千家国麿様と高円宮典子女王とのご婚約に思ふ -今月のテーマ 出雲ー
2014 MAY 28 23:23:52 pm by 東 賢太郎
「2000年を超える時を経て、今こうして今日という日を迎えたということに深いご縁を感じております」
2014年(平成26年)5月27日、千家 国麿様と高円宮典子女王とのご婚約が発表されました。千家国麿様は第84代出雲国造で出雲大社宮司であられる千家尊祐様のご子息です。不肖ながら千家尊祐宮司にお会いさせていただいたことは、拙文にしたためさせていただきました。
千家家は代々出雲国造を務めており、古事記、日本書紀によると、天照大神、天穂日命、建比良鳥命の家系であると伝えられています。この日本国の歴史に刻まれるご婚約のニュースを知ったのは、たまたま、まさにその5月27日に会議を予定されていた某社様の社長室においてでした。このご縁には大変驚きました。その某社様は拙文「奥出雲訪問記」にある畏れ多い体験を積ませていただいた会社であり、「奥出雲発のグローバルな会社」をつくるという発想を頂戴し、5月27日はそれを具体化する提案を実行させていただこうという日だったからです。
そしてその日に拙案をご快諾いただいたことを重く受けとめています。出雲発ということは真の日本発という意味であり、16年日本を離れて生活した日本人として是が非でも成功させ、ご信頼にお応えしたいと思っております。
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某企業グループ総帥との会談
2014 MAY 24 20:20:44 pm by 東 賢太郎
昨日はもう一つ、某企業グループ総帥である会長と1時間ほど話しました。書ける話だけ書きます。
まずは1兆円ぐらい資産のある会社買収の話。まだわからないが有力候補であり成立すればバフェットみたいなことができるとのこと。これはすごい、是非やって欲しい。いやはや、いつもながらスケールが大きい方です。それから先日のオバマ大統領歴訪のおりに1対5で食事をされ、「米国でシェールガス田開発に投資する」といったら大変喜んで「オープニングセレモニーに出よう」とまで言われたそうです。さらに「どこに売るのか?」と聞かれ「中国です」と答えると「それがベストだ!」とますます喜んだそうです。会長にどうしてシェールガスにそこまで自信を持ったかうかがいました。
「あるテキサスの候補地を視察したら、人工の湖だったんだ。対岸まで何キロもある海みたいな。何だと思ったらその湖底に塩の層があって、そこに地下何キロという天然の巨大な空洞ができている。掘ったシェールガスはその空洞に入れておいて必要な分量だけ水を注入すればボコボコと出てくる。だからタンクが不要で貯蔵コストはゼロで事故の心配もない。あれを見て、こりゃあ絶対にかなわないと覚悟を決めたんだよ。」
エネルギーを制する者が世界を制します。オバマ曰くシェールガスは7ドルまでならぎりぎりペイするそうで、中国は埋蔵量はあるが深すぎてコストが高く7ドルは無理だ、だから巨大な市場になるのでどんどん売りつけたい。欧州はポーランドで掘るようにしてロシアのガスが売れなくしたい(ウクライナ報復したい)。これはアメリカの国家機密だったのかな?まあ知る人ぞ知るだろうしいいでしょう。
ところが、その話をどの日本の大企業トップにしても「すごいですなあ」で終わりだそうです。世界一高い電気代を払わされているのにお気楽なもんです。ありゃあだめだねとのこと。会長によると石油の時代はもう完全に終わっていてアメリカが数年後にはガスで世界のエネルギー大国になるのは確実、もはやネックはロッキー山脈をどう越すかだけだそうです。そこまで肌で分かっている経営者が何人いるか・・・。
危機感があるのは日本の化学会社、プラント会社。単独では生き残りすらかかる話なので経営の舵を大きく切ってグローバルコンソーシアムという方向があり得ると強調されました。会長の会社は本業は業界こそ違いますが東芝より売り上げが少し大きい規模で、これまでの実績からリーダー格になるでしょう。グループの建設会社の社名に engineering を加えたそうです。
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株式道場-僕の株式の見方について-
2014 MAY 23 23:23:11 pm by 東 賢太郎
今日は某証券会社の売れっ子ストラテジストと面談しました。我々はプロの運用会社相手に銘柄指南をしてお金をいただく仕事なのでこういう情報収集が大事です。
