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カテゴリー: 経済

日本の財政事情と若者の未来について

2012 DEC 4 16:16:03 pm by 東 賢太郎

日本の財政事情は、政府債務残高/名目GDPが205.7%となり、1944年の太平洋戦争後の204.0%を越えた。

震撼すべき事実である。日本に再び「高度成長期」がやってくるのを望むのは、太平洋戦争で神風が吹くと信じたのに等しい。

日本人の総所得はバブル期にピークを打ち、人口がドラスティックに減らない限り一人当たりの数値がピークを更新することはもうないだろうと僕は、残念ながら、確信する。日本人はほぼ全員が今よりも貧乏になっていくだろう。悲観する必要はまったくない。それでも全員が一等国の国民として誇りを持ち、楽しく豊かな人生を送ることができるよう国の設計図を変えていく必要があるだけだ。

民間はこれを体感しているが、全く分かっていないのが政府、公共セクターである。バブル期に日本は世界の一等国だった。そのことは、それが「バブル一等国」かもしれないという脆弱な印象だったことも含めて、その時期に海外でビジネスの最前線にいた僕らが一番よく知っている。一等国になれたのは政治家や役人が優秀だったからでもなんでもない。民間が優秀だったのである。

「バブル一等国」の予算を勘違いして組み続け、ふと足元を見たら歳入不足でしたというのは田んぼに豪華なオペラハウスを建てればメットが来てくれるだろうという地公体の能天気な政治と何ら変わらない。なぜ一度だけメットが来てくれたのか、つまり民間がどうやってグローバルに事業を成功させ、あんなに税金をたくさん払ってくれたのかという根本原理がわかっていない政府の「経済政策」とはいったい何なんだろうか。

原発反対はいいが原発ゼロになれば確実に電気代は上がる。いくら上がるのか示しもせずにこれが踏絵ですという党が忽然と現れる。10年後をメドにと言うが半年後に忽然と消えているかもしれない党に誰がそんなことを託すのだろう。言い出しっぺの自分が事業仕分けされた党は2番狙いが似合っている。立ち上がらずに立ち消えた党。ぜんぶぜーんぶ反対、それで雇用は守りますという精神状態を疑うしかない党。

歳入が減れば公共事業費だけでなく、こんな低レベルの国会議員や公務員の数も給与も減って当たり前である。公共セクターだけが日銀の庇護のもとでデフレの恩恵を享受し、ぬくぬくと生きのびていけるほど世界は牧歌的に出来てはいない。今、この政府、公共セクターというものにメスを入れ、根底から考え方を改変しないと、将来の日本人はますます貧乏になり、国際社会での発言力などほぼゼロになる。その悲哀は僕らの世代ではなく、現在30才代未満の世代にふりかかることを、その世代の方は肝に銘じておいたほうがいい。それを変えるのは投票という行動か、皆さんが起業家か政治家になるしかないということも。

今の日本には、お年寄りでも病気でもないのに他人の努力に胡坐をかいて「タダ飯」を食う連中が多すぎる。僕はそれなりに多い税金を払っている分だけ声高に言う。そんな者を養う余力も国力もない。高度成長期というのはタナボタでやって来たのではない。民間はもちろんのこと、政府、公共セクターも一つになって、よい国、よい生活を夢見て国民全員が汗を流して働いた結果だ。僕の世代はこの良き時代の生き証人であり、次の世代に歴史として伝える重大な使命があると思う。

 

米国放浪記あとがき-若者に贈る僕の三原則-

これは芸能界の話だろうか?

2012 NOV 28 12:12:13 pm by 東 賢太郎

politician、ポリティシャン、という英語には政治屋というニュアンス、つまり法律制定や政策執行より政治家であることそのものを職業とする(しているように見える)者という侮蔑の含みがある。

誰と誰がくっついたの別れたのと芸能界なみのくだらないネタを毎日見せられると、ポリティシャンの品評会を見せられているような気がしてくる。

駅の食堂の入り口にある料理見本。スパゲティを巻いたフォークが宙に浮いているあれ。プラスチックだから食べられないが、食べられそうだと国民が信じこんだのが前の選挙だったような気がする。

