンの家がある高級リゾートのクラン・モンタナに奥様がホテルをお持ちで、2回も家族でご招待いただき、ご夫妻と教会のアンティーク・オルガンでバッハを聴いたり、ゴルフをしたり、素晴らしい思い出です。

ツヴァ-レンさんには政策策定の裏話、苦労話を色々教わりましたが、当時欧州金融のドンであったドイツ連銀とうまく距離感を置いた運営の仕方には独仏伊3大国に囲まれて生きてきたスイスという国の英知が詰まっていると大変に勉強になったものです。

そうしたSNBの手堅さと金融政策運営のうまさは折り紙つきで、それゆえに97年以後もユーロ通貨同盟から独立という超然としたスタンスをキープし、スイス・フランという信用力ある通貨を保持してきたのです。その信用力が結果としてあだとなったのが今回の突然の対ユーロ上限撤廃によるSF急騰です。

SNBとはそういう経緯があるので僕はこれには複雑な思いをいだいています。通貨が一気に4割近くも上昇するというのは、ひょっとして人類史上初じゃないでしょうか。消費者物価、通貨価値を安定させるのが中央銀行の責務ですから、これは大失政と批判されて文句はいいようのない事件です。

上限保持のための継続したユーロ買い介入でSNBのバランスシートの対名目GDP比は83%で資産の91%が外貨であり、外貨建て資産の含み損は名目GDPの15%という試算もありますから危機的な事態であったのは事実でしょう。しかしなぜあの堅実なSNBマネジメントがそこまでリスクを張りこんだのか、そこがよく理解できないのです。

つまりリスクを取ったまでは順当な判断だった前提が崩れ何か不測の事態が起きて、やむなくその判断をしたのではないか。それならわかる。GDPの3割強が輸出の国です、1割ちょっとの日本よりはるかに通貨高は自国の首を絞めデフレ化するのは目に見えています。SF上昇率も異常だが、SNBの判断自体が異常であり、それが気持ち悪い。

これは僕の推測ですが、FRB利上げ遅延が長引くと世界の総需要停滞の憶測を生み唯一の牽引車である米国までデフレが及ぶ懸念が蔓延します。そうなると世界経済は崩壊しますからそれだけは避けたい。流動性供給の代役だった日本と欧州ですが、日本は全くの期待外れで、そこに原油安の物価低下圧力がかかってきた。欧州はいずれにせよユーロシステム堅持から逃げ場はない。

FRBとドラギが握った、その情報がSNBに入ったんじゃないか?(わかりません。007と思ってお読みください)。そうであれば大損は必至であの判断はやむないでしょう。ギリシャのユーロ離脱はGrexit(グレグジット)という単語にさえなってます。国債借換えのカネすらない。ECBが青天井の緩和をすればしかし国債は買ってもらえ成長機会は残る。ギリシャの政党はどこもユーロ離脱に控えめです。ドイツはユーロ安は賛成だ。

もしそうだとすると通貨のパラダイムは変わるかもしれません。各国中央銀行がお金をばらまいたのに歩を合わせてリーマンショック後に世界の株価は上がってきました。

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しかし世界の物価は上がっていないのです。

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これが中国ビッグバン仮説の帰結であることを僕はいささかも疑っておりません。どこの国も逃れることの出来ないデフレの波です。これはパラダイム変換だから元に戻らない。この認識が最重要なのです。しかしわかってない人は、行き過ぎは元に戻る、いわゆるシクリカル変動というものを盲信しています。世界の9割の人はそうです。

この事態の特効薬は流動性供給だと世界の中銀が体を張ってきましたが、限界が来たのです。産業革命を発端とする機械文明がけん引した世界経済の成長波動が終焉し、次が見えない。金融政策だけの片肺飛行で飛行機がダッチロールに入っているのがいまです。SNBがまずその犠牲になった。いつ日銀がならないとも限らない。いよいよオペラは次の幕が始まった。そう思います。

 

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デフレは毒キノコをはやす

2015 JAN 15 13:13:36 pm by 東 賢太郎

日本の新発国債利回りが過去最低の0.255%、5年債は過去初めて一時ゼロ%となった。大変異常なことであり、前から指摘していることだがアベノミクスの成果が乗数効果で増幅されない傾向はさらに顕著になっている。

