同じ阿呆なら借りなきゃ損損(伝ヘロドトス)
2015 JUL 14 12:12:47 pm by 東 賢太郎
船は輸送ではなく観光を目的とするようになった。いま我々が使用する神殿や住居等は2000年もすれば遺跡(アポミナリア)と呼ばれるようになり、この船の客人を楽しませるのだ。船は700名の旅客、300名の乗員(クルー)の合計1000名によって構成される。
旅客はほとんどが外国人、すなわち富裕なペルシャ人やローマ人である。船内では貨幣が通用せず、乗船時に購入した石貨が貨幣の代わりとなる(食券である)。石貨は名称を「ドラネコ」という。始めはワイン一杯が3ドラネコであったが、やがて船が人気化すると増発されてワインは100ドラネコになり、食券は石ころ同然だと苦情が殺到することになった。
しかし一方で、船に乗ると富裕な外国人にたくさん物を売れるということに気がつく者がでてきた。クルーは生活が安定する上に富裕にもなれる人気の職業となり若者の憧れの的となる。やがて300名の乗員枠は誰によるともなく撤廃されることになり、クルーの数は400、そして500と増加していったのである。
ある船でついにクルーが950名に達した時のことだった。乗客名簿を閲覧した船長が、客が50名しか乗っていないことに気がついたのだ。950名のクルーには高給とともに終身年金が支払われ、ワインは「無料飲み放題お楽しみタイムあり」というクルー特権まで与えられていることもわかった。船は大赤字であったのだ。
やがてさらなる悲劇が襲った。この船がクレタ島沖で難破したのである。ほとんど借金で建造した船である。債権者は決死の救済と救助を試み、沈没だけは免れた。そして事故調査委員会が難破原因をつきとめた。お楽しみタイムを知らなかった船長が損を取り返そうとワインを酒樽一本開けてしまい泥酔状態であったのだ。
タカ派の委員は即時債権回収を訴えたが、ないものはとれないことが発覚した。船を差し押さえても鉄くずの値段にしかならないこともわかった。散々議論激論が重ねられ、やがて委員会は結論を出した。クルー全員が酒に酔っていたのだからそれは古来の伝統文化であるとされ、おとがめなし。クルーは禁酒とする条件はついたものの、カネを返してもらうために船もう一隻分のカネを貸しますからこれで稼いで返してねとなった。
ところが・・・・
ここでやはり怒り狂った委員が石盤をたたき割ったと思われ、先の記述は途切れている。
この難破船の残骸とみられる遺構から「オイロ」と書かれた銅貨が出土したことは有名だろう。オイロは船の国籍にかかわらず使える「共通食券」として重宝され船内で使われていたことが判明している。難破した客船も収入がオイロで入るなら安心だろうと各国が金を貸していたのだが、実はクルーの飲み食いに消えていたわけだ。
オイロは使うのに便利だが借金にも便利だった。石ころになると心配されたドラネコでは到底できないような金額の借金がオイロならできた。なぜなら銅貨だから鋳造に限りがある。石ころを拾ってきて返済されることはない。しかしもっと大きな理由があった。オイロで借金できる船は「オイロ事業船組合」に所属していたからだ。
見過ごされていた大きな問題は、誰がカネを借りるかだ。借りるのは組合ではない、船だ。人気のない船の食券は、その船だけで通用するならば価値は暴落する。そうなれば乗船料も安くなって、安かろう悪かろうを認容する客は乗ってくるのだ。しかしオイロだと乗船料はそのままだ。客よりクルーが多い船は見捨てられ閑古鳥がないた。
しかし、債権者には幻想があった。船は難破したって、組合がなんとかするだろう。助けないならばそんな組合って一体何の意味がある?
船長たちは抜け目がなかった。ドラネコは廃止し、オイロで借金をしまくった。難破船のスーベニア・ショップで売られていたとされる土産品がオイロ建ての正札のついた質流れ品として他国の質屋の店頭にあふれかえっていたという。ヘロドトスはドラネコ復活派であったとされるが確かな資料は見つかっていない。なお、石盤Bの裏面には同時代の何者かによる落書きが彫られており、考古学者が著書にこう英訳している。
Too big to fail.
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借金は するなら大きく することだ(伝ヘロドトス)
2015 JUL 3 23:23:30 pm by 東 賢太郎
表題は古代ギリシャの石盤に刻まれたとされるヘロドトスのアポローグ(教訓)であるが、実際に見た者はいない。後世の大ぼら吹きによる真っ赤な嘘であるとする説が有力だが、その真偽はどちらでもよいだろう。なぜなら、あまりにそのとおりであるからだ。
それを例示する神話も記されているので以下に翻訳しておこう。石盤の放射性炭素年代測定によるとペルシャ戦争のころBC450年前後と推定されている。神様の名前、地名、風俗等は現代日本風に変えて理解の一助としたことをお断りしておく。
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奥州(おうしゅう)市が威信をかけて創立した学問の府である「養老学院」(YouRo Institute)は当初から難題をかかえていた。設立資金を多めに拠出したのは実力市議の土井常子(どいつねこ)女史である。しかし経済力にものをいわせる頑固者で新興派閥の土井ツネ派には反感をいだく市議が多く、養老学院の運営は求心力を欠いていたのだ。
そこで土井が目をつけたのが暮田(くれた)家である。隣国との領海に位置する孤島である暮田島にその名を残すなど往時は権勢を誇り、奥州市の祖とも慕われる名家だ。現在は没落の危機にこそ瀕しているものの、その威光が学院の精神的支柱としてワークすることが期待されたのである。
暮田家には一人娘があった。親譲りの浪費癖があり、ゲーセンに入り浸ってグレてしまったこの娘は街の人々によってひそかに「グレ子」とあだ名されていた。それにもかかわらず、市議と有力者の子弟を集め奥州の威信をかけた養老学院は、その名誉と信用の確立のために暮田グレ子の入学をどうしても必要としていたのである。
正規の入試はAO入試で代用され、英数国理社は免除される代わりにゲーセンの「UFOキャッチャー」の一芸が評価されたようだ。グレ子入学のニュースは学院理事一同がかつて一度だけ手を取り合って歓喜した希少なものとして長く記憶されることとなった。裏口入学ではないことを示さんとばかりに、法外ともいえる額の奨学金支給が学院理事会によりザルのように承認された。
名家の血筋でなんでも許されると自認するグレ子が「学院生」の肩書きを持ったことは学院周辺の飲食店から六本木のホストクラブに至るまで、すべての消費と遊興をツケで済ませることを意味していた。彼女の触れた物は金にかわるのだ。奥州市の誰もが返済を疑わずにツケに応じ、つまりは彼女の借金証文を受け入れた。
グレ子の卒業論文「コピー&ペーストの効用と哲学的有意性について」は大半が盗用とコピペであると指摘されながらも学院理事会をパスすることとなった。晴れて卒業となったのだ。
そして、ついにこの問題が発覚した。
「卒業払いの奨学金は貸与であり返済すべし」なる理事会の請求に対し、暮田家は「もらったもの」として返済を拒否する内容証明を送りつけたのだ。
強気には出たものの困ったのは土井ツネ派だ。「アンタに頼まれて大事な娘を貸してやったんや」「そなアホいうなら暮田島の2000年分の賃借料22兆円、耳そろえてはらわんかい!」と暮田にすごまれてビビってしまった。
「なんやて、娘の小遣い削れ?ええか、奨学金30兆円あんねんで。ウチかてドロボーちゃうんや、そんなことせーへんでも3000年猶予してくれたら返したるがな。ウチつぶしてもうたらアンタらも腹くくらなあかへんやろ?」
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怒った理事がしたことだろうか、石盤はここで真っ二つに割れており、残念ながら物語がこの先にどう展開したかは闇の中である。