政治家は約束した政策が実行できなければ一文の価値もない。スポーツ選手と同じで結果がすべてである。約束が反故になるのも論外だが、政権についても役所がちゃんと動く、つまり政権担当能力がないのも同様に論外である。食べられないスパゲッティに騙されないようにしたい。 

 

幸せの魔法の合言葉

2012 NOV 22 19:19:25 pm by 東 賢太郎

野村ドイツ社長時代にドイツ連銀総裁を退任されたばかりのシュレジンガーさんと食事をしました。また後任のティートマイヤー総裁とも数回お会いしてドイツの金融政策に関するお話を詳しく聞きました。その2年後、野村スイスの社長時代にはスイス国立銀行総裁のツヴァーレンさんご夫妻と親しくさせていただき、クランモンタナの別荘に家族で3泊もさせていただくなどたくさんの思い出をいただきました。

僕が白川さんに限らず、中央銀行総裁に厳しいのはわけがあるのです。

3人とも口をそろえたように

「2%のインフレがいい。誰もがそれでうまくいくからね。」

と言われたのがとても印象に残っています。1%でも3%でもなく。

デフレは論外なのです。誰もがうまくいかなくなるからです。モノの値段が下がれば得をした気がするでしょう。牛丼もお弁当も。ありがたいですね。これは「お金の価値」が上がったということです。みなさん「消費者」としてはウエルカムですね。

しかし「企業の従業員」としてはどうでしょう。消費者としてのみなさんは何か買いたいものがあっても、今日買うより明日のほうが安ければ買い控えます。そうしてモノが売れなくなります。売るには値段を下げます。だから利益は減ります。すると企業は給料もボーナスもケチります。職もなくなるかもしれません。お金の価値が1%上がっても年収が1%以上下がれば、財布が軽くなってきます。

一方で借金はお金の価値が上がっても名目金額は減りません。だから肩の荷はどんどん重たくなります。資本主義というものは少ない自己資本でも借金を使って会社を大きくできる仕組みが根本にあります。インフレだと借金(肩の荷)が時間とともに軽くなるのでこの仕組みの潤滑油となりますが、デフレは逆に油をぬいてしまいます。資本主義が錆びついてうまく回らないのです。株や不動産も下がって逆資産効果(持っていると思っていた資産が減ってますます消費しなくなる)がダブルパンチになります。

公務員は「企業の従業員」ではありません。モノが売れようが売れまいが年収は変わりません。だから「消費者」のメリットのほうだけ受けられます。デフレはOKなのです。しかし公務員の給与原資は税金です。モノが売れず給与も減れば税収も減ります。国の財政赤字も増えます。当然、公務員費のカットという圧力が出ます。

こうしてデフレは国民全員を不幸にします。

「2%のインフレ」

これが幸せの魔法の合言葉なんです

なぜ2パーセント?知りません。ともあれヨーロッパ金融界を代表する3人のセントラルバンカーのお言葉です。魔法にしときましょう。

 

国民が望むのは

2012 NOV 21 19:19:14 pm by 東 賢太郎

「国民は物価だけの上昇ではなく、雇用や賃金など経済全体の改善を望んでいる」 (白川日銀総裁談、日本経済新聞11月21日朝刊)

退任確実のレームダックが最後の仕事として日銀の独立を守りたいのはわかる。しかしこんな稚拙な詭弁で国民が騙せると思っているとしたら彼の知性を疑うしかない。

①物価だけの上昇ではなく

単に物価が上がってほしいと願っている国民など一人もいない。当り前である。

②だけの 

物価があがらずに賃金を上げれば企業はつぶれる。無理である。

③雇用や賃金など経済全体の改善を望んでいる                                                                                                                           

望んでいないものなどいない。当たり前である。

この人は「当り前」と「無理」しか言っていない。100%ナンセンスなコメントである。

インフレターゲットというのは、物価を上げるぞとメッセージを発することで人々がお金を使うように仕向ける「手段」である。消費が増えればモノやサービスを作る会社の売り上げが増え、社員数も賃金も増える。つまり白川さんの望んでいる雇用や賃金など経済全体の改善ができるのである。彼はなぜこれが嫌なのだろうか?企業はつぶれても雇用者は守れ?なぜこの国は社会主義者が中央銀行総裁をやっているのだろうか?