14日の日経の一面トップ、「金利低下 原油安で拍車」という見出しに釈然としないものを感じた方も多いのではないか。原油安でガソリンや暖房費が安くなればその分消費に回せる。GDPの6割は個人消費だ。むしろ景気にはプラスで金利は上がることはあっても下がることはないのでは、という素朴な疑問だ。

しかし現実には日本だけでなくドイツも10年債が0.4%台(過去最低)、利上げ観測のある米国すら2%を下回っている。そしてこのグラフを見せられると日経のタイトルに反論は難しくなってくる。

gennyuこれの理屈がよくわからない。昨日発表された米地区連銀経済報告でダラス、カンザスシティ、クリーブランド、アトランタ、シカゴなどで原油安による景気への悪影響が報告されたそうで、原油安は景気悪化要因との認知が行われたようだ。現実なのだからそれを合理的に説明する理屈があるはずだ。

このグラフだけで考えてもわからないのではないか?それは大いに考えられる。プロ野球選手がゴルフがうまい、だから野球とゴルフは似たスポーツかどうかと考えてもあまり意味がない。相撲取りもシングルの人がけっこういる。そういう時はもっと大きな原因(共通項)があると推論した方がいい。この場合、「運動神経がいい」というのがそれだ。

それにあたる僕の仮説は「世界経済の需給ギャップが拡大途上にあり、原油価格低下も金利低下もサプライサイドのコスト低下であり、需要と均衡するまで下がる」というものだ。いま僕らが目にしている世界的な消費者物価低下傾向が「日本化」、つまりデフレマインドの長期的醸成を世界中に蔓延させつつあるのではないかということだ。

原油価格は米国のロシアいじめだOPECのシェールガス潰しだと「犯人捜し」をやっているうちはまだかわいい。コップ半分の水が「もう」か「まだ」かのゲームになるからだ。

しかし、米国やOPEC犯人説が事実であろうがなかろうが、この状態が続くと市場はだんだんもっと恐ろしい真犯人の噂をし始める。デフレである。デフレは心理現象である。日経が「拍車」と書いた現象。下がるものは全部ネガティブに見てしまう現象が蔓延中なことを示唆していないか。「飛ぶ鳥の音に驚く」ではないのか。

これは  中国ビッグバン仮説 の延長、現在進行形であると考えると平仄が合ってしまうのは我ながら気味が悪い。これも何度も書いてきたことだが、デフレは人間の心も蝕む。社会を腐蝕させ、その土壌にはインフレしか知らない現代人が想像もできなかったような毒キノコが生える。

米国でイエレン議長が「金利を上げますよ」と警鐘をならすのは毒キノコが生える土にはなってないと見せる高等な逆心理作戦ではないか。ひょっとするとあちこちでテロや過激な民族主義が台頭しているのは毒キノコの一部ではないのか。

これが今年の株式市場を覆っている最大のリスクであることは間違いないと思うが、僕の「飛ぶ鳥の音に驚く」であることを祈りたい気持でもある。

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株式道場 -ロシア株、しましたか?-

2015 JAN 11 0:00:35 am by 東 賢太郎

12月18日のブログ、コップに水がまだ半分?-ロシアをどう見るか- 僕をバカ正直?に信じて下さってロシア株指数のETFを買ったかたはもう1-2割は儲かってるはずです。たった3週間で。

この儲け、少な目に1割としましょう。100万円で10万円の利益ですね。三大メガバンクの1年定期預金(0.025%)に100万円預けて10万円の利子をもらうには400年かかるのご存知ですか?徳川家康が預金してやっとですよ。

これを仮に月1回やれば年120万円。今回うまくいったのでそのペースでした。これは銀行定期の4800年分です。ノアの方舟の頃、日本は縄文時代です。もう思考停止ですね。銀行に全財産を置いておくなんて僕から見たら正気じゃない。

もちろん逆に全財産を株式になんてのも正気じゃない。物事はバランスです。だからこそ「自分年金」を作ることをおすすめしています。まあロシア株は遊びでけっこう。でも年金は早いうちから真面目に作った方が老後が安定します。

「人の行く裏に道あり花の山」という相場の格言があって、僕はその信奉者です。他人と同じことをして儲かるはずがないでしょう?だって当たり前です、多数派が勝ち続けたら地球上は金持ちだらけにならないとおかしい。なってますか?