このギリシャ神話が 「クレタの王 イドメネオ」 と関連があるのではとはしばしば指摘されることだが、いまだ解明されていない。
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熱闘マツダスタジアム!カープ対サンフレッチェ
2015 APR 30 23:23:25 pm by 東 賢太郎
アベノミクス「第3の矢」の秘策として官邸が期待するものがある。広島市が施行する、全国にも類例のないサッカーと野球の異業種サブマリン対決トトカルチョである。
当初はJ-リーグ理事会から「野球とは本来の得点力が違い過ぎる。J-1の18チームで1試合平均得点が2点台は1チームしかないんだからゲームになるはずがない。」と否定的な意見があいついだが、サッカーくじに参入をもくろむプロ野球界と、「黒田人気」に広くあやかり個人消費の底上げを期待する官邸サイドの強い希望がサッカー界を押しきる形で開催の運びとなった模様だ。
ところがふたを開けてみると、ここ6試合の得点は以下のとおり2勝2敗2分けと、両者あい譲らぬ拮抗した展開となっている。特に「零点で終わった試合数」はカープの 4 に対してサンフレッチェは 3 と大方の予想を大きくくつがえす結果となっており、オッズは1270倍と「万馬券」状態になっているのが全国でも注目されている。
カープ 0 11 0 0 9 0
サンフレッチェ 0 0 0 2 2 2
広島市役所のトトカルチョ特設ブースには予想外の高配当に市民が殺到する一幕もあり、警察官の臨時配置が検討されるなど一時はものものしい雰囲気に包まれた。広島市は今回のくじの売上高が予想の15倍と好調であったため、5月に第2次売り出しを検討しているとされ、
「いつもなら鯉のぼりはカープの季節。これが外れるとオッズはまたハネ上がるのでは」(山本謙二郎・市役所トトカルチョ課長代理)
と鼻息が荒い。一方で官邸は、
「こういうこともある。広島以外の都道府県でも検討をお願いしたい。」(菅官房長官)
との見解を発表しているが、
「あくまでカープさんだからできたこと。ウチはやってもいいが、ヴィッセル神戸さんは反対している」(オリックス球団代表)
と他球団とクラブは腰が引け気味のようだ。
この結果に気を良くした安倍首相からは、
「第3の矢の成功に向けましては、何事も新しいチャレンジが大事であります。わたくしも、当然のことながら6つとも全部野球が勝ってしまうのだろうと、試合にもならないのだろうと、えー、そのような思いを持ちながらサンフランシスコにまいったわけでございますが、こうしたサンフレッチェさんの頑張りを目の当たりにいたしましたことで、いよいよトトカルチョというものの面白さ、大きな経済効果というもの、そしてですね、明日の、えー、ロサンゼルスで日米経済フォーラムが行われるわけでございますが、そこでの我が国の東京オリンピック・カジノ構想による力強い経済成長、そういったものをオバマ大統領に強くアピールできるであろうと、自信を深めている次第でございます。」
という広島市長への応援ビデオメッセージが届いている。一方で、カープの緒方監督からは、
「長いペナントレースではこういうこともある。点は入っていないが打者の気持ちは入っているから大丈夫だ。単に点が入ってないだけのことだ。そして、点は入っていないがウチには黒田が入っていることを忘れてもらっては困る。たしかに点は入っていないがカープ女子会には5000人も入っているし、どんなに点は入っていないといってもウチの打撃コーチは気合が入っている。待てば海路の日和ありという。点は入っていないがワタシは風呂入って寝ようと思う。」
とのコメントが発表されている。
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頑張らない人が報われる社会
2015 MAR 6 10:10:40 am by 東 賢太郎
先日TVで元経産省で経済評論家の岸 博幸氏が「いま女性が結婚すべき男の3条件」をあげていた。それによると、
①直感で動く ②先例を無視できる ③ヤンキーでオタク
だそうだ。なかなかいい線と思う。①はどの分野でも必須の能力だし②は彼が官僚経験者だから特に思いがあるのかもしれない。ヤンキーは知らないが「オタク」を入れたことは大賛成だ。悪い意味に使われるが、人間の大多数を占める凡人が異種、異能の人々を揶揄した用語と感じる。トーマス・エジソン、ヘンリー・フォード、豊田佐吉、松下幸之助、井深大、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズみんな少年時代は立派なオタクであり、同時に持ちあわせたスケールの大きさで大輪の花を咲かせた人たちだ。
普通の人が世渡りのうまさで生きられるのは万事が予定調和で満たされる平時の話である。一等国の通貨が一気に40%も暴騰・暴落したり、国が潰れたりするかもしれない時代だ。予定調和はおろか、来年世界経済がどうなっているか誰もわからない状況で、寄らば大樹の陰という選択はない。不倒不滅の大樹に見えるものこそ先に朽ちて倒れる可能性すらあるからだ。
世界貿易に参加した中国がたった10余年で5億人がスマホを持つに至る時代である。2015年には中国のインターネット利用者は6億人となり、ネット利用者数は圧倒的な世界第1位でランキング2~10位の9カ国を合計しても及ばなくなる。何度も強調するが、ゼロサムの世の中で中国が吸い取った富も職場も他国には戻ってこない。10年前の欧米や日本の「大企業」こそ失う張本人で、そこにまだ成長があるとカン違いして人が集まれば10年後は「才能の墓場」と化しているだろう。
と書いてきたが、「頑張らない人が報われる社会」は、そのような世界経済の不確実性、あるいは最近はやりの表現を使うなら資本主義の変質・衰退によって、どの国家がどんな政策を試みようが、経済に内在する原理によって根こそぎ無くなっていくだろう。まして、それを促進しようという政府、政党は弱者救済を謳いながらかえって弱者の生存力をさらに弱くするだろう。
なぜなら、そこでリスクを取らない人、動かない人、決断しない人、寄らば大樹の陰の人は安全だというのはもはや神話になるからだ。自分は動かなくても地面の方が動いていって、気がついたら立っていた場所は危険地帯だったということになりかねない。動かない人は感性、感度も鈍っていて、地面の動きには気がつかない。むしろまっさきに犠牲になる人たちだ。
一方、オタクで動かない人はまずいない。自分の好きなことへ向けて、周囲がどうあろうと勝手に突ききすすむ性質の人間だからだ。これからは彼らの生存率の方が高い。結婚相手にオタクを選びなさいという岸氏は正しいと思う。①直感で動く②先例を無視できる、はオタクにとっては当然のことでもあるので自明の条件だ。
国税庁の企業生存率統計によると、50年生き残る企業は0.7%しかない。これは一理あって、オタクであった創業者がハンズオンで指揮するのは長くて30年程度だ。そこで世代交代がおこり、創業者の個性によってではなく彼が築いた「ぴかぴか光るブランド」に魅かれて入社してくる人が多数派になる。その「ブランド入社組」が管理職を占めるのがおよそ20年後だ。それが創業50年後の経営の姿なのである。
ちなみに、オタクは「ブランド」では就職を決めない。自分のしたいことができるかどうかが最大の決定要素だから、仕方なく入っても辞めてしまう。その結果としてブランド企業は「ブランド入社組」がだんだん優勢となり、「成績優秀な普通の人たち」ばかりの集団になる。オタクにはますます魅力のある職場ではなくなってしまう。
そうして創業者が退くころには普通の人の経営ガバナンスが優勢となり、経営陣のどのひとりも創業者に匹敵する人はいないという状態になる。リーダー不在ゆえに誰もリスクを負わない共同統治体制が好まれ、現場にいるオタクの提案を評定(ひょうじょう)する会議体になり、「やらない理由」「できない理由」を探すのが仕事になる。