この「100%ナンセンスなコメント」は「手段」を「目的」であるかのようにすり替える高等戦術と思われる。安倍さんは物価だけ上げようと目論んでいるぞ、危険だぞ、と警鐘を鳴らすふりをして国民の味方を装いつつ、インフレターゲットの政府による押し付け=日銀独立性危機を巧みに回避しようとしている。安倍さんの目的は雇用や賃金など経済全体の改善なのだから国民のため以外の何物でもなく、日銀総裁の罷免権を復活させないこと(=日銀の独立を守ってやること)などはるかに国民的重要度の低い話である。現に97年6月11日に日銀法が改正されるまではそんな独立性は存在していなかったのであり、それが理由で国民が困ったという証拠を挙げてほしいものである。

頭が良くて馬鹿 (ラ・ロシュフコー) とは?

2012 NOV 20 10:10:42 am by 東 賢太郎

「デフレ解消と経済政策」「金融緩和」が選挙の争点になりつつある。これは非常に正しい方向を国民が見始めているという証左であり、とても安心する。

経済回復の知恵も意識も具体策もなく、弱者救済、TPP反対、原発反対、減税だけで日本人が幸せになれると信じている、あるいは本当はそうは信じていないがポピュリストに徹して支持母体を安心させる嘘をついている政党は今のところ4つはある。このどちらの場合であろうともこの4政党は表題には相当しない。頭が悪くて馬鹿か、あるいは頭が良くて利口(ずる賢い)のどちらか。どっちにせよ経済が争点になってくれば馬脚をあらわしやすく、害が少ないから無視する。

家が火事になるとぞろぞろと鼠が逃げ出てくる。こんなにたくさんいたのかとびっくりする。別な家の軒下に逃げ込んで見事に元からその家の鼠だったような顔をする。きのうまで米びつを争っていたのに火が消えるまでは仲良くしようと別な種族の鼠と急きょ同居を決め込むのもいる。ぜんぶ「なりすましネズミ」だ。政治家は当選しないと政策を実行できない。しかし、当選しないと議員バッジがつけられないだけという石つぶしは鼠取りごとまとめて排除するチャンスである。国民は今回はそうはだまされないだろう。

そもそも党がこんなにたくさんあったのは記憶になく雑魚はどうでもいいが、金融緩和を「経済政策のためだけで言っている」と誤解しているらしい経済音痴党が複数存在する。そうではない、デフレ退治という重大な意味があるよと本気で言っている党が一つだけある。インフレターゲットという言葉をあげているが、その言葉がインフレ政策の実体効果(もちろんそれは必須だが)だけでなくマーケットへの心理的効果をも包含することをも知っていると思われる。その総裁自身が本当に自分の言っていることを理解しているかどうかは不明だが。そして、それを言い出すと日銀の話がどうしても出てくる。

それに対抗して「日銀が無制限にマネタリーベースを増やせば、ハイパーインフレが起こる。」「金利がゼロに貼りついた流動性の罠ではマネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えない。」との2つの批判が主に論じられている。後者は金融機関にお金がたまっても借り手がいなければ意味がないということ。そうであればハイパーどころかインフレなど起きないから両者は矛盾している。矛と盾を両方同時に主張して某総裁を批判している学者やエコノミストがいる。この連中は馬鹿なのか国民を愚弄しているのか野田首相の太鼓持ちなのかは不明である。

この2論について言えば、後者は需要創出策がなければ金融緩和効果は一時的で終わるという意味ならば正しい。前者は貨幣価値毀損リスクがあるという意味ならば正しい(過ぎたるは及ばざるが如しとなると国債暴落など副作用が確かにこわい)。こうした学者、エコノミストの意見を鵜呑みしてどちらかを主張する党が複数ある。いや、鵜が呑み込めてもいないのだが反対するためだけにとりあえず言っているとおぼしきみっともない党もある。