僕の投資哲学は簡単で、世の中に良いことをやっているなら買い、その逆は売り。それだけです。それは会社の株価ではなく「本質」を見るということです。どこかの大学の「投資サークル」首謀者が株価つり上げで逮捕されました。オレオレ詐欺、食品偽装、メールなりすまし犯人と同じレベルの犯罪者で、こんな連中が「投資」などと看板を掲げること自体許しがたい話です。また、上場企業の経営者が投資をその程度の下世話なものだと勘違いして、証券会社のいいなりになって増資などしているケースもあります。そんな会社の株はたたき売られて当然なのです。
市場はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や簡保が安倍政権の意向で株の買い増しをするという噂でもちきりです。7-9月のGDPが良くないと消費税10%にできないから株を上げたい、だからPKOだというのです。ふざけるな馬鹿者としか言いようがない。それなら国を挙げての株価つり上げで首相も投資サークルの学生といっしょに逮捕すべきです。そんな理由で株を買って大事な年金に損をさせたらAIJ事件並みでこれも逮捕です。それが本当かどうかはともかくそんな噂をまことしやかにささやかれてしまう。悲しいことです。投資に対してこれほど無知蒙昧な先進国も類例がなく、そんな国の証券市場は永遠に一流になりません。
僕がいま投資推奨している銘柄は15ほどです。当社のアナリストは一人で年間約700社を訪問して経営者から直接の情報ヒアリングをしています。電話ではなく訪問、汗をかいて足で仕入れる情報です。一人での訪問数はたぶん日本一(平均で一日3.5社)で、一人だから単一のモノサシで業種をまたいだ700社を比べられるというのが非常に意味があります。そこからの15社です。それを書くことはできませんが、どれも、世の中に良いことをやっているのに株価評価が低い会社です。
例えばこの15社に投資をします。どうやったら世界の投資家の評価が高まるか、それは僕自身が野村、みずほで30年やってますからだいたいわかります。それを経営陣にご提案して、ご納得いただいた上で時間をかけていっしょに進めます。もちろん失敗もありますがうまくいけば投資家のご評価が得られ、株は買われるから上がるでしょう。経営陣はもちろん既存株主も従業員も、全員がウイン・ウインになります。
そういう実のある経営改革のことを、投資家の側面からはバリューアップといいます。仮にこの15社のうち何社かのビジネスを結びつけると相互にウイン・ウインとなるなら、15全体の相乗効果が出てきます。A社の顧客サービスにB社の商品がぴったりなら、その間を取り持ってあげれば両者の売り上げが増えて株が上がります。そういう組み合わせがあればあるほど効果は大きく、15全体の投資リターンは増加します。
これは一例ですが、こういう「価値創造」こそを証券市場は評価します。PKOがありそうだから株を買おうというのはバクチ(speculation)であって投資(investment)とは程遠いもの、似て非なるものなのです。バクチをさそうセールストークを言う方も悪人ですがそれにひっかかるほうも情けないのであって、投資教育の欠落(=教育する側がわかっていない)という由々しき問題が背景にあります。
日本の上場企業は東証だけで3,426あります(5月22日現在)。時価総額は4月末で430兆円だから平均1256億円ですが、1兆円以上は92社しかなく、正確には調べてませんが全体の半分前後が300億円未満と思われます。大手の証券会社はそういうレベルの会社は商売にならないのでアナリストレポートを書きませんし、IR(企業の情報開示)の手伝いもしません。だから良い会社なのに投資家に情報が行かない、だから買われないので株が上がらないのです。つまり株が安すぎる、逆にいえば投資価値が大いにあるのです。
なぜ僕らが汗をかいて700社も訪問するかというと、そういう会社が日本には700ぐらいあるからです。投資というのは売ったり買ったりの派手なものでも天才ディーラーの直感によるものでもなく、ましてや株価つり上げで人を騙して売り抜けることでもありません。地味なコツコツ型の刑事のように泥くさく丹念に情報を集めて当たり前に吟味すること、つまり質のいい情報と細部へのこだわりの成果なのです。
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ファンファーレは鳴り地震は気づかず
2014 MAY 6 22:22:39 pm by 東 賢太郎
みずほ証券にお世話になっていたころです。ある案件検討会議で「証券マンはファンファーレから入るけど我々銀行員は葬送行進曲から入るんですよ」と言われ、これは至言であると納得したものです。ファンファーレとは「これが成功したらこんなにすごいぞ」ということで、葬送行進曲とは「これが失敗したらこんなにひどいぞ」ということです。
