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野球人類学

2012 OCT 16 0:00:08 am by 東 賢太郎

野球をやっていたという人に会うと、どのポジションだったか必ずききます。

こっちから言うとけっこう当たります。そういう人だからそのポジションになったのか、そのポジションを長くやっているとそういう人になってくるのかは不明。特に高校球児として多感な時代にやっていると当たりやすい。勝手な思いこみですが、こんな感じです。

 

ショート

たぶん一番むずかしい。全校で運動能力はトップレベルの人。瞬発力も判断力も全体観も必要。セカンドに滑り込んでくるランナーとのクロスプレーは大怪我する危険。肩はピッチャーなみ(高校野球ではピッチャーかけもちも結構ある。阪神の鳥谷、巨人の坂本、楽天の松井稼頭央など元ピッチャー)。三遊間の深いゴロは逆シングルからの遠投という離れ業。ピッチャーが本心から信頼している(時として唯一の)内野手であることも多い。相棒のセカンドと一緒に内野陣をまとめているチームは強い。ホームランも打てる場合が多い。スター性がありワンマン性格だが他人にあわせられる。女性にもてる。左利き不可。

(注)2016年の楽天・茂木、2017年の西武・源田、中日・京田は新人で記録的な安打数を誇った。プロでいきなりショートのレギュラーが取れる人の破格の身体能力がわかる。

 

センター

足が速い。肩がいい(阪神の新庄)。後ろに強い(これは守備では最も難しい、陽 岱鋼は真の名手、赤松の忍者キャッチは伝説)。自他ともに認めるうまい人なので右中間、左中間の飛球は声がかからなければライト、レフトは譲ってセンターが取るのが不文律。全ポジションのうちやることが最もシンプルでわかりやすい。カンの良さ、瞬発力、勇気がある。全校で運動能力はトップレベルの人。ワンマン、天才肌、ナイスガイ。難しいことや他人のことはあまり気にしない。打者としてはクリーンアップもいるが1、2番タイプも多い。センターが下位を打つようなチームはだいたい弱い。

 

キャッチャー

女房のフリをしながらピッチャーを支配。ピッチャーに今日は調子がいいと思い込ませる手管をふんだんに持つ。最もボス的、監督的性格だが勝負師も多い。人間をよく見ている。肩はピッチャーなみ(阪神の久保田、楽天のマー君は元キャッチャーだ)。でかいほうがピッチャーは投げやすくブロックで走者も怖い。細身の人の場合は運動能力と肩でカバー(楽天の嶋)。ナイスガイは絶対に不適格。バッターボックスにいる相手打者に対して「嫌な奴」というオーラを発する人がベスト(野村克也さん、中日の谷繁など)。足は遅くても許される(ドカベン香川、元阪神の田淵)。運動量は一番で持久力が肝要。打順は下位が多いが4番を打つような人がいるチームは強い(巨人の阿部)。痔になりやすい。苦労の割に女性にはもてない。左利き不可。

 

セカンド

ショートはできないがショートと同じタイプ。別な意味でとてもむずかしい。小柄でホームランはない人が多い。性格は他人につくすタイプが適役。俊足が多く打順は1、2番か下位。ファーストが動きが鈍くしかも何も考えていない場合が多く守備範囲の広さは最も肝要。インサイドワークは緻密でキャッチャーのサインによって1球ごとに守備位置を変えるなどは当然。意外にやりたがる人が多いマニアックなポジションだがプロでも本当にうまい人はあまり見ない。センター前にぬけそうなゴロをギリギリで追いついてジャンピングスローでファーストでアウトにする瞬間は野球で最も美しいシーンかもしれない。中日のアライバ(荒木と井端)はショートとどっちもできるハイレベルなセカンド(だから投手の防御率が良かった)、ロッテでショートを張った西岡がセカンドの阪神も強い(それだけ鳥谷がうまいということ)。左利き不可。

(注)本稿執筆は2012年でカープの菊池はまだ現れていなかった。彼は元来ショートだったが打力もある梵がいたため東出が抜けたセカンドで起用された。あまりにうまいのではまってしまったとも言えるが、田中の出現で梵の穴は埋めセカンドの概念を変えた菊池をそのまま置いたことでカープのセンターラインの威力が倍加し、躍進の原動力となったのである。ちなみに同じセカンドで重なるヤクルトの山田がいるが、打撃は天才であるが山田の肩でショートは無理だ。本稿は菊池の出現で書き換える必要はない、あくまで菊池が異例なのである。