2論に対し、教科書的に異論はない。しかし、教科書的な策が奏功するならデフレはとうに収まっているだろう。非常事態には非常事態なりの策がどうしても必要である。マーケットを視野に入れれば、本当はやらないが脅しで言ってみるという手は金融政策に関する限り世界の常套手段で、やらない方が馬鹿である。金融政策と経済政策、財政政策の区別すら明確にする能力のない党が政権をとれば、今後も財務省、日銀によるマーケット感覚0%の金融政策が堂々と継続し、デフレ退治はおろか経済回復もおぼつかないことはほぼ100%間違いないだろう。

僕は次の首相が誰になるかと同じぐらい次の日銀総裁が誰になるかが経済の浮沈に影響がある、つまりすべからく日本国民全員の幸せに影響がある、と固く信じている。日銀白川総裁は「資産買入れは日銀が世界で先鞭をつけた。それが評価されないのは悲しい。」と言っている。効果はなかったが先にやった?確かに。「日銀のBSはGDP比最大級だ。政府の経済政策と両輪であるべきだ。」と政府のせいにする。確かに。ではなぜそんなにがんばったのに効果が出ないのか?それが国民にとって一番大事なことなのに。日銀の言う通りだと認めよう。インフレ退治は日銀の専管事項だがデフレ退治は一人ではできない(できなかった)のである。

社会主義者で経済音痴の政府がデフレ対策を日銀に丸投げ、日銀はそれを幸いとして念願だった独立独歩路線を堅持すべく一人で頑張る(ふりをする)。これがガン以外の何物でもない。経済通の政府が主導、日銀が方法論の独立性だけはキープしながら金融政策の目的を共有し、方法論に瑕疵が発覚すれば日銀総裁に責任をとらせる。それがマストとは言わないが、結果がこれなのだから現実論としてほかに手はないだろう。ところが現行の日銀法によると日銀総裁の任命権は国会が持つが、罷免権は誰にもない。日銀と政府の目標と役割分担の明確な規定すらない。仮に政府と日銀が「また裂き」になる政策をやった場合に、国民は国会議員をクビにできるが、日銀総裁はできない。だから総裁は国民が選べる政府(国会議員)がクビにできるようにしなくてはいけない。だから日銀法は改正すべきである。

以前、安岡氏のブログのコメント欄に白川総裁のことをボロカスに書いたが、もちろん総裁に恨みなどない。大学の先輩であり非常に真面目で温厚で頭の良い方であることは間違いない。しかし、彼がノーベル賞学者のクルーグマンから「銃殺刑に処すべき」とまで言われたポイントについては是とするしかない。もうひとつ、マーケットの住人として申し上げると、彼は聡明かつド真面目すぎて「言っていることの先が読めてしまう」。これはダメである。特にこういう時期の中銀総裁にはもっとも不適格である。

なんと円ドル介入目標値を先にマスコミに言ってしまうという真正の馬鹿であった財務大臣と人物の出来まで比べては失礼だろう。しかし世界中のマーケット(SWF、年金、ヘッジファンドなど資金運用者、為替ディーラーなどから成る)にナメられ、馬鹿にされまくっている悲しい実態を僕は生々しく知っている。おそらく、ラ・ロシュフコーは「箴言集」でかような方々を「頭が良くて馬鹿」と表現している。いや馬鹿なのはそういう総裁を替えられない法律を放置している国会議員であり、そういう議員を選んでいる我々国民であるが。

米国の中央銀行総裁に相当するFRB議長のグリーンスパンもバーナンキも、タイプこそ違うが頭の切れる大嘘つきでありタヌキおやじである。合衆国財務長官だったルービン、ポールソンは証券会社ゴールドマン・サックスの元共同会長、CEOであり、同業界の生態系として超一流のワル、「インテリやくざ」でなくしてその地位まで行くことは絶対に不可能である。タヌキもやくざもマーケットを脅す時はまじめな顔をして何を言っているか意味不明になったりする。これを教科書論を振りかざして馬鹿というものは世界に一人もいない。市場は焦る。動揺してビビる。何千億ドルも他人のお金を運用しているのだからだまされて運用に失敗することはプロフェッショナル人生では死刑に匹敵する。高給を食むのだから当然のことである。