さて自分は証券マンですから基本的にはファンファーレ派であることはいうまでもありません。ただほとんどの証券マンとは違うことがあります。成功⇒利益は当たり前のことですから宣言するまでもありません。本当に成功するか?あらゆる悪いことまでじっくり考えて、それでも腑に落ちるなら行くぞと全軍にトランペットを吹くというところでしょう。
サラリーマンの身分だとそんなにゆっくりはできませんし即決を迫られたことも多々あります。しかし今はそれができます。それも、僕しかできない案件しか引受けないので競争がありません。では腑に落ちるというのはどういうことか?100%自分が理解して自分で実行できるということです。1%でも他人の理解まかせの部分があるとだめです。そこまで自信を持てなければやらないほうがいいということです。
これは完全主義とはちがいます。それがビジネスの長として当たり前であり、いわばオーケストラの指揮者なのだからスコアに1音でも理解できないところがあるなど論外なのです。現在は、某社よりお引受けした仕事の構想を毎日具体化している状態です。理解だけでなく自分でスコアを書いて作曲しているということです。これは自分が書きたかった曲であり、自信作になりつつあるという手ごたえも感じています。
そうなのですが、今回だけは腑に落とすのに半年以上もかかりました。というのは、相手が上場企業だから株主責任もあるという側面、来年60という自分の年齢、体力、意欲など、そして現在走っている業務への責任をどう果たすのか、それをソナー出資者(株主)へどう説明するかなど、すでにかなりの仕事をいただいている立場として、これらは非常に重い判断を要します。僕がソナーの事業主で過半数株主である以上、決めるのは僕一人であり、誰に相談しても仕方ありません。
そういう中で、5月4日、お休みの日でしたがご本社にて先方様の社長、副社長に「できる」という具体的プランをご説明申し上げました。それが書いた全曲のスコアです。葬送行進曲から入る人には絶対に書けない明るい曲です。それは半年練ってファンファーレが高らかに鳴っているものです。できると思わなければ鳴らないし、そうでなければやってもうまくいかないのです。このスコアは他の会社でも演奏できるでしょうが、当社ほど一緒にファンファーレを鳴らして下さる会社はないでしょう。だから当社だけがうまくいくはずです。
ということで今年は結局GW連休もなく、ストレスだけは立派にたまっています。疲れ果てて熟睡しており、先日の震度4の地震は家族に言われるまで知りませんでした。そんな具合なのですが、それでも僕はこういう前向きの生産的な苦労が大好きです。終わってしまった大成功より、どうなるかわからない大仕事を前に緊張している方がいいですね。この緊張を長くキープして、気持ちよくスタートしたいという思いでいっぱいです。
ソナーとは黄金であった
2014 MAR 27 12:12:28 pm by 東 賢太郎
先週、ちょっと不思議なことがありました。インド市場について勉強しようと著名なインド経済関係著書のある専門家Sさんにご来社いただいたおり、当社のロゴを見たSさんが
「東さん、どうして社名をソナーにしたんですか?」
と尋ねられました。よくきかれることなので「投資家のために世界の宝物をみつける探知機という意味です」といつもどおりにお答えすると、意外な答えが返ってきたのです。
「そうですか。インドの公用語のヒンディー語でソナーはゴールド、黄金です。それでかと思いましたが。」
それは知りませんでした。これだけならああそうですかで済むのですが、どきりとしたのは当社は目下、ゴールドに深く関わるプロジェクトを企画中であるからです。もちろん彼はそれを知りません。
僕が信心深くも迷信深くもないことは過去のブログからご推察いただけると思いますが、こういうことになってくるとその僕ですら何か逆らえぬ力が働いているという感じがしてしまいます。
話はそれますが、そういえばヨーロッパ時代にゴルフに凝っていた頃、「黄金バット」と自分で命名した、おそらく恥ずかしくて誰も買わないであろうほどにヘッドが黄金色にピカピカと光り輝く本間のウッド3本で半端でなく荒稼ぎして、仲間からあれはもう見たくないと言われました。それから香港に赴任して会社が僕の風水を見ると、僕のラッキーカラーは金だったのです。またまたそういえば幼稚園の時、クレヨンが金ばかり減ってしまいちゃんと塗ろうねと先生におこられた記憶まであり、偏愛していたようです。要は僕の色覚だと皆さんのように特別にピカピカでもなく、渋くていい色だと思いますが。
ついでに、ヒンドゥー語のソナーは美しい女性の意味もあるそうです。