あの日、世の中の多数派はルーブルの急落にびびって株を売りまくってたんです。そういう時がチャンスです。あれからロシア問題が片付いたわけでもぜんぜんない、原油も戻ったわけじゃない、でも株はちょっと戻るんです。

少数派になるのはなかなか難しいですね。なにせこわい。一人で赤信号わたるんですから。だからお薦めの訓練がありますよ。簡単です。ことごとく多数派に難癖をつけてみてください。「私はそうは思わない」とつぶやく癖をつけることです。

本当に口にしなくていいですよ、嫌われますからね。心の中でだけ。理由は後で考えるけどとにかく反対!そうすると「なんでそう思わないの?」と自問する癖もつきます。これがいいんです。だんだん自分だけのオピニオンができてきます。

クラスはみんな巨人ファンだ。自分だけ広島ファン。これ小学校2年のときの僕の世界です。どうしてオレ広島好きなんだっけ?理由がありますね。それがオピニオンです。誰に押しつけられたわけでもない、自分で考えてるうちに自然にそうなっちゃったでいい。

こういう自分で考えたオピニオンというのはけっこう強いんです。他人に何いわれようと関係ないですし、なにか間違いでも納得ができます。他人に付和雷同してハズレというのが一番いけません。何も学びませんから。

ロシアを世界中が売ってる。みんな巨人ファン状態ですね。だからあえてアンチ巨人をおすすめしました。「相場は実体より必ず行き過ぎる」、これは鉄則。「みんな」が勝ち続けることはない、これも鉄則。「深追い禁止」、これも鉄則。

そういう買い方を英語でbuy on weaknessと呼びます。そういう買い方しかしない人を逆張り屋(contrarian)なんて呼んだりもします。自分年金はcontrarianで作るべきです。買う銘柄はあらかじめ目をつけておく。これが大事。あとは機を待つ。それでOKです。

 

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2015年の抱負

2015 JAN 2 21:21:00 pm by 東 賢太郎

正月から仕事の話もなんですが、今年の抱負をつらつら考えるとどうしてもそこからすべてが始まります。

本業の事を少しだけ書きますと、日経平均株価は昨年1年間で7.1%上昇したのに対して当社ソナー・アドバイザーズの助言するファンドは17.4%上昇と2年連続の圧勝で、おかげさまで海外の保険会社が日本株運用のアドバイザリー契約を結ぶ検討に入って下さっております。

当社のお客様はかように皆様ご自身が機関投資家であったり欧州の投資ファンドの経営者であるなど、正真正銘のプロフェッショナルです。だから僕らはプロに指南させていただくプロということになります。

プロ目線の評価ですからこうして成績さえ良ければ世界に需要はあるし相応の報酬はいただけますが、逆に成績不振ならば1年で解雇です。まさにプロ野球選手と一緒で日々これ戦いであり盆暮れ正月も休日もありません。

大変ですねといわれますが、僕のように株を推理ゲームと考える人間にとってはそうでもありません。ブラームスを聴いたり猫と遊んだりするのと同じで「これを楽しむ者」ですから、朝も昼も晩も仕事をしているという感覚はありません。

投資というのは2タイプあって、日々相場を見て売買を繰り返すトレーダー型と僕のような推理型です。これは天文ファンでいえば流星や月食を観測したいタイプとブラックホールなどを理屈で考えたいタイプに当たり、僕は明らかに後者です。

ただ、理屈だけで良い成績が残せるわけではなく、考える素材は会社として日々アップデートしています。だから毎日3社ほど、年間で約700社を訪問してヒアリングし、投資に値するかどうかの詳細な情報収集をしています。情報端末に頼らずこんなに足で情報を集める人は日本には現在2人しかいませんが、そのひとりです。