1995年からのデフレ経済は小田原評定専門の経営陣には福音のような環境だった。失点しないことが大事というゲーム環境だ。ブレーキを踏むコストカッターとコンプライアンス・オフィサーばかり出世し、創業者の衣鉢を継いだオタクやアクセルを踏む人はむしろ体よく排除され、「Sクラスのベンツに1000ccのエンジン」という車ばかりになってしまった。
日本という国はできない理由を探すのが得意な人が圧倒的に人口比の多い国である。これはたぶん江戸時代に優勢となった遺伝子で、明治維新でやや後退したが、太平洋戦争の敗戦で完全復活した。だから国策として、できる理由を探す人、つまり経済のドライバー、牽引車となる属性の人を大事にして育てないといけない。
私見では、大学教育や大卒という肩書は根底から見直されるべきだ。先生の失業対策で作ったような大学が入試のバーを下げて学生というお客さんを集めるナンセンスな行為は、就職できない大卒を増やして若者を食い物にするだけだ。学問の府としての大学は存在すべきだが、これからの世界経済環境は「高楊枝の武士」は必要としない。
我が国が中国に食われずに食っていくために何をするか?徳育と職業教育しかない。中国人に負けない「手に職」をつけ、これから世界を席巻するだろう「日本人の徳」を備えた人を作れば怖い物はない。職業教育には、エンジンになる経営者を育てる教育も含まれる。明治時代の洋学の延長ではないものを教える学校で、「藩校」のイメージに近い。
僕は1997年のダボス会議に出たが、そこでビル・ゲイツが「これからの時代は、どこの国に生まれたかではなく、何を学んだかで生涯年収が決まる」と予言していた。その通りの21世紀になってきている。大学教育は米国ですら変質を迫られ、スティーブ・ジョブズが大学中退であることがそれを象徴している。欧米の学者をたてまつる翻訳・コピペ文化の日本の大学教育がいまのままでいいはずもない。
理想的なのは、戦争を経験した世代、つまり80才代の経営者が藩校を作り、自らの事業体験を教え、奨学金を与え、人脈を継承させ、すぐれた新規事業プランを無から生む人材を育成することだ。未来の経済成長のエンジンとなる人材が学ぶべき先生はもはや大学教授でもなければサラリーマン経営者でもない、すぐれたオーナー経営者だ。
生きるか死ぬかの時代を勝ち抜いた彼らの体験こそ今の学生が里程標にするべきものだ。なぜなら無から有を生み事業化したプロセスにこそ価値を生み出すすべての英知が凝縮しているからだ。それを真似るということではなく、そのエッセンスから不確実な時代を生きる知恵を抽出し敷衍し実行する。胆力が必要なうえに高度に知的な作業でもある。少なくとも、それができる人が失業するということはない。
日本には欧米と違ってすぐれた徳をもったオーナー経営者がたくさんおられる。欧米が強欲という気はない、それは資本主義で当然のことだ。そうではなく、日本的な徳というのはその名のとおり日本独特のものであり、松下幸之助や稲盛和夫のようにそれを伝えることを私財で行動に移された方々も多い。彼らから資産税をまきあげて、事業経験のない官僚がその金を使うより彼らが体験を次世代に継承するために使った方が事業をやりたい若者には役立つだろう。
藩校の優秀な卒業生は、オーナーの企業の幹部候補生になるか、オーナーが起業の出資者つまりエンジェル投資家になってくれる。それが卒業証書になる。強烈なインセンティブになって競争原理が働くだろう。就活など無縁な学校になる。そんな学校があったら、まず真っ先に集まりそうなのがオタクだ。オタクを教える元オタクの先生も集まる。その集団こそすでに魅力的な企業の種だ。
くりかえすが、オタクこそが21世紀の経済を牽引し、国の宝物となる人材、結婚相手に選ぶべき人材なのだ。資金のない彼らが資本家に直結する場が与えられ、資本家はエンジェル投資家として長期的にリターンが得られる。卒業生がどこに就職したかではなく、何人が自社を上場させたかが藩校のステータスを決めるようになるだろう。
これは35年実業をやってきた者としての直観である。
こんな藩校が増え、世の中に認知されてくれば、日本経済は21世紀にわたって競争力を維持できる。リスクを取らず「いかがなものか」ばかり言うつまらない人が支配する世の中は変えられ、頑張る人が報われる社会がやってくる。それどころか、21世紀のトーマス・エジソン、ヘンリー・フォード、豊田佐吉、松下幸之助、井深大、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズが日本から出ることだって充分に可能性があるだろう。
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頑張った人が報われない社会
2015 MAR 1 3:03:37 am by 東 賢太郎
ピケティのデータベース The World Top Incomes Database によると、日本の所得上位1%は2010年時点で総所得の9.51%を得ており、このような推移を見せている。
戦前より大きく減り、90年代より少し上昇しているが、ドイツは10%、英国12%、米国18%であり特に高いわけではない。元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一氏は、
筆者がテレビで「日本ではトップ1%に入る所得は年収1300万円」と発言したことが、ちょっとした話題になった。発言した瞬間、出演者やスタジオの関係者がみんな凍りついたのだ。格差問題を報道しているテレビ出演者たちは「トップ1%」なのかという驚きだったのだろう。米国のトップ1%は4400万円であるが。
と書いている。「ちなみに日本のトップ10%、トップ5%の年収はそれぞれ576、751万円だ。これも予想外に低い数字だろう。」とあり、富裕層への課税強化となればトップ10%が対象だろうが、年収576万円と聞くとはたして高額所得者と思えるだろうか、と疑問を呈している。
日本人の平均年収は225万円だ。前回書いたように中国ビッグバン現象で労働市場の価格破壊がおこり、日本人が貧乏になった分だけ中国人がリッチになって秋葉原で「大人買い」をしているのである。懸命に仕事をしても賃金が低いとなると「頑張った人が報われない社会」になってしまう。若者の雇用を促進すべく、年功序列、終身雇用といった硬直的な労働市場の改革が急務である。
一方で金融資産を見ると、我が国は米国の7900兆円には遠く及ばないもののそれでも1654兆円もある。だからピケティの指摘する「資産による格差」(r-g)がさぞかし大きいだろうと思ってしまうが、冒頭の彼のデータベースによると、トップ1%の平均年収2145万円にキャピタルゲインを加えると2354万円とあるので、一人当たりたったの209万円(収入比9.7%)しかない。
なぜかというと、これが原因だ。米国と日本の金融資産のありようは気が遠くなるほど劇的に違っているのである。
米国人は金融資産の約3分の1も株式を持っており、比較的株式投資には控えめなユーロ圏すら17.1%を持っている。株と投資信託と加えると米国は約半分にもなる。
ところが、我が国では株式はたったの9.4%とユーロ圏の半分しかなく、アメリカ人が株・投信を所有しているのとほぼ同じ比率を現預金で持っているのである。従って、米国に比べればr-gの格差効果はピケティに心配してもらうほど甚大でもなんでもない。むしろ、自国の株が2倍半にも暴騰しているのに、儲かったのはほぼ外人だという国民的機会損失の方がよほど心配である。
遅きに失した感はあるが、投資教育こそこの馬鹿らしい損失を今後は減らす唯一の方策である。所得が少なく資産が小さい人でも1万円で株やETFは買えるし、REITを買えば小口でも不動産のオーナーにもなれるのだ。日本人は明治以来、欧米に追いつこうと頑張ってきたはずだ。どうして株式を資産に組み入れることは追いつこうと頑張らないのだろう?