嬉しいことが2つ
2014 MAR 25 0:00:44 am by 東 賢太郎
昨日はいい日だったようで嬉しいことが2つ。
まず、僕のブログを読んで会いたいと言って会社に来てくれた24歳のK君のSMC入会が決まったこと。西室と三人で食事をして文句なくそうなりました。これが2回目でしたが、まずは迷わず行動してみようという度胸、そうしてそれが闇雲ではなくやりたいことがはっきりしているのがいいと二人とも無言で思った次第です。プロフィールはメンバーリストに載った時点でご紹介します。SMCが若者に興味を持っていただけたことはありがたく思いますし、K君がここを舞台に飛躍できるように支援します。
もうひとつはソナー・アドバイザーズの方ですが、昨年以来アドバイスさせていただいているお客様(大阪の上場企業)が海外で初受注に成功したとの喜びの一報が夜にメールで届いたことです。先方様にとっては将来に向けて非常に意味のある受注であり、ここに来るまでの現地の担当の方のご苦労もよく承知しているので我が事のようにうれしいです。起業してよかったと思えること、それはこうしてお客様が成功して喜んでくださることに尽きます。
奥出雲訪問記-その2-
2014 MAR 9 0:00:41 am by 東 賢太郎
羽田から1時間半、奥出雲(おくいずも)は島根県。といっても出雲大社とやまたのおろちぐらいしか知らなかったわけです。
まず溝口島根県知事との45分余のご面談にはじまりました。通常の面会は15分ということで、異例のお時間を頂戴したことに感謝です。その晩は奥出雲町長および島根県議会議員様とのディナーとなりました。そして足立美術館、奥出雲多根自然博物館、長者の湯、絲原記念館、奥出雲たたらと刀剣館、稲田姫神社、古い駅舎やダムの訪問、見学、出雲大社参拝と2日にしては相当なメニューでした。全部が館長さんや専門家の方のガイド付きでありました。
まずは足立美術館の額縁のような日本庭園から。名園と日本画の調和がこの美術館の基本方針で、アメリカの「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」誌で11年連続日本一に認定され、フランスのミシュラン・ガイドで三ツ星を獲得しています。日本画では質量ともに日本一の横山大観コレクションが出雲にあるのが驚きです。
創立者の足立全康氏(写真)は明治32年当地に生まれ、14歳で裸一貫で国を出て苦労を重
ねた末に大阪で繊維、不動産業で成功した人物です。立身出世物語は各地にありますが、大観に惚れこんでここまで集めてしまう執念はすごい。それに感動しました。庭園の景観の細部へのこだわりも半端ではなく全館が彼の作品という風情です。こういう気質というか、いい意味でのねちっこさは出雲の方の持ち味かもしれません。
私事で恐縮ですが自分の先祖も能登、伊那の片田舎から東京、横浜に出てきた事業家であり、足立氏の執念を見るとどこか体の奥底で共感を覚えます。「名作との出会いは人と同じで、縁だね。絵を蒐(あつ)めるのは金じゃない、値段じゃない。いいものが出たら目をつむって掴(つか)んでしまえということだ。まったくあの絵は惜しいことをした。いまだに夜中にぱっと目が覚めては想い出し、眠れん時があるよ。」と口角泡を飛ばして語る姿を思い出すと・・・・と説明書にあります。お金より縁を大事にして成功されたんでしょう。
松江藩の5鉄師のひとりであった「たたら吹き製鉄」の名家である絲原家については前回書きました。建坪約350坪、床面積約500坪、部屋数約40室を誇る大邸宅です。竹島が日本領と明記された最古の地図は伊能忠敬が測量する70年前の制作であるため北海道は欠いていますが、本州以南の精密さは驚くばかりでした。
絲原家のご当主は夜の会食をご一緒して下さった県会議員である徳康氏で、ここはご次男が近衞 文麿公が入ったという奥の間にご案内下さいました。なお、この絲原記念館は今月22,23日に放映されるTBSのドラマ「リーダーズ」のロケに使われたそうです。奥の間は洋間の執務室という設定で出てくるそうで、和室ではここに宮沢りえが座ったんですよなどと細かく教えていただきました。
「絲原記念館」の鐡(てつ)の字の解説もその意味で実に興味深いものです。こういう数字を見るとすぐ反応してしまうのは商人の血筋ということでしょうか。
松前藩の系図です。徳川の重臣であり、最期まで幕府方で戦ったことがわかります。ご存知かもしれませんが、県名と県庁所在地名が一致しないのは幕府方です。島根県であり松江市であるというのは、そういうことなのです。
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奥出雲訪問記