世界の金融市場というのは学者と教科書で動いているのではない。善人はケツの毛までぬかれるジャングルのような場所である。70円台の理不尽な円高というのは毛がなくなった末のみじめな姿なのだ。そのツケは日本の輸出企業と国民が払わされている。為替レートは財務省でも日銀でもなく、マーケットが決めるのである。マーケットが視野にない金融政策は国を滅ぼす。日銀総裁にはポーカーゲームに強いタヌキおやじをすえるべきである。しかし学究肌の多い日銀にそんな芸当の出来る人材はいないだろう。であれば嘘つき同志のポーカーに長けた政治家が日銀と金融政策の目標を共同設定するしかないということだろう。

 

 

 

 

 

 

 

衆院解散・総選挙

2012 NOV 15 17:17:16 pm by 東 賢太郎

驚きました。野田首相にとって状況は王手飛車取りでしたが返し技はあざやかで彼の株は上がると思います。本物の株も上がりました。市場は大歓迎です。クリンチ中にタオルが入った前任者やトラストミーの日和見とは人間力の差を感じます。党はともかく野田さんはなかなかと思います。明日が見ものですが。

ソフトバンクの米Sprint Nextel買収

2012 OCT 21 23:23:20 pm by 東 賢太郎

ソフトバンクが米国携帯電話第3位のSprint Nextelの株式の70%取得を発表しました。買収総額は1兆5709億円(約201億米ドル)におよび、1兆6500億円は銀行借り入れだそうです。

この発表に市場の評判は厳しく、株価は一時20%も下落しました。これが吉と出るか凶と出るかは即断できません。アナリストの意見をじっくり聞きたいところです。

僕は孫さんに会ったこともないし、株主でもシンパでもなんでもありません。ここのケータイはあまりにつながらないので他社のにかえようと思ってる。ただ、この大ばくちを打った度胸にはエールを送ります。

僕はサラリーマン根性というのが大嫌いです。自分でばくちを打たんくせに、打った人には批判とジェラシーと足の引張りだけ一人前。そんな暇と労力があるんだったら自分も正々堂々と努力して勝負すりゃあいいじゃないかと思います。

孫さんはTVで、

日本の経営者はアニマルスピリットを失ってしまった。みなサラリーマン化して守りに入っている。守りの姿勢はリスクを減らすように見えるが、実は逆に、動かないことがもっとリスクを増やしてしまうときもある。今はその時期だ。

と明快に語っています。世界一を狙うのか?という質問には、

男の子として生まれたわけですからエへへ

と答えました。

日本の経営者はほとんどが男です。Boys、be ambitious. ここにGirlsを入れなかったクラーク博士、先見の明があったかもしれません。

 

 

オバマVSロムニー

2012 OCT 5 1:01:31 am by 東 賢太郎

アメリカ大統領選挙は要注目です。討論会でロムニー優勢という流れにも。

現在世界経済は静かに、着実に「日本化」しています。欧州は99%その道が確定です。日本は出口に近いかもしれませんが周囲が悪くなればトンネルは長くなります。デフレが諸悪の根源だ、日銀法改正だという声が出ています。デフレが善でないことは明らかですが、それだけが病の元凶でしょうか。

日銀に外債を買わせるのが特効薬だという議員がいます。それが財務省専管事項の為替介入に当たるかどうかはともかく、誰がどう外債を買ったところで為替相場への円売りインパクトは一時的でしょう。日銀のBSが劣化して貨幣価値の減価がインフレ効果をもつという考えなら、国債が売られるリスクをはらみます。

病の元凶の根っこは需要不足です。需給ギャップです。この需要というものの予測を経済学者は嫌います。学者とほぼ同質の集団である日銀はそれは政治の仕事だと逃げます。政治家は利権とばらまきのネタだと解釈します。財務省は財源がないから増税だと政治家に迫ります。そして需要はますますなくなるのです。

需要は誰が作るのか。政治家でも官僚でも学者でもありません。需要は技術革新、生産性向上、人口増加が生みます。共和党が勝ったら新技術が生まれますか?白川総裁を退任させれば日本の人口が増えるんでしょうか?これ以上書くと政治信条になってSMC憲章違反になるので控えますが。

技術革新、生産性向上は企業が起こします。一般には。人口は世のカップルに頑張ってもらうしかない。あとは移民です。前2者の余地は限定的な所に来ています。我々はおそらく産業革命から発した大きな波が終焉する時代に生まれています。僕の歴史観では。