株価が史上最高値を更新する米国で資産の半分近くを株で持っている人たちがリッチになって銀座のクオリティの高級寿司屋がニューヨークで大繁盛するのはもっともなことだ。ご本家の銀座で金持ちが食っているといって、格差だ、けしからんというのはちょっと違うんじゃないか。
投資の勉強とは証券会社のいいなりになることでもネットのくだらない書き込みを読むことでもない。証券セールスが本当に株式をよくわかっているわけでもなく、むしろそうでないことの方が圧倒的に多い。本当にわかっている人に教えてもらうのが一番リスクがないし早い。
わかっている人というのは学歴やキャリアではなく、投資歴、戦績で見ないといけない。Security analysisを知っているべきだが、学校で教科書的に習わなくても実践的にその本質を理解している賢い人はいくらもいる。学歴など何の関係もないと断言してもいい。だから大学では教えないし、教えたくないのだ。自分の権威が傷つくので。
投資を勉強することも「頑張る」うちだ。「頑張った人が報われない社会」は発展しないが、頑張る人とは何事も自分で勉強し、リスクを取ってトライする人のことをいう。
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頑張った人が報われる社会
2015 FEB 19 20:20:33 pm by 東 賢太郎
安倍首相が「頑張った人が報われる社会にする」と国会で答弁した。これは非常に重要な言葉と思う。
それがなぜかを説明するには、少々長くなるが「デフレが金融現象だけで起きたのではない」ことをご説明する必要がある。
(1)世界を変えたユニクロ・モデル
ぜんぜん難しいことではない。デフレは中国が2001年にWTOに加盟したことで財市場を通じて低価格の労働が輸出され、世界の全ての国の労働市場の需給が緩和し、賃金がさがった。これが総需要を押し下げたからおきたのだ。
それが誰でもわかるとても簡単な例をお示ししたい。
中国にいち早く進出したユニクロ(社名はファーストリテイリングだが以下ユニクロと書く)は上海郊外の工場で激安の労働力を使って縫製した商品を日本で売って成功した、価格破壊の先駆者である。中国人の女工さんを物理的に日本に連れてきたわけではない。当初のころ月給がたったの7千円だった彼女らは「商品に乗って」やってきたわけだ。
すると、上海工場で雇った30人の女工さんの代わりに1人の月給21万円の日本人工員さんが職を失っている。そうしないと企業はそれをやる意味がないから、あからさまにやるかどうかは別として、いやむしろあからさまに見えないように企業努力をしながら、必ずどこかでそれは起きていることにご注意いただきたい。
同じ人件費で30倍の数のジーンズができるのだから他社もどんどんやる。企業にとってはそうしないと負けて倒産してしまう。他の業種も同じことを始める。こうして10年ほど前に「空前の中国進出ブーム」と新聞に書かれたのは記憶に新しいだろう。
(2)ちょっと待ってよ、中国の人件費が安いのは大昔からでしょ?
もちろんだ。これが国民経済的規模でできるようになったのは、中国が2001年にWTOに加盟・調印して西欧の貿易ルールを守りますと国が保証し、先駆者ユニクロのような賢明なリスクテーカーだけでなく普通のコンプライアンス意識の企業も安心して工場進出できるようになったからだ。
つまり、一人当たり人件費が1:30という、帝国主義時代の植民地か奴隷制のころでしかありえなかったような労働市場が国のギャランティーつきで忽然と地球上に出現した。琵琶湖ぐらいの水量があって、100mもの高低差のあるダムの水門を一気に開いたようなイメージを持ってほしい。これが2001年におきたことであり、今や中国は2兆ドルと世界最大の輸出国であり、この水流の影響を受けない国は世界中どこにもない。
ユニクロを退職した日本人は別な会社で職を探す。ところが業界中でそれは起きてくるからその職はどんどん減っていく。月給20万円でも仕方ないだろう。こうして国内の労賃は1万円下がる。新聞には「不景気による労働市場の需給の緩和」と載る。そうではない。ユニクロはジーンズの値段だけではなく、国内の労働市場でも価格破壊をしたということだ。
これがブームになって国民経済的規模で起きた。工場や職場で自分のデスクのとなりに中国人が現れたわけではない。最近は中国語がそこらじゅうで聞こえるようになったと言ってもデパートか観光地の話だ。しかし、目には見えないだけで、実は工場ごと中国人に入れ替えというような事態が10年前からそこらじゅうで始まったのである。非正規雇用の増加というものは、これが工場閉鎖や雇い止めにいたらず姿を少し変えた現象だということがご理解いただけるだろう。
(3)これは製造業だけの話でも日本だけの話でもない
例えば、多くの米国のサービス業でコールセンターを、賢くて英語がうまくて賃金は安いインドに作る流れとなっている。電話をしているアラバマ州の米国人顧客は、自分の町の明日の天気まで教えてくれるオペレーターがまさかムンバイでネット予報を見ながら話しているなどと想像もしない。この陰で、ユニクロ現象と同様に非製造業においても米国のオペレーターは失業しているのだ。
失業したり手取りが減るかもしれない労働者は消費は控える。すると企業は売上予想を下方修正して設備投資を減らすが、生産設備はそのままである。わかりやすく極めてシンプルに言ってしまえば、これがめぐりめぐって国内総需要が供給力を下回り、デフレになったのである。循環的なものではなく、構造的なものである。
そこでGDPの6割は個人消費だから経済成長率は落ちてマスコミは「景気が悪くなった」と騒ぐが、景気のせいでデフレになったわけではないことにご注目いただきたい。だから政府の景気対策なんかいくらやってもデフレは退治できないのであって、アベノミクスが金融緩和という非常手段を持ち出したのは理論的に正解なのである。
(4)ユニクロが悪いわけでもないし止められる者は誰もいない
資本が国境を超えて安い労働市場を求めるのは成長するために当然であり、国家がそれを止めることはできない。ここが一番大事なところで、見誤ってはいけない。「仕事がないぞ!国はなにをやってるんだ!」と永田町でデモをしても仕方がないのだ。なぜならそれは国の責任ではないし、国はどうすることもできないからだ。
これをよく覚えておいていただきたい。「柳井社長、失業が増えるし景気も悪くなるんで製造は国内で日本人でやってください」なんてことは絶対に起こらない。もし馬鹿な政権がそんな法律を作ったら、優秀な経営者は全員が日本から逃げ出すだけだ。国内には税金をたくさん払ってくれる企業はひとつも残らず、格差社会は見事に解消されるだろうが一億総中流ではなく一億総下流と中国にいわれているだろう。国家財政は破たんして、弱者救済どころか国ごと弱者になるのである。