2014 MAR 7 1:01:40 am by 東 賢太郎
「ここは かめだけ うさぎはいない。ゆっくり走ってみませんか!」
えっ? 頭のほうがまず一時停止しました。今回は島根県の出雲へ1泊2日で出張しましたが、初日に車で奥出雲へ向かう途中に見た、仁多郡奥出雲町亀嵩(かめだけ)の道路わきの看板の文句です。このユーモア精神にまず心が和みます。
このあとでだんだんとわかってきたのですが、このやわらかくて優しいおもてなしの心と真理探究への妥協なきこだわり精神。一見あい反するものが同居してほどよくバランスしたものこそが出雲でお会いした多くの方々から肌で感じさせていただいた魅力ではないかという感じがしております。
松本清張の「砂の器」はこの亀嵩(かめだけ)が舞台だったことをご記憶の方も多いでしょう。すでにそこそこ有名ですし、もうすこし車が進むと清張自筆の立派な記念碑もあるのです。普通の市町村なら「清張の里!」「砂の器の舞台へようこそ!」という看板がまっさきに立って、清張まんじゅうでも売ることを考えるでしょう。そこに 「うさぎはいない」 とくるこのセンス。とてもやわらかいのですが、土地の歴史への誇りとこだわり、そして「かめだけ」という地名を瞬時に覚えさせる合理性を秘めているように思います。
今回はここを発祥の地とされる著名企業の社長様に同行させていただく栄誉にあずかりました。たったの2日間だったとは思えないほどのたくさんの体験と勉強をさせていただき、会社様のすばらしいスケジューリングには感謝あるのみです。外国ばかり知っていても日本についてはいかに無知であるか、それも出雲のような要所をというのがいかに無恥であるかを思い知りました。今回はまずその「思い」のほうを綴ることから始めたいと思います。
この写真は2日目の朝食の前です。「今日はだいぶもやがかかっていますね」というと、社長から「いや、いつもこんなものです」というお言葉。そうか、ここは雲出ずる国だったかと納得です。
まずは、2日間がそろそろ終わりに近づいたころ、同行された会計士のA先生がつぶやかれた言葉から始めましょう。
「出雲ってこれだけたくさんの魅力があるのに、なんかもったいないですね・・・」
たしかに。出雲の魅力オンパレードの2日間だったのに僕も最後の最後になって「そういえば出雲の阿国も出雲でしたね」なんて間抜けなことをやっと質問させていただいた始末です。阿国さんですらパレードの順番では前の方には出てこない。これでは清張さんがうさぎの後になってしまうのも仕方ないですね。観光資源という言葉は即物的であまり好感が持てませんが、もしそう呼ばせていただけるなら「有り余るほど豊富」というのが出雲、奥出雲だと思います。もっと多くの人が世界中からやってくる、出雲発のモノや文化やサービスが世界に発信される。そうなって不思議でないのに・・・そういう意味がA先生のことばにはこもっているのです。
どうしてそうなっているのだろうと考えました。観光資源ということでは筆頭になるのが出雲大社でしょう。昨年は遷宮行事のハイライトイヤーで多くの観光客が訪れ、今でも羽田からのフライトは満席でした。我々は社務所の奥にて第84代出雲國造で出雲大社宮司である千家尊祐氏と出雲大社権力宮司である千家隆比古氏にお目にかかって歓談の栄を賜わり、拝殿参拝までさせていただきました。良くは存じませんが、皇室公家並みの待遇かもしれません。それは社長様も初めてということで、そのような場にご一緒させていただいたのは、誠にありがたいことです。
そこで伺った話によると、遷宮は20年に一度の伊勢、60年に一度の出雲がそれぞれの事情で年がずれ、偶然にシンクロするようになったそうです。伊勢が総建てかえ、出雲は部分建てかえなど様々な違いはあるのですが、経費予算は伊勢神宮が550億円に対しこちらは95億円というのはそれにしてもずいぶんな差です。「国を譲ったほうですから」と社長はいわれましたが、そのようなことが積もり積もってここの土地の根強いプライドといいますか、普通の土地の郷土愛とは次元の違った深くて強い思いにつながっているような気がいたします。歴史や旧跡の安易安直な宣伝はしないという精神は先生のご指摘のようにもったいないことにもなっているわけですが、それはそれでここの独特の文化、気質、個性を育んできたのかもしれません。
お金や時間というものには価値があるというアメリカ的教育を受けてくると忘れてしまう価値というものがここにはあるということが今回どこか心に残像として残りました。お金で買えないものを大切にする、文化とはそういうものであるという大事なことを教わったと言ってもいいでしょう。それは奥出雲の絲原(いとはら)記念館という、「たたら吹き製鉄」を松江藩から公認された5鉄師のひとりであった絲原家を訪問したときにも感じたものです。江戸時代からの旧家の所有する有形無形の文化遺産の重みにはただただ圧倒されるばかりで、お金というものにいったい何の価値があるのか、金融というお金相手の職業に長らく従事してきた僕の価値観に転換をさし迫るほどの強いインパクトがありました。