 

サード

右打者(数が多い)が引っ張った強烈な打球に反応できる反射神経と、何より逃げない勇気こそ肝要。顔面で受けると骨折か前歯を折って入院(広島の栗原など)になる最も危険なポジション。バント処理以外では緻密な判断力はあまりいらない。くよくよしない。男らしい。瞬間芸でぬかれたら終わりというアバウトな人が適性があるかもしれない(何と言ってもミスターの長嶋茂雄さん、DeNA中村ノリ、おかわり君など)。肩はいい(巨人の村田の送球はすばらしい)。はなやかで目立ちたがり。強打者が多い(中西、落合、掛布、原、衣笠、小久保など枚挙にいとまなし)。他人のことはおおむね気にしない。グラウンドでスターは自分だけだと思っている。最もブロックサインを見落とすタイプ。ただし沈着冷静型もいる(日ハムの小谷野、ヤクルト宮本。ちなみにロッテ今江が本塁打走者のベース踏み忘れを見抜いたシーンを見たが、これはプロだ)。左利き不可。

 

レフト

打撃の人、強打者、クリーンアップが多い。主に求められるのは右打者の速いラインドライブを処理して二塁打にしないこと。判断力、瞬発力。バックホームはほとんど内野手中継になるので肩が特にいい必要はない。前方のフライはうまいショートがいるので安心。プロではファーストとともに打つだけの外人の定位置。高校野球レベルではレフトにセンターなみの人材がいるようなチームは強いというイメージ。

 

ライト

草野球だと一番下手な人の定位置だがレベルの高い野球では逆。レーザービームでホーム刺殺というカッコいい守備機会が最も多発する外野ポジション。ライトゴロも可能。だから強肩が多くイチローがここだったのはそういう意味がある。150km投手だった糸井もここが多い。ライト線をぬかれると三塁打のリスクがあるので右打者のスライスする打球を追って怪我する人が多い。その分レフトよりリスクも高い。打順はいろいろ。

 

ファースト

サードとほぼ同じだがサードに必要な強肩という条件はなく左利きもOK。だから唯一、誰でもできる。バント処理ではむしろ左のほうがいい。ただし身長、手足の長さはあったほうが他の内野手からは喜ばれる。一塁走者がいる場合は牽制球を受けるためベースについており、1,2塁間をぬかれてもセカンドの責任にできる特権階級である。試合中にピッチャーやキャッチャーを一時的に待避させる場所として重宝。専業の場合ホームランバッター、4番打者が多いのはレフトに似る。野手で唯一ミットを使い、攻撃中はミットにボールを入れたままベンチに置いて形を崩さないようにするなど、意外に繊細な面も持ち合わせる。こういうポジションに王貞治(甲子園優勝投手)を置けたV9巨人が強かったのは納得だ(昔、後楽園球場で見た王のバックホームの球威のすごさは目に焼きついている)。

 

ピッチャー

わがまま、お山の大将的性格(でない人は不向き)。キャッチャーは女房だと信じこまされている唯一の人。打者に最も近く実は最も危険。しかしサードと違って逃げても罵倒はされない。怖さを忘れてしまうほど投げることに「入ってしまえる」性格。協調性は周囲が求めない。プライドが最も高い。目立ちたいというよりほめられたい。繊細な人も多く自分のタマは誰も打てないと自己暗示にかける能力が最も肝要。何かにこだわったりマニアックに変化球を研究したりする性格が向いている。同じ動作を正確にくりかえすだけなので9人のうち1人だけ別な競技をしている(と思っている)。ゴルフに適性がある。4番も打てる運動万能型が多いが、運動神経が鈍くてもできる唯一のポジションでもある。

 

皆様はどのポジションに向いていますか?

これからの野球観戦が少しでも楽しくなれば幸いです。

 

野球人類学 応用編

 

野球のヤジは奥が深い

女性が野球を楽しむホンモノの方法

(こちらもどうぞ)

野球人類学(改訂版)

野球人類学 (4番打者はスナイパーである)

 

 

 

 

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