ちなみにファーストリテイリング社の株価はこの10年で5倍になった。今の円建ての金利は気が遠くなるほど低く、徳川家康が預けた100万円の定期預金の利息がやっと10万円に達した程度である。従業員からすると大変な会社だが株主にとっては優良企業であり、労働者がこういう株を買ってはいけない法律があるわけでもない。株を保有すれば誰でも資本家になれるのであって、その方法を無視しておいて「株は富裕層しか関係ない」と批判するのは格差を階級問題にすり替えたいだけだろう。
(5)これは日本だけでなく、世界の労働者の問題でもある
世界で必要な職の数は世界のGDPが停滞すれば増えない。限られたパイを中国人が奪いだせばギリシャのようにはじき出される国が出る。はじき出されたのはギリシャという国ではない、国際競争力のないギリシャの労働者自身である。景気のせいでも政治のせいでも国家財政が破綻したせいでもなく、国民ひとりひとりの自己責任の集大成にすぎないのである。
国民のプライドがもたないから何とかしろとEUに詰めよるなどお門違いもいいところだ。ギリシャの解決策はたったの2つしかない。①国民ひとりひとりがそのプライドを捨てて生活水準を落とすか、②がんばって中国人より生産性の高い労働者になるかである。だからドイツは暗にそういって要求をはねつけている。
こういう時にはえてして、怒れる国民の代理人を装った、ファイティングポーズで威勢のいい政党や首相が選ばれる。中村兄が第1次大戦の戦後処理失敗の帰結と指摘しているヒトラーの出現がいい例だ。そして彼は戦争という禁じ手の第3の解決策に走り、国民を殺し、財産を剥奪し、国を崩壊させた。
つまり、はっきり書くが、国にはできないのだから「我が党がやれば皆さんの生活が楽になります」というのは論理的にあり得ない、要は、嘘八百なのである。国民の怒りに乗じて得票し、政権だけは乗っ取ろう、何をやるかは後で考えようという連中が跋扈してますます国をダメにするというのが歴史の教える国民国家の失敗の方程式であり、まさに我が国も2009年にその一例を歴史に書き加えているのである。
(6)では国家ができることは戦争以外にはないのか?
実はそうではない、もうひとつある。国民に牙をむいて資産を剥奪することだ。ギリシャの銀行預金の流出が止まらないのは銀行が傾いたからだけではない。一昨年にキプロスが危機を起こしたとき銀行に預金していたロシア人は預金封鎖を恐れてビットコインに換えて母国に送金した。今回のギリシャでも国など信用していない富裕層がまず預金を海外に移し、それで銀行が危ないということになっているのである。
政権を取るだけが目的の政党は必ず公約で「政策によって貧富の差を無くします」という。なぜなら政治は数で決まり、「富」のほうが数が常に少ないからだ。だから統一地方選向けに左がかった学者などを呼んできて格差社会などと騒いでいる。しかし数が常に賢いわけではない。この公約はオウムが朝にオハヨウと声をかけてくれるぐらい意味のないことで、いわば歴史的常套手段である。
貧富の差はいつの時代もいかなる国でもなかったためしなどない。それを無くしますと公約する政党が与党になっても、ちゃんと格差はできるのである。なぜならその政党の幹部が金持ちになるから、公約を果たせば果たすほど前とは違ったメンバーによって格差社会ができる。共産主義国のトップはみんな豪邸に住んでいたし、今の中国の最大の富裕層は共産党幹部であって何兆円という天文学的蓄財をしていることがちゃんとそれを証明している。そうなりたい人が権力を握りたいためのセールストークなのである。
(7)日本に世界レベルの富裕層などいない
僕が働いた金融業では米国の社長と平社員の年収差は数百倍もあって日本は証券トップでもせいぜい20-30倍なのだが、やや特殊な世界であるだろう。では日本の代表産業である製造業はどうか。下の図を見れば一目瞭然だが、その製造業を代表するトヨタの社長ですら日産のゴーン社長と比べてこんなものだ。
同じ自動車業界だから、ふたりの差は何かというと「日本人か外人か」だけだ。日産も日本人社長には10億円も払っていたわけではない。英米で10億の人は日本でもそうしないと来てくれないよねということであって、ここまでひどいともはや人種差別に見える差である。
要は、トヨタ、日産クラスの社長は欧米なら10億円、日本なら2億円であり、金融業にいたってはそれは100億円と1億円の差になる。日本の高額所得者の年収などというのは世界的には「異常値」といえるほど低い。一方で、一般労働者の賃金は国際的に高いほうだ。だから海外に工場移転が起こるのである。「日本は格差社会だぞ」などと欧米でいえば、何か面白い日本ネタ・ジョークでも始まるのかと期待されてしまうのがおちというのが現実なのである。
だから、もし日本国が国民に牙をむいて資産を剥奪するようなことを目論めばギリシャの富裕層といっしょのことが間違いなく起きるだろう。日本は相続税で三代で資産はなくなるから富裕層になった人はおおむねそれなりに頑張った人である。では「頑張った人」の共通点は何かひとことで述べよといわれれば、「頑張った人も頑張らなかった人も同じだけ報われますよという国が何より嫌いな人」である。だから頑張ってトヨタの社長になっても「たったの2億円」というのは、もうその時点ですでに本当にできる人は海外に出ていってしまう数字だ。
以上、恐らくお読みの方には僕が非常に冷たい資本主義原理主義者で弱者切り捨て論者に見えているだろう。それを覚悟で書いたのは、まず起きていることの実態を論理的、科学的に解析すべきだからだ。「現実はこうだ、理由はこうだ」、でも「現実はよろしくない」、そこで初めて現実を少しでも良くするために為すべき方法論が選択されるのであって、「現実はよろしくない」からいきなりスタートする安直な思考では方法論を間違ってしまう。
(8)「起きていること」を復習しよう
資本は国境を超えて安い労働市場を自由に求めるが一般の労働者は国境を超えられない、すなわち、グローバルな資本市場とローカルな労働市場のねじれ現象が生じていて、それは昔からあるのだが中国のWTO加盟という巨大ダムの開門で加速して世界中の政府が看過できない所まで来ていて、賃金の安い方に資本は流れてしまうから旧体制に安住していた国ほど被害が大きいということだ。
ギリシャの例で、これを解決するには方法は2つしかないと書いた。①生活水準を下げる②生産性をあげる、である。残念なことに日本は②ではなく①の方に社会全体が向かいつつあり、若年労働者層ほどそれを強いられて国家全体が活力を無くす可能性すらある結果となっている。
(9)よく考えて欲しい。生産性をあげる、とは何か?