それは家屋の立派さ、古文書や骨董の類が豊富という物質的なものだけから受けたのではありません。もっと質的なものも含めてです。たとえば、世界最高峰の刃物である日本刀は「玉鋼」というプレミア級のはがねからしか生まれません。その玉鋼を鉄鉱石ではなく砂鉄という世界でもユニークな原料から鋳出す技術、それはまぎれもなくメード・イン・ジャパンの技術でありそれを生んだのが「たたら」なのです。
製鉄の原理や技術そのものは輸入されたものだろうと思われるでしょう。たしかに製鉄技術は紀元前1400年ごろヒッタイト(現在のトルコ)に発してタタールを経由して入り「たたら」になったそうです。しかし、ここが大事なところですが、輸入して磨きをかけて世界最高のモノを作ってしまうという日本のお家芸はコピーや真似ではありません。なぜならそれを逆にご本家は真似できないからです。それは「新たな付加価値の創造」に他ならず、我が国は「技術を進化させる才能」があるということであります。
その付加価値を生んでいるのは二流のもので満足しない目線と、そこへ至る徹底した合理主義です。それが出雲にはあると感じます。しかも、たたらの5鉄師はもともと公家でも武家でもなく農家であるという事実も意味深長であり、日本の技術力の底辺の広さを覚えます。それは学校や職人教育制度から生まれたものではなく、日本人のそれぞれが生活に根ざした原点で当たり前のようにもっている強みですから、それこそコピーと真似で食っている他国に一朝一夕に凌駕される心配はないと思いました。
また、奥出雲では鉄鉱石ではなく崩れやすい花崗岩から砂鉄を得るそうですが、その鉄分がどこから来たかということをずっと考えておりました。どうして「たたら」がここに出来たんだろうという素朴な疑問です。鉄(Fe)は地球では生成せず超新星爆発に由来する物質です。まず第一に、この疑問は「奥出雲たたらと刀剣館」で「ヒッタイトが隕石から鉄を鋳出した」というご説明を受けてすっきりしました。
第二に、「奥出雲多根自然博物館」の館長さんから「山の上に神が降りた神話があります」というお話がありました。「それは隕石だったのではないですか」と尋ねると即座に「そうかもしれません」とお答えいただき、さらにすっきりしました。僕の質問はある意味で神話を冒涜するものかもしれず、科学的にも荒唐無稽と取られて仕方ないものです。館長のお答えは東京の博物館ではあまり期待できないものでしょう。Feの由来の科学的な話の脈絡ではなかったものであるだけに、大変に実証的な精神を感じて大いに共感したのです。
その「奥出雲多根自然博物館」は恐竜や生物の化石と標本、鉱物など驚くべき点数のコレクションを観ることができる有数の場所です。日本の最古のストーリーである出雲神話からさらに時間をさかのぼって、地球の生成期、さらには137億年前の宇宙誕生までを俯瞰することができます。こんな雄大な発想も東京人からは出そうにありません。子供に大人気だそうですが、科学少年であった僕のようなオジサンでも一日いて飽きることはなさそうです。
こういう時空でものを考えれば大層スケールの大きなことができる気がいたします。出雲という地は現実にスケールも大きかったという物的証拠があります。例えば出雲大社の初期の遺構から、神殿の高さは地上48mもあったことがわかっています。古代の世界七不思議にあげられるアレクサンドリアのファロス灯台を思わせるほどの世界でも異例の木造巨大建造物であり、国作り神話がどこまで事実を反映していようがいまいが、それを出雲の人がそこに築いたということは事実のようであります。
今回の2日間の印象ですが、僕はたたら鉄の精製技術と同じように出雲には「メード・イン・ジャパンの原型」があるのではないかと考えるに至っています。どういうルーツと経緯から日本国というものが出来たかはともかく、それが国譲りで日本中に伝播して今があるのではないかというということです。もしそうなら、ジャパン・クールで日本が世界の注目を集める今、その魅力はまず出雲になんらかのルーツがあったと考えていいかもしれません。メード・イン・イズモの精神を持った企業がグローバル・スタンダードを作っても何ら不思議ではないということです。
出雲は亀だけでも大社だけもありません。時間をかけて隅々まで見なくてはもったいない。また行ってみたいと思っております。