日本、欧州、中国は今世紀中に人口が減ります。中国は大貧民ゲームでボロ勝ちしているうちは世界需要の牽引車ですが時間の問題で地位は低下します。それを知っている共産党は勢いがあるうちに世界のヘゲモニーを握ろうと焦っているように見えます。レアメタル買占めも尖閣を含む太平洋領土問題もその一環です。

だからアメリカしかありません。人口が増える先進国はここしかないのです。シェールガスで劇的にエネルギーコストが下がれば生産性向上もありえます。そこでオバマVSロムニーです。21世紀の世界経済にとって非常に重要な選挙なのです。

銀座が赤坂になる日(追記あり)

2012 SEP 28 17:17:00 pm by 東 賢太郎

日本国債のCDSスプレッドが19日と20日に中国のそれを上回りました。

CDSというのは簡単に言えば債券の価格が下がった場合の保険です。その保険料率をスプレッドと呼びます。これが中国より高いというのは、日本国債のほうが中国国債より危険だと市場に思われているという意味です。

それがどうした、とお思いではありませんか?

中国は日本の輸出品の2割を買ってくれる最大のお得意さんです。不買運動が長引けば企業の利益が減って法人税も所得税も減ります。これは国債価格にマイナスです。また、中国は日本国債を保有している最大の外国です。「お前らセンカクもめるとこれたたき売ったるでー」という脅しが出れば、これも国債価格にマイナスです(まあ、売れないでしょうが)。

「日本国債は日本人が9割買っているから大丈夫」と言われています。確かにそうです。ただし9割がキープできればというのがミソです。IMFは2017年に日本の政府債務残高がGDPの256%になると試算しています。ぶっちぎりで金メダルの比率です。格付けは下がりCDSは上がるでしょう。そんなにリスクが高い国債を日本人が9割も買い続けるのでしょうか?

「いやいや日本の個人金融資産は1500兆円もある。ギリシャとは違うんだ。」個人金融資産って何でしょうか?銀行、郵貯の預金残高、保険などの総額です。紙の上の数字です。でも銀行も郵貯も保険会社も、皆さんから預かったお金の7-8割は日本国債で運用しているのです。1500兆の7割は1000兆ですから国債の総残高とほぼ同じ。つまり皆さんのご資産は実は日本国債の運命と一蓮托生なのです。

地球というのはすべてが有限な1個の星です。資源も食料も水も土地も。買って所有できるものは有限なのです。中国人がそれを所有してリッチな生活をできるようになれば必ずプアになる国が出ます。人間の物欲は限りがありません。WTO調印を果たした中国がもう一度国を閉ざしてプアになろうという路線は100%ありません。だからビッグバンなのです。宇宙で137億年前に起きたものと同じ意味で使っています。

中国以外のすべての国は現在「大貧民にならないゲーム」を展開中です。BRICsと言ってもB,R,Iは中国パワーで資源、食料などの価格が上がったからこのゲームの勝ち組みになっているにすぎません。日本はどうか?円が強いから当面はリッチ組です。しかし円安になるとどうでしょう。自給率の低い食品は高騰してプア感が漂った生活になるでしょう。銀座はいつしか赤坂のようになるでしょう。

日本国債が下落する時は円も下落する時です。外へ出てしまった製造業に円安メリットは限定的です。景気はよくなりません。金利は上がってインフレになり、皆さんが今のところあると信じている資産は大きく目減りします。考えたくありませんが、こうして日本が大貧民になる可能性はゼロではありません。日本がコケると欧米も被害を受けますが、自分が大貧民になるよりはずっとましなのです。

自民党総裁は安倍さんに決まりましたが、今後あるであろう総選挙後の新政権が背負って立つべきものの重さは半端ではありません。

 

(追記、16年2月6日)

3年半前に書いた本稿。日本を代表するシャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に食われるかもしれない事態で現実に見えてきました。これが産業界における「銀座の赤坂化現象」でなくてなんでしょう。中国ビッグバン仮説の予言した帰結の一つにすぎませんが・・・。

(こちらへどうぞ)

中国ビッグバン仮説 (追記あり)

ラーメン・パリティ(追記あり)