頑張ることに他ならない。中国人を低開発国のバロメーターと考えれば、中国人より生産性の高い労働者になることで雇用はされる。もちろん正規雇用である。中国人の賃金も当初より大幅に上がってしかも円安でもある。ユニクロで中国人の30倍のジーンズを縫製しないと負けてしまう時代は終わった。むしろ縫製の正確さ細やかさでは勝てるだろう。そう考えて頑張る人が報われる、それが会社だけではなく社会全体の仕組みとなれば日本人は必ず雇用を勝ち取ることができる。
大事なことは、それは民間がやることであって国家が法律や規則で強制することは不可能だというこだ。民間のトップにはかならず「頑張った人」「頑張って報われるための知恵のある人」がいる。彼らにもっと頑張ってもらい、企業には稼いでもらい、税金を払ってもらい、ノウハウやスピリットを次世代に伝え、社会にそういう若者が増えるように引っぱってもらうことが重要であり、そこから「弱者救済」という社会として絶対にやらなくてはならないことをやる知恵と財源が生まれてくる。
(10)「頑張らずに国にすがりつきたい者」と「弱者」とは峻別すべきである
弱者とは老人、病人など社会的保護なしには生活が危ぶまれる人である。健康で働けるが働く意欲が低く、国や役所や親が何かしてくれるのを待っている人ではない。働ける人は全員が自分の能力を高めて生産性を上げる努力をしなくてはならない。それが資源のない国が競争力を永続させるための必須条件であり、少なくとも昭和の日本人は言われなくてもそう考えたし、それができた。それだけでも世界でトップクラスの優等な民族であったことが証明されていると思う。
弱者救済、セーフティネットの整備を欧州か北欧なみに厚くするのはいいことだが、カネが余分にかかる。GDPの2倍も借金がある国がそれをやろうというなら国債発行に頼らない財源確保、つまり経済成長による税収の自然増というバックボーンなくしてそれをやるのは自殺行為である。借金の重みでいずれ国家財政のほうが破たんするだろう。「頑張らない人も報われる社会」を目指している政党がそれをどうやろうというのか知らないが、やるというなら頑張る人は逃げるだけで、結局誰も得をしないし救われもしないだろう。
(11)ではこれから我々はどうすればいいのか?
そこが一番重要だが、私見は今後書いていきたい。政治家でない僕たちは国家をどうすることもできないから、ひとりひとりがどう考えどうすればいいかということだ。しかし、書いてきたようにこれは我々一人一人の決意の問題である。まずは自分や家族や友人の幸福を考えるぐらいしかできないし、それだけでもできれば大変なことだと思うし、それができなければ困っている方々に本当の思いやりをさしあげることだって難しい。
僕が言うのもおこがましいとは思うが、世界の何千人という優れた方々とお金という本音の世界を通してお会いし、競争し、おつきあいしてきたという経験から、ささやかながら「若者に教えたいこと」というカテゴリーに100本のブログを書かせていただいている。普通の父親はこういうことを自分の子供だけに教えるのだろうが、誰であれそれを託したいのは日本の若者だという信念から真剣勝負で書き持論として公開した。お時間があるときにお読みいただければ望外の幸せである。
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日本の情報戦略は脆弱である
2015 FEB 10 2:02:32 am by 東 賢太郎
先日TV で本田圭佑がサッカースクールの少年たちにノートを渡して「将来何なりたいか書きなさい」といい、「次にそれになるために今の自分は何が足りないか書きなさい」と指導していた。彼自身は「サッカー選手になる、イタリアでプレーする」と書いてその通りになっている。
誰でもそうできるわけではないし、僕も「野球選手・天文学者」だったが今や見る影もない。しかし、それでも思う。目標はあったほうがいい。達成できればそれにこしたことはないが、失敗してもいい。なぜなら「悔しい」という気持ちが残る。いまだにメジャー大会日本人男子最高位である全米オープン2位に輝いたゴルファー青木功がこう言っている。「人は悔しくて成長する」。
いま、閣僚や議員にそのノートを渡して、将来の日本国について同じ質問をしたら何を書くのかなと思って聞いていた。長期目標がないのは致命的だ、なぜなら用意周到な準備ができないからだ。米中とも国家ビジョンを持ってそれをやっている。中国はニカラグアに運河を掘っている。パナマ運河の北だ。米国と戦争になったら大西洋に艦隊を廻せるからだろう。
中国はミクロネシア連邦に対して国会議事堂の建設費を寄付した上で、その真正面に立派な大使館を建てている。かたや日本国大使館は民間の建物の間借りで、大使も常駐せず巡回大使だ。国家予算は約90億円でうち半分ほど米国が補助しているが米国は海軍の前線基地はグアムでありミクロネシアに大枚をつぎ込むインセンティブはもうない。一方、中国はアジア太平洋海域支配を拡大する「用意周到」な準備が着々と進んでいるのである。
日本もご縁が深いミクロネシアには数億円のODAを行って前田道路や三井物産が道路や発電所を作ったりしているが、ベトナムでもきいた話だがで現地の許認可等でODAで感謝されて日本企業への認可が速かったり有利になったという話は聞かない。それを韓国企業から「おかしいですよね」と同情される始末である。昨年、ミクロネシアが日本のカツオ漁船を領海侵犯で拿捕した。驚いたのは罰金が法外な3億8千万円だったことだ。僕は一昨年同国に行って外務大臣まで会っているが、あの雰囲気からは腑に落ちないニュースだ。
かたやこっちはお寒い限りで、民主党政権時代の3人の首相にも議員にも、お世辞にも国家という意識が感じられなかった。反日の国家公安委員長を出すなど、昭和20年に日本は一度滅んでもこんないい生活ができているんだからまた滅んでも大したことじゃないだろうとでもいいたげな印象だった。いずれ米国はミクロネシアはおろか日本からも第七艦隊を引き上げるだろう。イスラム国のようなのが出てくる一方で直近の60年間だけでも180以上の国が地球上から消えているそうだ(「消滅した国々」吉田一郎著)。
僕が危惧するのは軍事よりも情報だ。日本の官庁、銀行のIT、英語リテラシーは低い。起業して投資助言代理業の供託金500万円を振りこもうとしたら「現金を持ってこい」だった。札束勘定機でぱたぱた数える窓口はそれが役所の威厳だとでもいうのか古色蒼然、50年前の郵便局を思い出した。前職(東京)で米国人を20人採用してメガバンクに口座を作ってこいと言ったら、大手町の本店にいるが窓口で英語が通じず説明書も契約書も日本語しかない、中国でもそんなことはなかったぞと苦情の電話が来た。