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某社との案件会議
2014 FEB 28 18:18:45 pm by 東 賢太郎
人には色々なタイプがあって、物事の決断のしかたは様々です。今日も某社との会議でそういう話が出ました。「自分は若いとき将来が不安でいちど十二指腸潰瘍になりました。それ以来、病気が怖いので決断には悩まない性格になりました。」という方がおられました。簡単に聞こえますが、理由はどうあれ性格を変えるというのはなかなかできることではありません。セルフ・コントロール力が非常に強い方です。
僕は基本的に臆病なので、自分が理解できないことをやると非常に不安になります。将来はもちろん不安といえば不安ですが、将来の不可抗力である物事はお天気と一緒で自力で変えられません。だから意味ないので考えません。ですから「将来どうなるだろう」という漠然とした不安は持ったことがありません。その結果、楽天的です。ひとことでいえば、「運は天にまかす」、「勝てるケンカしかしない」、「努力は勝率を上げるためにする」という性格です。臆病者と楽天家は同居できるのです。
ビジネスにおいて「理解できる=勝てる」とは限りませんが、「わからない=負ける」の確率は非常に高いです。負けに不思議の負けなしです。特にプロ同志の(B to Bの)証券ホールセール・ビジネスの世界は猛獣のひしめくジャングルであって、そこに丸腰で入っていってライオンに襲われましたといって誰も助けてくれないし、食われてしまっても同情する人はいません。そこでダマされましたと裁判などしたらあいつは素人だと永遠になめられるだけなのです。
ではジャングルでどうやって「勝てる」と判断するか。まず自分の力を客観的に評価しなくては危険です。チータと競争して勝てるはずありません。そこから先は人それぞれですが、僕は頭は使わず「鼻でかぎわける」ことになります。それは「匂いがいい」=「理解できる」と言ってほぼ正しいです。いいアイデアはわかりやすいのです。「わからない」ものはだいたい失敗します。言葉で聴いても数字にしてもわからないもの、数式で説明したがるもの。そこまで聴いてみて頭を使わないとわからないというものは、どこかがおかしい不良品だという判断をするわけです。
いま「匂い」と書いたものですが、判断をする段階ではまだ形が見えません。ほわっとした煙みたいなものです。それが形が見えてスペックまで決まってしまえば「理解」は中学生でもできます。だから利益率はゼロです。そして利益が出ないビジネスは失敗なのです。「匂い」でわかるかどうか。金融に限らず、すべてのビジネスの成功はそれにかかっています。
今日の某社案件会議では、いままで錯綜していた複数の部分が一つに収れんしてすっきりしました。そしてトータルには大きな仕掛けとなっています。自画自賛ですが、とても「理解できる」「匂いのいい」ものに仕立てられたように思いました。これから某社様とこれを進めていくことになりますが、一社の利益だけではなく社会的貢献度も高いところへ目線を置いてやることで僕のモチベーションも高いところにキープできる気がいたします。短距離走型の狩猟型なので、それはとても大事なことです。
皆さまにおかれても、まずは自分をクールに知っておくこと、自分の決断の仕方、くせというものを分析して知っておくことは大切で、ビジネスや交渉ごとはそれだけでも勝率をあげられるように思います。
スープの冷めないうちに・・・
2014 FEB 19 20:20:33 pm by 東 賢太郎
「スープの冷めない距離」というのが何メートルなのかは知らないが、書きたいのはそれではない。「スープの冷めないうちに」である。
ビジネスはbusinessと書く。busy+ness(名詞形)であり「busyである状態」、それが転じて「busyでないと出来ない物事」=仕事になった。それでは、その原意であるbusyというのはどういう状態だろうか。
「忙しい」というのは「あくせく何かをしていること」だ。しかし、どんなにそれをあくせくしたとしても、飲んだり食べたり遊んだりに「忙しい」とも「busy」とも言わない。それは、「必ずしも本意ではないのだが、何か避けがたい理由で自分の時間を拘束されている状態」でなくてはいけないのだ。
英語で、何かにお誘いを受けて断るときに、I’m afraid I’m busy today. となるが、I’m afraidが付くところに「本意ではないのだが・・・」のニュアンスがにじみ出てくる。
「飲み会?本当は行きたいんだけどね、***があんのよ今日。ごめんね。」
ということ。何かの理由で***の方を飲み会に優先させなくてはいけない事情を残念がって見せている表現だ。そして、ここが重要なのだが、***は「飲んだり食べたり遊んだり」ではだめなのだ。誘っている人が先輩だったりすると、