今年は運用助言だけでなく、もうすこし企業経営に関わる部分で助言をすることでその会社の企業価値を向上させることに取り組みたいと考えています。簡単にいえば株価が上がるようなご提案、サポートをするということです。これは法的にも配慮が必要ですし、僕の経験の集大成になる仕事になると思います。

SMCですが、去年の元旦に僕のブログアクセスが8万になったのが今年は25万を超えました。他のメンバーへのアクセスも徐々に増えており、おかげさまで順調です。なるべく広い層に楽しんでいただけるように努めてまいります。

僕の記事ですが、日経によるとご自分で株式投資をする人が増えているそうですし、もう少しその関連を増やそうと思います。それを参考に投資の実力を磨いていただければ本望です。グラウンドでプレーしている選手の生の声をお届けしますので、TVの経済評論家の机上の空論とは一味ちがうものになるでしょう。

 

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コップに水がまだ半分?-ロシアをどう見るか-

2014 DEC 18 0:00:36 am by 東 賢太郎

コップに半分の水を「もう半分しかない」と見るか「まだ半分もある」と見るか。人の性格が出ます。

以前書いたVIX指数(恐怖指数)が12月頭に12ぐらいだったのが今日(17日)には23まで急騰です。何に脅えてるか?もちろんロシア情勢です。

ムーディーズのレポートによるとロシアはGDPの4分の1をエネルギー産業に依存しています。原油価格が1バレル=60ドルを割り込んでいるなかで国や企業の負債返済能力に危機感が出ており、ロシア中央銀行は16日に16年で最大規模の利上げを実施して政策金利を10.5%から17%に引き上げましたが通貨安に歯止がかかりません。ルーブルは年初来対ドルで52%下落しています。

1998年にほんの数日で通貨が崩壊し、短期国債のデフォルト(債務不履行)宣言に追い込まれたロシア危機では米国のヘッジファンドLTCMが経営破綻して清算されました。LTCMはオプションの価格モデルでノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズが経営陣に加わっており、ロシア国債のデフォルト確率は100万年に3回だと計算していました。コップに「水がまだ半分もある」と見誤ったわけで、この倒産劇は世界の金融マンを震撼させたのです。

「100万年に3回のことだって起きることがある」と見るか、「だったら今回は100万年に2回の確率だ」と見るか。

エネルギー専門の米著名エコノミストは15日、原油の国際価格は来年末までに、1バレル=40ドルに下落する可能性があると指摘しているそうです。もしそうなら今からさらに30%下落する。そうなると100万年に2回目が起きるかもしれない。でも今回は外貨準備高が4000億ドルはあり、そこが違う。

皆さんはどっちだと思いますか?

国債が支払えなくても国が潰れるとは限りません。現に今もロシアはあるのです。ということはルーブルにしても株式にしても、どこかで下げ止まるのです(国が潰れたって会社は存続できます)。だからゼロにはならないしどこかで底を打ちます。それがいくらか、いつなのか?誰もわかりません。だから素人の方が的中する可能性だってあります。僕もそのひとりの「まだ半分」派です。底値で買えば?かなりのリターンは取れるような気がします。

原油価格の下落は日米など消費国の経済にはプラスです。日経にありますが円相場118円、ドバイ原油がバレル65ドルだと名目GDPを1.8%押し上げる効果があり、8%への消費増税によるマイナスを相殺できるそうです。産油国は入るお金が減りますがほとんどが途上国であるそちらに入るより日米に入った方が申しわけないけど世界経済にプラスの増幅効果は大きいでしょう。だいたい相場が下げたり荒れたりするとプレスはそれ見たことかと大騒ぎする傾向があります。上げてもおとなしいのに。そういう習性は冷静に大所からご覧になるのが得策です。

ETFをご存じでしょうか。為替や金や株価指数などに連動する上場投資信託です。ネット証券で100株単位で1万円以下で買えるものもあります。株は金持ちしか買えないというのは真っ赤な嘘、学生がバイトしてでも買えますしその気になるかならないかだけです。投資回収率を考えれば、僕なら年末ジャンボ宝くじを買うお金があるならETFを買います。大外れの最悪シナリオでロシア発世界大恐慌になったってゼロにはなりませんからね。新年の運だめしにいいかもしれません。

 

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