日本政府はサイバーセキュリティーセンターを作ったそうだが人員は百人ぐらい、自衛隊のサイバー防衛隊も百人ぐらい。中国の情報戦要員は上海だけで数万人、米国は情報機関と軍に全部で百万人だ。これが何を意味してるか?米中は情報を取りに行っているが日本は守りだけなのだ。徳川幕府と変わらず鎖国だけしようという人数である。取りに行く気がないのは攻める気も情報戦略もないからで、それでどうやってサイバー戦争に勝てるというのだろう。
金融の仕事にいると痛感するが、商品がお金である金融ビジネスの競争力は情報力しかない。そこがモノを扱う商社やメーカーと違う。情報力は英語力でもあり、日本の金融機関が世界で勝てないのはその両方が弱いせいなのだ。えっ、MBAも多いしそんなことないでしょと思われるかもしれないが、メガバンクや大手証券の社員で英語で商売できる人は1割もいない。僕のいたところでせいぜい5%であり、それでも日本企業としてはハイレベルでならしている。
だから英語の生情報を取る能力は低く、日本で働いている大手証券の社員で、いまFEDとECBで何が起きているか、つまり世界の金融総本山が何をしそうか推測してみろといわれて、英語世界の情報の8割以上を即座に答えられるのは1000人に数人しかいないだろう。テレビに出ている専門家や政府のアドバイザーもそれには入らないはずだ。なぜならどんなに能力があっても情報収集は一人では無理だ。だから大手証券はシンクタンクでそれを集団でやっている。
しかしシンクタンク、何々総研といっても他人(顧客、投資家)のための情報収集しかしない。はずれても御免ですむ。そんなものに政府が乗るわけにはいかない。だから米国にはinformation(情報)とintelligence(諜報)という別な言葉がある。「CIAのIはinformationのIだよ」といわれれて「嘘でしょ」と見ぬける日本人は、これも1000人に数人しかいないだろう。 情報と諜報の区別を知らない日本人
サイバー防衛隊に「ITの専門家」を百人もおけば事足りると軍である自衛隊が考えているなら太平洋戦争時分と大して変わっていない。まして我が日本国は国家中枢へ行けば行くほど英語がダメでITに弱いときている。つまり、軍事戦略のようなintelligence(諜報)を作りだすベースとなる「ITによる英語情報取得」に多くの専門家を擁しないといけない。それを入れて日本は百人、英語を母国語とする米国の情報戦要員が百万人という数の意味がそれでお分かりいただけるだろうか。だから「中国の数万人」というのは、サイバーのみならず国防上も震撼すべきことなのである。
従軍慰安婦問題で明確な反対情報を世界に発信し遅れるなど中韓に後手後手なのは、戦時ですら精神論にたより情報収集にあまり重きをおいてこなかったツケだ。自分で集めない物は価値もよくわからない。相手は徹底した合理主義による用意周到な情報発信をしている。例えば昨年11月の安倍・習近平会談で中国は尖閣などについて自国に都合のいい内容を英語で約束より早めに発表し、間違った情報が世界に発信されてしまった。
間違ったinformationでも堂々と発信する。間違っているからかえってinformationとして反論しにくいのを計算したintelligenceであって、それをまったく無視するのが日本流のintelligenceなのだが、それがワークした時代は終わった。相手はそれがネット社会では不利に働くことまで見越している。これにヘイトスピーチで立ち向かうのは相手の思うつぼだ。それが今度は「碁盤をひっくり返す蛮行」として世界にネット放映されてしまい、イメージを落す。囲碁には囲碁で、碁盤の上でやりかえすしかない。
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アベノミクス選挙雑感(追記あり)
2014 DEC 15 0:00:42 am by 東 賢太郎
議席数については特に感想はありません。11月21日の拙ブログ「アベノミクス選挙の大義(今月のテーマ)」の想定の範囲内の結果です。デフレ脱却と景気対策が喫緊の課題であり、それに代案も実行力もない政党はだめだということを国民が見抜いていたという意味でしょう。戦後最低の投票率でしたが、反対票を投じなければ現政権継続が明白な情勢ですから、それは今のままでいいという消極的投票を含んでいると思います。
だから今回大義があったとするとそこに書きました財務省とのアコードへの影響でしょう。借金を負う身としてインフレがいいにきまってます。それは経済成長を伴う物価上昇でないと困るわけで、安倍政権は第3の矢の成功になりふり構わず進み、それを金融政策も全力でバックアップする、それがアコードになるはずです。
消費税増税の延期に国民は是の審判を下した、安倍政権はこれを霞が関対応への強力な援護と考え官業の規制緩和に切り込む余地が出るでしょう。しかし2%上げることにも是の判定をした。それを批判した野党には非としたわけです。そのぐらいアベノミクスの経済政策への期待があるということでしょう。民主党は代表も元総理も落とされました。経済政策への信任がないからと思います。なりふり構わずの条件は整いました。
為替と株の方向性はかなり明白ではないでしょうか。
(追記)
自民の獲得票数は2009年から毎回減っていて投票率が減った効果が野党票に顕著に出ただけ。圧勝といっても議席数も09年の民主党のそれ以下。消費税2%上げはコミットしてしまったのでもし景気が腰折れしたら自民は一気に浮動層の支持を失って09年の二の舞もありうる。
つまり景気持続の象徴である株高を伴って第3の矢の政策展開をしていくことが安倍政権には必至なのです。期待先行であろうと金融政策動員の腕づくであろうと、株高持続がマストです。しかし株価はバリュエーション上(特に大型株は)それを織り込んでいると思われます。中型、小型にはまだ魅力的なものがたくさんあります。
政府が株を上げると宣言しているようなものなのだから株安の局面があれば買うことは正解と思います。10万円でも買えるのだから「金持ちが恩恵を受けるだけ」というのは野党の詭弁です。リスクを取るかどうかだけです。リスクを取らなければ金持ちでも見返りはありません。しかし何でもいいというわけではなく、バリュエーションには注意すべきです。簡単にいえばPER、PBRが市場に比べてあまり高いものは避けた方がいいでしょう。
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アベノミクス選挙の大義
2014 NOV 21 22:22:43 pm by 東 賢太郎
株価というのは世の中のコンセンサスの指標です。けっして意味もなく上げ下げするわけではありません。例えば、
オバマ民主党大敗を世界がどう評価しましたか?