「先約の飲み会がある?っていうと俺の酒が飲めねえってことかい?」
なんて言われかねない。「今日は焼き肉が食べたいので・・・」なんて理由だったらバカヤローで二度とお誘いは来ないだろう。つまり、busyというのは、なにか先輩も文句を言えない「やんごとなき理由」なのだ。ということはその名詞形であるbusinessというのもそのはずだ。
ところがもうひとつ仕事を意味するoccupationというのがある。「自分をoccupy(占有)するもの」である。しかしこれは、「その人が24時間の大部分をつぎ込んでいるもの」であり、その時間シェアという静的な部分に視点があるから「職業」というニュアンスだ。一方でbusinessは「時間がない」、「やんごとなき理由で」と人間臭くて生々しい動的な言葉だ。だから商業的なニュアンスが強く、大統領や役人の仕事をbusinessとはいいにくいだろう。
では次に、どうしてbusyなのだろうか。明日に回して先輩の飲み会に行けばいいではないか。ここがポイントである。ビジネスというものの本質を鋭くついている部分だ。それは「今やらなければいけないもの」なのだ。今やるから商売になるのであり、明日ではだめなのだ。その火急性がbusyの理由であり、タイムリーにやるからお金をいただけるのであり、いつもbusyな状態にある人のことをビジネスマン(businessman)と呼ぶのである。
僕は証券業務のおかげでこのことが骨身にしみている。株価は時々刻々変動する。5分前までの売れ筋商品が今は不良在庫だなどという恐ろしい経験を山ほど積んでいる。だからこそ「busy」なのだ。先輩と焼酎など酌み交わしている場合ではない。そして、これが大事だが、いつでも職場に張りついているわけでもないのである。そんなことをしたら過労死してしまう。飲んで遊んで憂さを晴らす日が絶対に必要だ。だから、
今が「その時」かどうか?これを判断することが、「ビジネス」には大変重要なのである。
ずばり指摘するが、この嗅覚が鈍い人でビジネスができる人を僕は人生この方一人も見たことがない。古今東西、万国共通どころかもう宇宙定理である。そういう人でもつとまるのは役所とそのデリバティブのような業界だけである。そして、そういう業務はbusinessなどと呼んではいけない。それこそがoccupationの正しい定義なのである。
意味もないことを頑張ったり、意味もなく役職にこだわったり、意味もない会議を延々とやったり、意味もなく残業したりさせたり。そういう組織は短い人生をすばらしくoccupyしてくれる。親方日の丸だから安全だ。だから五感がどんどん退化する。そうなったら「その時センサー」は錆びついてボロボロ、復活は難しいだろう。
「その時」というのはいつ来るかわからない。だから面白いのだ。それが来たら、すぐやる。まさに「今でしょ!」である。僕はそのことを「スープが冷めないうちに」と部下に教えてきた。日本の組織には名コックはたくさんいる。だからスープはうまい。ところがわけのわからんお毒見役などがたくさん出てきて、OKが出るのに1年もかかって皿ごとカビが生えていたなんていうケースが増えたのがこの10年だ。「その時」を逸したら仕方ない。あっさりあきらめる。深追いは危険だから絶対にやめた方がいい。
意味不明のお毒見役が日本経済の振興機会をかなり損ねてきたのが失われた20年の後半戦だった。「その時」というのはリスクがない時ということではない。そんなところにリターンがあるはずもない。「リスク・リターンが良い時」なのだ。だからアクセルを踏んでいいし、踏めば踏むほどいい。ところがお毒見役の見解を待っているうちに半年もたってしまい、よし安心だと満を持して踏んだときには「すっ天井」だ。これは日本の金融機関の海外ビジネスのお家芸として世界中に認知されている。
「リスク・リターンが良い時」に一気に攻め込むと、余剰のリターンでリスクをさらに潰せるから勝率が高い。この状態でのみ「ブルー・オーシャン戦略」が可能になるから当たり前のことである。資本力があるから少々「レッド」になってからでもいいだろう、だからその前にまずはお毒見だとなり、機を逸して参入してしまい、自慢の資本力にあかせた豪快な大損をこいてきたわけである。毒見は無用だ。ブルーならやる、レッドになったらあきらめるでいい。サムスンと日本企業の戦いはそれを絵にかいたようなものだった。
今日このブログを書いたのは、今がブルーだと我が身を鼓舞するためだ。10年前よりは瞬発力も気力も落ちている。おまけに風邪気味だ。3月末当たりが期限だ。赤信号に変わる前にやってしまおう。







