①私の好きなビートルズ・ベスト3 (東)
2012 NOV 2 15:15:48 pm by 東 賢太郎
3つ選ぶということはそれ以外を全部捨てるという感じになって、とても苦しみます。アルバムで言えば①アビーロード②サージャントペッパーズ③は複数横並び、となります。
①は曲を単独で挙げるのが難しいほど全部が芸術的に一体化しており、すでに完全にクラシック音楽の「交響詩」というジャンルの一角を成しております。僕の趣味ではリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」などよりずっと上質の音楽です。ウエストサイド・ストーリーの作曲家で指揮者でもあったレナード・バーンスタインは「ビートルズはシューベルトの歌曲よりいいね」と言ったそうです。どの曲かは知りませんが、僕も同感です。
②は①ほどの一体感がまだありませんが完成度の高さは同等に驚異的で、やはりクラシック音楽として人類史に永遠に残る芸術作品です。大げさに聞こえるでしょうが、モーツァルトだって当時としてはポップスの作曲家だったわけです。クラシックは綿々とオーケストラという媒体にこだわっていますが、ビートルズはエレキ・ボーカルという別の媒体にクラシックの楽器も取り入れ、このアルバムのようにライブで再現できない録音技法まで駆使した新しい媒体を生み出しました。これが芸術でなくて何なのでしょう。
さて、以上はアルバムですが、曲でいいますと、
第1位・ I Am the Walrus
第2位・ Help!
第3位・ If I Fell
さんざん悩んだ挙句ですが。I Am the Walrus これ好きです。説明不能。天才とはこういうもんです。モーツァルトに聴かせたい曲の筆頭。 Help! 出だしからすごい。ベンチャーズの Caravan と同じアレグロ・モルトの傑作。If I Fell この不可解なコード進行は衝撃。それが様になってしまうのは初期から。これも天才。
Categories:______ビートルズ, クラシック音楽
中島 龍之
11/2/2012 | 8:17 PM Permalink
アルバムのベスト3もありましたね。私のアルバムベスト3は、①「Meet The Beatles」②「アビー・ロード」③「ラバー・ソウル」です。私の場合、ベスト盤が当たり前の時代でしたので、ヒット曲の多い方を選んでしまいました。それを除くと、実質的なアルバムとしては「アビー・ロード」でしょうか。「サージェント・ペッパーズ」は全体アルバムとしてクラッシク音楽的で、私のように、3分音楽愛好家には今一つ理解困難です。私もクラッシク始めました(冷やし中華始めました、みたいなノリでクラッシクファンの方ごめんなさい)ので、「サージェント・ペッパーズ」が分かる日も来るでしょう。東さんのシングルベストの、「I Am the Walrus」は私も好きで、いつか歌いたい曲です。ジョンのいやらしい(この表現をご理解ください)歌い方がとても好きです。「HELP」はテンポを変えれば、ジャズのスタンダードのような感じがします。ジャズ・シンガーも歌っていたと記憶します。「If I Fell」も映画ではジョンが格好良く歌い始めるシーンがありました。彼女に歌うといい曲ですね。(ジョンならば、と付け加えておきます)コード進行は、私は素通りでしたが、ボーカルのメロディーとコードが違和感があったのですがそのままにしていたのでもう一度見てみます。東さんのコメントにはいつも勉強させてもらってありがとうございます。
東 賢太郎
11/3/2012 | 11:05 AM Permalink
I Am the Walrusは唾が飛びそうなパピプペポのリズムと、エイトビートと微妙にズレて叩いているリンゴのドラムスが「ポリリズム」になっています。これがなければこの曲は駄作になった可能性があります。リンゴのドラムスというのは凄い隠し味になっていて、例えばHello, Goodbyeの2発だけ後打ちするタムのリズムと音色などぞくぞくするほど素晴らしい。よくぞこれを叩いてくれたと頭が下がります。
和声もI Am the Walrusは面白いです。クラシック的には4度の積み重ね、主調のイ長調(A=ラ)から上に4度ずつ4つレ(D)、ソ(G)、ド(C)、ファ(F)、下に2つミ(E)、シ(B)の6つでできています。バスだけもう4度下のファ#が出ますが、A(ラ・ド#・ミ)の下でラ、ソ、ファ#、ファと下がってくるクリシェはLucy in the skyと調もプログレッションもまったく同じです(ジョンの好みでしょう。Lucyは上が5つ目のB♭まで行きますが)。
クラシックにこういう和声構造の音楽は存在しません。というよりも、ギターというポリフォニー、半音階に弱い楽器だけで作曲、演奏するロックという形式の制約が作った世界でしょう(ピアノというそれに強い楽器が入ったジャズもポリフォニーにはあまり向かっていませんが、ピアノでしか演奏できない密集和音を含む和声構造が非常に複雑に、非クラシック的に進化しています)。このギター的な和声構造の最もシンプルな部類がベンチャーズ、最も複雑な部類がビートルズと言って大きくは間違っていないと思います。
「サージェント・ペッパーズ」より僕は「アビーロード」がクラシック的と感じますが、中島さんに「サージェント・ペッパーズ」がクラシック的と聴こえているのはこのアルバムあたりからギター的和声のカバレッジ領域が上記のようにグーンと拡大していることと関係があるかもしれませんね。
中島さんが「クラシック始められる」のはとても素敵でカッコいいですね。僕も長年さまよっているだけのとてつもなく深い森ですが、そのチャレンジ精神が大好きなので応援させてください。「サージェント・ペッパーズ」がいかに凄いアルバムかはいずれ書かせていただきます。
中島 龍之
11/5/2012 | 10:57 AM Permalink
クラッシクの森には近寄らないようにしていたのですが、「ハイド・パイパー」の笛に随いて行く子供のように、森に足を踏み入れようとしているところです。果たして何が待っているのやら。「サージェント・ペッパーズ」の面白さも楽しみにしています。