こう質問された時、最も客観性のある解答は何でしょう。株価です。11月5日以来、NYダウ平均株価は3%近く上昇していますから、「共和党の勝利を好感しています」と答えれば正解なのです。誰も有効な反論はできません。
「株価はコンセンサスで決まる」というのがコンセンサスだからです。それに逆らって、「いや私は悲観している」と株を売った人は損をします。逆に、オバマ再選の時の「オバマショック」でNYダウは300ドルも下がりましたが、その時、「いや私は民主党支持者だから」と株を買った人は大損しました。お金をドブに捨ててまで支持を貫きたい奇特な人はいないという前提ですが。
つまり、株式市場はコンセンサスがどうなるかを占う場なのです。このことを経済学者ケインズは「美人投票」と称し「1位になる人を的中させると勝ち」のゲームにたとえました。あなたの趣味でAさんが良いと思っても、周囲はBさんを選ぶと思えばBさんに投票しないと負けです。だから多くの人がコンセンサス(みんなが美人だと思うだろうBさん)を選ぶようになるのです。
さて、今回のアベノミクス解散総選挙はどうでしょう?
僕の記憶では11月10日ごろから憶測が流れ、株価が織り込みはじめました。10日の日経平均引け値は16,780.53円です。発表は18日夜だから翌19日引け値を見ますと17,288.75円で、今日が17,357.51円ですから発表時には織り込み済みでした。
10日からは徐々に織り込みながら3%ほど上げていますから、現時点ではコンセンサスは解散を概ね好感している、ということです。
今回の選挙には大義がないと野党は言いますが、あります。18か月先送りした10%への消費増税です。そこからの先送りはない、必ずやるという信を問う選挙です。その時点で経済が不調で増税が国民生活の足かせになるなら安倍首相は責任をとるという条件付きで。
これは日銀に金融緩和継続を宣言させて官邸と協調姿勢をとった財務省と、そのアコード(協調)を継続する唯一無二の選択肢だったでしょう。
このアコードが崩れれば緩和は終結し(日銀は本音はやりたくない)、株価は暴落します。その場合、増税もコミットされていないわけですから、国際社会での日本国債の信用力が落ちます。するとS&P、ムーディーズの格下げという事態になります。すると国債は売られ、日本の金融機関のバランスシートは悪化します。円は売られます。
つまり、資産効果が削がれ経済失速、デフレに逆行、金融機能がますます停滞、円安で物価高という四重苦に突入し、日本の国力はズタズタになります。
株高は企業と富裕層だけのメリットで大半の国民に利益はないと野党は言いますが、株が上がって誰が損するのでしょう?デフレ環境であったのに誰にも不利益がないというのは、大きな利益なのです。
ここで株が下がれば国民全員の生活に、例外なく大打撃があります。これは誰かが株で損するからではありません。
民主党があのまま政権に在ったら今ごろデフレが治癒の見込みのない重病となっており、日経平均はおそらく7000円以下で、被災者の方、社会的な援助が必要なかたがたまで含めて我々の生活はどうなっていたか、考えてもゾッとします。
株価というものは、それで誰かが儲けるだけだろうという他人事ではなく、誰もが影響を免れられない経済環境全体をしめすバロメーターなのです。結果として株を下げてしまうような政権になれば国民全員が不幸になるということを言っております。
円安はよろしくない、良い円安などないというのはブログで強調したとおりです。円安でもこの2年で日本の輸出は伸びてません。企業の海外資産が円ベースで増えて株価に一応はプラスですが見かけ上の増加ですから持続性はなく一時的な要因です。
だから円安イコール株高というのは株がよくわかっていない人たちの呪文にすぎない。しかし、いくらなんでもそのうち彼らも真相に気がつきます。今の円安はデフレ治癒の金融政策という、「投薬によるによる副作用の発熱」にすぎません。
しかしこれだって、ここから経済・株式オンチの政権が医師として治療を続けたらその発熱で患者が死んでしまいかねないほど、今の病状は複雑です。
野党の野合はいかんというのがかつての選挙でしたが、今の野党は解党はあっても野合する力すらない。政権担当能力など言うに及ばずあるはずがないのであって、消費税増税を18か月後にコミットする力も当然ありません。ということはアコードもなくなるわけで、従って、我が国は四重苦に突入し、国民の生活どころか中韓露になめられて国土保全すら危うくなります。
つまり、自公の負けイコール株価、国債、円の暴落なのです。だから解散総選挙がささやかれだしてから日経平均株価が「暴落しなかった」ということは、それがコンセンサスではないだろうと世の中が思っている明白な証拠なのです。
自公を応援しているわけではありません。それしか選択肢がないので困っているのです。選択肢なんかないだろうという意味で野党が「大義がない」というなら、それは正しいことを言っています。
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旗幟鮮明ならざるが良し
2014 NOV 5 20:20:53 pm by 東 賢太郎
いま安倍政権にとって外交こそ試金石になりつつある。簡単にいえばこういう事だ。
①米国は共和党圧勝でオバマと議会のねじれが生じて2年ほど影響力が落ちる。内政的には経済政策に知恵のない政権はだめということ。オバマ以後(2年後)の金融覇権再建に軸足を移す政策をとるはず。ドルは強い。
②ロシアはウクライナ、クリミア問題で孤立しEUなしでの自立経済圏では食っていけない。内心は焦っている。何をやりだすか誰もわからない。なんとかに刃物状態で武力による威嚇に走る危険あり。
③EUは通貨も組織も存亡の危機にある。銀行の「飛ばし」は私見では100兆円以上あり金融の火種が再度くすぶっておりいつ爆発してもおかしくない。ドイツが一身に重荷を背負うのが馬鹿らしいと思いだしており求心力が落ちた。ロシアと軍事対立を想定しておりNATOでなくEU軍による防衛もある。
④中国は公害問題が実は非常に深刻(絶対に公表されない)で日本企業のクリーン技術に秋波を送りだした(尖閣問題が出なくなったのはそのためだ)。失敗すると香港の民主化勢力すら抑えきれなかったツケが回ってくるリスクを恐れている。金融の実態はもうかなりボロボロである。
⑤北朝鮮が日本にすり寄ったことで韓国の態度に変化が出ている(竹島の施設入札中止に出ている)。隣国の景気は非常に悪い。
この千載一遇の好機にどう立ち回れるか、それ次第で今後30年ほどの日本の立ち位置が決まるとある政府関係者からきいた。漁夫の利というと聞こえは悪いが、チャンスでいかに戦後の劣勢を挽回できるか。
ポピュリズムは結局は底辺にもプラスにならず誰の得にもならないまやかしであることが理解された。まずは米国で共和党が勝ち、日本にやや遅れて「リーマン前」に戻ったことは長い目で見ると世界経済にプラスである。
わが国は旗幟鮮明ならざるが良しこそ最善の策と思料する。ここはしたたかにお願いしたい。
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