2012 SEP 28 13:13:55 pm by 東 賢太郎

たしか2001年のことです。上海であのラーメンに出会ったのは。

アポの合間で時間がなく、ランチは内輪でファーストフードとあいなりました。現地のアナリストに案内されたのは麺専門店。地元では有名らしい。僕はメニューもぜんぜん見ず(どうせ読めないので)、「一番高いやつ!」という証券マン丸出しの注文をしました。

これはめちゃくちゃ高いから注文する人はあまりいないよと満を持して登場したのは、巨大なボウルにチャーシューで麺が見えないボリューム感、最高のスープにしこしこ細麺という逸品。写真がないのが残念です。日本とはやや風情は違うものの、うーん、具も味も日本だと軽く1000円以上だなあというレベルでした。中国ラーメン界も進化していて、日本流儀を取り入れた感じがありました。

食べ終わってメニューで値段をチェック。えっ、15元?当時のレートで200円ぐらいです。この瞬間、僕は人民元相場というものの謎に初めて触れた気がしました。中華料理をいくら注文しても、安いとな思うことはあっても値段の比較感はあまり働きませんでした。しかし同じラーメンという定型商品、同一銘柄ですからついつい相場カンというものが働きます。根っからの証券マンだったのです。

ちなみに、中国人の同僚たちが食べた普通のラーメンは4-5元でした。60-70円です。これでもそこは高いから嫁さんとは来ないと言う。現地ではぜいたく品に分類されるラーメンだと言う。なるほど、この店をこのまんま東京にオープンしたら100メートルの行列になるだろう。そう思いました。

マクドナルド・パリティはご存知でしょう。マックはどこの国でも同じものだからその値段が本来の通貨交換レートの目安になるだろうということです。これは一理ある考え方です。問題があるとすると、仮にそれが正しいならば一目瞭然なのですぐに為替レートかビッグマックの単価のどちらかが瞬時に修正されてしまうことです。これを裁定(アービトレージ)と呼びます。他人が気がつかないうちに自分が利益を得る機会がないので、実務的にはあまり意味がありません。

そう思っていた僕は、ラーメン・パリティには意味を見出しました。ラーメンは日本と中国は、似てはいても同じものではない。だから瞬時の裁定はおこらない(これが大事なポイントです)。でも食べた後の満足感(効用価値と呼びます)はほぼ一緒なので、時間をかければ裁定がおこると考えられます。この「安すぎ現象」は中国製品の質や信頼度がアップするとともにすべての製品でおこるだろう。ラーメン界だけの特殊現象ではないはずです。

値段の差が10-20%ならともかく5倍、10倍という差なら高い信頼度で「安過ぎ感」が出る。だから需要が増えて輸出が増える。すると人民元が買われてレートが上がる。これが僕の結論でした。野村金融経済研究所の投資調査部長時代に全国13の大学で1コマ90分づつ講義をしましたが、この話をすると半分寝かかっていた学生もパチッと目を開きました。質問もたくさん出ました。多くの支店で講師をした「野村投資家セミナー」でも人民元建てアセットに投資しなさいと言いまくりました。理屈でなく体感したものは強いのです。

津坂さんのブログ「スカート丈と株価」を拝見して思い出したのはこれでした。ウォートンのテイラー教授はよほどスカートを注意して見ていたんでしょうね。でもどこでどうやってその長さと株価の関係に思いが至ったんでしょうね。きっと、ある一瞬があったのでしょう。ニュートンのリンゴのように。

(追記、2016年1月17日)

一風堂という日本式ラーメン店の「東京ラーメン」が今は48元だから約800円です。中国のラーメンは高くなった、人民元も高くなった。2001年当時僕は「人民元建てアセットに投資しなさい」と言いまくり、そうされた方は報われました。しかし、もうそのアドバイスは無効になったということがわかりますね。そして、中国に工場を出してももはや生産コスト削減にあまり意味がなく、逆に強い人民元で日本へ来て円建てで買い物をする(つまり「爆買い」)がどうしておきるのか、理由が良くお分かりになるでしょう。

(こちらもどうぞ、応用編です)

中国ビッグバン仮説

中国人の爆買いが教えること

中国はどこへ行くか(1)

 

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